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表題作鬼天狗の嫁奪り奇譚

ミタテ,イヅヌ島内の神社の神主で鬼天狗
トヨアキ,18歳,嫁候補として島に連れて来られた高校生

同時収録作品鬼天狗の嫁奪り奇譚

シンタ,イヅヌ島内の神社の神主で鬼天狗・ヤスチカの伴侶
ヤスチカ,28歳,シンタの嫁・トヨアキの兄

同時収録作品鬼天狗の嫁奪り奇譚

セツ,山寺を守護するサツノの鬼天狗
スイ,17歳,イヅヌ島内の神社の神主で鬼天狗・高校生

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

十歳違いの兄ヤスチカと二人暮らしのトヨアキ。ある日、夜釣りにでかけ、不思議な島に攫われてしまった。
そこは鬼天狗たちの棲む神聖な地。なんと兄は既に一人の鬼天狗の嫁となっていて、お腹には子どもまでいるという。
大好きな兄に騙され、いつの間にか嫁候補に…。無愛想でちょっと怖いミタテ、美人でドSのスイ。
どちらかの嫁となり孕むまで島から出られないと言われ、ミタテの手つきとなることを選んだトヨアキだったが…。

作品情報

作品名
鬼天狗の嫁奪り奇譚
著者
鳥舟あや 
イラスト
兼守美行 
媒体
小説
出版社
三交社
レーベル
ラルーナ文庫
発売日
ISBN
9784879199805
3.1

(20)

(6)

萌々

(6)

(0)

中立

(0)

趣味じゃない

(8)

レビュー数
4
得点
54
評価数
20
平均
3.1 / 5
神率
30%

レビュー投稿数4

18歳とは思えない幼さ

 最初の誘拐のシーンで、少年時代かと思ったがすぐに年齢が判明。弟は8歳とかかなあって思ってたら、まさかの18歳!
 誘拐されてテンパってるから幼く見えたのかな。と思ったけど、その後の会話でもだいぶ頭弱そうな喋り方……。
 スイの言葉を借りると、受けのトヨの会話が頭悪い。18歳とは思えん……。
 受けの知能の低さについていけませんでした。ずっと山奥でオオカミに育てられて来たかのような性格。

 できるなら、兄の方メインがよかったな。設定も好みだったんですけどね。

1

一般人には見えない鬼天狗の島

unlimited
絵師買いしたけど、電子版の挿絵は少なかった。

喧嘩ばかりする両親。それが嫌で海外に行ったり、兄のヤスチカは、自分の自由を優先していた。
両親が離婚した後は10才年下の弟が心配で、ずっと一緒に暮らす。

少子化と嫁不足が問題になっている鬼天狗の嫁は、男でもOK.
天狗島に攫われた兄は 鬼天狗のシンタと番になったけど トヨアキが心配でならない。
兄はシンタの子を妊娠、
兄は弟も鬼天狗の島に連れてくることを思いつき、決行する。

勉強も仕事もよくできるカッコイイ兄と違って、
弟のトヨアキは高校生にしては大柄、頭が良くない。でも性格が良くて、可愛げがある。

鬼天狗の島に連れてきたのに、弟の番う相手が決まらない。
トヨアキが帰りたがるので、牢に入れられ、ミタテが保護にいくまで寒くて震えていた。
スイに殺されかけて、ミタテに助けられるトヨアキ。
ミタテは、顔は強面だけど優しい天狗。

この物語には、何組かの鬼天狗のカップルについての話が組まれていて、
ピントボケのトヨアキが面白かったり、健気さに泣けたり。
でも、なんというか・・だれがこの物語の軸なのか、つかみどころ無い。
・・と文句を書いたけど、このとりとめなさが気に入った
残念なのは、トヨアキ兄弟の子供が誕生するまで行かず、完了していること。

1

決して優しくはないけれど

「奇譚」とは、珍しい伝承や不思議な話のことを指す言葉だそうで。
まさにその言葉がぴったりな不思議なお話でした。
人外・妖ものかと思えば、確かにそうなのです。
天狗と言っても、鼻が長くて赤いあれではありません。
どちらかというと神様的な存在かも。
天狗たちの暮らしぶりが人間臭かったり、鬼天狗側・人間側両方の生まれ育った環境だったりと、穏やかなものから、家族間の複雑なものまで掘り下げて描かれていて良い意味で驚き。
好みは分かれそうですが、個人的にはとても気になるお話でした。

10歳年の離れた実兄に連れられ、一緒に夜釣りに行ったはずのトヨアキ。
気が付くとそこは、地図に載っていない鬼天狗と呼ばれる者たちが住まう島だった。
ひょうたんのような形をした、ウツノとサツノという2つの町からなるイヅヌ島。
男ばかりの鬼天狗一族の嫁取り・種を存続させるための少子化問題に進んで巻き込まれた兄と、そんな兄に巻き込まれた弟のお話。
男で妊娠出来るのか?なんて疑問がわくかと思いますが、出来ます。
というよりも、確実に種を残すぞという感じ。100%孕むらしいです。

ひょんな事から既に恋仲にあった鬼天狗の子を孕んでいた兄のヤスチカが、自分が居なくなれば一緒に暮らしていた弟が孤立無援になってしまうだろうと、トヨアキを騙して鬼天狗の島へと連れて来てしまいます。
上記の通り、鬼天狗は子を産む相手を常に探しているので、外から攫ってきた人間を嫁にして孕ませているんです。
連れて来られた嫁は、伴侶が決まるまで牢のような場所で監禁され、決まれば孕ませられ、孕めば元の世界へ戻ることは出来ない…と、なかなかの過酷さかつえげつないもの。
兄にとってはこの上ない竜宮城。弟にとっては鬼ヶ島とは言い得て妙だなと。

鬼天狗のミタテとスイのどちらかの嫁にと弟を差し出す兄に得体の知れないものを感じてゾッとしつつ、18歳のわりにどこかぽやぽやとした話し方で緊張感や危機感のないトヨアキに疑問符が浮かびます。
トヨアキの口調とおつむは…うーん、これは苦手な方が多いかもしれません。
小学生の低学年くらいだと思ってください。結構幼稚です。
ところが、合間に語られる幼い頃の家庭環境を見ると、この幼い口調とへらへらと笑う彼の姿は、辛い環境の中で培った周囲を和ませるための処世術なのかな、とも思います。
自分よりも周囲ばかりを気にしてしまう、悲しいほどに優しい子なんですよね。
この口調だからこそ効いてくるものがあったりするんです。

牢から出してもらうため、決して愛想が良いとは言えないミタテに抱いてもらうトヨアキ。
その後、ミタテの家で暮らすことになります。
攻めのミタテがですね、なんだかんだせっせと世話を焼く面倒見が良いタイプなので、痛々しさや過酷さのある世界の中でも2人の間に流れる空気は終始穏やかなんです。
情がわいたと過保護に甘やかすミタテと、嫁も子供もいらないと初めに言っていたミタテに特別な感情を抱いていくトヨアキの関係性の変化が見どころでしょうか。
家庭環境に寂しいものがあったトヨアキを理解し、大事に大事に接するミタテがとても良かったなあ。
細かな仕草や言動から、きちんとトヨアキがどんな子なのかを見抜いているのがすごい。
顔を見合わせての想いが通じ合うシーンが本当に良くって。
トラウマのようになっていた「好き同士は喧嘩をして別れてしまう」というものが、ミタテの真っ直ぐな言葉のひとつひとつによって少しずつ消化されていくようで好きでした。
そして、絡みの濃厚さは鬼天狗ならではなのか、鳥舟先生の作風ならではなのか。
ラストの人ならざる天狗鬼神としての本性が出ている絡みはさらに濃厚で、結腸や直接的なワードがたくさん。
途中から余裕がなくなったミタテが本性丸出しな感じの口調に変化するので、ここも好みが分かれそう。

と、2人の関係を描きながら、同時に大人のエゴや家族についても描いているのが読み応えがありました。
弟の姿を見て兄が密かに抱えていた思い。
見たことがなかった兄の姿に感情が乱れるトヨアキ。
兄弟に関しては、わだかまりもこの兄弟らしく穏やかに解決します。
もう一方の、望まれない子供だったスイを取り巻く環境と、スイを救い出してくれた家族のような存在だったミタテとシンタの変化によるスイの戸惑いと寂しさと暴走。
蓋を開けてみれば、大人に振り回され傷付いた子供たちが多かったなと思います。
スイ・ミタテ・シンタの擬似家族のゴタゴタを、外部のトヨアキが取り持っておさめたのは上手い展開だなと。
スイの気持ちを1番分かってあげられるのは、どこか似た環境に居たトヨアキだった。
素直に言葉に出来なかったり、なかなか謝れないスイが可愛い。
スイに関しては切なさがすごいんです。この子も健気なんだよなあ…
今まで下僕のように全てYESで従っていたセツが「殺せ」と言うスイに見せた本当の顔と執着に凄まじさを感じて、これは寂しさすら感じさせないくらい下克上攻めに盲愛されてしまうのかななんて。
2人のその後がすごく気になる。

ほのぼのさもありつつ、決して優しいお話ではないのですが、妙に気になってしまうお話でした。
鬼天狗に嫁入りすると老化が止まるようなので、このままずっとこの島でのんびり暮らしていくのかな。
ところで、ミタテとシンタの年齢はいくつなんだろう。
ここ100年ほどの写真はそんなに古くないと言っていたので…?

2

家族同志の仲違いは良くない(´・ω・`)

まず、兄ちゃんにベッタリな弟を騙して嫁不足に悩む天狗の島へ連れていき、その中の一人と強引に子作りさせようって実兄の魂胆には冒頭からしてドン引きした。
弟・トヨアキも18歳の割に言動が幼いなと思ったらおバカ受けだし、うわ~、これは趣味に合わないかも、と危惧していたが…。

島内の神社の神主を勤める攻めのミタテが情に厚い性格で、いきなり嫁候補としてあてがわれたトヨアキを邪険にせずに、何かと世話をやく面倒見の良さに救われた。
鬼天狗というと、人外の分類上では妖怪になるのかな?って程度のイメージしか持っていないが、作中では神聖な雰囲気が漂っている。
ミタテに限らず、同じ鬼天狗のシンタ(こちらはトヨアキの兄ちゃんのお相手)も何かと情が厚いし、島内の人々も結構呑気でアットホームな様子。

肝心のトヨアキも、最初はおバカな子とたかを括っていたら、言いたい事はちゃんと言えているし、仲が悪く噛み合わないはずのスイ相手にも、何故か意思疎通ができている。

トヨアキの話し方に合わせたようなたどたどしい作中の文章も、読み始めはどうも肌に合わない気がしたが、彼の内面にある、家族同士の不和や喧嘩に敏感な様子が伝わる効果として作用されている気がする。

この話は、読み進めるにつれ『それってどうよ!?』って引いていた部分も許せる不思議さがあった。
まさか、家族愛とかの含みに弱い私自身の好みを突かれるとは思っておらず、読後には最初の印象の悪さを覆す程だった。

4

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