SS付き電子限定版
初読み作家さまです。
絵がとてもきれいですね。
救済もの好きです。全編通してすばらしかった。
対照的な環境で育った2人ですが、孤独で愛を知らないところは同じ。
シュンがカイと過ごした時間、その時の自分がかけがえのないもので、カイに執着するのもよくわかる。
それが愛でないこともわかる。
→でもシュンは愛を知らないのだから、カイへの執着が愛ではないとは断定できない(わからない)のでは?と読後に思いました。2人の態度が証明していると
カイは地頭のいい子でそんなシュンのことを理解していた。
カイにとってもシュンとの時間、シュンの存在はかけがえのないものだったけど、シュンのそれとは意味合いが違うこともわかっていた。
だからカイは自分を死んだことにして、再会後シュンを拒絶していたんだけども。
涙を流すシュンを抱きしめながらカイが「この世界で欲しいものは何?」と聞く
「……君」とシュンは答える
「それでいい それだけで俺は救われる」
名シーンですね。前後、全部そうだけど。
シュン「君は愛を知ってる?」に対するカイのセリフがこれまた感動的でした。
「あんたは気付いてないだけだ」
「カイはシュンから貰った」
「カイは知らない子供だった」
「具体的に言うのは難しい 目には見えない」
「あえて言うなら生きてる感じがした」←コレ!自分のことをお化けだと言っていたカイがこう思えたこと。あたたかくしてあげてご飯を一緒に食べる…それが愛ですもんね。タイトル回収にもなっている
この言葉でシュンに伝わるのもとてもよくわかります。や〜すばらしい。
大人になったカイがいい男になって〜(好きなタイプ)と喜びながら読んでいまして、シュンにがっつくのはあんなにかっこよくても1人もそんな相手はいなかった、シュンで頭の中がいっぱいだったから。というのもたいへん萌えでございました。
シュンも同じくカイしかいなかったのが尊いです。
左手の親指に指輪をつけるのは「信念を貫く」の意味。
キリスト教における黒い羊とは「異端」「救われるべき迷える存在」などの意味があるそうですね。2人にぴったりでこういう描写も好きです。
とても良いお話でした。
難しい題材なのですが、実際に存在する戸籍のない人のお話し。そして愛が分からない受け。
ラストがきちんと着地して終わっていて、もっと話数を重ねてもいいくらいの内容だけれど、ちゃんとまとめられて胸にグッとくる物語でした。
受けが愛を知らないことからこれが愛?!のような激しい燃え上がりはないのですが、丁寧に気持ちが綴られていて、とても好きなところです。
カイが施設で頑張っている姿、良い環境ではなかったけれど捻くれずに育った姿もすごく良くて。
恵まれている環境のはずが不幸なシュン。対比のような感じですが、二人が幸せになれて良かったです。
ずっしりとのしかかるこの読後感…。
これはボーイズラブなのか?
いや、ボーイズらぶではあるけれど、
そんな狭い枠に留まらない重みのある1冊でした。
高校生の詢は大企業の跡継ぎとしてまるで人形のように、
親の思い通りのままに育てられてきました。
そのせいか、詢は愛を知りません。
生活は裕福なのに心は空っぽで、まだ高校生だというのに
子供らしさなど欠片もなく、冷めきった青年になっていました。
そんなある日、コンビニの店員に追われる少年・カイと出会います。
まだ幼く見えるにもかかわらず、万引きをしたという。
彼は一体何が欲しかったのか?
カイが欲しかったのはおにぎり2つ。たったそれだけ。
空いたお腹を満たすため、生きるために。
悪いことをしているのに悪びれることもなく、
だけど、悪人というわけでもない。
そんなどこか不思議な少年・カイに詢は興味を惹かれてゆきます。
それから詢はあらゆる手段を尽くしてカイを見つけ、
家に連れ帰り温かいご飯とお風呂を与えます。
そうしたことを繰り返すうち、カイもまた少しずつ詢に懐いてゆくように。
カイという少年のことを知っていくうちにわかってきたのは
彼には戸籍がないということ。
学校にも行っておらず、文字の読み書きができないから
自分の名前を漢字で書くこともできない。
母親はいるけれど、まともな食事ももらえず、
寝床は寒くてゴミだらけのベランダ。
育ってきた環境は違えど親から愛されず、
愛を知らないカイと自分は同じ。
同じだからこそ、わかりあえるかもしれない。
詢はいつしかカイにこれまで抱いたことのない感情を覚えていました。
彼を自分の傍に置いて自分だけのものにしておきたいと。
それは彼が初めて知った独占欲でした。
けれど、親の手によって詢とカイは引き離されてしまいます。
その空白の7年間。
留学先から帰国した詢はカイを手放してしまったことを深く後悔します。
そして、再びカイの消息を探しはじめるも、彼が辿り着いた答えは…。
カイへの感情を「愛ではない」という詢。
カイが詢に抱く愛情とは異なるその感情を受け容れようとしない詢。
だけど、詢がカイに抱くのだって確かに“特別”な感情で、
詢がその感情を抱いたのは後にも先にもカイただ一人なのです。
それってもう愛じゃないのか?と思うのです。
一般的に言う純粋な愛とはちょっと違うのかもしれないけれど、
何かしてあげたいと思ったり、独占したいと思ったり、
過労になるまで探す程に傍にいたいと望むその感情。
私はそれも一つの愛の形って言ってもいいと思うんですよね。
カイだって自分と同じ愛じゃなくたって良いと言ってるし。
曖昧な感じは残しつつも、二人が寄り添っていきていける。
それだけでもう私としてはハッピーエンドでした。
パッと見てどんな風にも捉えることができるようなタイトルに惹かれがち。
なのでこちらの作品もあえてあらすじなどを見ず、タイトルから感じた印象だけを持って読み進めました。
もしかして実体がないのか?とか
死ネタ…?とか色々考えていたけれど、
『存在していない』という言葉の意味は思っていたよりずっと現実的で、そしてとても鋭く刺さるものでした。
偶然の出来事から交わることになったふたりの世界はそれぞれの意思のもと少しずつ動きはじめるわけですが、その関係はどこか歪に映ります。
それが年の差があるからとか生い立ちや環境などの違いによるモノではなく、
一緒にいる時間を大切にしているのにそこに求めているのが違うから歪さが生まれている、というのが本当に切なかったです。
"親から愛を与えられずに育った子ども"という共通点だけでは融合できなかった当時から、大人になって再会した後の現在まで。
ずっとシリアスめな展開ではあったけれど
難解にも思えるやり取りの中から正解や真実を探し出すのではなくて、
ふたりが『安心できる場所』に辿り着く結末になっていたことにものすごく救われました。
そして重たいストーリーなのでそれほど恋愛部分の主張は強くないけれど、
それぞれの激しい執着からしっかり相手への愛が感じられたのが良かったなと思います。
一つひとつのエピソードが深くて、とても読み応えのある作品でした。
「この世界に存在していない君へ」というタイトルにひかれてよみましたが、よみはじめてすぐに、このタイトルの意味に気がつきました。
「戸籍を持たない少年」で、現在は総合商社シルテム管理部の社員をしている「カイ」と、社長のこどもで、自社総合商社主任をしている「詢」とのお話です。
全体的に、シリアスな雰囲気ですが、こういう雰囲気のお話は好きなので、おもしろいとおもいながら、よみすすめることができました。
現代の社会が抱える「闇」の部分にも焦点をあてていて、読みごたえのある作品だとおもいます。
