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ヤマシタ先生の短編はバリエーション豊富で飽きないです。シリアスからコメディまでどのお話もおもしろい。すごい。
□さようならのお時間です。
薄っぺらい闇(病み)モノが苦手なのですが、ヤマシタ先生が薄っぺらいはずもなく。
無自覚に愚かなのっていちばん恐ろしい。
宇宿がなぜああなってしまったのか、どんな家庭環境だったのか、そこが気になりました。
□ラブる
好きな相手のにおいが消えないのは心臓の辺りに彼がしみついちゃってるんじゃねぇかな?のくだりがおもしろかった。
□嗚呼ボーイフレンド
主役の怒涛のモノローグと妄想が饒舌でギャグでリアクションも抜群で笑いました。
□絶望の庭
いちばん好きです。小説家モノが好きなんですが、ヤマシタ先生にかかればそりゃあおもしろい。
タイトル、人は誰ともわかり合えない庭に住んでいるというのがいい。
その庭へ人と触れ合った種を植え、育つものもあれら育たないものもあり…人生ですね。
恋人がいい奴で伊砂が泣きながら「…………好きだよ」と言え「知ってるよ」と答えてくれて笑って「…いみわからない…だから小説家っていやだ」「…わからんか」+モノローグで終わるのが最高でした。
◆薔薇の瞳は爆弾(表題作)
カップリングがユニークでお気に入りの作品です。本人はいたって普通の性格なのだけど、見た目の美しさと爽やかさが極まっているため王子と呼ばれている蓮水と、そんな彼に惚れられてしまう見津田。恋人に殴られるのにもときめくというドMな見津田が、優男でしかない蓮水との恋愛に満足できるのかちょっぴり不安でしたが、描き下ろしでは彼なりに蓮水とのやりとりを楽しんでいるようで、この2人のデートをもっと見てみたいなぁと思いました。
◆さようならのお時間です。
短編ですが一番深い余韻を残してくれた作品でした。塾講師を辞める羽目にまで自分を追い込んだ、若さのままに行動する宇宿を憎んでいるという主人公。宇宿の言動は確かに軽薄ではあるのだけど、悪気はないというところがまたタチが悪い。憎いと言いつつ、主人公も彼を完全に拒みはしないんですよね。それ自体が意趣返しなのか、なけなしの情なのか。大人を好きなようにしたツケが回ることを、17歳の宇宿がこれからどう受け入れていくのか。短い中で、2人の人間の人生を考えさせられました。
ヤマシタトモコ先生の短編の中でも暗い作品2つからスタートします。この単行本で先生に初めて触れたら最初の2作品でちょっと心折られるかもしれない。
その後は明るめのBL短編なので折られず読んでいただきたい。
やっぱり好きですね〜。BL漫画読みすぎてどこかで見たような展開に辟易してきたときに読むと、先生の作品は"どこかで見た"の種類が違うと感じる。どっちかというと非BLの小説とか映画とかそういうものの影響が強いんだろうなっていう。
芸能人の名前とか歌謡曲とかよく出てくるのも、架空の登場人物が実存するかのような見せ方を強めている。
ヤマシタトモコ先生の作品には抱きたい側のゲイがよく出てくる気がします。BL漫画全体で見ると抱かれたい側のゲイの方が作品数多い気がするので面白い。
短編集。
のっけの2作がすごくヘヴィな重苦しい話だけど、後半の収録作は段々軽めなテイストになっていって、1冊の読後感はすっかり毒が抜けるような感覚。
最初の2作品が好みだった人には後半が物足りないだろうし、後半の空気感が好きな人には、最初の2作品が暗くて要らない…そんな1冊ではないだろうか。
「the turquoise morning」
ヤマシタトモコ的視点のアラブ、というか中東もの。
主人公はアメリカ人のフォトグラファー・ジェド。つまりは自由の国の住人。
彼が内戦や紛争が日常である中東のあるゲリラのリーダー・サバーフを追った写真集を出版する…
…という設定。
全く異なるバックグラウンド、全く異なる風景、全く異なる宗教、死への距離感…医療も整わず妊娠中の妻を喪ったサバーフの静かな瞳に恋に落ちるジェドだが、その想いは口にもできない。心の中で願った想いは、鬼神によって叶えられたのか?
願ってはいけない願いをそれでも願った男の目は、あの国の朝の色、あの人の名の色。
「さようならのお時間です。」
後先も考えない、若さゆえの無知と暴走の果て。
何もかも間違い、何もかも失う17才。
何度読んでもこわい。何度読んでも虚しい。
「ラブる。」
友達に告ってしまったヘタレ男子のアタフタ。(でも何かうまくいくかも。)
「浮気者」
恋人が女と寝まくり、挿れさせてくれない。なのに別れると言うと泣いて縋ってくる…
…こりゃー地獄だね。絶対別れた方がいいよ、と言っておく。
「薔薇の瞳は爆弾」
王子様みたいなイケメン男子は、その一挙手一投足がまるで爆弾か矢のように周囲をなぎ倒していく。(みんな目がハートになって倒れる)
唯一なびかないドMゲイに「ぼくの顔でなくぼくを見てくれた」と恋をして…
結局ドMゲイも王子に落ちるけどね。(でも理由は顔じゃない。)
「嗚呼ボーイフレンド」
こちらも友人に告ってしまったヘタレ男子のお話。
ここで面白いのは、妄想を拗らせて、今サトラレになったら死ねる!っていう腐女子あるある。
「絶望の庭」
小説家が主人公。
彼はちゃんと恋人がいるのにどうやら高校時代の恋を引きずっていて、誰とも分かり合えない、とかゴチャゴチャと。
でも彼の恋人の方は、そんな彼のネガティブを一蹴する現実性を持ってる明るい人みたい。
巻末は恒例(?)のギャグで〆る描き下ろし4編と、作者様による作品コメント。
ヤマシタトモコ先生の短編集、シリアスからラブコメなど色々なお話が詰まっています。
始めが重い作品で途中からはラブコメ中心なので、読後感は良かったです!
しかしながら、「さようならのお時間です。」は本当に辛かったです。
ネタバレになってしまうのですが「親なんて死ねばいいのに」って思春期の男の子なら言ったりする事もあるかもしれないけれど、
これは、本当に行動に移してしまったって事ですよね。 読みながら私の思い違いであってほしいと何度も願いました。 こんな事になる前になんとか家族との関わり方を修復できなかったのかなって…。
ENDの後が気になります。私はこの作品が一番心に残っています。
お次は「浮気者!」です。
受けの子が浮気性というか、自分から行動はしなさそうだろうけど相手から好意を抱かれると受け入れちゃうタイプの子です。
それにしても自分の家に女の子連れ込んじゃうのは許せないですよね。
それでも捨てないでと縋られて絆されちゃっています。
書き下ろしでの自分の事は棚に上げてヤキモチを妬く受けの子が可愛かったです。
「薔薇の瞳は爆弾」
表紙の二人です。
キラキラした王子様蓮水の「強引に優しくされたことはありますか?」この言葉に見津田と共にやられちゃいました。
速攻で暴力彼氏と別れてきたのもとても良かった!
しかし本気出せば勝てる相手に殴られるなんてドMかと思いきや、書き下ろしでは少しSっぽい気もきました。 Sっぽいというか、蓮水は振り回されているなぁと…。
二人が恋人になってからが、もっと見たかったです。 クールな印象の見津田が乱れる所も見てみたかった!