• 電子書籍【PR】
  • 紙書籍【PR】

表題作恋煩う夜降ちの手遊び

政治家 諏訪芳彦 
娼妓 藤野(眞琴)

同時収録作品恋煩う夜降ちの手遊び

財閥の御曹司 岩崎光士郎 
禿 椛 

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

若手政治家・諏訪芳彦は吉原にある男だけの廓「花降楼」から手紙を受け取る。差出人の名前は藤野。罠かもしれないと思いながら花降楼へ足を運んだ諏訪は、藤野が昔の顔馴染みと気づくが…。

作品情報

作品名
恋煩う夜降ちの手遊び
著者
鈴木あみ 
イラスト
樹要 
媒体
小説
出版社
白泉社
レーベル
花丸文庫
シリーズ
君も知らない邪恋の果てに
発売日
ISBN
9784592876724
4.1

(25)

(10)

萌々

(11)

(3)

中立

(0)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
6
得点
103
評価数
25
平均
4.1 / 5
神率
40%

レビュー投稿数6

切ない恋の駆け引きの先に・・・

花降楼シリーズ、第十弾!!
一応一巻完結型・・・とはなっているようですが、やはり全部読んだ方が絶対に面白いし、色々と感慨深くもなるので、花降楼シリーズの中でもし一冊でも気に入った作品があったら、その勢いで全巻読破を心からお勧めします。
かくいう私も今までは全部読もうとは思っていなかったのですが、久々に花降楼のお話を読み、やはり全作読もうという気持ちになったからです。
とりわけ今作は、前作とリンクしている部分が多いので、是非先に前作「臈たし甘き蜜の形代」(でもできれば、その前にシリーズ第2弾の「愛で痴れる夜の純情」も読まれると更に・・・)を読まれてから読むと更に楽しめると思います。

登場するキャラクター達の設定や、お話の展開がバラエティーに富んでいて、10巻目とはいえ、マンネリ感は全く感じさせません。

今回はもう藤野が良い人過ぎて、涙腺崩壊でした・・・
傾城というのは割と冷たくていじわるなイメージだったのですが、藤野は自分付きの子達にも優しくて、その子達の事を気にかけて心から大切にしているんです。
でも、長い事本当に好きで好きでたまらなかった諏訪様にはツンツンな態度を敢えてとるという・・・しかもその理由が健気で・・・
でも、その健気さを一切見せない所がまた切なくて・・・

最後に諏訪様とちゃんと気持ちを確かめ合えた時なんて、もう涙が止まりませんでした。

このシリーズ、本当に素敵です。


5

花降楼シリーズで一番好きです

ついに第十弾となった花降楼シリーズ。
私はこの作品が一番好きです。
攻めの諏訪も受けの藤野も完全に私のツボなキャラクターでした。

第九弾と関わりがかなり深くあるので、合わせて読むとより面白いです。


選挙で初当選したばかりの政治家、諏訪の元に花降楼の藤野と名乗る手紙が届きます。
なんだと思って訪れてみると、そこにいたのは昔良く遊んでやった眞琴。
諏訪はすぐに請け出し助けてやろうとしますが、眞琴ーー藤野はこの手紙はただの営業で諏訪に身請けされる気はない、あくまで客になってほしいだけだと言います。
そして大見世は色を売るだけではなく恋を売る場所でもある。
その中で、本当に惚れた方が負けの恋人ごっこゲームをしませんか、と持ち掛けるのです。

それから五年ほど経ち諏訪はすっかり馴染みになっていましたが、あと一年で藤野の年季が明けるということで二人の間に変化が…というお話です。


藤野は手紙をまるで色んな人に送ったかのようなふりをするのですが、実は諏訪にしか送っていません。
藤野は諏訪のことが、昔遊んでもらっていた時からずっと好きだったんです。
惚れた方が負けの~なんて言いましたが、最初から負けているんですね。
だから藤野は花降楼という場所や色子であることを利用して、諏訪と仮初めでもいいから恋がしたいのです。

藤野はまわりをよく見れているし、器用なんですよね。
政治家である諏訪に迷惑をかけないことを第一に考え、この恋人ごっこは年季が明けると同時にやめなければいけないことも分かっている。
恋人ごっこをしつつ、これはあくまで娼妓としての振る舞いだというのをちらつかせ、本当の気持ちをあくまで隠し通そうとします。
そして実際にうまく隠せてしまうのでした。

少しでも会いたいから花代をねだるふりをして誘い、何度も来てほしいから少しでも諏訪の金銭的な負担を軽くしようと気をまわしたり。
娼妓として外見を磨く時もずっと昔見た諏訪の彼女たちを思い浮かべ近づけるように努力していたり、すごく一途で健気で可愛いんですけど、そういうことも絶対に諏訪には気付かれないようにしていて。

諏訪も、藤野が惚れるのも納得のいい男でした。
軽い所はあるんですが不誠実ではないし、あたたかい家庭で仲の良い両親に育てられた人特有のおおらかさや優しさを持っています。
藤野の本当の気持ちが中々掴めないのですが、それも諏訪が鈍いというよりも藤野が隠すのがうまいだけといった感じ。

藤野があくまでも恋を廓の中だけで終わらせようとしているのは諏訪のためを思っているのもありますが、実は自分に自信がなくて、諏訪が自分を好きになるはずはないと思っているからというのもあるんです。
でもそんな藤野に、諏訪は正面から信じてくれと言うんですよ。
そこがすごく良かったです。


このお話を読んでから第九弾を読み返すと、そこに出てくる藤野と諏訪がどんな状況や考えでその台詞を言っているのかが分かって、また新たな楽しみがありました。

4

遊びに隠した本気の恋心

養子先の呉服店でなじみ客だった攻め様に
恋心を持っていた受け様は養い先が倒産した為
借金のカタに男性相手の遊郭に売られ、数年経ち
独り立ちした一人前の娼妓になっていたが
同じ仲間の娼妓から昔の知り合いに営業でも
してみたらと言われ、心にいつもあった人へ手紙を。
それは現在は新人議員として活躍している攻め様で
受け様の忘れられない初恋の人だったのです。
気の無いそぶりで、遊郭のお遊びと仄めかし
攻め様と廓内での恋愛遊びを仕掛ける受け様。
もともと、女好きの遊び好きな攻め様はのせられるように
受け様との恋愛ゲームをする事になります。
賭けは受け様が負けたら攻め様の名前を呼ぶ事で
攻め様が負けたら衣装を贈ることに、
賭けの内容は本気になったら負けで・・・
でも受け様は初めから負けているのです。
かりそめでもいいから恋人としてのひと時を
過ごせたらとの健気な思いで・・・

この受け様は、典型的なツンデレさんです。
攻め様はヘタレ気味で変に鈍い人なんですよね。
それでも、そんな賭けから5年物月日が流れて
受け様も年季明けまで1年を前にして進展が
攻め様に好きだと、賭けは負けたと言われますが
攻め様には将来ためになるであろう縁談がある事を
知り、攻め様からの言葉に歓喜したい程嬉しいのに
攻め様の事を思って娼妓ならではのはぐらかしを、
でも攻め様はそれが受け様の本心だと思ってしまう。
なんで判ってやれないの?って思うくらいです。
そして議員としての攻め様に危機がせまり
受け様は捨て身で攻め様を守ろうとして・・・

この受け様はあっぱれなほどギリギリまで本心を
隠す筋金入りのツンデレさんでした。
それがなんとも健気で、そして臆病で・・・
とっても可愛い受け様でしたね。
最後まで楽しく読める内容でした。

5

さらりと妖艶…妓楼の白蛇はアンニュイな天才

「花降桜」シリーズ・第10作目です。
さて今回の美妓は、惚れた腫れたもさらりとあしらい、モノも判った大人顔、
妖艶なことこのうえないけど、実は健気な藤野にございます☆
シリーズも10作目にして、やっと登場しましたよ、本当に娼妓らしい娼妓!
この「花降楼」シリーズってば、絢爛豪華な遊郭にも関わらず、
登場人物ことあるごとに、とてもおぼこい乙女なんですねぇ~
でも…この藤野だけは、ちょっと例外。乙女じゃなくてオンナな奴。しかもオトナ。
(↑いえ…BLだから男なわけだけど、心は相当に婀娜なオンナ。)
ひょっとしてひょっとすると、シリーズの受様達の中じゃダントツで..
この仕事向いてるんじゃないんだろうか!? …とすら思ってしまう。
いけいけどんどんな椿よりも力抜けてて、男にすがる玉芙蓉よりも本心は見せない。
絶世美人の蜻蛉よりも格段に空気読んでて、面倒見の良い綺蝶よりは個人プレーっぽい。
娼妓としての振る舞いに、とことんバランスが取れてるんですよ、この人は!
骨の髄までプロの娼妓、だから恋のスタートにも、こう言うんです。
「大見世では恋を売るんです。仮初めの恋ですけどね。」
恋も気の効いたゲームと断言して憚らないあたり、妖艶にゲーム指南として語るあたり、
もうゾクゾクするくらいの娼妓のプロ根性…もとい矜持なんですよねぇ。
…なのに中身は(これまた)純情乙女ときました☆
ここまでくればもはや、娼妓の天才というよりもオンナの天才!
好感度100%っていうわけじゃないけれど、読者はその手管発言に舌を巻く。
なかば嫉妬ぶくみ視線でもって「かなわないなぁ~」と唸らせる。
読者にそこまで思わせる受様は、やはり妖艶受の天才なのでありました。
対する攻様・諏訪氏だって、こちらなこちらでなかなかのもの。
好き者だけど善い人。おおらかで気取らず素直で、イケメンで代議士。
さっさと遊郭に通うくらいにゃずうずうしいけど..
廓で受様相手に慣れた軽口叩くくらいにゃ…フランクな男。
要するに「ものの解った風」なカップルなんです、彼らは。
解かった風なカップルが、それでもこじれていくから面白い(苦笑)
「花降楼」きっての大人の恋、楽しませていただきましたよ。
さて…アノ場面ですよね~お楽しみの☆
初めての夜が、1番色っぽかったなぁ~挿絵も。

5

美貌の白蛇と良家出身の野暮天とのシーソーゲーム

大人気花降桜シリーズの第十弾。

客あしらい、芸事や恵まれた美貌と娼妓のお手本になるような妓、藤野。
白蛇のような絡みつくような妖しい艶めかしさを持つベテランです。

お相手は代々政治家を輩出する名家の諏訪さん。
こちらは三世議員と地元の基盤ががっちりと固まっており、盤石。またハンサムな顔立ちから婦人票も多く集めて当選した新人議員さま。

お話の内容はあらすじが書いてあるので省略して、感想を書いていきますね。

全花降桜シリーズの中で一番色気のあるキャラクターといえば綺蝶かな、というのが今までの感想でした。綺蝶って攻めキャラなんだけど不思議な色気がありましたよね。喘ぎもしないんだけど。
しかしこの恋煩う~を読んでからは藤野が一番だと思い直しました。藤野さんの床での乱れっぷりがすんばらしいんです。…いやね、色気がベットでの情事のみで判定されるものとは思っておりませんがね。それを差し引いても藤野さんの感じっぷり、乱れっぷりは鼻の下がのびるものがありました。諏訪さんがデレっとしてしまうのは仕方ない!(笑)
「気持ちいい、どうにかなりそう」とか言わせたくなる妓です、藤野さんって。

藤野さんのエロさを熱く語っちゃいましたが、それだけではありません。
駆け引きをお客さんに楽しませれる娼妓のお手本のような妓なんです。そしてそれを本当に愛してる諏訪さんにも演じようとするんですよね。でも、完璧に恋心を隠せてない所がよかった。自分でも器用なことを自覚していて、他のお客さんなら上手に実践できるんですけどね。
これが相手にも周囲にも気持がバレバレで自分だけ隠してるつもり、だったらこんなに萌えなかっただろうなーと思います。「多分好きなんだろうけど、でも言い切ることはできないなぁ」というのが良かったんです。

会いに来た時の零れる笑み、余計なお金をつかわせないように気を配ることや贈り物よりその分会いに来て欲しいという言葉から諏訪さんにも薄々気付かれてましたしね。…といっても半信半疑でしたが(笑)「……多分俺のこと好きだろ!…たぶん。」というような感じだったんじゃないかと。


そして、このカップルの恋模様は大人がする恋愛だったように思います。
「好きになった方が負け」という前提もあるせいかお互いの気持ちを探り合う描写や、ただ自分の気持ちを押し付けるだけではなくて相手のことを思いやるシーンが多かったせいかしら。(前者は諏訪、後者には藤野に偏っていましたが)

藤野にとっては恋愛ごっこなんて会い続けたいために出た言葉で、もちろん本当に恋人になりたいなんて思っていません。自分を好きになってもらう駆け引きなんてするつもりないんですよね。色子あがりの自分が年季が明けても彼の周りをウロウロしてたら進退に関わってしまう。だからせめて年季までは自分のもとに来てくれたら、抱いてくれたらと決めている。
一方諏訪は昔可愛がっていた子がいきなり色子として手紙を送ってくる。なんとか苦界から助けてやれないかと会いに行ったら娼妓として対応され、その場は言いくるめられてしまう。それからも会いに行き続けるが、演技とは思えない時折見せる藤野の感情に淡い期待をしながら段々と気持ちが傾いていって…。

って、大人の両片思いそのものですよね~。



まさに恋煩う夜降ちの手遊び、でした。
秀逸なタイトルです。

その後の二人も見たいな、と思えるカップルでした。

4

この作品が収納されている本棚

マンスリーレビューランキング(小説)一覧を見る>>

PAGE TOP