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表題作高潔であるということ

復讐の機会を狙うバイト 真岸悟・25歳
税理士 志田智明・32歳

あらすじ

復讐のため、真岸は志田の税理事務所にもぐりこむ。しかし、志田の不器用な優しさに触れるうち、次第に惹かれていき…!?
(出版社より)

作品情報

作品名
高潔であるということ
著者
砂原糖子 
イラスト
九號 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
幻冬舎ルチル文庫
発売日
ISBN
9784344818668
3.7

(48)

(14)

萌々

(11)

(19)

中立

(3)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
18
得点
174
評価数
48
平均
3.7 / 5
神率
29.2%

レビュー投稿数18

骨太ヒューマンドラマ

ラブっていうより、サスペンス、ヒューマンドラマ的な印象強めでした。
数年前の事件の復讐のため、その対象人物に接触し、観察していくうちに、果たしてこの人が、本当に自分が思っているような人なんだろうか…?と主人公が葛藤する様子が丁寧に描かれていて…適度な緊張感と読み応えがありました。あるべき善意や優しさってなんなんだろ?と考えさせられました。

ただ、主人公(攻め)がそこまで近所の”ジジィ”の復讐にこだわった動機がいまひとつ見えにくかったんですよね。でも、BL的な読み方をすると、なんとなく、これは”ジジィ”の復讐というより、公判の際に忘れられない表情をしていた志田という人物への執着だったのかなと思ったり。そうなると、なんとなく個人的にはしっくりくるんですよね。

脅迫のように送られるメールの謎があるんですけど、これはネタバレなしで後々”なるほど”って思ってほしいかもです。さらに、ちょっと”税理士のおしごと”ものとしても面白かったです。最後に、やはり砂原先生のキレのあるエロ描写は素晴らしいです。

0

気負わずに読んだ方が楽しめるかも。

電子で読みました。挿絵なし。九號さんの絵が好きなので拝めなかったのは残念。

物語は主人公、真岸悟の子供時代の回想シーンから始まる。彼は弟の徹と交わしたとある約束を果たすため、前職を辞し、ある男の税理士事務所で募集されていたアルバイトの面接を受ける。徹の子どもらしい好奇心が縁となって兄弟二人が小学生の頃に慕っていた、隣家のゴミ屋敷に住む「ジジイ」。ある日、車の轢き逃げ事故に巻き込まれ、亡くなってしまう。その加害者が真岸のバイト先の雇い主、志田智明だった。兄弟の約束とは、彼をジジイと同じ目に遭わせてやるという復讐だったのだが…。

真岸は志田と接するようになり、この事故がきっかけでそれまでの安泰な生活を失い、感情すら無意識に殺して生きている男であること徐々に知る。次第に志田へ抱いていた思い込みが払拭されていくのですが、真岸が復讐に徹しきれないのは、彼の記憶の奥底に残っていた志田の姿があったからだというタネがさりげなく仕込まれていました。

真岸の復讐を忘れないようにという五年に及ぶ執念は、法廷で志田の姿を初めて見た時から、既に彼に何かしら惹きつけられるものがあったからなのではないかと思わせます。真岸視点で描写される志田の第一印象がなんとなく色っぽい。志田の方にも大学時代の男子学生との他愛のないエピソードが描かれており、二人が同性なのに惹かれ合う不自然さはあまり感じさせませんでした。(お互い目覚めちゃったってことで。)真岸の人好きのする性格や、脇を固める登場人物のおかげか、深刻になり過ぎず読みやすかったです。孤独な志田がベランダで一人、天体観測をするシーンが印象的でした。

物語序盤は作家さまに抱いていた作風のイメージとはちょっと異なる、意外なトーンのツカミでしたが、最後まで安心して読ませていただきました。うーん、砂原先生の描く濡れ場はツボです。

1

情景が浮かぶ

真岸(攻め)が復讐をするために、志田(受け)に近づくのですが、志田のあまりの不憫さに驚き、復讐する甲斐がないと嘆きます。そして、自分を好きにならせてから捨てることで、復讐しようとするのですが…と、ここまで書いたところで、復讐する理由が人の死じゃなかったなら、コミカルテイストにもできた作品じゃないかと思いました。男が男を好きにならせようとしている時点で、既にちょっと面白い。

でも、読んでいる最中は、そんなに違和感も覚えませんでしたし、笑いもしませんでした。

志田が落ちたおにぎりを買う様を、眺めている真岸の表情が眼に浮かぶような、情景が浮かびながらすんなり読んでいけました。安定の筆力です。

徹底的に不幸な人はいないので、安心して読んでみてください。風で春の訪れを知るような後味だと思いました。

1

罪を憎んで人を憎まず

高潔であろうとするあまり人から疎まれて利用されまくった男の恋物語。読んでいる間は受に同情して泣きっぱなしだったのですが、感想を書こうとしたら受の不幸っぷりが笑えてくる不思議な作品です。萌えたかと聞かれると微妙ですが、心を揺さ振られました。

攻は感受性が強い青年(転職前の臨時アルバイト)。
受はコミュニケーション能力の低い税理士。

攻は幼い頃親しくしていた老人の命を奪った相手(受)に復讐することを誓います。社会人になった攻は不幸のどん底につき落としてやろうと受に近づきますが、受は既に幸せとは縁のない生活を送っていることを知ります。攻は自ら受に幸福を与えてやり、それを奪うという復讐を思いつきます。

受は自分を冷たい人間だと思い込んでいます。自分を捨てた母親や自分に愛情を注がなかった父親を恨んでいないし、浮気した挙句他の男との間に作った子供を養育費目当てで自分の子だと言い張る元妻を責める気もない。しかし、ロボットのように見える受にも心がないわけではなく、誰からも愛されないことに傷ついて苦しんでいます。感受性の強い攻は受の脆い部分にいち早く気づき惹かれていきます。

攻は憎悪と恋心の間で揺れますが、最後は愛が勝つ!罪を憎んで人を憎まず。天国のジジイも可愛がっていた攻の恋が叶って喜んでいることでしょうと勝手に結論づけました。

受についてはこんな無欲な人間いないよ!とツッコミを入れつつ、本当にいたらいいなと思いました。言った者勝ちの現代で生きている身としては沈黙の美徳は目に眩しく映ります。受のネタ元は砂原先生のお父様だそうです。萌え×2と中立どちらにしようか迷ったのですが、あとがきのお父様エピソードに萌えたので萌え×2にしました。

それにしてもレビュー数多いですね。さすが砂原作品。レビュー数が神評価の数を上回っている作品は面白いと感じることが多いです。

1

よしあしはわかれそう

 真岸悟は、今、ある作戦を決行しようとしていた。
 それは――復讐だった。

 昔、真岸の家の隣に住んでいた老人がいた。
 老人は、どこからともなくごみを集めてきていて、家はごみ屋敷となっていた。
 そこにおいてあったものに興味を惹かれた弟に付き添うように、真岸は、その老人の家に出入りするようになった。

 ところがある日、その老人が轢かれて殺されてしまう。
 ひき逃げだった――

 酔ったまま路上で寝ていたところを轢かれた不幸な事故だったが、相手の男が三日経って出頭してきたこと。
 その直後に週刊誌に男が酒を飲んでいた、と居酒屋の店員が証言したことから事件はワイドショー等で大きく取り上げられることになった。
 当初は、老人に同情的な報道が相次いだけれど、老人の家がごみ屋敷だったこと、普段から泥酔状態で路上で寝ることを繰り返していて、近所でも迷惑に思われていたこと――が記事になると、今度はその老人ばかりが悪くかかれるようになった。

 真岸は弟と一緒に裁判を傍聴し、判決が言い渡されるのを聞いた瞬間、男が笑ったのを見た気がした。
 相手の男に下されたのは、執行猶予付きの判決。

 そして真岸は、男に対する復讐を決意する。

 という感じのストーリーでした。
 実際は、そんな後ろ向きのドロドロした話ではなくて。
 真岸は、たまたま相手の男・志田智明がアルバイトを募集している記事を見て、彼の税理士事務所にアルバイトとしてもぐりこむことに成功する。
 けれど、そこにいたのは真岸が長い間思い描いていたような男ではなくて、うまく感情表現ができない不器用な男であり、今となっては何も持っていない男だと気がついて、真岸は逆に志田に惹かれ始める。

 そんな話でした。
 正直、賛否両論あるなー……と思うんですよ。
 何かそれによって被害を受けたことのある人からしてみれば、到底受け入れられない話だろうし、かといってこれが「ダメ」っていうわけでもないなとは思います。

 でも結局のところ、理想論だなー……と思うんですけど、その理想論が文学を作っているのも確かなので、それはそれでありだなー……とも思います。

 悪い話ではなかったですが、テーマがテーマなだけによしあしです。

0

好きになってはいけない人

立て続けに重たい話読んでまして、そのあとにコレ。
また重たいのかよぉ(´Д⊂汗
なんて思いながらの読後。やぁ、なんというか、
砂原さんらしいといいますか、面白かったです。

もともとは、復讐するつもりで近づいた。
一人だけ幸せになっているであろう男の幸せをぶち壊してやろうと思っていた。
それなのに、近づいた相手は幸せのひとにぎりも持っていない。
何もかもを失い、これ以上失うものがないほどに。
それどころか、知る程に、惹かれていく想いを止められず~なお話なのであります。

自分を戒め、復讐を近い、5年も執念深く。
あまつさえ、爺さんってのが実際は血のつながりさえなく
よくよく考えればさほど・・・それほど?と思えてしまう相手だったりw

ただ、相手に触れて、自分が思い描いていた人物と違うことの気づき
もろもろ~の進み方が丁寧で、読んでいて少しドキドキさせていただきました。
好きになってはいけないはずの相手が・・・

ただ、正直なところ「もう少し苦しめばよかったのに」と思ってしまったのが実際。
もちろん、当人どうしは苦しんでいたのではあろうと思うのだけれど
せっかくの復讐、5年の・・・積年の恨みとなると
もっとズシンとくる何かがあってもよかったのかなと思ってしまったのであります。
ん~・・・・
まぁ、面白かったからいいんだけど

3

復讐劇


タイトルに惹かれて読みました(*^^*)
話自体はおもしろいけどいくつか引っかかった点がありました。

確かに子ども時代に仲のよかった近所のおじいちゃんがひき逃げされたらショックだけど、自分の労力を割いてまで復讐してやろうとは思わないんじゃないかなー

しかも5年も経ってるし。

それに轢いた志田のほうにはあまり過失はないんじゃないのかな?
それなのに復讐するって無理があるなぁと思いました。

だけどいろいろな引っかかりをスルーしてけば、とてもおもしろい話です!
いろいろ書きましたけど私はこの話好きでした。

1

惜しいなー

むつこさんと同じで、自分も弟の感じ方が自然だと思えたんですよね、それだけに弟を作中で否定的に書かれているのが引っかかりました。
幾ら仲が良かったとしても近所に住んでて交流のあった老人が交通事故で亡くなってその時やもっと子供であればともかくとして、事故から5年もたって社会人になったら弟の考え方の方が自然だと思うんですよ。
まあオークションで高値が付いたって喜んでる辺りは多少無神経なのかもしれないけど、基本的な考え方としてはむしろ弟の方がよく分かる。
反対に不可解なのが、真岸〔攻〕の方なんですよ。
これが例えば極端な例で亡くなったのが父親とかでこの事件のせいで一家離散、散々な人生を送る事になった位の動機があるなら真岸の行動も納得が行くんですが、社会人の真岸が正直何故5年後にここまで復讐に固執して行動するのか?と思っちゃいました。
もしくは真岸が人格的に極端な性格であるとか、んでも真岸は体育会系な面もあるし復讐行為以外は真っ当で人間性に酷く歪んでいるとも思えない。
あと5年後に真岸が色々調べて、志田〔受〕の無実を知るんだけど5年間も復讐を待つ位の根性があったらその間に調べれば分かったんじゃ……っていう気もしました。

どうもそこの設定が引っかかるんですが、互いの視点が切り替わって書かれる感情描写や冷血で無感情と見えていた志田の本当の姿が次第に真岸に伝わって行く部分とかは丁寧な描写で良かったし、メールの送り主が分かるシーンも成程~って感じで伏線が上手かったですな。
それだけに何故に真岸がそこまで復讐に拘ったのかのその根っこの部分に説得性が無いのが残念、そこがですね、どうも惜しいなー、と。
でも話的には面白いし読みがいもありましたが、それだけに惜しいなーとも思いましたです、はい。
砂原さんだからこそ読むハードルを上げているっていう点もありますけど、やっぱ惜しい。

2

巡りあえてよかった

小説はあまり読まない方(BLは)なので、他の方よりも甘い評価かもしれません
悪しからず…

キャラクター、ストーリー、九號先生の表紙と挿絵
すべてが私好みでした◎

特に志田さん
私は「高潔」であったのはやっぱり志田さんだったと思います
誰にも知られない優しさが切なくて、上手くできない不器用さがもどかしくて…
それに気がついた真岸はえらい!
真岸のおかげで志田さんは救われて、志田さんのおかげで真岸は解放された
お互いなくてはならない存在だった訳です
もしジジイと真岸が知り合わなければ、車を運転していたのが志田さんでなければ、志田さんがバイトを募集しなければ、2人が2人でなければ…
運命ってきっとこんな2人のことを言うのでしょう
見えない糸に導かれて2人は出会うための道を歩いてきた、その道のりはとても楽とは言えないものだったと思います
志田さんも真岸もお疲れさま、と言いたいです
それともおめでとう、の方がいいのかな

そういえばこのレビューを書くため読み返して気がついたのですが、志田さんって元々少しゲイの気があったのでしょうか?
大学の時人気者に頼られて~のくだりを読んで思いました

繰り返しになりますが、購入に至った理由のひとつである九號先生の表紙と挿絵、本当に美しいです
元々好きな作家さんでしたが、ますます好きになりました
表紙の雰囲気が内容にぴったりなんですよね~
額縁に入れて飾りたいくらい気に入ってますw

冒頭に書いた通り、小説は数えるほどしか読んだことありません
そんな私にこの本は小説の面白さを教えてくれました
オヤジ受とシリアスな雰囲気が好きなことも、この本で気づいたと言っても過言ではない!
砂原先生ではこういったシリアスは少しめずらしいとか…
先に他の砂原作品を読んでいたらこの本は読むことがなかったかもしれません

とにかく巡りあえてよかった!
そう心から思います

2

パンチが足りない感じ

読みやすくていいお話だったんだけど、パンチの足りなさも感じました。
ビミョーなちぐはぐさも感じました。

登場人物のなかでいちばん共感できたのは攻めの弟くんでした。
彼を鈍感で無神経な人間という位置づけで描いて欲しくなかったなと。神の視点からの彼への優しさが欲しかったな。
弟くん、人間らしくて素敵だと思うんだ。その場では大好きなジイサンのために本気で怒り、そして忘れる。
事件の性格を考えれば、忘れるほうがいいなと思っちゃって。もちろん事件がもっと陰惨なものだったら、真逆の感想になったと思うんだけど。

まず、攻めが五年後に復讐を誓うにいたる動機面での弱さを感じました。
生前のジイサンとの交流にもう少し筆をさいてくださるか、攻めの性格をもう少し思い込みの激しい性格にするか、或いは事件をもっと陰惨なものにするか、そのいずれかが欲しかったなと。
とくに生前のジイサンはかなり大事なキャラクターだと思うんだけど、最後まで輪郭しか見えなかったのが残念でした。
受けはひたすら利他的な性格なんだけど、受けのそれまでの人生に、無神経人間ばかりを配置してたことにモニョモニョ。分かりやすい悪役を周囲にたくさん作れば受けの利他的な性格は際立つわけだけど、むしろ優しいいい人間を周囲に配置して、それをやって欲しかったなと。

なんだかんだ細かい不満を書いてますが、総合的には面白く読みました。
「復讐相手に惚れてしまって葛藤する」という、このストーリーそのものは私のツボです。
もっともっと葛藤したかったし、もっともっとラスト誤解がとけたときのカタルシスが欲しかったんだよね。

1

なんでかな?シニア受けな印象。受けは32歳なんだけどもね。

高潔という意味を、欲のために心を動かさないでいることとすると
『心を動かさない』でいたのは誰だったのかなぁと考えてしまうお話でした。

疎まれていたゴミ屋敷の“ジジイ”と交流を持った真岸兄弟。
“ジジイ”は、泥酔し路上に寝ていたところを車に轢かれてしまうのです。
運転手は、志田。
裁判も行われ法に裁かれはしたのですが真岸兄弟は志田に復讐を誓い
5年後・・・

復讐するべき相手には奪うものはなにもなく
真岸兄は、与えることからはじめるのです。

人間の深層心理がミステリアスなお話でしたね。
挿絵も硬いですし、いつもの砂原さんとは違っただいぶ違ったイメージ。
けれどもラストは、やっぱり砂原節だったように思います。
砂原さんの作品って、どこまでも人にやさしいし善が見える。

なかなか見えない人間の本質を見ようとする力は
最初から真岸兄にはあって、だからこそ“ジジイ”のために
復讐までしようと思ったわけで
けっきょく、志田という人間の本質が見えてしまう
恋をするのはしごくあたりまえの結果だったのかもしれません。

お話としては、おもしろかったのですが
志田が年齢よりもだいぶくたびれた雰囲気に感じてしまい
かなりシニア受けな印象。
なんでかな、そんな老けた挿絵でもないんだけど
乳首とかつやつやしてたけどもw
どうも萌えというのはなかったです。

表紙に描かれている鍵。2つなんですよね!

1

表紙絵の雰囲気そのままのシリアスストーリー

表紙のほの暗い雰囲気に
手を取るのを躊躇しそうになったこの作品。
その印象の通り
砂原さんにしては暗いトーンが全編通して漂ってる作品でした。

子供の頃に、弟と共に懐いていたゴミ屋敷の「ジジイ」が車に轢かれて死んだ。
真岸はその加害者である税理士の男・志田に復讐する為
彼の事務所でバイトを始めるが
憎んでいたはずの志田の人となりを目の当たりにして
憎しみの代わりに志田への想いを募らせて行く。。。

と、流れだけ追うと
ありがちなシナリオのように見えるのですが
物語のあちこちに配されているさまざまな伏線、
例えば、定期的に届く復讐を促すメールであったり
「ジジイ」のひき逃げの裁判で
被告である志田に「人殺し!」と叫ぶほどに怒りを顕わにしていた弟だったり
志田がよく利用している小料理屋の母子だったり、が
物語が進むにつれて絶妙に絡んできて
さらに、真岸と志田の両方の視点で描かれているので
2人の複雑な気持や境遇、葛藤や不安などが良く伝わってきて
2人の心境が変化して行く度に
どんどん物語の世界へ惹き込まれて行きます。

ラストに向かうに従って
そのほの暗さが薄れて来てしまったのがちょっともの足りない気もしますが
それが砂原さんらしさなのかな~、と思いました。
それに、やっぱりこの不器用な2人には
やるせない、後味の悪いラストは与えて欲しくなかったので
私はこれでよかったんだ、と思います。

神評価にするにはパンチが足りなかったけど
個人的には神に限りなく近い萌え評価とさせて頂きます。

そういえば
タイトルの「高潔であるということ」って
志田の事だったのだろうか?あるいは真岸のことだったのだろうか?
あるいは「ジジイ」?

5

これはネタバレしたくない

5年前、隣家のゴミ屋敷のジジイが死んだ。
酔いつぶれて、家の前の道路で寝ているところを、車にひき逃げされて。
3日後、出頭してきた男は、公判中も冷たい表情を崩さず、、、

展開の読めない復讐劇。
これ、ホントに、砂原さん?
って、ドキドキしながら読んでいるうちに、
どんどん糖度が上がっていく。
この、糖度の盛り上げ具合が、何とも心地いいです。
エロさの盛り上げ具合も、素敵です。

これは、ネタバレ無しで、
主人公、真岸と一緒に、意外な物語の展開を楽しみましょう。

2

復讐劇

 復讐モノ&表紙に惹かれました。表紙が何かを訴えかけているような感じがします。

 「忘れるな、あの約束を―」
 真岸(悟)が子どものとき、裏に住んでいたジジイが亡くなったことで、ひき逃げ犯と思われていた志田への復讐を誓い、5年後(志田が一人で経営する税理士事務所)にバイトとして潜入する。しかし、そこにいたのは法廷で不遜な態度とみられた印象を裏切る、わびしく何も持たない男だった。愛想がなく、無口な志田とともにするうち、表情や口には出さないが顧客のために熱心に考え仕事をするまじめさ、誰に顧みられなくても気遣いのできるやさしさを持った男だと気づく。こんな男がひき逃げをするのか?復讐心が揺らぎ始めた真岸は―
 人への気配りができる人間が減っている世の中だからこそ、志田はすごく純粋に人を思えると同時に、それを言葉や表情に出せない性格なので、生きづらいだろうなーと思いました。まぁ真岸のように、最初は復讐目的であっても、志田の本質を見抜いてくれる人が現れてくれてよかったです。
 一人ぼっちで寂しく暮らしているかわいそうな人、みたいな受けの設定は大好きなので、今回、徐々に志田の心に変化が現れていくところがよかったです。それにしても、あの警告めいたメッセージを送っていたのはあの人だったんですね。   

 

1

いつもと違う空気

不器用な男二人の不器用な愛のお話でした。

五年前のある老人の事故死をきっかけに、憎むものと憎まれるものになった真岸と志田。
老人の死を忘れず、大人になったら復讐するという約束を果たす為に、志田の税理士事務所にアルバイトとしてもぐりこんだ真岸なのですが、イメージしていたのと現実の志田の格差に戸惑います。

自分がよしとする事に関しては労力を惜しまず地道に行動し、たとえ意向が伝わらなくても相手にプラスになることを考え、結果が受け入れてもらえなくても仕方ないさと諦めも早く、大事にしているものすら無い志田。
頭がよく真面目で目端が利く分、いろいろなことが見えてしまい、その扱いに悩んでしまう真岸。

志田が大事にしているものを壊すことで復讐を果たそうとしていた真岸は、浅はかなことに自分を志田の大事な人にさせようと働きかけます。
結果、諸事情が明らかになるにつれ、ミイラ取りがミイラになってしまうわけですが。

今まで読んできた砂原さんの作品は、明るい、あるいは暗さはあってもぐいぐい進む感じのものが多かった気がするのですが、この作品は二人の性格のためかただひたすら低い位置に流れる霧のようなイメージのお話でした。
しかし、読書中読了後ともに“暗い”感じではなく、“静かな”そしてあとでホッとするものでした。

3

新刊発売……。

あえて今回はネタバレなしでww
表紙に度肝抜かれました!
だって、砂原さんの作品って、キュンとくる話が多いのですがこれはこれでキュンときたかな?

もう駄目だ、思考回路が停止してしまいそうですww
砂原さんの新刊は待ち望んでいただけに、いつもより早く読み終えてしまえるほどで、でもどことなく心に残る話でした!

あれ?纏まって無いねww

1

あらたな境地…!

この表紙、びっくりですよね!ほんとに砂原先生の新刊なのか?って思っちゃいました。今回のお話は表紙のイメージどおり少しズドーンとした…割と重い部分がありました。

五年前、真岸兄弟と仲の良かったお爺さんが事故に遭ったことからお話は動き出します。彼らにとって理不尽な裁判により被告・志田は軽い刑になり、兄弟は復讐を誓うのです。
でもそういった気持ちって、やっぱり時間が解決するものですよね。実際に弟も5年の内に気持ちが薄れているし。むしろ過去の自分からの声に囚われているとはいえ、ずっと過去に執着する悟こそがちょっと異様に映ってしまいます。

けれどその異様さというのも最終的には覆される形になっていて、結局どこにも復讐はありはせず、すごく上手い人間関係だったなぁと思いました。
過去に囚われていたのは、ずっと志田でしたね。彼の生き方は、なんだかもう…ほんとうに憐れでならなかった…。
親のことも、家族のことも、あの事件のことも…ぜんぶ背負い込んでいるのが憐れだった。
でも、憐れだけれども可哀相だとは思わなかったです。やっぱりもう少ししたたかにやっていかないと、いつか自分がダメになってしまうし、ダメになったときには、誰かのせいにする強さも必要だし。
悟は彼のそういう部分を不器用ととらえているけれど、それだけじゃだめだよなぁ…と思わなくもない。
でも志田は、悟にだけはほんとうの自分を見せられていた。それが彼にとっても読む者にとっても救いになっていたと思います。最初は虚構だったとはいえ、求められたことが初めてだったから答えられたのだと思う。

このお話というよりは、志田の今後がすごく気になります。
砂原先生、同人誌お出しになるかなぁ…。
砂原先生作品には、いままではあまり重厚感のようなものは感じたことが無かったんですけれど、このお話はいろんな意味で裏が有ったと思います。
単に私の憶測かも…というのも含めて、いろいろと。
エチも含めてすごく良い一冊でした!

3

美しいけれど、寂しい花

心にどこか寂しさを抱えた人、ヤンデレがとても読み応えのある砂原さん作品、今回もグイグイとひきこまれました。
読み応えという部分では神に近い萌えです。

子供の頃ちょっとしたきっかけで仲良くなった裏に住むゴミ屋敷のジジイが、車に轢かれて亡くなった。
慕っていた弟と一緒に、絶対復讐してやる!との誓いを守るように5年後、その加害者である男へと接触するのだが、その男には奪うものは何もないほどに寂しい男だった。

どうして兄の悟が5年経って復讐しようとするのか、そこの動機が今一つ説得力がないのです。
運よく転職で時間に空きができたこと、多分本当に復讐しようとは思ってなかったかもしれないが、加害者がどんな生活をしているのか知りたかったのかもしれない。
それが一番大きかったのだろう。
ところが行ってみると、相手の志田は父親の経営する大きな事務所ではなく小さな流行っているとも思えない事務所を一人できりもりしている。
事務的で表情はなく、愛想もない。
人の気持ちとかを汲むでもなく、機械的・事務的、人づきあいがへたくそ。そして離婚したこと、生い立ちを知り、復讐しようにも何も奪うものがないことを知る。
意図的ではないにしろ、酔った時に勢いで、自分がこの志田の好きな人になれば、そしてそれを自分が裏切る行為をすれば復讐になるのでは?とそんな行為に及ぶ。

志田の人間性のおかしな部分、それの一言につきるが、こんな不器用、生きていくのにあまりに損だと思う。
何も言わないけど、自分の為より人の為を考えて行動している。しかし感情表現がないあまりに、それが人に伝わらず誤解を生んで、それでとても損をしている人生なのだ。
それに悟は気が付いてしまったから、その人の本当の良さを知ってしまったから、放っておけなくなってしまったんですよね。
そして本当に加害者だったのか、こんな人にひき逃げなんて出来るはずがない、そういう確信になっていくのです。
そうなると復讐の目標も目的も本当に失うことになります。

自分にどこが足りないのか、真剣に指摘してくれて、それが正しいことを知る結果がついてくると、自然に志田は悟を好きになっても当然なわけで、その部分についてはとても自然に入り込めます。
悟も兄気質なのと、無感情な志田が淫らなことをされて変わる表情、素直な言葉を発する姿を知り、愛おしくなっていく部分も不自然さはありません。

もし愛する人と他人が死の危険にあったときどちらを助ける?という質問に志田は「わからない」と答えるが、まさにそれが現実で起きた時志田は自分の身を呈して二人とも助けることになる、この姿に志田の本質が表れているいいエピソードでした。
志田を慕う高校生のカスミ、その母親など、ちゃんと志田を見ている人もいると言う設定。
淡々と静かに復讐というテーマを掲げながら、志田という人間の救済の物語になっていました。
また心に残る物語が一つ増えました。




3

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