【SS付】【イラスト付】
小説
アワードにノミネートされているのを見て購入したものの、今の今まで積読状態になっていた、こちら…
251ページ、とそこそこボリュームがありビクビクしていたものの…
さすが小中先生、ストーリー運びが秀逸で面白くて、あっという間に世界観に引き込まれ、気付いたら読み切っていました。
数年前に異世界へと強制的に召喚されたものの、ろくな能力なし、と見限られ、ひとり山奥にこもって暮らすようになった主人公、陽色(ひいろ、異世界での呼び名は「ヒーロ」)。
そんなある日、ひょんなことからボロボロの服を見に纏い、病気の子供がいるのだ、となけなしのお金でパンを買って行った獣人エルと知り合います。
よかよく話してみると、彼らは滅びた王国の王族唯一の生き残りで、追っ手から逃れている最中だと分かりー
と続く、冒険譚。
唯一の生き残り王子、ビーの可愛さは言わずもがな!抱きしめたくなる5歳児…
そして、主人公ヒーロの「能力を高い、困っている人を救っても、救わなくても後悔することになる。困っている人たちを一時的に救うことはできても、人生全てを背負うことはできない」という悩み…チート能力を持っており、万能の神のような存在になっても、重責を感じ思い悩む姿に、共感して辛くなったりしました。
そんなヒーロの思いを理解し、欲しい言葉をかけて負担を軽くしてくれる存在、攻めのエルも格好良かった〜!!✨
セッッの描写は薄めで、エルの「獣人」設定を生かしたエッチは特になかったのが、ちょっと残念かなあ、という感じです。
そしてヒーローの悩む姿に共感しきりの、涙ホロリ、萌えの広がる冒険譚でした・:*+.
異世界に転生させられて、チート能力を手に入れてしまった受けの陽色が主人公。
チート能力ってどの程度?と思ってたら、もはや神レベルのチート能力。
でも、その能力を手に入れたおかげで幸せになりましたとさ!ではなく、その能力のせいで森の奥深くでひっそりと孤独に暮らしているんですよね。
なんか不憫で……。
っていうか自分なら発狂するだろうな……と思いました。
すんごい能力を手に入れたけれど元の世界にも戻れないし、この能力なんかあっても意味なくね??みたいな。
読んでいてウクライナ侵攻を彷彿とさせるところもありましたが、これは侵攻が始まる前の作品とのこと。
読みながら、もしこの能力を私が手に入れたらどうするか?日常レベルの「ご飯を作らなくても毎食、食べたい料理が一瞬で出来上がりますように」みたいなあくまで個人的な範囲か、それとも世界レベルの幸せを祈るのかとかあれこれ考えてしまいました。
そして最後に第三者の語り部による「幸せに暮らしたと伝わっている」とか、後年の人によって二人の生涯を語られてエンドというパターンが大好きなので、終わり方がすんごく嬉しかったですね。
(ヒーロの日記は蛇足感があったけど)
現代人が転生して異世界でいい感じに生きていける話×BLという感じで、読んでて楽しいうえにBのL(と子育て)のもりもりセット、すごく楽しい読書時間でした。
転生系ラノベの要素があるわけなのでしょうが、自分がその手のラノベはほぼ読んでないのもあって新鮮味もすごかったです。魔法いいですね!!笑
もう一つよかったのが、力を持っていることで生じる葛藤がリアルだったところです。辛いから人とのかかわりを避けた主人公にも納得というか……。善意と自己満足、代償に悩む主人公が人間らしくて読み入ってしまいました。
国家の崩壊と戦いがあって、中盤ハラハラもしましたが、転生者ならではのチート能力による快進撃で心地よかったです。その分といいますか、恋愛の部分におぼれすぎない感じが良かったですね、逃亡と建国がかかってるのでどんどん想いと信頼だけでっかくなって気持ち伝えるとかイチャイチャするとか後回しな感じで。リアリティが感じられる登場人物の葛藤が見られて楽しかったです。
小中先生のノベル、いくつか読ませてもらってますが毎回ストーリーが入ってきやすくて、その分登場人物の心情に集中できるので楽しいです。
また時間をおいて再読したいと思います!
出だしからコメディ、とても気の毒な主人公
・異世界の王の依頼で魔法使いが召喚実行、元の世界に戻せないヘボ魔法。
・ヘボ魔術師の水晶玉が示す、陽色が召喚で得た力は「チート」の誤訳
和製英語・ゲーム用語の「cheat」は「狡い/裏切り」ではなく、
「狡いと思えるほど強い」「強力無比」の、なんでも出せるチート。
誤訳で始まる陽色の異世界人生。
野望を抱く王に捨てられ、結末はハピエン 塞翁が馬的展開。
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赤羽陽色:17才まで日本の高校生の23才
6年前、エルフや獣人がいる異世界へ召喚、
「すごく狡い能力」「めっちゃ裏切る力」を得たと聞き、依頼者の王に捨てられ、一人ぼっちで森暮らし
イオエル・ルー(エル):28才 美形の銀狼の獣人 森住い
滅亡した獣人国、リュコス国から来た訳ありの流民。
ビー:5才 幼体の獣人 銀色の子狼 病でエルに背負われていた
普段あまり読まない設定とタイトルの1冊でしたが、小中先生ならきっと面白いはず!と、手に取りました。
結果、非常に面白かったです。
読みやすい文章でさらりと読めて、難しい設定もないので世界観にも入りやすいですし、萌えもあれば後味も良い。
陽色のチート能力に関しては少々盛りすぎな気もしますが、彼の能力の使い方と優しい人間性がとても良かった。
本当に便利すぎるほどに便利な能力で、陽色が魔法のようにぽんぽんと何かを作り出す度に楽しくなります。
日常生活においての痒い所に手が届くような小さなことから、救おうと思えば誰のことでもきっと救うことが出来る大きなことまで叶ってしまう。すごすぎる能力です。
ただ…陽色という人は、自分がほんの少し人に手を貸したことによってどうなっていくのか?果たして最後まで本当に責任を負うことが出来るのだろうか?と、その後をしっかり考えられる人なのです。好きなタイプの主人公でした。
そして、エルと陽色たちの森での3人の暮らしが平穏かつ心地良く、ずっと読んでいたくなってしまうんですよ。
次第に家族のようになっていくのも、能力であっという間に何かを作ったかと思いきや、素朴な砂遊びをみんなでしたりと終始微笑ましいです。
けれど、楽しく平和なだけではない部分も重くならない塩梅でさり気なく描かれているんですね。
キャラクター達をたっぷりと魅力的に描きながら、平和とそうではないものの差と、それを知ってしまった彼らの心の葛藤と決断部分の描き方が良かったのです。
これだから小中作品は読むのがやめられない。
ですが、後半がやや駆け足気味に感じたことと、エルが陽色にグッときた理由がもっと分かりやすく描かれていたらなあ…と、こちらの評価になりました。
読んでいて気持ちが良いほどに相性も雰囲気も穏やかで甘い2人なので、陽色にエロエロのエル呼ばわりされてしまう彼視点も読んでみたかったですね。