おまけ付きRenta!限定版
「俺、監禁が趣味なの」
儚げなカバーイラストにミスマッチな強烈な2文字に、これはいったいどんなお話なんだ?と興味がわいてしまう。
ページをめくるとそこには、小説家の十識の部屋という舞台の中で繰り広げられる、ひょんなことから出逢った2人の静かで、柔らかで、奇妙で優しい不思議な物語が広がっていました。
ymz先生のタッチと話運びがそうさせるのか、漫画だけれど文学的というか、彩度が低めの短編映画のような雰囲気があります。
このお話はボーイズラブなのか?というと、ラブなのかどうなのかもわからないというのが正直なところ。
ですが、さらさらと描かれるどこか低温で淡々とした2人の日々をよくわからないままの感情で読み進めていると、なぜかいつの間にかこの2人のことを好ましく思っている自分がいるのです。
決して爽やかではない。かといってとびきり明るくもない。
登場人物達のバックボーンが分かるヒントのちいさな欠片がほんの少しずつ散りばめられながら、緩やかに続く「監禁」生活が描かれています。
名前が付けられない奇妙な関係性が妙に心地良く、読後感も悪くない優しいお話でした。
萌え・萌えないでは括れないかもしれません。私は好みでした。
監禁というワードに惹かれて購入すると好みが分かれそうかなと思いますが、物語の全てをわかりやすく説明しない、淡く滲んだ水彩絵の具のような曖昧さや余白を楽しみたい方にはおすすめのお話です。
監禁と聞いていたので見てみたら1ページ目から優しい話だと理解しました
過去に囚われて似てるふたりが出会った話ですね。エロ要素は皆無です、かといってピュアという訳でもなく、BLと言うよりかは、人との繋がりだとか、道徳のようなものを書いてると個人的に思いました。恋や愛という言葉はこの作品には合わない気がしました
個人的に十識の監禁をする理由が全く理解できなくて、過去がはっきり書いてあるわけじゃなかったので、感情輸入出来ませんでした
作品の流れとしては良かったです。また何か温かい気持ちになりました
分かりやすくかつ柔らかくなった「さよなら、ヘロン」だな、という気がしました。分かりやすくなっているかは微妙か。読みやすくなったというのが正しいか。
先生の作品の中でこの作品が最も剥き出しに先生の描くものの一貫した何かを表現しているように思えます。勝手な感想です。
よくよく考えたらボーイズでもラブでもないかもしれないな。実際、他の作品もそんな雰囲気のときあるからな。必ずしも性愛がその面白さに必要ないBL漫画が好きなので、自分はこちらも好きです。
読み終わって、温かい気持ちになりました。
監禁、とは言っても「暴力・命令なし、衣食住付き、欲しいものも大体買って貰える、ただ家から出られない」だけ。嫌なら出て行ける。
そう言われて特に躊躇するでも無く、まあいいよと受け入れてしまう唯。何でそんなに適当に生きているのか。
小説家で、監禁が趣味で、でも人恋しいからではなくて、むしろ他人がいる事で心に負担がかかってしょうがない十識。なのになぜ?
この二人の過去が気になりつつ物語は淡々と進むのですが、唯のピアスを巡って二人の生活が大きく動きます。
二人とも過去に大きな消失を抱えていて、その二人が過去の後悔を乗り越えて、ほんの少しずつですが、お互いに手を伸ばすことで前に進んで行く様子がとても愛おしいです。
十識の過去については、誰にでも多かれ少なかれそういった経験は有りそう、と思ってしまう程度にしか描かれていないのですが、その点についても家出少女の心ちゃんの言葉通り、経験で一括りにされて決めつけられるものでは無いのだなあ、と。
その時何を感じてどれだけ辛かったかなんて他人に決められるものではないんだなあ、とハッとさせられました。(でも十識、マンションから飛び降りてるんだから相当辛かったはずなんですけどね、描写だけではそんなに?と思っちゃう、現実のいじめとかでも一括りにしちゃダメなんだなあと)
番外編と描き下ろしで、二人の生活が見られて良かった。
手探りで、でも互いに思い合っているのが微笑ましいです。
そしてここでもピアス。
ああー、そうなりましたか!なるほど、上手い!
二人のはにかんだ笑顔を見て私も幸せな気持ちになりました。
恋愛的な描写は有りませんが、それよりも心の底から求め合う様な、二人の関係が素敵なお話しです。
嫌ならいつでも出ていくことが可能な、特殊な監禁状態に置かれた唯。仕事や家事をさせられるでも、性的なことを求められるでもなく、ただ家にいればいいだけ。それを強いる十識というキャラクターが一体どんな人生を歩んできて、今何を考えているのか、唯も読者もそこが気になるんですよね。一方で、自分だけが仲の良かった親友を失ってしまった過去を持つ唯。今度こそ、大切な誰かに寄り添い続けたい、手を放したくないという気持ちは誰よりも強くて、その折れなさには十識も驚くほど。他人を巻き込んで試すような生活を送っていた十識が、初めて誰かから一緒にいたいと思ってもらえることを知る。愛とか恋にまで発展はしなくとも、今の2人にはこれで十分なのだと思えました。題材に似合わず、心のあったかくなるような作品でした。