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表題作背徳のマリア 下

黒崎結城,外科医,和己の実兄
黒崎和己,高校生,結城の実弟

同時収録作品背徳のマリア~Mary Magdalence~

早坂圭介,外科医,34歳
佐伯彰,外科医,34歳

同時収録作品背徳のマリア~Mary Magdalence~

青年たち
佐伯彰,外科医,34歳

その他の収録作品

  • 背徳のマリア 旅立ち
  • あとがき(綺月陣/AZPt)

あらすじ

「私はお前と一体になりたいんだ」結城の歪な愛情表現が行き着いた先にあるものは?「龍と竜」黒崎医師の原点がここに!

T大学医学部外科医の早坂圭介は、謎を残したまま失踪した大親友・佐伯 彰を想い、苦悩していた。そんなある日、圭介の前に彰そっくりの美貌を持つ「あきら」が現れて――?

許されない愛に身を落とした男たちの切なくも美しい軌跡を描いた幻のデビュー作、完全復活。書き下ろしも収録!
(出版社より)

作品情報

作品名
背徳のマリア 下
著者
綺月陣 
イラスト
AZ Pt.(AZ Pt ) 
媒体
小説
出版社
海王社
レーベル
ガッシュ文庫
シリーズ
背徳のマリア
発売日
電子発売日
ISBN
9784796401777
4.1

(56)

(39)

萌々

(4)

(3)

中立

(5)

趣味じゃない

(5)

レビュー数
14
得点
225
評価数
56
平均
4.1 / 5
神率
69.6%

レビュー投稿数14

上巻同じく

上巻であまり乗り気のレビューを書いていない通り、下巻も同じく神評価レビューが並ぶ中にノリ悪いです。
皆さんはどこに良さを感じているのか知りたくて、レビューを拝見してきました。うーん……やっぱり好みの問題かなぁ。
地に足のついたリアルを感じる作品が好きで、彼らにリアルは感じられなかったというのが一番かもしれない。ラスト、狂気をなんとなく良い雰囲気のところに収めてるけれど、自己中心的な愛ばかりだなぁっていうスッキリしなさ。そんな愛ばかりをえがいた作品でも面白く読めるものもあるけれど。上巻レビューに書いた「登場人物の誰にも惹かれる人がいない」ってところに尽きるか。
すみません。こんな感想もあるよってことで。

0

めちゃくちゃ面白かったです。これに尽きる(サムズアップしながら)

上下読み終え、ほかの方があらすじなど書かれていらっしゃるので、読了後の感想のみで。


衝撃作だということはずっと噂などから見知っていたのですが、まさか2つのカップリングのお話が収録されていて、それぞれがこういう結末を辿るとは予想もしていませんでした。


愛って本当に難しい。


狂気になったりするもし、淋しさを分け合う愛にもなったり、ひょんなことから変わってしまったり、ずっと変わらないものだったり。


今作は、BLという枠で収めるにはとても勿体ない、エンターテイメント性溢れるとても面白い作品でした。


純粋に溺愛甘々BLがお好きな方などには、色々地雷になりそうな内容ではありますが、あまり地雷がない方であれば一度は読んでみてほしい、色々「愛」について噛み締めながら読んでほしい作品だと思いました。


綺月先生のお誕生日におたおめ読書として選んだ作品でしたが、私はとても好きな作品でした。





1

数十兆個からなる愛の果て

好みか好みではないか。評価が分かれる作品が好きです。
正直、上下巻共に萌えという言葉がこんなにも似合わない作品はあるのだろうかと思うのです。
人によってはいたるところに劇薬がごろごろと落ちているような、かなり人を選ぶ特殊設定と展開のオンパレード。
ディープ中のディープというか、2023年現在の商業BL小説の新刊としてはまず積極的には出版されない題材なのではないでしょうか。
設定も展開も狂気と狂愛をたっぷりと含んだもので、喉ごしが良いかと言うと決して良くはない。けれど、読み終えた頃には常軌を逸した破滅的な愛が描かれたこの怪作にすっかり魅了されている自分がいました。

背徳のマリア上下巻の主人公は安藤なのかもしれません。
それぞれ禁忌を犯した黒崎兄弟と佐伯彰。上下巻で語られるどの現場にも彼がいて、彼なしではもっと燦々たる結末になっていたのかもしれないと思うほどです。
上巻を読んだ際に、序幕のような圭介と彰のエピソードが「背徳のマリア」にどう繋がって来るのかが疑問だったのですけれど、下巻を読んでこう繋げるのかと狂愛のリンクに衝撃を受けました。見方によっては負の連鎖にも見える、どちらも濃厚な愛が描かれています。
一般的に、愛というのは美しく素晴らしいものなんて印象がありますが、中には黒ずんでいたり、歪だったり…それこそ人の数ほど形が異なるのが本当に不思議ですよね。数十兆個の細胞から出来た肉体でしかないのに、こんなにも個々が持つ愛は違うのかと。
一般的ではない歪な愛情だらけが渦巻く彼らの生き様は、私にとっては決して悪いものには見えませんでした。

上下巻を通して読んで、黒崎兄弟と圭介と彰のエピソードのどちらに惹かれたかと考えると、やはり私は彰かなと。
彼の執着をも超えた、文字通り人生をかけた圭介への哀れで愛おしい盲愛からは目が離せず、その壮絶な愛の果てを追いかけてページを捲りました。
終盤の圭介の行動に関してはやや疑問が残りますが、この結びはとても幸せな図に思えます。
彰の凄みに対して、個人的にはちょっと圭介のキャラクター像が薄かったかなだとか、安藤の方が良かったのではと思いつつ…これはもう彰が好きな相手なのだから仕方がないかな。外野がなんやかんやと言うことではありませんね。

こちらの作品が実質のデビュー作と聞き、改めてすごい作家さんだなと感じます。既刊を追いかけたくなりました。
人間の明るくはない部分の感情が大きく渦巻く、非常に濃密な2冊でした。

2

上下巻を読み終えた人しか分からない、このクソデカ感情…

 上下巻を読み終えました…。頭がグルグルしています。あまりのディープさに疲労感がすごくて…。過去にこの本を読んだ同志達に親近感すら覚えます。
読書体験といえど、インパクトは大きかった…。
人は思いっきり選ぶ作品です。

BLというジャンルで語っていいのか迷うところですが、愛において形に拘り続け、人の道から外れた男達の壮絶な本能の闘いの物語でした。今でこそLGBTと問題が語られますが、この作品が発表された年を考えると、余計に問題作だったのでは。。今でも十分驚きますが。

 荒唐無稽な設定なのに、どこか説得力があり、医療ものとしても読み応えがあるので、引き込まれてしまいましたね。ただ愛のためにここまで人はエゴイストになれるのか、そこまで相手は望んでいたのか、、。周りを巻き込んでいいのか。
ご都合主義で終らず行動の後の葛藤や結果もしっかり描かれているので、読者が置いてきぼりになる事はなかったです。医療が進みすぎるのも倫理観との抵触の問題があり怖さがあります。それでも人類は「種の保存」の為に歯止めをかけずにますます進歩していくのでしょうけれど。

 性○○も大きな題材なので、女体とか異性愛描写が苦手な人には地雷要素も満載です。
当方もそういった話が苦手なので、最初マーメイドの話を読み出した時は「えっ…」という感じで戸惑いを覚えましたが、彰、圭介、安藤の関係性にブロマンスを感じ不思議と挫折はしませんでした。
彰達の話は昭和のBLの常套文句で「この人が男でも女でも愛してた」が流行していましたが、「好きな人に愛されるために性○○出来ますか??」という命題をこの作品は投げかけてきます。

このシリーズ(?)の重要な要素を占める表題作の黒崎兄弟の「背徳のマリア」を読み出すと、怖いもの見たさで夢中で読み進めました。黒崎兄弟の話は倒錯度が高い話でしたが、BLなのでドン引きしつつも惹かれる部分もありました。

「背徳のマリア」がスゴい話で、そのあと彰、圭介、安藤の話に戻って、このまま穏やかに話は終わる時思いきや、彼らの驚くべき選択の数々に振り回される読者。。
黒崎兄弟にも負けぬディープな狂気の世界がここにありました…。
最初のマーメイドの話で挫折せずに最後まで踏み留まって欲しいです。

 意外にこのシリーズのブラックジャック的存在の安藤がいい味を出してました。影の主役。
彰への想いとか泣かせるし。何よりも安藤がピグマリオン的立ち位置なので、彰と圭介が愛し合っている時ですら安藤の影がちらついて(笑)。実は2人は安藤の掌で転がされてるのでは…と思ってしまいました。
この効果も狙われたものでしょうか。これも新しいBLの関係性だと新しい扉が開かれた感があります。
またこのシリーズで数多出てくる「共犯関係」。個人的にこの関係性に弱いので安藤周辺でも色々萌えに忙しかったです。

どれも常軌を逸した話ですが、ここまで完成度を高めて生み出した綺月先生と編集者様方に脱帽です。

1

強欲の罪と罰

 上巻も衝撃でしたが、下巻はさらに衝撃な内容でした。
 話の流れを重視してまずは「背徳のマリア 前編・後編」と「背徳のマリア 旅立ち」の黒崎兄弟からにします。

 上巻の感想にも書きましたが、私は兄弟BLを求めて本作品を購入したんです。
 妊娠するという情報だけは知っていたのでどんな話だろうと好奇心いっぱいでしたが、上巻の「体温は証明する」の中で黒崎兄弟の悲惨な末路を事前に知らされていたので、本編を読む時は少し勇気がいりました。
 どうすれば黒崎兄弟の悲劇を防げたのかと読後も考えてしまいますが、本編が始まった時点ではもう結城の暴走は止められなかったでしょう。
 正直、和巳の手紙の場面まで結城の愛情を理解できていませんでした。
 冒頭の研究記録や結城と安藤の会話で人類の進化を語っているのを見せられているので、不憫な和巳が自殺を選ぶのも仕方ないと思っていましたが、それはミスリードだったのかもしれません。
 母が亡くなった時の結城の異常な行動を見る限り、結城の和巳に対する執着は家族愛の延長から始まったと思われます。
 たった一人の家族を失いたくないという一心で医大へ進路変更し、和巳の健康診断を毎週行い、二人の血を分けた新しい家族を誕生させるために和巳の精子採取を始めて……。
 その過程で和巳は結城に一人の男として想いを寄せるようになりますが、結城は和巳のキスや性処理には応じても、それ以上のことはしないし言葉にもしないので本当の気持ちが見えません。きっと結城自身も分かっていなかったのでしょう。
 それでも和巳は結城の一挙一動に愛情を見出だしたり、女とやったと嘘をついて結城に手をあげられた時に自分は愛されていると泣いて喜んだり、とても意地らしいのです。
 そんな和巳の気持ちを理解しようとせず、二人の子供を誕生させることに囚われて研究第一にしか見えなかった結城はもっと自分の気持ちと向き合うべきだったし、子供のことも和巳に伝えるべきでした。
 黙って受精卵を移植して、手術後からあからさまに優しくして、妊娠を知られてから愛してると言ったり抱いたりしていたら、そりゃ研究のために和巳の機嫌を取っているようにしか見えませんよ。
 これでも結城自身の無自覚な本心としては、愛する和巳との子供ができたことで舞い上がっている夫状態だったんですかね。
 何年も夢見ていた目標の終着点が見えてきたことによって結城の心に余裕ができたから、その隙間に和巳への愛で満たされて抱くことができたのかなと解釈しています。
 でも和巳は子供がほしかったのではなくて、もっと早く結城に抱かれて愛し合っているという証だけがほしかった。安藤の言葉を借りるなら、結城の体温で幸せを感じたかった、かな。「ひとつになる」の解釈違いが切なかったです。
 悲劇後の結城の精神崩壊も辛いし、精神病院で再会した時の反応で結城の本心を知った和巳もまた辛いですね。
 和巳の安藤への手紙(追記の前科は気にしないの部分は遠回しに脅迫しているようで笑いました)で希望のある結末だと安心しきっていましたが、下巻最後で、十何年経っても結城は精神病院の中にいて癌で治療の手立てがない状態だったのが悲しかったです。
 和巳が別れを告げても、赤ずきんの人形を優しく抱っこしながら和巳の子だと言い続ける結城の場面に一番胸がつまりました。和巳は堪えたけど私は泣きました。
 結城の夢を叶えるために結城とお別れした和巳。産まれてくれるならどんな命の形でも必ず守り幸せにすると決意した和巳。
 やっぱり黒崎兄弟の根底にあるのは家族愛ですね。一生切れることのない唯一無二の素敵な絆だと思います。
 辛い話だけど和巳の強さに救われ、最後の最後まで希望を持たせてくれました。
 どうか結城の分まで長生きしてほしい。そして子供と一緒に幸せになってほしい。いや、彼なら絶対に幸せになれると信じています。
 最後に。別作品に和巳が出ているみたいなので非常に気になります。

 次は「背徳のマリア~Mary Magdalence~」の感想です。
 こちらも辛い展開が多かったですね。彰が輪姦される場面は読み返せる自信がありません。
 彰は圭介じゃないと駄目なのは重々承知しています。それでも言いたい。彰が本当に必要なのは安藤だよ、と。
 彰が愛以外の感情をなりふり構わずぶつけるのも、失意のどん底にいる時に頼るのも、いつだって安藤なんですよ。
 輪姦の件も圭介に知られたくない彰の気持ちはよく分かるけど、真実を知らされずに愛する人の悲しみに寄り添えないのも辛いんですよ。結局これも安藤が圭介に言いました。おんぶに抱っこです。
 終盤の狂気の手術もずっと圭介のことを想っていたけど、物理的距離の問題で仕方ないとはいえ最後は安藤の名前を叫んだし、その安藤も受精卵の存在を圭介に言わずに一人で感極まっているし、圭介だけ蚊帳の外な場面が何度もあってさすがに気の毒でした。
 彰が戸籍上の死亡にしなければ、圭介は佐伯家の養子になることも両親を複雑な思いにさせることもなかったんです。圭介は嘆く母を説得できなかったけど、彰の存在を明かすことは安藤たちの犯罪が明るみになることでもあるんです。
 頼りないのは否めないけど圭介は悪くない。全ては強欲な彰がまいた種です。
 彰も精神崩壊してしまったけど、男の姿に戻り、圭介に付きっきりで介助してもらえて作中で一番幸せそうでした。
 圭介の心労が心配ですが、彼は彼で彰への愛情が増していて幸せそうです。男同士の恋愛なんてありえないと言っていた頃が嘘のようですが、彼の順応性の高さも鈍感力のひとつだと思います。
 安藤も彰に一生付きまとうみたいだし、どんな壁も乗り越えていけるでしょう。
 ここまで来たら全員に幸せになってほしいです。

 表紙も挿絵も良かったし、あとがきのAZ Pt先生の絵は最後まで読み終えた読者へのご褒美のようでした。
 感想を書かずにはいられない。そんな作品でした。

3

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