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『キャッスルマンゴー』の十亀の高校生時代。
金城一紀さんの『映画篇』など、映画を主題にしたり、モチーフにした小説は数多くありますが。
その中でもこの作品から感じるのは。
木原音瀬さんの
「映画への愛情。」
「演ずるもの、制作する者たちへの限りない尊敬と興味と情熱」です。
『水のナイフ』『セカンドセレナーデ』など映画をモチーフにしたものはもちろん、俳優さんが出てくる作品は他にもいくつもあります。
かなり昔に『水の中のナイフ』というロマン ポランスキーの映画があるのを知り、「木原さんはもしかしてここからこのタイトルはとられたのかしら?」と考えて、同タイトルのレンタルは見つけることができなかったので、同じ監督の次の作品の『反撥』という作品を見ました。
まさに『セカンドセレナーデ』の中に出てくる自主製作映画の空気感にかなり近いものを感じました。ものすごい歪みと閉塞感と絶望感。
もちろん、これは私の独りよがりの妄想なのですが。
それでもその後も木原さんの小説やコメントの端々から映画や演ずるものがお好きなのではないかなと。それもきっとちょっと普通でないものが(笑)
ずっとそう思っていて。もう一つなるほどなあ…と思っていることがあります。
それは木原音瀬という作家さんはご自分の作品がBLCD化される際、なるべくメインに同じ声優さんは使わない。脇役で使うことはあっても同じ人を主役に起用しない。
と、いうことです。
たとえば(すいません、以下敬称略です)
『WEED』 櫻井孝宏×千葉進歩
『don't worry mama 』 檜山修之×山口勝平
『こどもの瞳』 成田剣×神谷浩史
『牛泥棒』 谷山紀章×岸尾だいすけ
『COLD SLEEP』『COLD LIGHT』『COLD FEVER』 羽多野渉×野島裕史
『美しいこと』『愛しいこと』 杉田智和×鈴木達央
『now here』 鳥海浩輔×飛田展男
『薔薇色の人生』 吉野裕行×前野智昭
『吸血鬼と愉快な仲間たち』 平川大輔×緑川光
『キャッスルマンゴー』 石川英郎×近藤隆
『セカンドセレナーデ』 井上剛×立花慎之介
『パラスティック ソウル』 小野友樹×武内健
(unit vanila名義のものは担当が明記されていないので除外させて頂きました)
一人としてだぶっていないのです。同じ声優さんを何度も自分の作品に指名することが比較的多いBLCD界において、こうもバラバラなのは。
意図して木原さんが選んでおられるのではないかなと思うのです。
その真意はもちろん各々のキャラがお互いニアミスする可能性を考えてのこともあるかと思うのですが。
木原さんが「なるべくたくさんの声優さんの演技を聴きたい。いろんな声優さんにいろんなキャラクターを演じて欲しい。」そう思っていらっしゃるのではないかなと一人で想像しているのです。
それはまさに木原さんが声優さんの演技の可能性を無限に信じているから。
そして制作する人たちが素晴らしい作品にしてくれると信じてるから。
こういう点が木原さんが演ずること、作品を制作することへの絶え間ない情熱と興味と愛情をお持ちであることの証しなのではないかと私は勝手に推測しているわけです。
表題作の『リバーズエンド』を付録で初めて読んだとき。
初期のころの木原作品を思い出しました。
しかしノベルスを読んだとき。これはやはり序章なのだと思いました。
『キャッスルマンゴー』へとつづく道の。
そして『god bless you』 読んだとき。
「ああ、生きるって素晴らしいことだなあ。映画が大好きだなあ。いっぱい映画見たいなあ。」そう思いました。できれば十亀さんの作った映画がみたいよ。
でも見れないから。映画館に行こう。この作品を読んでいて思い出したいくつかの作品をレンタルしてこよう…そう思いました。
「俳優にもっとも必要な才能は待つことができるということだ」というような文章を何処かで読んだのをこの小説を読んでいて思い出しました。
先生、今度は映画が出来上がるお話、読ませてくださいね!
タイトルで思い出したブラピの『リバーランズスルーイット』や大林監督の尾道三部作を見ながら待ってますからね!(笑)
本棚を整理していたら何となく目についたので再読してみました。ちょっとだけ読むつもりがすっかり引き込まれ、本棚が全然整理できなかった…(爆)。木原さんは痛い作品が多いということであまり読んでいないのです。この作品も作家買いしてるムクさんが挿絵を描かれていたから買った作品でした。しかしすごい。すごい神作品です。
内容はすでに書いてくださっているので感想を。
前半は十亀の過去編「リバーズエンド」。
貧しくてひもじい。けれど家族の愛があって、それだけが唯一の支えだった彼にとって、あの悲劇はどれだけの負荷を十亀に与えたのでしょう。
家族以外何も持たない彼が初めて安らぎを得た友達の二宮。親友であり、そして初恋の相手であり、その二宮をああいう形で自分自身の手で手放してしまった彼の孤独と切なさに泣いた。
この「リバーズエンド」はCab創刊号の付録だったということも驚き。実ははまりにはまってこの付録の小冊子も中古でゲットしたのだけれど、付録の範囲を超えてます。
そして現在の十亀と万の話の「god bless you」
ムクさんがコミカライズした「キャッスルマンゴー」は「リバーズエンド」と「god bless you」の間の話になります。
十亀視点で書かれてますが、これがすごく良かった。十亀も万も、自分の気持ちや感情をはっきりと表現するタイプではないので、万視点だった「キャッスルマンゴー」と対になっていてよかった。
十亀の仕事(ある映画のメイキングビデオの撮影)の話がメインになっていて、万は全く出てこない。けれど、仕事の合間に十亀が思い出すのは万のことで。諦めることを知っている男の不器用さがすごく上手に表現されていて、すれ違う二人にやきもきしてしまった。
自分の手に持てないものは諦めるしかないと生きてきた十亀。
人に頼ることができず、すべてを自分で抱え込んでしまう万。
不器用で、でも何事においても誠実な二人の男たちがカッコよくて仕方なかった。そんな二人が、唯一自分をさらけ出せる相手に巡り合えて、本当に良かった。
再読して、この二人のその後が載っているという「HOLLY MIX」が読みたくて仕方ない。これから密林さんでポチってこよう。
そして本が増え、やっぱり本棚は整理できないってことなんですね…
私はリバーズエンド本編+プロローグ→キャッスルマンゴー2巻→小椋ムクさんのペーパー→god bless you→木原音瀬さんのペーパーという順番で読みました。
やはり、漫画の2巻より先にリバーズエンドを読んで良かったです。十亀の過去を知った上で2巻を読むのと、知らないで読むのとでは十亀の印象が違うのではないでしょうか。正直、私も小説を読んでいなければ何故あんなにも十亀は諦めが良すぎるのか不思議になるかと思います。そして急に万を避けだす十亀にモヤモヤしていたに違いない!1巻の甘さは何処へやら、という感じですからね。
でも小説を読んで十亀の過去、心の傷を知っているとその行動の訳が分かるので、2巻の展開をより受け入れやすくなる気がします。
…と、このままだと漫画の感想になってしまうので続きはキャッスルマンゴー2巻の方で語ります。
リバーズエンド本編は十亀が高校生の頃のお話です。読む前から覚悟はしていたのですが、十亀の過去は想像以上に壮絶で後半は涙が止まりませんでした。
特に後半は立て続けにショックを受け続け、途中本気で落ち込んでしまいました。
でも、全く救いがないという訳ではありません。二宮との交流には心が温まりました。特に、十亀の姉に二宮が髪をカットしてもらうシーンはすごく好き。あのイラストをみると涙が出そうになる。
そして、大人になってからの再会のシーンも良かったです。二宮は素敵な男に成長していました。あと、元担任もすごく良い先生で嬉しかった。
プロローグを読んだ後は妙に胸が高鳴って、このまますぐに漫画も読まなければいけない!と思い、とりあえず泣いた後のティッシュの残骸をまとめて捨てて、すぐさま漫画の2巻を読み出しました。
god bless youはキャッスルマンゴー2巻の後の二人です。というか十亀のお仕事メインのお話。
万と旅行に行く約束をしていたのに、映画のメイキングの仕事を引き受けた十亀。それが原因で、ちょっとした口論になり万を怒らせてしまいます。結局、そのまま仕事へ行きますが、万への毎日のメールは欠かしません。メールがマメなのは過去の教訓からのようです。ただ、返信が来ないのにも関わらず送り続けるのは、万と別れたくないという気持ちがあるから。漫画の2巻から完全に万→十亀ばかりだったので、十亀→万な所を見ると嬉しくなります。
ただ、全体的にこのお話はラブ度は低めなのでラブラブな二人を見たい!という方は少しがっかりかも。でも、十亀のことは益々好きになってしまうはずです。仕事の出来る男な十亀が素敵過ぎます。あとお話としてもすごく面白いので、BL要素抜きにしても単純に楽しめるかと思います。でも、エッチシーンもちゃんとあるのでご安心を。序盤と後半ですね。求める十亀に萌えますな~。
あと、後半の方にある十亀の「不運だったが不幸ではなかった」という独白部分。これを読んだ時、妙に納得して気持ちがスッとしました。
長々と語ってしまい申し訳ございません。毎回、思い入れのある作品ほど感想を上手くまとめられない(苦笑)小椋さんのイラストも素敵でした。リバーズエンドの十亀がスポーツバックを逆さにしているイラストが目に焼き付いています。
『キャッスルマンゴー』がコミック原作として掲載されるにあたり、導入としてCabの付録に付いた十亀の過去編『リバーズエンド』が、コミックのその後の話を入れて単行本になりました。
キャッスルマンゴー発売の当初から是非読んで!と叫んでおりましたが、この本が出来上がったことで、キャスマンとリバーズの融合と一体となった完全体としての作品の姿を見せているのではないでしょうか?
キャスマン2のレビューにも書きましたが、この本はBL臭は非常に薄いです。
どちらかというと、表題通りの十亀俊司という男の過去と未来を綴ることで見せる、彼の生き方の物語です。
彼の生まれ育った環境と過去、それがゆえに人に執着できないこだわりとトラウマ。
彼の人というものがとてもよくわかり、その上で、キャスマンでの彼の態度に十分な納得と裏付けを与えているのです。
ですから”萌え”とか”BLとして”とか持ち出しちゃうと、全然範疇外の作品だと思います。
しかし、木原作品はそこから逸脱していても当然というか、それが持ち味ですし、コミックと合わせてと、考えればこれはこれでとても良い作品なのです。
むしろ、そういうこだわりとかカテゴライズを捨てて読んで欲しいです。
特に『リバーズエンド』は過去編として受け入れることができても、『Gby』は仕事の描写が多く、読者に戸惑いを与えるかもしれないということだけ言及しておいてもいいでしょうか?
【リバーズエンド】
十亀の壮絶な過去の物語でした。
子供の頃、家族でホームレスだったという過去。
酒好きの父親が身体を壊して入院して、中卒の21歳の姉がひとりでなにもかも背負って極貧生活を送っている。
昔を思えば、ひもじくても屋根があり雨露をしのげる場所で生活できている、家族が一緒にいられることの幸せはあると考えている十亀。
自分が高校を辞めて働きさえすれば、少しは姉の助けになるのに、自分が散々中卒の辛さを味わったから弟にはそんな思いをさせたくないと、その意思を汲んで、悶々としたものを抱えながら日常生活を送っている。
そんな人を寄せ付けない日々を送っている彼と偶然公園で寝ているところに遭遇した二宮と、仲がよくなっていく。
二宮という存在に、ひと時極貧の暮らしにも明るさが垣間見えていた矢先、父親の仮退院を迎えに行ったときの自動車事故による、父・姉・弟の死。
家族で昔に一緒に見たという映画の題名「リバーズエンド」、それと家族の遺骨の散骨、
海で皆一緒になれる。。。
そんな切ない、とても切なくて苦しくてやりきれない、十亀の高校時代は、愛するものを失う恐怖の元となる話でもありました。
【God bless you】
”神の祝福あれ”クリスチャンのやり取りの締めの言葉だったり、色々なアーチストの曲の題名にもなっている、一文。
それとも、くしゃみをしたときの魔除けの言葉としての意味だろうか?
しかし、やはり”神の祝福あれ”なんだよな~とラストに思える1本。
この話は、コミックその後の話になります。
コミックの中でも、夏休みに旅行に行くという話が流れて万ががっかりするという話がありましたが、今回も、恋人となった二人だけど、十亀の仕事の都合でそれが流れてしまうことに端を発します。
仲違いしたまま、長期のロケの仕事に入り尾道に行く十亀。
メールを送るけど返事はない、万からも連絡がない、その中で撮影にトラブルや人間関係のトラブルが発生して、、、というかなり十亀の仕事の描写で場面が進んでいきます。
そこの中で、見えたのは、十亀との対比するべき人間です。
十亀と正反対の彼が持っていないものを、うまく使えば宝物になる、それに気がつかずあぐらをかく人物。
それが十亀に何の?というところだろうが、十亀の生き方の物語とすれば、仕事に執着はしていないが、映像の仕事を心から愛していて、それが亡くなった家族への愛になっているんだという奥底が見えるような気がするのです。
だからこそ、蛋白だけど彼は同じ映像を愛する人間からは好かれるのです。
彼が家族を失って東京へ出るときに遺骨を入れて持ってきたスポーツバッグ。
ボロボロになってもまだ持っていて、それを壊されて普段温和な姿な彼が激怒します。
ここに彼の想いの底が見えました。
ただ、恋愛面の1対1になると、いくら恋人になったからといってもやはり十亀は素直になれたわけではなく、仕事に忙殺されながらも気にはなっていても、自分からは動けない。
むしろ、万のほうが素直でした。
十亀を理解してきているということですね。
コミックのときも、万に甘えるようにして寝る十亀の姿がありましたが、今回も・・・
大人でありながら、その時は子供のような。
万と十亀はどことなく似ています。
互いに与え与えられる関係に、年齢差は関係ないように見えました。
キャッスルマンゴーが万の視点で描かれていたのと対称的にこちらは過去も未来も十亀の視点で書かれていました。
リバーズエンドは小冊子で既読でした。
また、予告編のショートコミックが収録されていて嬉しかったです♪
書き下ろしの「god bless you」コミックのラストシーンから始まっています。
結ばれてからも相変わらずのすれ違いぶりです。
十亀の仕事は不定期で万との約束を反故にすることも度々あります。
けれど、すれ違う根本はそんなことではありませんでした。
知らず知らずのうちに人との距離を置く十亀・・・彼は、失うことを怖れ、失って自分が傷つかないように常に予防線をはっています。
それは、仕事でも、恋人の万に対しても同じでした。
映画の撮影ロケの中で話は進んでいきます。
万は序盤と終盤にしか出てこないので、この本は、万ファンには物足りないかも知れません。
最後、十亀が自分でも意識の奥に押し込めていた臆病な部分をこじ開けてその中に入ったのは万でした。
十亀の涙とそれを包む万の腕・・・本当に良かった。
読み終わってとても幸せです。
こちらには小椋さんのショートコミックのペーパーがついていました。
前髪をあげて、ちょっぴり大人っぽい万。
自分を撮影する十亀に近づき笑ってビデオカメラを取り上げるあたり、もしかしたら十亀は尻に敷かれているのかも知れないな~と(笑)