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表題作背徳のマリア 上

黒崎結城,外科医,和己の実兄
黒崎和己,高校生,結城の実弟

その他の収録作品

  • 人魚の声が聞こえる
  • 体温は証明する
  • 背徳のマリア 追憶

あらすじ

結婚式の最中に失踪し、死を選んだ医師・佐伯彰。そして親友の早坂圭介は数奇な運命に翻弄されてゆく--。禁断の愛に身を落とす男たちの哀しくも美しい愛を描いた医療サスペンスロマン。「龍と竜」シリーズの黒崎医師の原点がここに……!
書き下ろしも収録!
(出版社より)

作品情報

作品名
背徳のマリア 上
著者
綺月陣 
イラスト
AZ Pt.(AZ Pt ) 
媒体
小説
出版社
海王社
レーベル
ガッシュ文庫
シリーズ
背徳のマリア
発売日
電子発売日
ISBN
9784796401746
4

(54)

(31)

萌々

(7)

(9)

中立

(2)

趣味じゃない

(5)

レビュー数
14
得点
212
評価数
54
平均
4 / 5
神率
57.4%

レビュー投稿数14

自分には合わなかった

自分は特殊な作品で、男性の妊娠描写がある、という程度の予備知識ではあったもののもっと知らない方がよかったな…でも知らなかったら興味を持ってないしな…あるいはもっと知ってても良かったのか?

まず、『人魚の声が聞こえる』から上下巻通して一つのお話で(まぁ一つのお話といえば一つのお話なんだけど)早坂が主人公だと思い込んだのが良くない。しかし誰を主人公と思えば良かったかというと、登場人物の誰にも惹かれる人がいなかった。
BL小説を期待して読んでるのに男女の濡場が延々と繰り返されるのも辛い。BL小説だと思わず読んだ方が自分にとっては良かっただろうけど、一般小説として読むには医療描写の重みが足りない。
自分には合わなかったレビューということで、悪しからず。

0

異色作

BL小説というジャンルの中に一石を投じた異色作でもあり、意欲作でもある1冊かなと思います。
人によっては大地雷があちこちに埋め込まれていそうな設定のオンパレードといったところですが、人間の狂気をも孕んだ執念と情念の描き方が濃厚で、非常に読み応えのある1冊でした。
話が面白ければなんでも来いな方はぜひ。面白いですよ。

まず、こちらの上巻でメインに描かれているのは表題作ではなく、主人公が異なる同時収録作「人魚の声が聞こえる」「体温は証明する」です。この後に続くのが表題作である「背徳のマリア 前編」となります。
前半2作は表題作への序幕といったところでしょうか。
しかしながら、没頭して読ませてしまう確かな文章力と胸が詰まる心理描写が見事で、序幕と言うにはなかなかにパンチの効いた濃厚作かと思います。

「人魚の声が聞こえる」
晴れやかな結婚式。鳴り止まない拍手。幸せの象徴。
新郎である親友は突如として姿を消した。
そして2ヶ月後、思い出のビーチハウスに流れ着いたのは変わり果てた親友の骸だった。
亡くなった親友・彰との思い出の地で、抜け殻のようにぼんやりと過ごす外科医の圭介の前に現れたのは謎めいた1人の女性。
口も聞けず、身元も分からない。まるで御伽話の人魚姫のような彼女との奇妙な生活を送る中で、やがて圭介は親友の面影を重ねてしまうようになる。

なんだかすごい作品でした。なにがすごいって、死してなおこれほどまでに圭介の中に入り込んでいる彰が。
あの時、あの瞬間、彰はどんな表情をしていたか。ほんの些細なことまで思い出せる圭介の苦悩と、ミステリーのような雰囲気に夢中になって読みました。
あまり書いてしまっても面白くないと思いますので…ありきたりな言葉になってしまいますが、愛の形というのは本当に様々だなと。情念を感じるほどの哀しく深い愛でした。

続く「体温は証明する」では「人魚の声が聞こえる」に登場した、同期の外科医・安藤視点メインで語られるその後のお話。粗野な安藤の視点が意外なほどに切なく、安藤ではないもう1人の視点で描かれる心情も胸が苦しくなる痛みがあります。
この後に続く「背徳のマリア」の狂気も垣間見れ、一体どんな話が待ち受けているのか…と思いつつ、読み終えた頃には安藤のことをすごく好ましく思っている自分がいました。
患者という第3者を交えてのストーリー展開が上手い短編。

「背徳のマリア」は、体温は〜から少し前のお話。
ページを捲ってすぐ、1ページ目からこの作品に漂う危うい香りに気が付いてしまう。
安藤が病院に居られなくなったとある出来事。
義兄弟ではない、実の兄弟の禁忌と狂気。異常な愛の行方がどうなるのか…非常に気になるところで下巻へ続くとなっています。早く読みたい。

「背徳のマリア 追幕」は、人魚の声が〜に登場した彰視点の過去のお話。
何気ない一言にときめく淡い恋から、彰の圭介への恋情の形が次第に変化していく様が見事です。
愛しい人は少しばかり鈍感なほうがいい。たった一言に込められた想いがあまりにも苦しい。

2

まさに、医療サスペンス

この本は2CP出てきます。まずは「人魚の声が聞こえる」、「体温は証明する」の医大時代からの同級生同士、現外科医の早坂圭介×佐伯彰

本当ならば幸せの絶頂である、結婚式の当日に姿を消した新郎の彰。その2ヶ月後に変わり果てた姿で帰ってくる。その結婚式の1年後に彰とそっくりな全裸の女性が2人の思い出の場所で圭介の前に現れる…というもの。

読んでいて、これはBLなんだろうか?もしやファンタジーの話かな?と思っていましたが、ちゃんとBLでした。この話はネタバレなしに読むことを推奨します。


そして表題作「背徳のマリア」は黒崎結城×黒崎和巳の10歳差実の兄弟。これは「人魚の声が聞こえる」の圭介×彰は出てきませんが、2人を1番近くで見守っていた安藤という2人の同期が出てきます。

和巳が高校3年になった時、腎バンクのために健康体ながら腎臓摘出手術を受けることに。凄腕の兄が執刀するかと思われたが、執刀を任されたのはより腕が立つ安藤で…。これもネタバレなしに読むことをオススメしたいので、多くは語れませんが。

言えることは、どちらのCPも狂気を孕むまでのすごい執着がなせる展開ということ。人によっては地雷ともなりかねませんが…普段と違う、ちょっと刺激が欲しい小説読みさんには挑戦してみて頂きたい。

2

鈍感なのは幸か不幸か

 兄弟BLを求めて購入しましたが、想像以上に禁忌がてんこ盛りで衝撃的な作品でした。
 元々、女体化やオメガバースというジャンルに苦手意識があるので、本作品も本来は地雷でしかないのですが、性転換や男性妊娠について、作者の文章力によって現実的に落としこまれており、妙に納得させられながら読み進めることができました。

 表題作である「背徳のマリア」は前編のみ収録されているので、黒崎兄弟については下巻に書きたいと思います。
 ということで、以下は「人魚の声が聞こえる」「体温は証明する」「背徳のマリア 追慕」についての感想です。

 圭介は鈍感だと本編でも散々書かれていましたが、そんな彼がモテるのも、彼を好きになった彰の気持ちもよく分かります。
 きっと圭介は彰に限らず、たくさんの女性からの好意にも気付いてこなかったんだろうなと想像が容易い中で、彰は圭介の親友というポジションを死守し、友情の範疇を超えた行為をやってのけながらもそれだけでは飽き足らず、圭介に愛されたくてたまらなくなってしまいます。
 もっと、もっと、と強欲になるのはよくある話だけど、彰は重度だしやり口が汚いですよね。
 まず当初考えていた自殺計画。圭介に「親友の死」という傷を一生背負わせる気満々ですよね。
 自分がスピーチまでして祝福した結婚披露宴の後で自殺されたら誰だってトラウマになるし、実際は生きていたにしろ、真実を知るまでの圭介も、列席者も、何より新婦とその家族が本当に気の毒です。
 自殺をやめたなら、死亡じゃなくて失踪扱いでは駄目だったのか? 彰は全てを捨てて圭介と結ばれたから幸せだろうけど、安藤や彰の父を犯罪に荷担させたり、真実を知らない多くの人たちはこれから先も彰が自殺したことを思い出しては気分が沈むことをくり返しながら生きていくのかと思うと、彰のしたことは自分本意で許されないことだと思います。
 まあ、安藤理論だとそれもこれも圭介が鈍感なのが悪いんでしょうけど。
 女の姿になってからの彰も、全裸で圭介の前に現れたり、正体を隠したまま圭介を誘惑して肉体関係を持ったりと肉食全開ですが、真実を知られても肉体関係という既成事実さえあれば圭介は責任を取ってくれるだろうという打算があったのではないかと邪推してしまいます。
 圭介自身も男同士の恋愛という発想がなかったからか無意識に彰への恋愛感情を封じ込めていたみたいなので、結果的には彰の行動は無駄にはならずにすんで良かったですが、もし圭介に恋愛感情がなくても先述の通り圭介は彰と一緒になることを選んでいたような気がします。
 死んだと思っていた親友が生きていたけど、あくまで死ななかったのは彰が女だったら女房にしたという圭介の発言に希望を見出だしたからであって、もし彰の気持ちを受け入れなければ今度こそ本当に自殺してしまうかもしれないという恐れも少なからずあるでしょうし。
 彰は圭介に同情されたくないからずっと告白しなかったそうですが、結局彰は声が出せなかったにしても自分では何も打ち明けず、安藤のお節介によって圭介の同情を上手く誘ってくっついたようにも見えてしまうんですよね。そういうところにズルさを感じてしまいます。
 彰の重い愛やぶっ飛んだ行動にドン引きしてしまいそうですが、幸いにも圭介は鈍感で誠実でメンタルが強いのでそんなことはありませんでした。
 そもそも鈍感でさえなければ、圭介は彰に好意を持たれたりあんなにも執着されることもなかったのでは……というのはあまり考えない方がいいですね。
 破れ鍋に綴じ蓋なお二人でした。どうかお幸せに。

 私は最初の視点の人物に感情移入しがちなので、圭介の肩を持ちながら彰に対して厳しい意見を書きましたが、彰に共感できる部分はたくさんあったし、何より私は執着愛やヤンデレが大好きなのです。
 初見は真実を知った後の圭介と彰が結ばれた場面に感動したし、最後の掌編もキュンとしました。
 
 グロテスクだったり倫理に反した部分もしっかり書かれているのもあって全体的に薄暗い話ではありますが、甘々で幸せいっぱいなBL(大好物です)以外に、たまには思いっきり刺激的な作品にも挑戦してみたい方におすすめです。

2

男性の妊娠出産

男性の妊娠出産はもうSFじゃなくなっています
背徳のマリア  → 龍と竜 虹
謎の黒崎医師は、竜と竜にも登場するマッドサイエンスな美貌の医師というキャラ。

上:目次は下記
人魚の声が聞こえる:安藤の執刀で性転換手術をした彰はとても深く圭介を愛している
体温は証明する: 北海道の診療所で働く彰たち。子宮外妊娠で死産した胎児をなでる彰。
背徳のマリア(前):男性に受精卵が着床できるか実験を繰り返す黒崎と安藤

二つ目までの話はプロローグ。彰の性転換の話。
安藤医師の執刀で性転換はできたけれど、妊娠と出産能力迄は作れないことに彰は悩む。愛する人の心をつなぎとめたくて、出産を願う彰。慰める安藤。彰の悩みに全然気づかない鈍感な圭介。

そして「背徳のマリア」は、実際にやってしまった兄弟の話。
男性の体で妊娠出産が可能か、物語の中で研究して成功させる黒崎と安藤たち医師。体を提供した実験体の弟
安藤は天才的な外科医師。

この作品は、2011年に発行されています。
その少し前に、実際に可能だと論文が英国で出ているんです。サスガ英国、ルナティックのマッドサイエンスは今も健在。男性の妊娠出産は、妄想や空想じゃない件。
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1999/03/22の記事から一部抜粋。
【イギリス】体外受精の先駆者・男でも妊娠可能な医療技術を発表
最新の医療技術を使えば男性が妊娠して赤ちゃんを産むことも可能―。2月21日付の英日曜紙サンデータイムズは、イギリスの体外受精の先駆者のひとりであるロンドン大学のロバート・ウィンストン教授のこんな常識を覆す見解を紹介した。
教授によると、体外受精した胚(はい)を男の腹腔内に移植し、大腸などの内蔵に「着床」させる。胎児は胎盤を通じて大腸から栄養分を吸収して成長、臨月を迎えたら開腹手術で取り出す。男性には流産を防ぐため大量の女性ホルモンを投与する必要があるが、原理的には女性の子宮外妊娠と同じ。実際に・・
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BLのΩバースも、今はまだ笑い話のSF想定ですけれど、科学と医学の進歩は馬鹿に出来ない。いつか現実に普通にあり得る話になっているかも?
・・ということで、「背徳のマリア」の物語は、実際にあり得る話。作品の中で、性転換した搭乗人物が夫々背徳感に悩む場面がありますが、純愛故に求める、深刻な悩みは愛が理由。美しいと思いました。
もう少し先の未来は、それは当たり前で悩まない現実になっているかもしれない。

丁寧な構成でミステリアスな内容に組み立てられています。誤字も文法も、オカシイ所が無いので、安心して読めました。面白かったよー!

神。

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3

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