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表題作坂道のソラ

大柴賢司,33歳,IT関連会社の副社長
河野一吹,一人暮らしをしている高校2年生

その他の収録作品

  • あとがき
  • 三年後のソラ

あらすじ

恋は、夜のバスの坂道みたいに寂しいものだと思っていた。高校生の河野一吹は、毎朝バスで乗り合わせる会社員の大柴賢司と親しくなる。悩みを抱えていた一吹を彼は優しい言葉で救ってくれる人だった。やがて互いを深く知ったふたりは自分を変えるために彼女をつくろうと約束する。しかし賢司と過ごすにつれ、一吹は自分の恋がとても近くにあることに気づいてしまい…。

作品情報

作品名
坂道のソラ
著者
朝丘戻 
イラスト
yoco 
媒体
小説
出版社
フロンティアワークス
レーベル
ダリア文庫
シリーズ
坂道のソラ
発売日
ISBN
9784861346330
4.1

(244)

(139)

萌々

(55)

(21)

中立

(6)

趣味じゃない

(23)

レビュー数
29
得点
984
評価数
244
平均
4.1 / 5
神率
57%

レビュー投稿数29

切なさに共感

大好きな作家さんです。
今回もいつも通り、というより、いつも以上に切なくて、
読後は温かい気持ちになりました。

考え系の受だけどイラっと来ることはなく、むしろ、相手の性別問わず、
片想いの切なさがぎゅっと詰まっている気がします。
気持ちを丁寧に表現してあるので、読み進むうちに受に気持ちが
シンクロしていきました。

攻が受に告白の返事をする前後の場面の心理描写が秀逸!!
思わず涙…

最後に心から受に「良かったね~」と言いたくなる作品でした。

15

健気な子供と

無自覚な大人のお話。

朝丘作品には、色んな事をいっぱい考えている健気でいい子の高校生がよく登場しますが、一吹はそんな主人公たちの中でも特にいい子。
一吹はゲイを自覚していて、朝同じバスに乗るカッコいい大人の男性に密かに興味を持っています。
そんな彼と、痴漢事件がきっかけで言葉を交わすようになり、、、
高校生の、子供のコミュニケーションスキルなんて、まだまだ発展途上。
それがSNSゲームでのアバター同士のチャットというクッションを置くことでどんどん成長していく。
そして周囲の人間ともちゃんと関係を築いていけるようになり、賢司に対する気持ちも恋愛感情なのだと自覚している。
一方、大人の賢司の方は今まで当然のようにノンケだったし、一吹が高校生なのもあって自分の一吹への感情の正体になかなか気付きません。
そんな二人なので、外から見れば既に両思いのいちゃいちゃバカップルなのに、無駄に紆余曲折したりもしますが、、、。

この主人公二人の、ちゃんと社会とつながって成長していくところがいい。
朝丘ファンじゃない人にこそオススメ。

12

文字だから伝わる気持ち、伝わらない気持ち

サヨナラ・リアルに続いて手に取った朝丘さんの作品。
自分が普通では無い事にどうしようもない思いを抱えた一吹と、過去に囚われた大柴さん、そんな2人のお話

通学や通勤で毎日乗り合わせる乗客たち
会話を交わすことなくすれ違う人の方が圧倒的に多い中で、知り合う事ができた2人

賢司さんの過去の出来事を知って、それは偶然では無かったのだと分かりました

本当に辛い出来事を抱えている人間って、誰にも弱さを吐露できない、なのに、知って欲しい、誰かに聞いて欲しいってどこかで思ってる物だと思うんです。

印象的だったSNSでのやり取り
顔が見えない中での会話

普段は出せない本心をさらけ出せてしまう不思議な場所
打った後逡巡し、それを無かったことにして、嘘を付いてしまえる場所

そんな場所を通した事で、2人の関係は少しずつ深まっていきます

文章が兎に角美しく、言葉選びが心地よく、切ないけれど、何処かずっと幸せな気持ちで読み進められたのは、
この恋が叶わなくても、出会えて、好きになれた事が、本当に幸せだと思う、一途で健気な一吹くんの心に感化されたからからだと、それ程までに強い彼の気持ちが伝わってきました

賢司さんの年齢に限りなく近いアラサーの私ですが、一吹くんの心に入り込み過ぎて、17歳、高校2年生という立場から賢司さんを見ていたら、33歳とはこうも魅力的で、大人なのか、と驚いてしまいました!
いや、賢司さんが特別なのは重々承知してます(笑)


「俺達が出会った頃のお話だね」
「恥ずかしいです」

と、現実に2人が照れている情景が浮かぶ様な
この世界に確かに存在する2人を感じました


9

「傷」が繋いだ運命の赤い糸

初めて読んだ作家さんでしたが、読んでいくうちにとてものめり込みました。

三十路超え社会人と高校生の恋愛ということに初めは懐疑的でした。
共通点がなく年齢差もある、極端に言うと大人と子供で自然な恋人関係になるのって難しいのではと思うからです。
自分と照らし合わせて、ありえないという思いがあります。

しかし、今回は一吹(受け)が持っている傷が象徴的な引力になっています。
その上で2人のバックグラウンドや周囲との関係性、一人で抱えるしかない悩みなどがじっくりと書かれていきます。
2人の関係性が積み重なっていくようで、その過程が丁寧に感じたし違和感もありませんでした。
読んでいくうちに、絶対に起こりえないことじゃないのかもという気持ちに変わりました。

SNSの使い方も巧みで、妙に大人びてる高校生の一吹がアバターの力を借りて幼くなっている所など人物が多面的に見えました。
そして、賢司との出会いや友人関係を通して成長する一吹も読んでいて希望があります。

賢司(攻め)は自分の年齢と近いのもあって親近感がありました。
わりと初めから一吹に特別な好意を持っているのは分かったけど、結論を出すまでめちゃくちゃ考えたというのも分かります。
きっと結婚願望がある人にとって一番切実に考える時期ですよね。だからこそ一吹を選んだ重みも伝わりました。
手出すの早くないかなと思ったけど…(笑)

余裕があって格好良い大人、純粋で素直な子供とお互い思っていたようでしたが、年の差があるからこその幻想なのかなと思います。
でも2人が結ばれるために良い意味で作用した気がします。
付き合いが長くなるにつれその幻想は崩壊すると思いますが、等身大の自分達を確認しあって絆を深めていきそうです。

最後にちょっと気になった所がありました。
一吹が母親に「賢司さんはノーマル」と言うのですが、当事者がそういう言い回しってするのでしょうか。
しかもニューヨークで常に英語に触れてる母親からすれば余計に違和感を抱きそうですよね。

萌×2では足りない気がしたので神評価になりました。

8

ぼろぼろウサギ

自分がゲイであると自覚し友達とうまくコミュニケーション取れなかった一吹が、初めて人を好きになり強くなっていきます。
とにかく一吹が健気で優しい作品でした。

バスで知り合った賢司のことが好きで好きで仕方ない。
でも嫌われるくらいなら、気持ちを隠して友達でいたい。
そんな一吹の葛藤がひしひしと伝わってきて切なかったです。
ぼろぼろウサギのキャラもすごくあってました。

賢司の優しく包み込むキャラも良かったです。
お互いのことは良く見ているのに、自分に向けられている思いにだけは気づけないものですね。
アニパーの二人も、リアルな二人もどちらも温かくて素敵な作品でした。

7

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