イラスト入り
雑誌連載を読んでいたので、書き下ろし以前の部分は知っていました。
救いのない結末に、「またやっちゃったねー、木原さん…」と苦笑いだったのですが。
書き下ろしにやられました!
なるほど確かに精神的に幼児としか思えない秋沢を変えるのは大変だろう、と後書きを見て思いましたが、そうですよね、誰かの言葉で変われるのなら、とっくに性格矯正されていて当然の秋沢です。
だから再会までの三年という時間がまず必要だった。三年経っても忘れられない、本当に愛していたのだ、今でも愛しているのだ、なのに二度と会えない。「愛してる人が死んだことある?」自分を可哀想と言い切ってしまう、この痛さ加減が悶えそうになるほどどんぴしゃで、うまいなあ!と思うしかなかったです。
その想いの積み重ねがないと、NYでの行動に説明がつきません。サスガの説得力です。
そして報われない三年があったからこそ、嫌われたくない、の一心での行動に頷かざるを得ない。なにしろコピー用紙に書かれた殴り書き一枚に、三年間を捧げたように生きてきたのだから。
独白に自分中心の考え方が変わっていない、と言う描写がこれでもかと続きます。
「俺はここまで考えている。正彦のことを考えている」
自己弁護でも正当化でもなく、ただ普通にそう考えてしまう幼稚さ。そう考えている限り、楠田の心中など思い量れるわけがないのに、そこへ思い至らないのが痛い。バカすぎて哀れです。
ここまで「痛い」のは「甘い生活」以来かな、などと思ってしまうほど、秋沢が痛すぎる。
でもある意味、無垢で一途ではあるのですよね。
(ストーカーを擁護するわけではありませんが)恋愛というものについては初心者で、作法も何も無い。自分を押しつけるしか能の無かったバカが、幼稚園児がまわりを見ながら手探りで見つけていくように、少しずつではあるが成長していく様が、あり得ないことなのにリアルに描かれていて、すうっと入れました。
常識人であるはずの楠田が、秋沢に怯えながらも嫌えない。さりげなく描かれる楠田の行動の裏は分かりやすい。そして最後に振り絞った勇気。
指先一点、触れるだけでいっぱいいっぱいの楠田。それを見て秋沢がようやく人を愛する資格を得た。
足にキスするのは罪人の仕草です。無自覚な懺悔に楠田はほだされていくのでしょう。
この表現に痺れました。
ダダ漏れになりましたが、とにかくすごい作品です。
久し振りに眠りを忘れて読んでしまった。次の日の仕事がきつかったです。
木原さん、大好きなんです…。
絶版になってる作品も読んでますが、私はこのお話が一番好きかも知れません。
木原さんと言えば痛い、例に漏れずこれも痛くて痛くて、一番好きでも読み返すのに覚悟が要ります。
胸糞悪くて、攻めがクズ過ぎて、救いがないんです。その言葉全てが褒め言葉になる。そんな不思議な物語です。
ちょうどinTOKYOが出てから一月後にinNEWYORKが発売になったんですが、その時の待ち遠しさを今も思い出せます。
二人がくっついて、幸せな終わり方をしましたが、私はNEWYORKでどんなどんでん返しが来るのか、ありとあらゆる想像をしてワクワクしてました。
しかしそんなの足元にも及ばない、自分の想像力の拙さに愕然としました。
クズなんです。救いのないクズ、赤ちゃん。逃げ出した楠田に同情するんですが、最後はもうクズにも同情してました。欲しいものが買ってもらえず、泣きじゃくる子供をスーパーで見かけた気分。そんなに泣いてるんだから、買ってあげたら?って感じ。
結局楠田はそれでも嫌いになれなくて、気持ちと頭と身体がバラバラで苦しむ未来なんだろうけど。
私は表紙がとても好きでした。
秋沢がたくさんの手紙を書いて、楠田が指輪を外そうとしているのに躊躇っている(個人の解釈)
なんかもう、これが全てな気がして、素晴らしいなと思いました。泣ける…。
人間そう簡単に変われないし、そんな負の部分を凌駕する惹かれる何かがあって、ままならないなぁ。と思う作品でした。語彙力ください。゜(´⊃ω⊂`)゜。
木原作品は色々読みましたがこの作品が一番好きです。というか今まで読んだBL作品で一番大好きな、私にとって大切な作品です。
秋沢は楠田に浮気、暴力、レイプと、あまりにも酷いことをしてしまい、楠田も秋沢に酷いトラウマを植え付けられる。
もう一緒にいるのは無理、秋沢とわかり合うことも共に生きることも絶対に無理。楠田はそれを充分なくらい思い知らされたはずなのに…。
正光の前で泣きわめく秋沢の声を聞いた楠田は、なぜかボロボロと涙を流してしまうんですよね…。そして「死にたい」という秋沢の言葉に対する「海斗が死んだらどうしよう」。
私はこの台詞が苦しくて辛くて愛おしくて仕方がありませんでした。
あんなに酷いことをされたのに、なんで楠田は秋沢のことを憎まないのか、なんで死んでしまえと思わないのか。
自分が秋沢の死ぬ原因になったら後味が悪い、というのもあると思いますが、楠田はどんなに秋沢が怖くても、心の深い部分が秋沢にどうしようもなく惹かれてしまっていたんだと思います。悲しいくらいに…。
楠田は秋沢の才能に惹かれて、そんな才能溢れる秋沢が実はすごく子供っぽいところが可愛く思えて、そして自分に対して一途なところが嬉しくて…単純に、楠田は秋沢のことが本当に好きだったんだと思います。
ただ、あまりにも楠田が人の気持ちを理解できなさすぎて、このまま一緒にいたらずっと傷つくから、離れることを選んだのに…。
物語の終盤、秋沢は楠田の気持ちをやっと理解し始めて、ようやく諦めようとします。
しかし、楠田に手紙を送るのを辞めろと言われて、それを秋沢は拒否する。
自分のことを忘れろと言う楠田に「忘れたくない」と言う秋沢。
ここで秋沢が楠田のことを忘れようとして、手紙を送るのも辞めたら、二人の関係はキレイに終われたんだと思います。
しかし秋沢は最後の最後まで楠田に対して一途であり続ける。迷惑をかけない形なら、楠田を想い続けたいと執着する。
楠田が秋沢の指に勇気を出して触れたのは、そんな秋沢の気持ちが捨てられなかったからだと思います。あんなに酷いことをされたのに、あんなに自己中心な男なのに、あんなに傷付けられたのに…それでもやり直したいと思ってしまっている。
楠田もまた、秋沢に対して一途すぎるなあと思って泣けてきます…。あんなに酷いことをされたのに、まだ好きだなんて…。
このあたりの楠田の気持ちはCOLD THE FINALを読むとよりよくわかります…泣けます…。
お互いに無いものを持ちあっていて、だからこそ惹かれあって、だからこそ理解しえなくて、だからこそ酷く傷付きあって…そんな二人が最後の最後で一歩関係を前進させられる。そんな苦しくて切なくて愛おしい二人の話でした。
前作の透、藤島さん、もちょいちょい出て来ていい感じです!透も結構やばい奴だったのに、楠田のよき理解者になってて感慨深いですね…。あと谷口一瞬出て来てて嬉しい。
あとごく普通のリーマンな楠田が、秋沢のセックスに溺れて滅茶苦茶エッロくなるのは興奮せざるを得ないかったです…。in TOKYOの後半〜in NEWYORK前半の楠田えっちすぎてちょっともう…秋沢が惚れるのもわかる…(笑)
人を選ぶ作品かもしれませんが、私にとってはほんとうに大好きな、最高な作品です。出会えて本当に良かったです。
これ、木原作品の中で一番好きです。趣味悪いかもしれないけど。
木原作品って一貫してどうしようもない人が救済される話を書いている人だと思いますが、秋沢はその中でも一、二を争うクズ野郎(現時点)。登場人物のクズ度合いは年々更新されて行っているのでそのうち「あいつはまだ甘かった」と思う日も来るのかもしれませんが、まぁクズです。
本当にどうしようもない奴なのですが、ただ木原作品を読んでいると、周りから見て、まともな人から見てどんなにダメな人でも人間なんだよね、ということを考えずにはいられません。フィクションですから本当に秋沢がいるわけではないので、秋沢が救われなくても別に問題はないのですよ。わざわざそんな作品書かなくても、と思うのもわかる。
だけど、現実に秋沢と同じくらい不器用に生きている人がいたとして、それを馬鹿だからしょうがない、で済ませてしまうことに居心地の悪さを感じてしまう私としては、そういう人にも救いがあってほしいと思ってしまうのです。そういうどうしようもない人を切り捨てられない情の厄介さと、救ってあげられなかった何かに対する後悔のようなものも秋沢と一緒に救済してくれるからこそ読みたくなってしまうのかなと思います。
秋沢ほどでなくても誰しもやらかした記憶やどうしようもない部分はあるわけで、そういった部分を諭しながらも救い上げてくれるのです。そういう後ろめたさやコンプレックスと無縁の人には響かないかもしれないし、ただエンタメとしてのBLを求めているなら今一つだと思います。
なんか、説法みたいな構造なんですよね。こういうことしたらダメだよ、でも反省したら救いは必ずあるんだよ、っていう。こう書いてしまうと面白くなさそうに思えるかもしれないけど、登場人物のことを愛をもってとことん突き詰めて考えていくとこうならざるを得ないよね、と思います。突き詰めすぎてBLの枠をはみ出し気味なのですが、そこが面白い。読みごたえがあります。
また、シーンの切り取り方が映画的で美しかったです。
特にラストシーン、秋沢がひざまずくところで終わっています。正直、修復が終わるところまで読みたかったですが作品としてとても印象的なシーンなのでやむなし。同人誌でハッピーエンドまで書いてくれているのでどうしても気になる方はそちらがおすすめです。
非常識なろくでなし、恋人を見知らぬ男2人に強姦させるとか鬼畜通り越して異常さは
これまでにないくらい痛さでした。ただ、秋沢を単なる変態ストーカーだとは思えなくて思春期に母親に拒絶された一件から歪みは大きく・・・・だからと言って唯々諾々と甘受する思いにもなれないけれど、可哀相な子供なんだと憐憫がわいてきました。ゆりの菜櫻「最強凶の男」シリーズも非常識でストーカー束縛男だけどコメディーとして楽しめる、非常識な攻めの非道さを描いた作品でも、木原作品だとサスペンスホラー風味になり天と地くらい違う。けども根幹は受けへの思いが攻めの行動の殆どが由来する。だから狂気へ走らせた秋沢の心の欠落と母親から得られなかった無償の愛を求める乱暴で純粋過ぎる思いが怖くもあり相反する愛おしさも僅かながらわいてしまう。目隠しされ見知らぬ男2人に強姦され二輪挿しというかなりハードなプレイを強要され、それをさせたのが恋人である秋沢であるんだから心が壊れてしまい不能になっても当然であるから楠田のダメージを思うと別れる事が最良なのかも知れないが、それでも秋沢の一途な思いに絆されプレゼントの帽子を大事にし、手紙を捨てずにいたあたり楠田も相当に重症なんだと思う。秋沢が楠田のスニーカーに口づける愛を請うシーンは切なくてホロリきました。秋沢と楠田はお互いじゃないとダメなんだと強く思うと同時に、人に因れば二人の未来が見えた終わりで良かったと思う人とミザリーみたいにストーカー包囲網にされたホラーサスペンスに映るんだろうと感じました。最近の作品で久々にグッときました、胸がざわつく程に読み応えありました。あとがきに書いてたましたが二人の未来は明るい感じなのが微妙です。どうせなら秋沢が改心して楠田と上手くいくところまで商業誌で読んでみたいです。