電子限定おまけ付き
レビュー漏れ。
ナッツ之先生のオメガバースは、オリジナル・バース・ルール。
「はぐれΩ」と「変転バース」。
娯楽ものだけど、扱うテーマは意外と深くて寓話的、
読後、色々考えさせられました。
理性と本能、せめぎ合いの葛藤で、この作品の彼方は、理性で押さえようとする。
想像してみると、空腹時に置かれた御馳走をどれだけ我慢できるか、という犬の実験があったけど、飢えを耐え抜くって、過酷な忍耐地獄。
変転バースに関わる二人の行動を責めることは、できないと思う。
等々、大真面目に考えてしまった。ドラマチック。
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[変転バースシリーズ]は、全 4 冊:これからまた増えるかも?
・・出会うとオメガに変転させる「運命の“伴侶”」がテーマ。
①蜜惑オメガは恋を知らない 2016年9月 弓削恒星x宇田川智
--カステリーニ家シリーズ--
⓶愛罪アルファは恋にさまよう 2018年5月 ミケーレx仁科彼方
③巡恋アルファは愛に焦がれる 2019年6月 ルカx椎名櫂人
④アルファ同士の恋はままならない 2020年8月 マッシモx祖父江芳明
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彼方:β
「はぐれΩ」保護施設、アジーレ・ヴィオレの教務官。
姉の婚約者が、なんと運命の相手だった。とても悩むけれど、抗えない。
「蜜惑オメガは恋を知らない」にちょっとだけ彼方は登場している。
・・ということは、一作目から練っていたシリーズの構想。
ミケーレ:α
運命の相手に反応するセンサーが敏感な、イタリアの名門カステリーニ家出身。
ミケーレと彼方は、三作目でも、二人の仲はとても良好で、彼方が3人も子供を産んでいる。
特にマッシモは聡くて、とても可愛い良い子。
四作目では、その可愛いマッシモが成長して、恋人を見つけて攻めている。
ミケーレは「巡恋アルファは愛に焦がれる」に、ルカの相談相手として登場。
今作の粗筋を踏まえないと、三作目、四作目を存分に楽しめないので、
順を追って読むことをお薦め。
前作で一番気になる存在だった彼方が主人公のシリーズ第2作です。
今回もα×転生Ωの組み合わせでとてもドラマチックなのですが、個人的に攻めがあまり好きじゃなかったです。
攻めは、イタリア人のミケーレ。
外国人が運命の相手……って、そこまでワールドワイドに運命って展開するのね;
世界の人口何人よ?出会えたらめちゃめちゃ奇跡じゃない?
そして、前作に引き続き『運命』に翻弄される2人を描いています。
もうね、運命が怖いですよ。
たった数日で燃え上がって、一生忘れられない存在になっちゃうって怖くないですか?
ほとんど知らない相手ですよ。で、知らないまま別れちゃうの。それなのに、こんなに盲目的な執愛を見せられると怖くなっちゃう。
運命の相手が、姉の婚約者だった……と、いうお話。
とても悲劇的で切ない。そして、彼方は賢明だったと思う。
ただ、ミケーレが短絡的過ぎた。
運命=愛、だから姉とは別れるって……
彼方の気持ちは?姉の紗栄子の気持ちは?
子どものマッシモの方が思慮深いってどうなのよ;
そして、紗栄子には同情しかない。
この人悪くないよね?そりゃ、妊娠したと嘘をついたところは悪いかもしれないけど、あとは悪くないと思う。
彼方にキツイのも、それは彼女の矜持だと思うし。
最後は幸せを掴んでくれたみたいでホッとしましたが。
運命に従うことをロマンチックだと思えれば楽しめるけど、振り回されてると考えてしまうと楽しめない。
むしろ、番外編の一充×類CPの方が気になりましたよ。
この続き読みたさに次のシリーズを読もうと思えるほどには。
「蜜惑オメガは恋を知らない」のスピンオフ作品。
前作での受け様・智弘が中学時代に身を寄せていたオメガ収容施設アジール・ヴィオレの教務官が今回の受け様になります。前作で、回想中の智弘が高校へ進学するためアジールを出た後の話になるので、時系列的にはこちらの話のほうが先になります。前作未読でも十分読めるようになっています。が、前作がとても良かったのでぜひ両方読むことをお勧めします。
前作を読んだ時、伴侶であるにもかかわらず離れているこの二人のことがとても気になっていたので、二人のことが読めるのはすごくうれしいです。
すでにたくさんのレビューがついているので、感想だけ。
前作は理性的であることを望み、オメガとして生きることを拒否し続けた受け様の話でしたが、今作も、自分の伴侶が異母姉の婚約者であったことで、生い立ちのこともあり運命だから仕方がないと割り切ることができず、本能を封じ込めアジールに逃げ込んだオメガの話でした。
仁科彼方(受け)は突然変転しオメガになってしまいますが、その伴侶は異母姉・紗栄子の婚約者・ミケーレ(攻め)でした。本能はミケーレを求めますが、姉から婚約者を奪うことは許せず、伴侶と人生を共に歩むのを諦めたその日から抜け殻のように生きてきま
した。
自分の母がもとは愛人であり紗栄子の母から父を奪ったことに罪悪感を感じてい
た彼方。苦労の末、紗栄子が幸せを掴み家族で喜んでいたにもかかわらず、その幸せを奪うのがまたしても自分であることに絶望します。
アルファであるミケーレにとっては伴侶が見つかったことは喜び以外の何物でもなく、婚約解消をすることも仕方がないと最短距離で最適解へと動けるのですが、彼方はもともとはベータであるが故、ヒート時以外では理性が今まで自分たち母子が苦しめた姉の幸せを奪い取ることを許すことができません。
ミケーレ、彼方、紗栄子3人の視点(ちょっとだけミケーレの弟・ルカ視点)で読めるからこそ、それぞれの苦しみがや喜びがわかって、誰が悪いわけでもない、本当にただ運が悪かったとしか言いようがないのがすごく切なかったです。
ただ、一番割をくったのは紗栄子であることは確かで、母は愛人に父を奪われ、異母弟には自分の婚約者を奪われ、運命の残酷さをもろにかぶるこになり、とても気の毒でした。
伴侶と決めたオメガがいるアルファの気持ちが絶対に変わらないのですがら、ベータである紗栄子には理解できず、時がたてば自分ことを見てくれるかもしれないと思いながら、夫と彼方との息子を育てるのはつらいことだったでしょう。彼女も運命に逆らおうとした強い女性でした。
紗栄子がその後満ち足りた生活ができるようになったようなので、それは救いだと思いました。
運命の伴侶という強い結びつきに翻弄されたベータとしてもう一人・脳科学研究助手の玉木。
ベータ同士だったが故に、恋人の危機に気がつかなかったことをずっと悔やんでいる玉木。「至高の絆」という強い結びつきを知っていたがため、自分たちがアルファとオメガでさえあれば彼女を助けられたのにという思いにとらわれ過ぎておかしくなってしまった気の毒な人でした。彼がしたことは許せま
せんが、彼女を救えなかった自分のことを許せるようになるといいと思いました。
そして、ミケーレの異母弟のルカ。今まで出てきたアルファが相手を間違えたことがないことを考えても、彼の気になる人は伴侶なのではないかと思うのですが、うまくいったのかちょっと気になりました。
アルファの生きる意味となっているオメガ。オメガのくれるものはすべて喜びだという深い愛によって、長らく交差することのなかった運命が再び同じ刻をきざむことができるようになってよかったです。
女性視点もあるので苦手というか地雷の人もおられるかもしれませんがこの話に限り彼女視点もあったからこそなりたった話だったと思います。
電子特典SS
今作の特典は前作のSSのその後になります。
本編で彼方が教務官をしていたアジールで、イベント大好きだった料理人の類。伴侶を見つけアジールを出た後、出会う前のヒート時のことを嫉妬した伴侶が素直になれず、すれ違ってばかりいた二人ですが類が妊娠したことに喜び、やっと二人の想いが同じになるまでが前回。
今回は、悪阻に苦しむ類は伴侶に子供を諦めろと言われてしまいます。
激怒した類は智弘たちのところに転がり込むのですが・・・
弱っていく伴侶を見ていられず、子供より伴侶を大事にしたい類の伴侶の言葉足らずなせいで相変わらずすれ違う困った二人の話。前回の妊娠騒ぎで懲りたんじゃないのかと思うのですが、今回も智弘たちに間に入ってもらいお互いの考えを言い合い仲直りするまで。
言葉足らずな伴侶に喧嘩っ早い類、この2人はこうやって喧嘩しながら行きていくんでしょうね。ほかのカップルと違って、オメガが気の強い人なので、こういう相手がちょうど良いのかもしれません。
イラストが金ひかるさんなら問答無用で買うシリーズ。
同じ世界観で、違うイラストレーターさんの前作があったようだけど、前作を未読でも大丈夫です。
オメガバースは作者さん毎に、それぞれ色々な世界観の元に物語が展開するわけですが、まあ、その世界観が、必ずしも好みに合うかどうかは読んでみないとわからないわけで、、、
運命の番に出会ってしまったために、ベータからオメガ変成して発情して妊娠、そして出産した子供はそのまま取り上げられて(里子に出されて)、余生のようにひっそりとオメガ専用の施設で暮らす主人公。
ある意味、オメガバースの「運命のつがい」っていう設定を徹底して活かした、オメガバースだからこそ成立する物語。
今時、超お金持ちの外国の貴族の攻めとか、オメガバ設定でもないとなかなか登場させにくいし、そういった意味でも、オメガバースならではなお話。
でもなぁ、出産はねぇ、オメガバースだから出産アリなのそれはそれでいいとしても、個人的な好みとしては、割と普段からBLに子供が登場する話は微妙に感じることが多いのよ。
とりあえず、大きな犬と小さな犬のイラストにオマケして萌で。
電子書籍で読了。挿絵なし。あとがきあり。電子限定のおまけ『類的ラプソディ』が付いていました。
『蜜惑オメガは恋を知らない』は読んでいて「どうしてこっちはレビューの数も多いのにあまり評価が上がらないんだろう?』と不思議に思っていたのですが、読んで納得。姉の婚約者が『伴侶』だったのですね。おまけに、姉の母が存命中に主人公が腹違いの弟として生まれているという、結構、ガッツリとした『不倫もの』でした。攻め受けの二人だけではなく、姉、母の心情も丁寧に描写されていますので、苦手な方は避けた方が良いと思われます。
『蜜惑~』もそうだったのですけれど、このシリーズの攻め様方はとにかく『待つ』ことに長けていますねぇ。相手の心情を思い図って待っているのでしょうけれど、むしろそれが意気地のなさから来ているような気もします。
また、主人公の彼方は姉を二度も(一度目は姉の母が亡くなったことで、母が父の籍に入った時ですね)傷つけることに強い罪悪感を覚えて運命の相手から逃げ続ける訳ですが、姉の婚約者で攻めのミケ―レは、彼方と比べると姉に対する罪悪感が薄い様に感じるのも、このお話に乗り切れない姐さま方が多い理由かもしれません。
こういう場所で書くのも何ですが、個人的には「恋って一人で勝手にするものなんじゃないかなぁ」と思っています。一人と一人がたまたまお互いを思い合っていたという奇跡があってこその両思いなので、片方がどんなに思っていても、相手がそれに応える気がなければそれでおしまい。倫理感とかとは全くもって別物で理屈じゃないですから、とても理不尽で、残酷なものだと思うのです。
だから巡り合わせが悪いと、恋っていうものは現実を激しくぶっ壊します。
そういう部分を、実に丁寧に、ある意味『ねちっこく』書いたお話なんじゃないかと。
なのである意味、とても現実的です。
ナツ之さんの理性を感じましたです。
オメガバースなので「二人は末永く幸せに暮らしました」という『お約束』で終わっていますが、中身はなかなか毒(って言うほどでもないかもしれませんが)があるお話。
甘々を求める気分の時に読むと腹が立つかもしれません。
でも、頭が冴えている時には、色々考えられて興味深い一冊だと思います。