ボタンを押すと即立ち読みできます!
全部で7作品が収録された短編集です。
いつか読む気ではいましたが、絵柄のせいでなかなか食指が動かなかった本作、なんと『明日屋商い繁盛』に収録されている「俳句の先生x生徒のリーマン」が描かれた短編の前作が収録されていると知り、俄然読む気になりました。
確かに本作を読まないと、あの『楽しい俳句教室』を正しく理解することはできませんでした。
どの作品も素晴らしかったです。
2009年発売なので 顔が果てしなく長く、普段なら絶対読まない絵柄ですが、ARUKUさんはほんっとに例外(現在は綺麗です)。
しかも人魚の一コマがびっくりするぐらいめっちゃくちゃイケメンでした(拝む)。
しっかし、魂の伴侶とその相方はもともと一つの魂だった、という説(ツインソウル)までご存じだったとは、いやはや脱帽、毎回ARUKUさんには驚かされます。
特に琴線に触れたのはやはり表題作:日本人男性の手だけ見て恋に落ちるロシア人の話。
手だけなのに!そこまで好きになるー?!という冷静なツッコミを入れる自分とは裏腹に、心臓の方はぎゅんぎゅん来ました。
公園の話もすごくイイ・・・!
感謝されたら、感謝してくれたことに対してありがとうって言いたくなりますよね・・・すごいわかる。
短編なので、「ヲイヲイ展開早くね?!」と思わないでもない作品も中にはありますが、やっぱり大好きな作家さんです。
えrは話によりますがゼロ~標準的。
出血シーンが少しと(両想いですが)無理やり描写1か所だけあるので苦手な人は注意。
他の短編はどれも個人的にピンとこなかったのですが、表題作がとても良くて何度も読み返しました。
表題作のみに単行本一冊のお金を払っていいくらいです。
欲を言えば、この二人がこの後どうなるのか、とか、もっと長い物語で読みたかったのですが、この長さだからこそ、物語が引き締まっていて心惹かれるのかもしれません。
10年前に出版された本です。
ARUKUさんらしいお話達でした。
とにかく無表情?な顔、なんとなく固くて動きがぎごちなく見える体の線に、あぁARUKUさんだと安心します。
表題作
このお話まではまだ主人公が貧乏で孤独じゃなくてホッとしてました。
しかしやはりさすが表題作です。
主人公の青年はおそらく戦争で敵国の領土に取り残された男の人なのでしょうか。日本の家族に届かない手紙を何通も出して。少ないお給料からお金も同封して。
家族はもう生きていないのでしょうか。
そして青年の手に惚れ込む学生。前途有望そうで見目も良く。青年を女性と勘違いして情熱的に口説いてきます。
青年は決して言葉を口にせず、正体も明かさず、早く忘れてほしいと願うのですが。
学生は青年の正体を知ってもさらに熱心に愛を囁きます。青年はもうやめてほしい…。
ラストが青年らしい覚悟と心遣い。いや国に届かない手紙と自分の手を愛する学生に思うところがあったのでしょう。
なんと自分の手を切り取って学生にあげようします。
そして学生は…。
ほろ苦さも含むけど美しいお話でした。
やはり作者さんが大好きです!
◆シュミジエ
BLとしての萌えが一番大きかったというか、最後の強引なキスシーンに思わずときめいてしまった作品でした。人間の中身に興味がなく、職業柄サイズのことばかり思い浮かべてしまうテーラーのクロード。彼の店を訪れるようになったフェリックスはとてもイイ男なんだけれど、クロードのそういった性格のおかげで恋が始まりそうな気配はなく。でも、最後にフェリックスが唐突にキスを噛ますんです。短編集でもなかなか見なかった展開かも。そこで初めて生きている人間の熱を感じ驚くばかりだったクロードが、恋できるようになったらいいなと思いました。
◆極東追憶博物館(表題作)
全体を通してのストーリーが一番好きなのは、やはりこちらの表題作。相手の手しか見たことがないのに、その綺麗な手にどうしようもなく惚れてしまうグレゴリー。手に恋をするという導入が素敵過ぎました。自分が日本人且つ男であることから、グレゴリーの求愛には応えられないと冷たく返すしかないヤスオの姿が辛くて。外国人や同性愛者に対する風当たりって、その時代と場所によってはとても強い場合もあるから、きっと今の私達からは想像できないほどヤスオは思い詰めたんでしょうね。自分がグレゴリーのためにできることは、もはや自分の手を切り落としてあげることだ、とまで考えたヤスオにこちらまで苦しくなりました。しかし、手はあくまできっかけであり、グレゴリーはもうその先にいる人間に恋をしている。最終的にはヤスオを連れ去ってくれたので、心から嬉しかったです。
◆役に立たない人
がらんとした広場に、ただいることが仕事のNさん。名前も皆からすぐ忘れられてしまうので、ずっとイニシャルなのが印象的でした。人の役に立つことを夢見ているNさんが、唯一関わるようになった営業職の男性。この2人のやりとりは不思議で、でも少し温かくて、人は自分の存在意義がないとこんなにも虚しくなってしまうのかなぁと寂しさもある物語でした。最後にNさんに存在意義を与えた男性の言葉は、今のご時世だと少し傲慢にも聞こえるけれど、この世界の中でNさんにとってはこれ以上ないほど心の満たされる言葉だったでしょうから、突っ込むのは野暮かもしれませんね。
ARUKUさんの作品をこの週末に10冊ほど一気買いして、ずっと読み耽っていました。
どれもこれも読み応えがすごすぎて、2日間ARUKUワールドに取り込まれっぱなし!
1冊ずつゆっくり読むつもりだったのに止まんなかったです。
買うきっかけをくれた幻冬舎セールありがとう!
このコミックに限らず、ARUKUさんの作品のレビューには「おとぎ話」とか「童話」といった形容が頻繁に使われていますが、読むと納得します。
ARUKUさんの創るお話は「創作メルヘン(創作童話)」なんだと思う。
アンデルセン童話のような手法で描かれる作品は、空想的でありながらもリアリスティックに大人の心を揺さぶってきます。
良い意味で、BLという括りを取っ払っても成り立つようなお話を描かれる作家様だと思いました。
一気に読んじゃったのでさてどれからレビューしようかと迷いましたが、まずは個人的に「入口」として一番良いんじゃないかと感じたこちらの短編集から。
7つのお話が入っています。
どれもハッピーエンドなので安心して読めますし、ARUKUさんがどんな作風の作家さんなのか分かりやすい1冊だと思います。
中でも私の一番お気に入りは、
「ウルトラマリンブルーシティ」「アクアマリンブルーウォーター」
仕事で日々を忙殺されるサラリーマン〔深海〕と、彼の30歳の誕生日に突然現れた人魚のお話です。
童話的でありながらもシュールさの付き纏うトーンが面白くって、なのにラストはどちらのお話もすごくロマンティックでグッとくる。
海の青と空の青。海と空の境目で一つを二つに分けられた魂。羽根の生えた人魚。
境界線は無理に引かなくていいのだと教えてくれているような、とても素敵なARUKU童話です。
他の6作品も読み終わった後しっかりと残るお話揃いで、とても満足度の高い短編集でした。
最後に入っている「楽しい俳句教室」は、秋編・冬編が『明日屋商い繁盛』1巻で読めますよ。