イラスト入り
これは、命に限りがあるから知られる絶対の幸福だよ
こちら、「坂道のソラ」と「窓辺のヒナタ」のシリーズ作です。
2作とも未読ですが、問題無く読めました。
わりと文章に特徴がある作家さんだと思うのです。
すごく透明感があって、どこか現実感が薄いと言うか。上手く言えないのですが、レースのカーテン一枚挟んで見ているような、生々しさの無い、美しくて儚い感じの。
今回、その透明感のある文章とストーリーがすごく合っていて、読み終えた後もいつまでも余韻から抜け出せませんでした。
生きる事、愛する事、幸せになる事。そして終焉ー。
すごく重くて深いテーマが、美しくて透明感のある文章で淡々と語られています。
身近な人間の「死」が取り扱われているため、複雑な思いを抱く方もおられるかもしれません。
ただ、個人的にはとても深く心に響きました。号泣もしました。すごくすごく良かったです。
あとがきで作者さんが、「同性愛を書いている理由の一つを、明確に描けた作品」と書かれています。
う~ん・・・。なるほどなぁ。これは同性だからこそ、辿り着いた場所だよなぁと感慨深く思わされます。
内容自体は、過去の失恋を引きずる大学生の結生と、恋愛抜きのセフレを求める会社員・氷山がSNSを通じて出会い、互いに惹かれ合って行く-。
でも氷山にはある事情があり、結生を「セフレ」としてしか接する事が出来ずー・・・と言った所です。
終始、結生の視点で進む為、優しいのに一歩を踏み込ませない氷山の態度は時おりズルくうつります。
そして、結生の一人称がとても切なかったり可愛かったりキュンとさせてくれる。この、いかにも若者の語り口調が苦手に感じる方もおられるかもしれませんが、私はストレートに心に届きました。
氷山に口では憎まれ口を叩くのですが、内心では好きで仕方ないのを溢れさせてるんですよね。このへんの描写が秀逸で、主人公である結生に、モロに共感させられる・・・。
あと、セフレという立場から絶対離れようとしないクセに、結生に対する氷山の言動は、明らかに大切で仕方ない扱いです。
セフレの時からその状態なので、二人が結ばれた後はもうベタ甘!
「おまえはなんなんだろうな・・・地上に舞い降りた天使かな」みたいな!! 二人のすれ違いパートが長い為、ホント萌え転がりました。
なんかね、そうゆうセリフを我慢する事無く、自由に言えるようになって良かったねと、安堵する。
そして先にも書いた通り、身近な人間の死が取り扱われます。
ここの所で泣き、その後のラストでまた泣き・・・。
ただ、二人の辿り着いた結論に、すごく心を揺さぶられました。いやもう、文章の一つ一つがすごく感動的で。帯にもある通り、命には限りがあるから、知られる幸福があるんですよね。
余韻の残る、とても素敵なラストでした。
あと最後になっちゃいましたが、yocoさんのイラストも世界観とすごく合っていて素敵でした。
口絵カラーですが、本文抜粋の文章と合わせてもうパーフェクト。表紙をめくって、すぐにやられた!
すごく素敵な作品でした。
作家買い。
アニパーシリーズの『坂道のソラ』→『窓辺のヒナタ』に続く三作目。三作目、というかスピンオフものですが、前作未読でも問題なし。ただ前作の登場人物や、「アニマルパーク」通称アニパーというオンラインゲームが舞台になっているところは前作と共通している部分なので、気になる方はぜひ前作も読まれることをお勧めしたいです。
主人公は大学生の結生。ほぼ彼視点でストーリーは展開します。
過去に切ない恋をしたことが原因で、結生はゲイであることに対する葛藤に悩み、さらに自分自身に自信が持てない。恋人を作ることはできなくても、せめて恋人のようにやさしく自分を抱いてくれる人がいれば、という淡い期待を持ち、アニパーで知り合った「クマさん」と会うことに。
アニパーでは「初めて」の自分を抱いてくれる人を見つけられなかった結生は、ヤリチンのふりをしてクマさんに抱かれようとするが…。
というお話。
二人の出会いは最悪。
「クマさん」、が最低な男なのです。
結生の初恋の相手も、これまたかなりのクソ男(失礼)で、恋に憶病になっている結生が可哀そうで…。が、少しずつ見えてくる、このクマさん=会社社長の氷山さんという男性の中身が、めっちゃ男前でした。
出会いは最悪、でも実は外見も中身もイケメン、しかも会社社長というハイスペック男性と恋に落ちるという、一歩間違えると古めかしい少女漫画のような展開。なのに、ぐっと胸に迫ってくるストーリー展開はさすが朝丘さんといったところか。
主人公は結生、さらに全編通して彼視点。
なのですが、彼の目を通して描かれているのは、氷山という男性の孤独だったり、葛藤だったり。さらに、彼らが共にこなす仕事だとか、ゲイであることの苦しみだとか、さらには生死にかかわる展開があったりと盛りだくさん。なのに、とにかく朝丘さんの書かれるストーリーにメリハリがあって、ストーリーがとっ散らかることなくするんと胸に落ちてくる。
彼らのたどり着く未来がどういう結末を迎えるのか、気になってページをめくる手が止められませんでした。
この作品は氷山さんと結生の恋、ゲームのアバター造り、ゲイであることの葛藤、といったものが題材になってはいますが、この作品で描かれているのは「生きる」ということの素晴らしさ、だったように思います。
朝丘さんは時々生死にまつわる作品を書かれますが、どの作品にも共通して言えるのは「死」というものを否定的にとらえていない。生あるものはいつか死を迎えるわけで、その時をどう迎えるか、死に直面した時にどうするのか、というものを繊細な描写で描いている。
この作品も「死」という、時に目をそむけたくなる事項を真っ向から描いています。そこから見えてくるのは、「生きる」ということの意味とか素晴らしさでした。
結生の過去の恋、そして氷山さんへ向けるひたむきな恋心。
氷山さんの抱える秘密。
要所要所で胸が痛くなり、涙腺が崩壊しました。
が、読後はさわやか。
孤独に生きてきた二人が、唯一無二の存在を得て、そして未来に向かって歩んでいく。前向きな気持ちになれる、そんな素敵な作品でした。
設定としてはシリアスに分類されるかと思いますが、二人の掛け合いが漫才のようで、時に爆笑しました。さらに、ネットでセックスをする相手を探す、というところからスタートしている二人ということもあってか、朝丘作品にしてはエロ多めな気がします。
笑いあり、涙あり、エロあり。
ということで、こっそり一人で読むことをお勧めしたい。
個人的に氷山さんがめっちゃツボでしたね。
横柄な態度に隠された彼の誠実さや、結生に向ける恋心にキュンキュンしました。自分の年齢を考えたときに、20歳という結生の全てを貰っていいのか、と悩む彼の男気にも激萌えしました。
そして結生と結ばれた後の彼のデレっぷりに、めっちゃ笑わせてもらいました。口がかゆくなりそうな甘いセリフをさらりと言っちゃう、彼の浮かれっぷりに。
朝丘作品は何冊か読んでいますが、ダントツに好きな作品です。
文句なく、神評価です。
朝丘さんの本は『坂道のソラ』で始めて読んで、その綺麗すぎる世界に惹かれて『氷泥のユキ』を購入しました。
表現がうまいのか、朝丘さんの本は読むと背景がブワッと脳内に再生されるのがすごいです。
しかもその全てがあまりにも美しい。他の方も仰っていますが、透明感があるというか、どこか幻想的な美しさというか……。
また、ユキのキャラが健気で、可愛くて、でも素直になれない、まさに男の子!!って感じでとても良かったです。地の文もわりとフランクですし、セリフのテンポも良く、思わずクスッとなる場面も多々ありました。
氷山はかっこよすぎて読んでいるこっちも心臓ドキドキしっぱなしです。かっこいいのにオヤジだし、弱いところもあるなんて本当にずるいです。しかも後半デレッデレじゃないか!大好きです。
前半の切ない部分も、後半のしんどい部分も、全部ひっくるめてただただ好きなお話でした。
帯にも取り上げられているセリフ「これは、命に限りがあるから知られる絶対の幸福だよ」は、あまりにも名言だと思います。本当に胸にくる。
全部読んだ後に表紙をみたときの幸せな気持ちは、しばらく忘れられそうにありません。
まだ心臓がドキドキしています。
また、yoco先生のイラストが素敵すぎる……!
ユキも氷山も好みドンピシャ、読んでいるときのイメージと寸分違わぬビジュアルで、本当に神様かと。感謝しかないです。
取り留めのないレビューですみません。
正直、恐らく1番ここを見るであろう、未読の方々にとってはなんのこっちゃな乱文だと思います。
でも本当に心温まるお話です。
一読の価値があると思います。非常におススメです。また何度も読み返すと思います。
自分が最期を迎える時を思い、この作品を読みながら私の人生このままでいいのか、考えました。死(メインカップルは最後まで健在です)や同性愛者に対する偏見などネガティブ要素を含んでいるのに、読んだ後こんなに心を前向きにあたたくしてくれるお話があるんだなと物思いに耽っています。シリーズ中このお話が一番良かったです。
シリーズ最新刊『月夕のヨル』を読むにあたって再読しました。
読んでいなくても、個別の作品として問題なく読めます・
でも、シリーズ通して読むと一層世界観に浸れて面白いのは当然ですが、特にこの2作品はまとめて読むことをお勧めしたいです。
氷山がヤリ目的で会った結生に対する態度が酷すぎて、ちょっと読み進めるのに躊躇してしまいました。
初めてなのにやり慣れてると偽るくらいでそんな怒ることかな、と。
よっぽど慣れてるテクニシャンと快感に浸りたかったのに初心者のテクなしでがっかりだったとしても嘘つきを責める氷山の大人気ない態度に怒りを覚えてしまいました。
結生がどんどん氷山のことを好きになってやめなきゃ、好きになっちゃいけないとセーブしててもやめられない苦しさ、いっそこのまま好きのままでいようかと悟っていく過程が切なかったし、二人で会話してても氷山の言葉に傷つけられ心の中で文句言ったりいいかえすところも苦しかったです。
そのうえ氷山の優しさが残酷で、キャラデザイナーとしては求められてても恋愛としては愛してくれないのに、お前に癒されるとか、ダメな食生活に怒ってくれたり、もうこれ以上優しくないでよと思ってしまいました。。
しかし後半のバカップルぶりにはほのぼのです。
あれほど拒んでいた氷山が…
小籠包の掛け合いが可笑しかったです。
「美味しい汁もでるしな」
終盤の結生と氷山と氷山の病身の父親との生活が、幸せそうな時間とそのあとを思うとほのぼのとしつつ切なくていつまでも続くといいのにと思うと読んでいて苦しかったです。
でも、やり残すことはあっても息子の幸せを見て、いい子の結生に会えて気に入って安心できたと思うので、いい最後の看取りができたのではないかと羨ましい一面があリました。
コミコミ特典で、本編で残された懸案事項の、結生の就職と同棲問題の解決編が読めて嬉しかった。