• 電子書籍【PR】
  • 紙書籍【PR】

表題作期限切れの初恋(BBN)

村上隆人,ホームレスになった大学時代の同級生
宇野裕貴,総合商社の社員

同時収録作品人でなしの恋

村上隆人,大学の同級生で特殊清掃会社勤務
宇野裕貴,総合商社の会社員

その他の収録作品

  • ふたりではんぶんこ by糸井のぞ
  • あとがき

あらすじ

宇野には忘れられない恋があった。
誰からも好かれていた大学時代の同級生・村上に卒業してからもずっと片思いしていた。
友人の結婚式を機に、この思いを終わらせようと決意するが、そこで会えるはずだった村上が、借金を重ねて行方不明になっていたことを知る。
何もかも失った村上はホームレスになっていた。
宇野は自分の恋を終わらせるために彼を拾ってきて、一緒に暮らし始めるが…。
その後の二人の書き下ろし、100P超収録!

作品情報

作品名
期限切れの初恋(BBN)
著者
木原音瀬 
イラスト
糸井のぞ 
媒体
小説
出版社
リブレ
レーベル
ビーボーイノベルズ
発売日
ISBN
9784799713389
3.9

(143)

(76)

萌々

(22)

(22)

中立

(7)

趣味じゃない

(16)

レビュー数
42
得点
541
評価数
143
平均
3.9 / 5
神率
53.1%

レビュー投稿数42

BLとしては・・・

木原先生は8作品目。

読み終わって「これはBLなのか?」と思いました。
確かにBLではあるんですが、個人的にはどっちつかずな印象を受けました。
大半がとことん現実を突き詰めた内容に占められていたので、最後の展開に少し違和感を覚えました。
あくまでも個人的な感覚ですが、ほとんどBLとは関係ないストーリーだったところで、最後によくわからないまま宇野と村上がヨリを戻して終わりというのが...
ヨリを戻すのがおかしいというよりは、BLならBLとしてその後の生活をもうちょっと覗きたかったし、そもそも村上の気持ちがあやふやな印象を受けたのでその辺りも掘り下げていただきたかったという願望です。

ただ、それを差し置いても素晴らしすぎる内容でしたので、神評価にさせていただきます。

0

木原音瀬作品にしては最後が・・・

のっけからアカン受けや・・・と思いつつ読み進める。でも学生時代とか受けの立場って本当はこういう感じなんだろうねと思えると言うか、片思いの辛さが同調出来るようになっています。
でもって、落ちる所まで落ちた村上と出会うこと、それを受け入れることで望みを叶えたかにも思えるけど、実は村上の方はそうじゃない。それを分かってしまうと自己防衛で前に進もうとする受けが切ない。
実際の恋愛でもこういうのはあるよね、きっと。村上にしたって相手は既に子持ちだし、相手も一番好きな人じゃ無くてもそれなりに幸せな生活を築けてる(多分)

人でなしの恋の最後、ちょっと駆け足での村上の変化が今までのリアルをぶち壊してる気がして神評価にはしてません。
最後はHappyになって欲しいものの、ちょっと受けの彼女への嫉妬からだけってのは前半の村上の感じからはポカン感に。
読後はHappyなだけに悪くは無いんですけどね。あれ?って言う感じでした。

3

泣けた…嗚咽した

やっぱり、木原先生の作品は心して読まねばならん。
表紙とタイトルで甘酸っぱいのかな?なんて思ったけど、んなわけなかった。

この作品も攻めがクズい。まだあんまり木原作品読んでないけど、大体ナチュラルにヒドイ態度取ったり言うたりする攻めが出てくる。
学生時代人気者のリア充攻めが、いろんなことが重なって見事な転落人生。
そこに現れた干渉せずにただ見守ってくれ、自分の居場所になってくれた元同級生(受け)に依存。
廃人同然だった日々からようやく立ち直りかけ感謝を込めてささやかながら受けのサプライズ誕生日会を開いた日に出て行ってほしいと言われ逆上(まぁ、どっちの気持ちもわからないでもない)受けに恋愛の意味でも好きだから一緒にいるのが辛いみたいな事言われて勢いで強姦まがいに致してしまう。
(ここまで受け視点)

次から攻め視点がスタートするんだけど
何でや!ゲイでもないのに欲情って、そこはわからん。
それからも何度もSEXするけど、出したら気持ちが冷めて恋愛の意味で好き違うわって毎回思うってどんだけ酷いやつや!寂しいから身体で繋ぎ止めてるだけって。
結婚まで考えた元恋人を好きだった気持ちと比べると全然違う。この関係ずるずる続けたらあかんなって悶々としつつ、でも1人は寂しいし、でもラブではないしと延々ループ。
うーん、本心だからどうしようもないよなって読んでて辛い。

受けもそんな事お見通しで、自分から離れてあげる。
最後に優しい暗示の言葉を掛けてあげて。
(ここ、泣ける……。)
なのに、受けに新しく彼女が出来たと知って、
攻めが嫉妬心でなんて事を!!!!!
なんてやつ!!!!!!!!!
許さんっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
(ホントこれくらいの憤りでした)

って思ってからの怒涛のラスト!
嗚咽ヤバい。
久しぶりに声出して泣いてしまいました。
木原作品これだから読んじゃうんだよ。

先生のあとがきにもありましたが
あらゆる悪臭に塗れた作品です。
ひたすら臭そうです。

クズい人も居れば良心的な人も出てきます。
人は何かのきっかけで転落してしまったり、自分で命を落とそうと思ってしまったりするけど、これまた何かのきっかけでやり直せたりするんだって、希望も持たせてくれる作品です。

最後に、
何も悪くないのにNTLにあった可哀想な彼女に
今後幸あれ!

1

BLを超えたリアルさに感情が荒れ狂わされた


普段は攻めが受けを溺愛するものか、執着攻めばかり読む私ですが、今回は趣旨を変えて購入。
音瀬先生の作品は「FRAGILE」を既読。
痛い・グロい・重い、があまり得意ではないので心構えをして拝読。

読み始めて中盤くらいで終わりを感じ、すごくいい物語だなぁと思いきや後半が本番でした。
ああ、これが音瀬先生か…と再確認させられた後半は攻め視点。

受けはもちろんのこと、読んでいるこちらの感情もグチャグチャ。

かなり女性絡みがあるので地雷な方は本当に要注意!
その代わり、現実感がすごくありました。

そしてなんといっても、今まで読んできた中で攻めが一番クズ。
だけどこれがリアルだよな…と現実を突きつけれました。

攻めがどんな姿であろうと包み込む受けの包容力はマザーテレサでした。
そのマザーテレサに向かって恋愛感情は沸かないと言い放った時は心の中で荒れ狂いました(笑)

あまりにも受けが可哀想すぎる…。
でもこれが恋だし、攻めに強要もできない。分かる、と一人で納得(笑)

なんとか攻めザマァが多少あり、救われましたが読んだ後も色々考えてしまい、ただただ無感情で萌えられるBLを漁りました(笑)

好みとは違いますが、音瀬先生の凄さを痛感した一冊でした。

1

攻の気持ちの変化が面白いです

長く熟成させた積読でしたが、やっと読了。
手をつけたら一気読みでした。なんでしょう、早く読めばいいのに…。
(いろいろ心の準備が必要、と身構えるのでつい積んでしまうのに、読み始めたら止まらなくなるのが、ザ・木原マジック)

比較的ハピエンですよね(笑)。正直、”期限切れの初恋”までだと、村上の気持ちは”生存本能”じゃないの?という印象でした。”人でなしの恋”でやっと、どうにかどうにか、宇野の初恋が成仏してる感じです。こんなにも元カノに未練たらたらな村上が、どうしたら他に(しかも男)に特別な感情を抱くことができるんだろう、、しかもめっちゃ”ときめき”とかの恋愛要素にこだわってるのに…と最後の最後までハラハラしてしまいました。(芽生えない可能性もあるのかしらと…)
ただ、油断できないのは、”村上は愛しているかもしれない男”の~”という最後の一文。え、まだ”かもしれない”んだ、さすが木原先生、と思ってしまいました(笑)


3

片思いが精算出来ていない人へ

人の恋する内面について描かれた作品で、これ程面白いとのめり込み「やだやだー!」と駄々こね叫びたくなった作品は映画やドラマも含めて他にありません。恋愛話でここまで展開が怖く心臓バクバクで、先にネタバレを読み漁った作品もありません(笑)

自分とはかけ離れた人を好きになることは現実によくあることと思います。
それを引きずった私もこの主人公の宇野がどう落とし所を見つけるのか知りたくて読みました。

忘れられない人を美化し、変わり果てても好きで、どうすれば嫌いになれるかと考える宇野が恋とは何かを考えます。
そしてどうすれば後悔せず吹っ切れたのか、あの時のチャンスは、あの時言ってれば…とあれこれ考えるのは「わかる」の一言でしかありません。
好かれているが好きではない相手への関心のなさとその自覚のなさが、主人公ふたりと取り囲む友人とで残酷なまでに描かれていて、それでも共感させられます。
一緒に過ごしても上手く掛け合えない人間性と戻らない時間が切ない、ビターな作品(木原さんの作品でその表現は無いかしら)でした。

第1章で信じられないことにハッピーエンド的な終わり方でそれはそれで良かったのですが、その後のずるずるとした二人の気持ちの温度差と戸惑いがどちらも凄く納得すると同時に辛く感じながら読みました。
優しく大切には出来ても心から愛することは出来ない、というのはどうしようもありません。そこに村上が悩むことは彼が底辺から抜け出した恩人に対して報えないこととして描かれていても、宇野と同じような気持ちをかかえる読者としては優しさを村上と木原さんに感じました。

運良く身体は近付いても心と過去は変えられない。
大きな決意をした終わりでもないのですが、宇野がどれだけ必要な存在か、村上が自分の現状の気持ちを自覚してちゃんと宇野の存在を認められて良かったなと思いました。あからさまに両思いでハッピーじゃなく、これからを感じさせて無理がないのが良いです。

宇野のように気持ちの精算が出来ず思い出に出来たかそうでないかの人、ただ興味をもった人も、これからも沢山この作品に出会う人がいることを願います。
私事ですがレビュー100個目なので、これを機に好き過ぎてレビュー書けなかったこの作品に手をつけようと思いました。

1

切ない

BL作品といえど、これは純文学と言えるのではないか。特にラストの方の宇野くんのセリフ。これにこの作品の全てが凝縮されているような気がする。
「好きだって言ってる僕の横で、他の人がいいって泣くのに。僕はどうすればよかったんだよ」

私が特に切ないと感じたのは、村上が立ち直り始めた後半のカフェのシーン。
村上、雛乃、未来、加々美と宇野くんが勢ぞろいのカフェで、加々美が悪戯で村上のコーヒーに砂糖を山盛りにする。
それが昔のギャグだとは知らない宇野くんが、村上に替えてあげようかと提案する。
村上はそれを拒絶する。あの頃、宇野はそこにいなかった。という描写からも、この辺から村上が宇野くんを、だんだんと疎ましく思い始めているのが手に取るようにわかる。
更に、雛乃の前で、恋人ぶるな。
無言の圧力を宇野くんにかけて…。

元恋人やかつての友達の前で、恋人として紹介してもらえない。こんな、屈辱…普通、耐えられるか?

そして、だんだんと影の薄くなる宇野くん。村上の語りなので、村上自身がそんなふうに思い始めているからなんだろうけど…。
BL作品で、ここまで受けの影が薄くなる描写があるのは本当に珍しい。BLはファンタジーなんて言われているけど、木原作品に関しては、これがリアルで、心をえぐる。
この場では雛乃が泣いていたが、一番泣きたいのは宇野くんと読者だろうよ…。
好きな人が、自分と同じように自分を好きでいてくれない。自分が蔑ろにされる。
そんなの、リアルだけで充分だ。それでも、この物語に惹きこまれて読んでしまうのは、木原マジックなんだろうな…。

ラストの「斉藤さんが相手だったら、絶対にこんな酷いことしないくせに。言わないくせに。」という宇野くんのセリフも、涙を誘う。

村上は、雛乃の幸せを祈って身を引いた。雛乃のことを無理に、抱こうとはしないだろう。 
でも、宇野くんの幸せを祈って身を引かなかった。宇野くんに関しては、自分の欲望を優先する。
その差が、宇野くん的には辛いんだろうな。



でも、こうも考えられないか?

村上にとって、雛乃はなりふり構わず手に入れたいと思えるような相手じゃなかった、と。

結局、過去を美化しているだけで、無い物ねだりにすぎない。と。

そう考えて、私的にやっとこの作品に萌を感じられた。

余談ではあるが、宇野くんのことを、本当に理解している人物がこの世にいるのか?という疑問に至った。

なんか、読後感がもやもやすっきりしないのは否めない。それが、木原作品を読む上での醍醐味なんだけど…。

あまりにも宇野くんが気の毒すぎる。
女友達、もしくは会社の先輩、なんでもいいから出てきて(オネェでも可。笑)

「そんな男、こっちからフっちゃいなさいよ!あんたにはもったんない!つーか、雛乃って女もなんなの?!今更、でてきて、村上が1番辛い時に支えられなかったくせに!その村上の仲間たちだって、村上が1番ひどい時に救いの手を差し伸べようとすらしなかったくせに、裕貴のこと、ないがしろにして!!でも、1番、腹立つのは村上よ!助けられた恩も忘れて、一体なんなの?!何様?!かわいそう、裕貴!!」

的なことを、捲し立ててくれるキャラが出てきたら、まだ、読者の怒りを代弁してくれるので、読後感が違ったものになるのかも…。

でも、こんな強烈なキャラがでてきて、宇野くんの気持ちを代弁しちゃったら、名作が台無しですね。


今後、村上がなかなか表現できない宇野くんの気持ちをくみとって、理解できるようになれたらいいなあ。

このノベルズのイラストを描いている、糸井のぞさんがコミックの後書きで、「この2人にはイチャイチャより、お互いを理解するためにたくさん、話し合って欲しい。」と書いていた。

私も、そう思う。
イチャイチャも大事だけど、それよりまずは、お互いを理解しあってほしいな。心と心で繋がってほしい。

個人的に、当て馬的にされた、宇野くんの新恋人、加奈ちゃん?

「お前に合ってないよ」と言った村上の言葉は正しいと思う。(笑)なんか、すごいファンキーすぎ。。

心より、宇野くんの幸せをお祈りします…。

9

ひみた

レビュー笑わせていただきました。オネェの代弁者にスッキリしました!(笑)
ファンキーな新恋人にも同感です…

いつかは僕で君が幸せになってほしい

とりあえずやたらと臭いをイメージさせられる作品でしたね。
攻めの村上のホームレス状態だったり職にした汚部屋清掃だったり。
綺麗なものだけでかためられることのない木原さんの作品、確かな描写力が大好きです。

それにしても序盤の攻めはついつい顔をしかめてしまう程の汚すぎる身なりで嫌悪感半端なかったのですが、それでも好きでいることをやめられなかった受けの宇野の想いの強さに驚きました。
年数も経ち美化されたところもあるだろう初恋の相手が変わり果てた姿になったとしてもそばで支えた…。

BLでよく見掛ける容姿に惹かれて…だとか簡単に説明できる理由ではなく大学時代からずっと恋心と共に村上を見てきた宇野の気持ちがとても伝わってきました。
ゲイというわけじゃないんですよね、ただ好きになった人が同性の村上だったんですよね。

誕生日にお互いがお互いを遠ざける発言をしたことは胸が痛いです。
比較的落ち着いてるぞー!と思っても絶対どこかで心をガツンと殴られるんですよね。
そこから継続的なズキズキが続いて…でもそこが魅力的で読み耽ってしまうんですよね。

村上は元カノの雛乃への未練があって、宇野との関係を持ちつつも同じ情熱を向けられないっていうのも生々しくて夢中になりました。
恩返しのような義務的な愛し方をする村上に気付かず健気に触れ合う宇野を見ていると心臓がギューギューしました。

結果的には光の見えるエンドですが互いの気持ちが噛み合っていないというかきちんと絡まっていないように私には感じました。
でもそれがいい。
都合良くくっ付いた物語のカップル感なく、超ハピエンでなくともつらくなった時に一番そばにいてほしいと思いそうしてくれる人がいる…そこに濃厚な愛の結びがなくともそれだけで既に充分幸せ者だよな…と思いました。

完全な恋人同士にならないBL…それでもあたたかい。

2

恋は不思議

表題作の「期限切れの初恋」は、地味で内向的な宇野が、落ちぶれた片思いの相手・村上を偶然見つけて自宅に住まわせる話で、宇野の視点で書かれています。
タイトルが謎かけのように思えました。「初恋」だから、大学時代に宇野が村上に抱いた初恋のことなのでしょうけど、それは社会人になり会わずに何年たっても、全く終わっていないのです。
大学で村上が作ったキャンプサークルに誘われ活動を共にするうち、村上を好きになってしまった宇野。村上は自分と違い、華やかで人気者。同性同士だし、特別に親しくなれる見込みもない。辛い片思いに区切りをつけたくて、卒業式の日に、村上に告白しようとするも結局できず…。宇野の初恋は手放す期限を過ぎてしまった。タイトルの「期限切れ」は、そういう意味なのかもしれないと思いました。

宇野が村上への思いに捕らわれ続ける姿が、あまりに卑屈で痛々しいです。
自分からは思いきれないからと、村上がもっと悪い男になって失望させてくれないだろうか、などと考える。毎日自分の金を盗んでパチンコに興じる村上を最低と心で罵りながら、一緒にいることが嬉しくて、追い出すことができない。
村上が立ち直り始めると、以前のように軽く扱われて傷つくことを恐れ、村上を追い出す。立ち直らず汚いままの村上ならずっとそばにいられたのにと考え、自己嫌悪で涙する。ちっとも前向きじゃない。挙句、怒りにかられた村上に好意に付け込まれるように抱かれてしまう。
どんなに相手がひどくても、見込みがなくても、捨てられない恋とは、いったい何なのだろう。
でも、周りの誰もが納得するような恋ばかりじゃない。こういう恋もあるのかもしれない。恋なんて、病気みたいなものだと思うのです。半端に放置すれば、治らなくなってしまうこともあるでしょう。

それにしても、村上が酷い。
自分を見捨てなかった宇野に感謝しつつも、愛情でつながれば二度とマンションを追い出されずに済むだろうという思惑がはたらいていたことが、村上視点の「人でなしの恋」で明かされています。
村上は特殊清掃の仕事に自信を持ち始め、大学時代の友人に借金を返し関係が修復されると、宇野との同居を一方的に解消します。そして、「気に掛けてもらえていると思うだけで落ち着く」とか、「会いたくなれば、自分が動けばいいだけだ」などと、勝手に二人の距離を決めてしまう。きちんと宇野と話し合うこともせずに。結局、村上は昔と変わっていない、自己中心的な人間なのだと思いました。
だから、村上と昔の恋人はやり直してもきっとうまくいかなかったでしょう。失った恋をやり直すのにも期限がある。友人の「もう遅いのよ」という言葉がなければ、諦められなかった村上は本当に弱い男です。

むしろ、一見地味で弱弱しい宇野のほうが実は強いことが、「人でなしの恋」を読んで分かりました。最初から、村上が寂しくて宇野に寄りかかっていたこと、距離を取りたくて宇野の元を離れていったことを知りながら、自分勝手な村上を責めなかったのですから。寂しくて会いに来た村上に、「幸せになってください」と背中を押してやる寛大さ。静かな強さに胸を打たれました。
これで二人が別々に歩んでいけば、少しつまらないけれど、納得のいく終わり方だったかもしれません。

自分が会社を首になるきっかけを作った元上司の自殺現場の清掃に入った村上は、やっと気づきます。自分には宇野がいたから立ち直れたのだと。呆れるほど遅い。でも、村上の宇野への気持ちに変化が起きたとすれば、この瞬間なのだろうと思います。見返りを求めない宇野の愛情に心からひれ伏して、愛しく思えたのは。
宇野を無理やり抱いて、恋人と別れてと言い、「愛せないかも…しれないけれど、傍にいて」という村上は本当にひどいけれど、自分の弱さを自覚して正直なところに好感が持てます。宇野も「人でなし!」と怒ったり泣いたりしたけれど、幸せそうだから、この結末でよかったです。これからは言いたいことを言い合って、意外と上手くいくような気がします。

すっきりと納得はできないけれど、恋って不思議で面白い、と思う作品でした。

4

好きのベクトルが違うふたり

電子書籍で読了。挿絵有り。

『人でなしの恋』の終焉についての感想を書きます。盛大なネタバレになると思いますがご勘弁ください。


実人生の中で「いい人だと思うけれど、この人に恋することはないだろうな」と思ったことが何度かあります。同じように「この人のことがとっても好きだけれど、この人が私と恋に落ちることは絶対ないな」と思ったことも。だから私は村上がクズとは思えなかったです。また、宇野が執着男だとも思えない。お互いにとって「仕方ないよねー」ということでしかない。私がそう思ったように。

一見、ハッピーエンドに見えるこのお話のラストは、私にとってとても不穏なものでした。お互いに「好きだ」と思っていると思います。また、縋り付く気持ち、失いたくない気持ちもとても強いだろうと思います。でも、恋というものは、ある時、いきなり降ってくるものです。村上に訪れないとは言えない。

木原さんのお話の多くは、自分からは遠い登場人物による『怖い話』です。まあ、そのお話が鏡になって、自分が見えちゃうから余計怖いのですが。でも今回のお話は、どこにでもいるような登場人物がくり広げるドラマです。形は違っても、今現在どこかで起きているだろうと思えること。
読後、深い悲しみに襲われました。

3

思ったより痛くない。感動!

ずっと気になっていた木原さんの痛い系。
勇気を出して読んでみました。
まずコミックを、そして本編を。
痛くなかったです。COLDシリーズや、『美しいこと』の方が私には痛かった。
攻め目線の『人でなしの恋』
攻めの村上を人でなしとは思えませんでした。
男女でも、同様の感情はある。ただ、男女には付き合った先に、結婚や子供ができたり、既成事実に流されやすいだけ。
最後まで読めば村上が宇野を愛していると思えるし、ハッピーエンド以外の何ものでもないと思います。
痛いのはちょっと、と躊躇しているなら読んだ方がいい。
正直すぎるふたりの両思い~ラブラブに至る感動作が読めるはず。

4

「サイテーだ!」って叫びたくなる

ホント、サイテーだなと思ってしまう、本作の攻め。
でもそんな彼を憎めないのは、木原先生が描く彼の内面が理解できるし、それに共感を感じてしまうから。
読んでいて、楽しい・嬉しい・癒される恋物語では決してない。
なのにページをめくる手を止められない。
読んでいる間、一種の中毒者のようでした。

愛だとか恋だとか言っても、それとはまた別の問題が現実には多くあって、それらを含めての相対的な価値判断に人間の感情は左右される、そんな現実を見せつけられた気がしました。
生々しい。けれどその生々しさが本作の魅力でもある。

萌え度数は低いです。萌えられない。
けれど一度読んだら一生忘れない、忘れられない作品だと思います。

3

それでいいのか?と思うけど仕方ない

こちらのコミックと小説を一緒に買いました。
二つの違いをまず書きます。
【コミック&小説ともに収録があるもの】
・受け視点の「期限切れの初恋」

【小説にのみ収録されているもの】
・攻め視点の「人でなしの恋」書き下ろし小説
・糸井のぞさんによるコミック「ふたりではんぶんこ」

【コミックにのみ収録されているもの】
・木原音瀬さんによる「番外編ショート小説」
・描き下ろし「phytonicide」

コミック→小説の順で読みました。

村上は大学時代キャンプサークルの主催で男女問わず人気があって、容姿も良く、可愛い彼女に一目惚れしてゾッコンだった人。結婚も考えていた。
宇野は内気で村上に声かけられてサークルに入ったが、ずっと村上の彼女の様子を目で追うだけ。

村上は新卒入社した会社で横領疑惑をかけられ無実なんだけど辞めされられ無職に。追い討ちをかけるかのようにご両親が首吊り自殺してしまい第一発見者になってしまう。何も考えられなくなりパチンコに没頭する日々。あっという間にお金が底をつき大学時代の友人達からお金を借りては踏み倒し、彼女の財布からも金を盗み別れる事なり浮浪者になってしまうんです。
8年くらい経って(確か)浮浪者になって公園で寝転がっているところを宇野が家に連れて帰る。生きる屍(そして猛烈に臭い)となった村上を何も言わず寝泊まりさせてやります。おまけに室内にあるお金を毎日盗むのも黙認。

大学時代とは雲泥の差の村上を見ても嫌いになれないのは病気としか思えませんでした。やがて改心して少しずつ社会復帰し始める姿を見て元どおりになったらまたモテてしまうから浮浪者のなりの時のほうが良かったと考えてしまうくらいで重症です。多分、村上が例えば殺人鬼とかなっても嫌いになれないんだと思う。

人が好きな人を嫌いになるって難しいんだなぁってつくづく感じました。

村上にとって元カノが一生に一度の恋みたいな感じです。相手が結婚していても子供がいても動向が気になる。浮浪者の自分を宇野は何も言わずに黙って支えて立ち直させてくれたから心の底から感謝しているし、居心地はいい。だけどかつての彼女に対して抱いていた感情と、宇野に対して抱く感情は違うとはっきり自覚しています。宇野のことを好きになれたらいいなぁとは思っているけど努力して恋する訳ではないですからね。どうしたものかと思っています。

そういう二人を描いています。だから綺麗事じゃすまされない。

二人はすったもんだの挙句、ようやく着地して希望がある終わり方をしているけど、多分、村上が宇野に抱く恋愛感情はかつての元カノを超える事はないんだと思います。元カノには一目惚れでしたから。理屈抜きで好きだった相手です。どうやっても超えられない。

だけど、今後、別の女性が登場して例えいい雰囲気になったとしても、宇野と別れてその女性を選ぶかと考えると、選ばないんじゃないかなと思います。あんな究極のどん底状態の自分ですら許容して何も言わず受け入れてくれた人ですからね、宇野は。

普通の感覚を持つ女性なら、いくら好きになった相手とはいえ浮浪者男は受け入れません。好きだったあの頃とは別人なんだと思って拒絶します。

だから新しい女性が登場したとしても村上は頭のどこかで俺が万が一、再び転落したら…と考えて天秤にかけて宇野に戻ると思うんです。

「愛せないかも…しれないけど、傍にいて。」とまぁ狡いけどそんなところも含めて宇野は好きな訳で…。

でも最後の1ページで何だか風向きが変わってきたし、そういう恋もありかなと。村上に対しては、目の前の恋に一生懸命取り組んでもらえればなと思いました。
誰もが大好きな人と思いを遂げられる訳ではないので、そういう妥協点みたいな現実的なところを描いた作品だと思いました。

村上がほぼ陥落しそうなところで終わってまして、宇野、もっとやったれ!もっと優しく絡め取ってズブズブに居心地の良い海に沈めて身動きとれないようにしたれ!と思いながら読み終わりました。
初恋が実った男と実らなかった男って感じです。

答姐の「ちるちるのランキング圏外だけど、心の琴線に触れた作品を教えてください」でコミックと合わせて教えていただいたのが、こちらの作品です。
色々考えさせられて面白かったです。小説もいいなぁと思いました。
教えてくださり本当にありがとうございました。

5

いろんな意味で幸せであれ

ページ数が残りわずかになっても村上が元カノを…だったので、これはBLなのかなんなのかわからず終わるパターンかー!と思いました。笑
たぶん他の作家さんだったらラブが足りなーい!てなったかもしれないけど、木原さん作品は作風でそういうのを承知で読んでるので、この作品も心を揺さぶるお話で個人的「神」です。

あとがきで村上は鬼畜とありましたが、最後の宇野を引き留めるやり方以外は恋愛に対しても生き方に対しても真面目で許容範囲でした。
(引き留め方も強引萌えなのでBLとしてはイイ!)
途中まで「自分も宇野と同じ熱さで愛することが出来れば」そう本気で考えてたし、でもそれは出来なかった。
五人で会うシーンで、隣に座る宇野の存在そのものを忘れてたとか、痛い!てなったけど、本人に声に出して言ったわけではないので一応セーフ…。
宇野も一貫して嘘はつかず(つけず)、彼女も作り新しい一歩を踏み出そうとしてる中でも「ずっと君のことは好きだと思う」って言っちゃう所が可愛くて可愛くて、とにかく幸せになってくれと応援したくなる受けだった。
それによって村上が調子に乗るのが目に見えてたけど、そういう所が後々本気で宇野を愛するキッカケになるんじゃないかなと。
あれだけ盲目的に愛されてる自覚があると、万が一宇野に別に好きな人が出来たら執着攻めになる素質充分ですね。笑

村上の境遇が壮絶で…宇野の片思いも痛いし両方に同情しながら人間ドラマとして読んでる意識もあったので、例えくっつかなくても二人がそれぞれ前向きに生きていければそれでいいと、それで許せる「BL小説」はたぶん木原さんだけかな(いい意味で)

6

片思いの初恋が実った m(;∇;)m スゴイコト!

初恋っていいなあ、大好きな響きなんですよね。でも大抵の初恋って実らないもの。青春時代の甘酸っぱくほろ苦い思い出は誰もが持っている感傷ではないでしょうか。それゆえに小説の中だけでも初恋が成就する感激の瞬間を味わってみたい。ということで、本書を手に取りました (*^_^*)

・期限切れの初恋(宇野(受)視点)
・人でなしの恋(村上(攻)視点)
・ふたりではんぶんこ by糸井のぞ(宇野(受)視点 コミカライズ)

あらすじ
大学時代、宇野(受)は同級生の人気者・村上(攻)に恋をしていました。村上(攻)には彼女がおり、1日で良いから女になって彼女と入れ替わりたいと願うほど好きでした。卒業後6年経っても宇野(受)の村上(攻)への想いが消えることはなく、友人の結婚式で再会したら「昔、好きだった」と告白し、想いを断ち切ろうと思っていました。ところが村上(攻)が式に現れることはなく、代わりに耳にするのは村上(攻)の悪い噂ばかり。借金、ギャンブル、行方不明…。宇野(受)は今の村上(攻)に会い、皆のように幻滅し、未練なく初恋を終わらせたいと思い探し始めます。が、とんと行方知れず。ある日会社の花見の席で、偶然出会った村上(攻)。髪はボサボサ、無精髭、まるでホームレスのよう…。

面白かったです。というか毎度のことですが泣けました (ノ_-。) 私が小説を読むのは、この「泣き」のためと言っても過言じゃありません。泣くと脳内物質の一つであるエンドルフィンが増加するそうです。このエンドルフィン、ストレス解消やリラックスした状態を得られることで有名な物質。玉葱刻んで泣いても、このエンドルフィンは出ません。あと笑うことが免疫力アップにつながることはよく知られておりますが、感動して泣くことによっても同じ効果が得られるそうです。皆様、木原作品を読んで感動して是非大泣きしようではありませんか (^^)/

まず宇野(受)が素晴らしかったです。ここまで一人の人を想い、ずーっと好きでい続けることが出来るのが凄い。一度でも村上(攻)と交際や体の関係があったなら、良かった時を思い出し忘れられない、ということもあるかと思います。けれども報われることのない片思いをひたすら持ち続け、村上(攻)以上に好きになれる人が現れなかったからと、6年間誰とも交際してこなかったというのが、一途で素敵だと思いました。逆に誰とも交際しなかったことが、より初恋を神聖かつ偉大なものにしていったのかもしれませんね。

片や村上(攻)ですが、学生時代は皆の人気者、ノンケ(あるいはバイ?)なので女子の可愛い恋人もいて、性格も良く、明るく社交的で素晴らしい人柄だったのに、過酷な運命に翻弄されます。でもまさかあんなに光り輝いていた快活な人間がここまで落ちるとは。いったい何があったの?と、すごく興味津々で楽しく拝読致しました。とはいえ、臭いがキツくて参りました。実際には本を読んでいるだけの私が、その悪臭を嗅ぐことは当然ありません。それなのに、ホームレス時と特殊清掃のくだりは臭くて、臭くて、顔をしかめながら読みました。この感覚は、ちょうど「FRAGILE」を読んだ時のそれと似ていて、生々しくリアル。もうちょっとオブラートに包み、サラッと描いて欲しいという本音もありますが、逆にこの写実的な描写があるからこそ作品が生きるのかもしれません。

村上(攻)はパチンコ依存症に陥って身を持ち崩してしまいました。たぶん耐え難いほどの辛酸をなめ、もがき苦しんだため、精神が病んでしまったのでしょう。パチンコは怖い。この小説を読んで改めて思い知りました。大分前に松岡圭祐著の「催眠」を読んだことがあります。そこでもパチンコ依存症について詳しく書かれた記述があり、その時にパチンコは「麻薬」と同じなのだとの認識を得たことがあります。ギャンブルとは無縁の自分であり続けたいものです。

最後になりますが、小説ってやっぱりラストが命。宇野(受)が村上(攻)につぶやいたこんな一言が印象的で忘れられません。

「……今日の君は、まるで恋してるみたいに僕を見る」

めちゃくちゃ心を揺さぶられました。宇野(受)は感受性が鋭い。ゆえにずっと自分は愛されていないと知っていました。ところが、その宇野(受)がそう感じた(作者様がそう言わせた)と言うことは、きっと村上(攻)は「心底、宇野(受)に恋しているのだ」と信じることが出来ました。初恋が実った瞬間。一番好きなシーンです (●´▽`●)

8

哀れな初恋。。

相変わらず重い木原先生らしい作品。
読んでいて鬱々としました。
ホームレスで生ゴミのような臭いを発しててお金盗んでく攻めをそれでも好きでいられるって凄いわ。。
初恋のなせる技なのか。。
特に特殊清掃の汚部屋の描写が凄くて、うえっとなりました。
そんなに寛容で一途な受けをあっさり捨てたりして、なんて勝手なんだと腹が立ちました。
BLらしい萌えやキュンとはほど遠かったですが、それでも最後には救いがあって良かったです。
転落人生には気をつけようと違う意味で戒めになりました。

1

Lのない恋の話

コミックは未読で、小説のみ読んでおります。

ゲイとは限らないけど、村上だけ、ただ一人村上だけに片想いしている地味学生宇野。
対して、光り輝くリア充村上。ふわふわの可愛い彼女とラブラブの村上。みんなが友達になりたい明るい村上。
この相入れない世界。
あんなに輝いていた村上は。
入社した会社で上司の不祥事に巻き込まれて失業して。両親が事業の失敗で自殺してしまって。辛くてパチンコの爆音に逃避して。あんなに愛してた雛乃のカネをくすねて。
そして転落し、何もかも失ってパチンコ依存のホームレスに。
宇野にとっては手が届かないと思っていた村上が地に堕ちて、自分だけが村上を助けてあげられるんだという状況。
ああ、雲絶間姫様のレビューが全てを語っておられます。
ラストまで読んで感じるこの痛みは、宇野の終われない恋に対する同情なのか、村上の雛乃とは2度とやり直せない喪失感なのか、一度癒される場を知ってしまったが故にそこにすがろうとする村上の弱さなのか。
つまりは「恋」の不条理性。
宇野はなんでこんな村上なんか世話しちゃうのよ?なんでいつまでも村上が好きなのよ?この「恋」の前には詮無い疑問。宇野も自分ではどうにも出来ないんです。
村上にしてみれば、自分が最低最悪のどん底にいた時に助けてくれた。でもあろうことか宇野は「男」。神様みたいで、どれだけ感謝しても仕切れないくらいの感謝を抱いてるけど、「男」。
愛せない。どうしても。

俺はお前を愛せないけど、お前は俺のそばにいてくれ。慰められるのはお前がいい。

ひとでなし。これでこそ木原音瀬……でも最後、甘さが出ましたね……
自分自身も傷ついて苦しんだ村上は、宇野をただ苦しめるだけの鬼畜にはなりきれない。宇野への甘さ、あるいは村上なりの愛情がある。
一応この結末はハッピーエンド。宇野にとっての救いは、村上が宇野を傷つけていることをはっきり自覚しているところ。そこがある限り宇野は村上を包んで行けると思うのです。

4

これが木原音瀬!

掲載されていた「泣けるBL」は読んだのですが、個人的には、その時は泣けませんでした。
「人でなしの恋」で一気に受けに感情移入して涙が出ました。
木原さんだったらもしかしたらバッドエンドになってもおかしくない!
読んでいる途中でこれはもしかして決別エンドになるのか、そこらじゅうに散らばってている「自殺」というキーワードがフラグに見えて、もしかしたら死ネタになるのか??と途中でヒヤヒヤしました。
今までのひどい痛いと言われる作品の中ではまだマシ?!だと感じたのはマヒしてしまっているからでしょうか(笑)
付き合ってやっぱり無理になって別れて、本当に離れられたら寂しくて元サヤに戻っちゃう。
まさに木原さん的BL恋愛ループ現象!(勝手になにを言ってるのか(笑))
付き合うまでは受目線でお話が進んでいき、別れて元に戻るまでは攻目線でお話が進む。
これが、心情が見えないセリフだけの受けに感情移入して、切ない気持ちがどんどん増幅するのでしょうか。
木原さんの作品はこういう構成が多いに使われているように感じます。
私個人はそれが大好物なのです!

一番泣けた所は宇野の「幸せになってください」のあたりです。
絶対だった受けからの好意が離れた途端にほしくなる。
好きな感情がないから離れたい、ノンケという設定なので好きだった女性の存在が受と離れたい気持ちにさせる。
とても人間臭い感情のような気がします。

6

私にとっての涙活本です

片思いを引き摺り続けている宇野へ感情移入しすぎて、読む度に泣いてしまいます・・・デトックス効果抜群!

叶わないと分かっていたから告げなかった恋心。でも、告げなかったせいで次へも進めない。
大学を卒業して会わなくなっても、思い出の中の村上は色褪せない。村上よりも魅力的な人さえ現れれば彼を忘れられるのに、思い出は色褪せるどころか懐かしさとともに磨かれて美しくなっていく。
そして偶然、宇野は村上を拾う。だが村上は汚っくらしいホームレスに落ちぶれていた・・・

宇野は生ゴミに成り果てた村上のことを嫌いになりたいと願う。この他力本願な思考、私すごく共感出来ます。けど冷静になって考えると、宇野は村上のことを嫌いになることが出来得たのか?ごうすれば嫌いになれたのか?
再会した当初、村上は宇野に対してかなり酷い。幻滅して当然なのに、宇野は村上を嫌いにはなれなかった・・・
宇野にとって村上は初恋。大学時代二人は親友でもなく、単なる同じサークルのメンバーというだけ。宇野が一方的に村上のことを目や耳で追いかけて、村上についての情報を知って恋心を育てていました。
それは恋に恋するような初恋で、愛とは呼べないものだったのかもしれません。村上という初恋に恋していた宇野は、村上が生ゴミを脱した辺りから、やっと村上自身に恋をしたのかもしれません・・・

「期限切れの初恋」の宇野視点でどっぷり感情移入した私には、村上視点の「人でなしの恋」は、二人の気持ちの温度差が大きすぎて辛かったです。
でも、村上の感覚は至極当然だと思う・・・思う、けど!!でも、頼むから宇野を愛してやってくれよ!と何度懇願したことか。
真っ当になった村上は悪い男じゃないし、かっこよくて魅力的です。だけど、私は宇野の気持ちを知っている分、村上の宇野に対する想いを酷いと思ってしまいました。
村上が雛乃たちと会った後、宇野が「どうしたら幸せになれる?」と尋ねるところから涙が止まりません。積極的でなかった宇野がやっと自から動き出した瞬間だと思います。
村上を過去にして進みだそうとした宇野を応援する気持ちで読んでいたので・・・村上そうくるの?!と驚きと困惑で村上をさらに酷いと感じてしまいました。
最後の展開が私はちょっと納得出来ないのですが、宇野が幸せならもうそれでいいです。今度は二人でちゃんと恋を育てていって欲しい。
村上も宇野、だけじゃなく雛乃や加々美といった脇の人間も、すごくリアルに描かれている作品です。迷われているなら是非読んでみてください!

6

初恋は残酷だ。


感想まじりのレビューなので、いきなりネタバレしています。
お気をつけください。

…………………………………………………………………



年をとった夫婦がこんな状態になっているのをよく見る。
数十年ぶりの同級生との再会の場面にも。

同級生の場合
たった数年の歴史が一生の中で貴い思い出になったりもする。
自分の気持ちの中の恋の相手は歳をとらない。
年収も地位も関係ないところで生きている。
だから、初恋を終わらせたくない人はその相手を追わないはずだ。

主人公が恋した相手はそんなにいい男じゃない。
学生時代は目立った奴が転落していくのは珍しくなく。村上という男はもともと詰めが甘く、上司のことがなくてもいつか出しぬかれるか陥れられていたかもしれない。そんなことも想像させる人物だ。
主人公の宇野は対照的で用心深く客観的で冷静だ。無邪気と雑を履き違えたような男に惹かれるとは思えない。どうして村上なんかに恋したのか。うかつなところが初恋らしい。
こんな二人が出会ったら、もともとフワフワした男を主人公が放っておけるわけもなく。
あっという間に、男に堕ちる。
恋は残酷だ。
期限切れだった初恋が情とか愛とかに変えられてしまった。
自分の気持ちをどうにかできたらいいのに。
ろくでもない男の本当なのかどうなのかもわからない言葉に一喜一憂させられる。
それでも宇野が幸せそうなのは初恋の期限が切れてないからなんだろうと思う。

「美しいこと」で相手がどんな風に変わっても受け入れるというくだりがあったが、この話もそうなんだろう。
人は変わるのが普通で、変わらないほうが難しい。
現実は限りなくグレーな惰性だ。
だから、宇野の変わらない気持ちに安堵と癒しを覚えるのかもしれない。

6

あらかじめ喪われた恋

 BL作品の攻めとして、絶対やっちゃいけない過ちを、村上は犯している。
一生に一度の本気の恋を、女としてしまったこと。その時点で、本作は通常のBL作品の枠組みから大きく逸脱してしまっている。本作における女は、当て馬でも噛ませ犬でもなく、あくまで本命、なのである。主人公が恋するに値する相手として、容姿はもちろん内面まで、終始一貫して申し分ない描かれ方をしている。不幸と不運が重なって村上が大荒れし、どん底に落ちた時も、決してあっさり見捨てたわけじゃなく、精一杯踏みとどまってなお、去らざるを得ない状況まで追い詰められたのだと納得できる。お互い嫌いで別れたわけじゃなし、別の相手と結婚しようが、子どもができようが、想いは失われない。完全な成就を見ないまま唐突に断たれた恋だからなおさら始末が悪い。表に出せない分ただ深く濃く、心の奥底まで潜りこみ、根を張り、互いを支配し続ける。

 では本作における宇野のポジションとは? 何しろ相手役であるはずの村上は、既に生涯一度の大恋愛を女とすませてしまった男なのだ。宇野は残った搾りかすをせっせと拾い集めて、後生大事に自分の部屋に持ち帰ったにすぎない。当て馬というなら宇野の方が限りなく当て馬に近い。主役でありながら当て馬。その立ち位置は最後まで浮上することはない。

 宇野もダテに長いことただ村上を見つめていたわけではない。過大でも、過小でもなく、かなり正確に彼が自分に向けてくる感情の質を見きわめている。「世界中の人がみんな死んで、自分と村上だけが生き残っても、たぶん村上は自分を選ばない」その宇野の認識は、気の毒だけど恐らく間違ってない。
 村上は残酷だけれど、正直な男だ。「お前じゃ無理」そう切り捨てられた宇野は、さして取り乱すこともなく冷静に受け止めていた。ずっと好きで、諦めきれなかった相手からの最終通告。悲しくなかったはずはないが、それも織り込み済みだったからこその落ち着きだろう。どんなに肌をかさねても、それとは別の次元で、永遠に手に入らないものはあるのだ。その意味では、宇野の失恋はあらかじめ運命づけられていたといってもよい。村上が道を踏み外さず、順調に本命の女と結ばれていたらもちろんだし、「人でなしの恋」のラストで「おまえがいい」と言って村上が宇野のもとにもどってきたからといって、それは将来を約束されたものでもなんでもない。もし女が今の亭主と別れて村上とやり直したいと本気で迫ったなら? それでも村上が宇野を選ぶという未来が、私には見える気がしない。とりあえず今は、ともにある。それ以上でも以下でもない。宇野と村上の関係は、互いが互いを唯一無比、至高の相手として求めあう一般的なBLにおける恋の成就とは本質的に違っているのだ。

 それはBL作品としては致命的な欠陥かもしれない。でもBLファンタジーの狭い枠を一歩踏み出して現実を見れば、こちらの方がむしろおおいにアリだろうなとも思う。真剣に愛し合った一組の男女と、その外側で彼らを見つめ続けたもう一人の男の物語。BL読みとしての読後感はけっして甘くも楽しくもないけど、読まなきゃよかったとは到底思えない。相変わらずきわどいとこを突いてくるよな、木原さん。

21

妥協できない人

受が壮絶な片思いの末に初恋を叶える話。
受に甘やかされて依存していく攻にキュンキュンしました!

ほとんどの人が恋愛や仕事に妥協しながら生きていて
妥協できない人間は攻のように現実と理想の違いを受け入れられずもがき苦しむ。
攻は己の弱さを認めて現実を受け入れるが、受は強さゆえに最後まで妥協できない。
不毛な初恋を諦めて手近な幸せを掴みかけたものの、最終的に攻を選んでしまう。

先の見えない茨の道を進むと思いきや、ゴールは意外に近くにあったという甘いオチ。
執念じみた片思いが純度の高い両片思いに勝っちゃう結末は痛快です。

ホームレスになってもギャンブル狂になっても泥棒になっても自分を愛して守ってくれる人に出会ったら、居心地良すぎてその人の傍を離れられないだろうなあ。

4

やがて、愛になる。

初恋の男に再会してみたら、なんと彼はパチンコ狂いの借金まみれ、歩く生ゴミ状態になっていた・・・
そんな姿を見たら、普通ならそれまでくすぶり続けてた恋愛感情もソッコーで冷えきるところですが、この作品の受け・宇野は生ゴミになった村上さえ、突き放すことができません。
そのくらい、絶対値として村上が好きなのかも。あるいは、相手を受け入れるのはうまいけど、自分に自信がなく、強引になれない宇野の弱さでもあるのかな。

宇野が机の引き出しにしまっておいた1万円札の枚数を、村上の心境の変化のバロメーターに使った描写が秀逸!
世話になってる宇野の金を盗むほどすさんでいた村上の気持ちが、途中から逆に黙って金を返すまでに回復していく…その過程が万札の数で数値化されることで、村上の変化が簡潔に伝わる仕掛け、好きです。

明るい笑顔を取り戻していく村上。宇野には、それが村上が自分から離れて行く予兆に見えて、彼を突き放そうとします。
一方まだまだ宇野を必要としている村上は、宇野の自分に対する好意が恋愛感情だと気づくと、宇野の気持ちに報いようとして、宇野を抱いてしまう。
でも、ノンケの村上は明らかに無理してるみたい。
そのことに、宇野は気付いてるのに、村上は宇野を傷つけていることに気づかず・・・

村上・宇野どちらの心理描写にも、共感の連続でした。
臭くて汚い村上のままでいてくれたほうが「誰にも奪われずに済む」とさえ思ってしまう、宇野のネガティブな独占欲にも。
そして村上の「人でなし」っぷりにも。
人生が絶好調の時と、心が弱っている時とでは、好きになる人も違ったりします。
だから、安定した仕事が見つかり、少し生活が軌道に乗って来たところで、宇野と距離を置きたくなった村上の気持ちも否定はできないんですよね。
恋愛という場面では、人は身勝手になってしまいがち。だって、一番大事な一人だけを選んで、後は切り捨てるのが恋愛ですもん。
村上を「人でなし」だと感じたのは、せっかく彼を忘れようと努力している宇野の元に舞い戻ってしまったってあたりかな。
ただ、残酷な言葉ですが「愛せないかも……しれないけど、傍にいて」と正直に言ったのは、彼なりの誠意に思えました。
一度は拒絶したクセに、ちょっと弱気になると黙って受け止めてくれる人間を頼ってしまう弱さ。それを都合よく愛にすり替えてしまう狡さ。
でも、そこから始まる愛の形も、きっとある。
「……今日の君は、まるで恋してるみたいに僕を見る」
ラストで宇野が村上の自分に対する視線に見たものが、ゆるぎない愛の兆しであってほしい。村上のことを、本人以上に知りぬいてる宇野の直観だから、きっと間違ってない・・・そうであることを祈ります。

花形人間と地味人間の温度差恋愛という題材は珍しくはないですが、二人の駆け引きの中に、狡さ・弱さを抉りだしていく描写は、世に「木原作品的」と呼ばれる部分なのかもしれません。
人間のほの暗いネガティブな一面も晒けだした上で愛が成立していくというストーリー、私は好きです。正直BL的な萌えという意味ではあまり気持ちが盛り上がらなかったですが、恋愛小説としては満足度が高い作品でした。

11

普通の恋愛でも木原度数高め

木原さんは「痛い」BLで有名だが、最近は普通の恋愛の話やファンタジー色の強いものが多かったので、油断していた。

雑誌「泣けるBL」に掲載された前半部分の最後では、体の関係ができて、なんとなく恋愛が成就されたところで終わる。
ところが後半は、宇野とは体の関係もあり付き合っている体なのに、動機は寂しいから・感謝しているから愛するようになりたいからだという。

そして理性とは裏腹に、感情の部分では以前付き合っていた女性を想ってしまう。

なんと救いのない話なのか。

そして、村上は本当にひどい。感情の部分は仕方のないと思いけれどひどい。

あとがきで木原さんが村上の地の部分がひどいから書き直しましょうと言われたとあったが、書きなおしてもあまりあるひどさ。

でも色んなものを通り越して憎めない人間のリアルがある。

最終的にはハッピーエンドに近い形で終わるのだが、最初に読んだ時は、モヤモヤして、誰かに話したくて仕方がなかった。

もう読みたくないというモヤモヤではなく、その生々しいひどいところがすぐにまた見たくなる。

14

互いのエゴ

コミックを先に読了。
本編を小説で改めて読むと、コミカライズは非常に忠実だが
より宇野と村上の気持ちのすれ違いが際立っていて、
木原先生は上手いものだ、と再認識。

大学時代キラキラしていた人気者の村上に片思いをしていた宇野。
その後6年を経ても忘れなかった想いだが、
ある日ホームレスに零落れていた村上と再会し、拾う……

同居生活の中で、やがて村上が少しずつ立ち直り
そして宇野の気持ちが露見して、関係が変化するまでが前編。

書き下ろし「ひとでなしの恋」は村上視点の話。
就職した大手企業から上司の不正のとばっちりでの解雇、
両親の自殺という過酷な現実の中で、壊れていく普通の生活。
容赦ない運命に翻弄され、どうしようもなく堕ちて行った果てで
自分を拾って見捨てないでくれた宇野にしがみつく気持ちと、
立てなおっていく中で出て来る、当たり前の欲と後悔。

村上は自分勝手だ酷い、という意見が多々あるのは承知の上だけれど、
私にはこのカップルどっちもどっちに思える。
おそらくこうして離れられないまま、生きていくのだろうけれど。

村上側からの話は、彼の葛藤や弱さが描かれていて
非常に人間的な物語だったと思う。
最後のアレレ?のなしくずしハッピーエンド?がなければ、
読み物として秀逸だと感じた。
ただし、個人的には萌えは皆無です。

 *読み物としては今まで読んだ木原作品の中で一番しっくり面白かったので
  BL評価では「趣味じゃない」ですが「萌」をつけます。

全く余談の感想。
村上は特殊清掃業に再就職するのだが、そこに描かれる利用者の姿が面白かった。
(はい、榎田作品「交渉人」の紀宵や一穂作品の長谷川さんと同業ですね)
そして、部屋の掃除をしなくてはいけないような気分に猛烈になりました。
私の部屋も‥‥予備軍……(ま、まずい……)
そして、職場の先輩志摩さんが興味深く魅力的。
彼の人生も覗いてみたい。

9

これも愛なんだと村上くん分かろうよ。

村上は一旦堕落し、ズルイ男でもあったけど私は嫌いじゃない。
あの一連の境遇で目の前の享楽に逃げてしまい、
何もかも自ら無くしてしまうというのは十分有り得ることだなと思う。
宇野のお陰ではあるんだけど、
最後の1万円に手を付けず立ち直っていった村上は十分賞賛に値する人間だと私は思う。
恋愛に対しても本当は至極まっとうで、
昔の恋人のことを忘れられなくても、
その恋人が自分を欲してると知っても立ち止まれた村上はいい男なんだと思う。

自分を見捨てなかった大事な宇野。
だけど男を愛せるのか?と考えた、村上の人としてのリアルさと、
宇野のファンタジーさがものすごく際立っていました。

そして、それを何よりよく分かっていて自己完結してしまう宇野の方に、
「言いたいことは言わなくっちゃ!」という気持ちと、
先が見えてるからこそ綺麗にフェイドアウトしたいという気持ちも分かるし・・・
とずいぶん「あぁ!宇野くん!」
と同じ職場だったら飲みに行って存分に愚痴を聞いてあげたい気持ちになりました。

自分を責めなかった宇野が村上に手を握り
「君はとても強い人だ」
「君は優しくて、強くて、正しい人だ。もう何があっても道を誤ったりしない。君は誰よりも幸せになれる」
「幸せになってください」
と祈るように言うシーンで宇野を愛してるとは認めてはいないけれど、
ほとんど村上は落ちたんでしょうね。

そして240ページ後半からの宇野の今まで心の内に秘めた感情の発露を、
村上は愛しいと感じ、「愛せないかもしれない」と言いながらも自覚したんだと思う。

「とうとう言った!宇野くん頑張って!」
とゾクゾクしながら読みました。
でもって、「人でなし!」
すごい。
滅多に口にすることはない言葉だけに効き目あり。
「人でなし!(でも好きでしょうがないんだ)」
こんな愛の告白をされたら可愛くなっちゃうと思う。

これから先、
「これは愛なのか?」と悩んで同じことを繰り返すこともあるんでしょうが、
今は村上に「たぶんこれも愛ですよ」と教えてあげたいと思う。





20

誰もが持つ弱さ

真面目で地味な宇野。反して、華やかで目立つ大学の同級生だった村上。
キャンプサークルで一緒に過ごすうちに、宇野はいつも村上を目で追うようになり、
もっと近い距離の友達になりたい、特別になってみたいと思いはじめます。
そして雛乃が現れた事によって、宇野は村上に対する気持ちが恋だと気づきます。
片思いのまま卒業して6年。
一度も会うことの連絡を取る事も無かったのに、村上を忘れられないまま・・・

淡々としていて強引さは無いけれど、これも執着愛ですよね。
報われない片思いなんて余程じゃないと続かないですし、
しかも卒業後一度も会ってないのに想い続けるなんて・・・
落ちぶれて生ゴミの様になった、皆に見放された村上に手を差し伸べた宇野は、
本当に村上が好きなんだなぁと思います。

だけど、本当に好きだからこそ報われないことが辛くて傷つきたくなくて。
村上が立ち直っていく程に、また村上に誰か特別な人が出来る事を想像して、
結局突き放してしまう宇野の葛藤が辛かったです。
「出て行ってほしい」と自分で言ったくせに、泣きじゃくる宇野が可哀想でした。
そして村上の、頼り切っていた宇野に突然突き放された絶望も哀れでした。
宇野に見捨てられたくない一心で、無理やり身体を繋げてしまった村上は、
確かに最低かもしれませんが・・・
村上目線の「人でなしの恋」を読んで、村上の必死さが分かる気がしました。

パチンコに限らず、何かに病的な程に依存してしまう人は、
確かに弱いのかもしれません。ダメ人間なのかもしれません。
解雇に関してはかなり同情しますが、再就職に対する意地は蒼いですよね。
気持ちは分かりますけど(笑)
だけど、両親の自殺に関してはどうでしょうか・・・
首を吊って死んでいる両親の姿は、死ぬまで村上の悪夢となるでしょう。
何より、両親が死ぬほど追い詰められていたことに気付かなかった後悔は、
一生癒されることは無いと思います。
ギャンブルに嵌り、知人にまで嘘ついて借金して、返済を迫ると開き直って・・・
とことん堕ちた村上は、確かにダメな奴かもしれませんが、
「心を病む」程の深い絶望と後悔は、誰もが経験する事ではないと思います。

宇野が好きだけど、女性と同じには愛せないことを悩み始めたところで、
偶然雛乃に再会した村上。どれだけ雛乃を愛していたのかと胸が痛みます。
――やり直して、取り戻せるものと、取り戻せないものもあった――
「お前じゃ無理」と宇野に言う村上。どちらの気持ちも、辛いと思いました。

最後に「自殺は取り返しのつかない甘えの極地だよ」と言う志摩に、
両親の自殺を打ち明け「甘えなんかじゃない」と言う村上。
「残された者が後悔して苦しむなら、それはやっぱり間違ってるんだよ」と否定され、
――どんなに苦しんでも、みんなで生きていきたかった――
と泣く村上。胸が痛かったです・・・もらい泣きしそうになりました。

そして、宇野のもとに戻り、
「愛せないかも・・・しれないけど、傍にいて」と彼女と別れることを迫ります。
「人でなし!」と罵り泣きながらも、村上の背に腕を回す宇野。
これも、一つの愛の形なんだと思います。
村上は、これからも宇野を雛乃の様には愛せないかもしれませんが、
お互いが相手を必要だと感じ、寄り添いあうこの関係も、
「愛」と言って許されるのではないでしょうか。
二人のこの「愛」が、ずっと続くことを願うばかりです。

7

アメを与え続ける男に飼いならされていけばいい!

私はコミック→小説の順で読みました。以下両方読んだ後での感想です。
(ネタバレ満載なので閲覧注意でお願いします)

村上って宇野にとっては本当にヒドイやつです。
「愛せないかもしれないけど傍にいて」って、調子良すぎです!!

しかし村上は元々ドがつくノンケ思考の持ち主ですから、彼にとって恋愛対象は絶対的に女です。
そんなノーマルの男性が男と恋愛なんてできるわけがないです。
そうしたら村上が宇野に対して抱いているものは何?と。
村上はもちろん宇野のことは好きなんです。
でも宇野の好きと村上の好きとは絶対的に違います。

自分に無償の愛を注ぎ続けてくれる存在があったとして、
その人から甘やかされ続けたら人間はどうなるでしょうか。
そんな都合の良い相手がいたらどこまでも自分の欲望が肥大化し、
手放せなくなると思うのです。
村上は干からびたツボに無限に注ぎ込まれる水に慣らされ、そして手放せなくなった。
これは執着。心の空洞を埋めるための蜜。
こういう精神構造の癒着を描くのが木原先生って上手いですよね~!

宇野にしてみれば村上の執着は=愛情ではないことが分かっているからできれば突き放したいのです。
なのに村上は「お前が好きだよ」と言う。その言葉にどれほどの重みがあるでしょうか?
ヒドイよ村上!!軽いよ村上!!

けれど宇野も無自覚な凄腕さんですよ。
無償の愛を注ぎ続けることができる、その盲信的な愛(執着)こそが宇野の持ち味。
観葉植物のくせに詐欺師が使うような玄人手管、「あめ」を与えるという技で村上を手に入れています。本人は気がついていませんが、宇野恐るべし!気づきなさいよっ(笑)

ところで村上はパチンコで身を崩してどん底まで行きましたが、
男女の恋愛面においては意外とまともな人だったと思いました。

元カノに再会しても、元カノの家庭を壊そうとはしなかったのです。
元カノがまだ自分を好きだと分かっても、周りの人間にそそのかされてもよりを戻そうとはしませんでした。
こと男女の恋愛関係において村上はノーマル男性の中では上出来なほうではないでしょうか。
だから私は村上のことをBLの敵とは思うけれど、女の敵とは思わないのです。
その点『放蕩○屋の猫』の○真のほうがよっぽど酷かったと思います(これ分かる人は分かると思います。あれもなかなか強烈だったw)
それにあそこまでどん底に行ったのに結果的には這い上がってきました。
ちゃんと働くようにもなりました。なかなかこうは行きませんよね。
そう考えると村上という人物、木原作品の中ではライトな人物だと私は感じました。
宇野もこれくらいの執着だったら全然ライトな人物設定ですよね。
だから今回の作品については痛みとかあまり感じなかったです。
慣れというものは怖いですね。フラットな気持ちで読了しました。

それに終わり方が少し上向き加減で終わっているので、それも救いと言えば救いです。
多分これから村上は宇野の蜜をチューチュー吸い続けて結果的に宇野にハマっていくんじゃないかと思っています。(二次妄想始まった!)

もうこのさじ加減が印籠の如くお決まりなのですが、
お決まりだからこそ見たいという面もあるんですよね♪
またかと思いながらもかっぱえびせんの如く辞められないのです~。
このパターンをぶっ壊して欲しいと思いながらも、そのパターンこそが最大の魅力にして吸引力!

でも時々構造改革本も作って欲しいです。
アメの次はせんべいみたいな感じで交互くらいがありがたいです(笑)

個人的にはキャラ萌が全くなかったんですが、
けれど楽しめた部分もあったので萌評価にしました。

14

ドMの極み

まず私は宇野君が理解できない!!!
私にはM属性ないので、あんなのは耐えられないと思う。
バスルームに残った想い人の1本残った陰毛をみて欲情…
これは本当に分からない感覚だ。

確かに依存して依存されて中毒の様に燃えることもあると思う。
そして、昔の恋愛を美化して思いを告げなかったことを後悔っていうのも。

でも、あそこまで何でも許せる状態にはならないと思う。
ある一種の精神異常なんだと思う。

しかも、あそこまで酷くなるかな?って思った。
そして先生お決まりのの残り3mmでの怒涛の展開パターンも
ただカライ中での無理矢理の終焉に見えるほど
非現実的で理解に苦しむ内容だった。

愛せない、けど利用する。そして情が湧く……コッチの方が
私には理解できた(村上視点)。
でも宇野君は最後までつかみどころがなくフワフワで
とにかくドMだなとしか思えなかった。

ここまでの展開なら、無理矢理結末らなくてもいいんじゃ……

私にとっては合わない本だったかも。

5

やっぱり駄目だこの男たち…

コミックスと同じ内容だと気付いた時点でとばかして
その後へといったのはいいのですが、が、が、

読んですぐ感想書いてるんですが、悪口しか書けない気が…
時間開ければもう少し納得するんだろうか…?
泣けるより腹ばかり立ってしまいました、すいません。

あーっ駄目、やっぱり私はこの村上を受け付けられないわ。
宇野の方もなんだけど(可哀想にって同情は凄くするんだけどね)。
もう、コミックスの方より腹の立つ男になってたよ村上が!!
どうしてそこまで宇野に対して言えるんだろうこの男。
そこまで宇野に言っておきながら依存しすぎだろうお前っ!!
もう宇野を放してやれよ~っ。
宇野も捨ててしまえよこんな奴。

村上だけじゃなく宇野の方にも問題あるのかな?
とにかくこの2人の態度にイライラするばかりでした。

10

弱い心のスキマ

最後、本当にこれで良かったのかしら?別の道も幸せとは限らないが。
円満ハッピーエンド、もしかしたら有るかも!とちょこっと期待してたんだけど
やっぱりそうじゃなかったわね~。
ムカムカさせるのが木原マジック!わかっちゃいるがやめられない!それがファン。
まんまと罠に引っかかって最後まで読破しました~。
不安解消ストレス解消の為だけにエッチ。
捨てずに見守ってくれた男だからノンケでもエッチが出来たっていう…なんだかな…。
心のバランスが耐えられるかしら?それで心のスキマって埋めれるものなのかしら?
BLのラブの場面。ラストにうっすらと光が差し込む。
宇野(受)を好きって事にほんの少し気が付く村上(攻)を垣間見れただけでも良しとするべき物語なのかも。
だって所詮女性が好きなんだもん。
宇野(受)も寂しさを紛らわせる為に彼女作ってたし。ゲイじゃないから。
結局、どっちもどっちな似たもの同士だったのか!
幸福か不幸かは本人達にしかわからないからね…。読者はエライ振舞わされ…。
いやはやスッキリしない。そこがクセになるんだけどね。

読み終わっていろいろ考えてしまう話だったから【神】評価。
自分の思っている事を相手にうまく伝えられないもどかしさ、人間の嫌な部分を隠さず前面に出してある作品でした。

10

感情消耗、苦い後味。

コミックから入って、光の見えなさに、
正直ノベルズを読むかどうか迷っていました。
読みながら色々な感情を消耗しましたが
結果的には読んで良かったと思う。
でも、萌えとか神とかは考えられなかった。
「中立」なのは、本当に
どう言っていいかわからないから。


村上視点で物語は進むけれど、
私は辛くて何度も泣いてました。
村上にも宇野にも感情移入してるわけではなく、
こんなにも上手くいかないのかと
客観的に見て苦しかったのだ。

村上は、酷い。
端々に村上が過去を後悔する
心情描写があるけれど、
宇野にした行為や言葉への後悔は
ほとんど描かれない。
でも憎みきれない何かがある。
自分でもよく分かってないんだろうと思うし、
これがホームレス状態から回復した
「普通のノンケ男」の
リアルなのかも?と思ったから。
でもやっぱり読み進めるのは辛かった。
村上が下手に宇野に依存し過ぎてるがゆえに…。

ただ、ここまで辛さを引っ張ったけれど
ラストは少し、少しだけだけホッとした。
ハッピーエンドとは言えないと思う。
でもアンハッピーでもないと思う。
甘さはない。すぐ揺らぐかもしれない。
最後の一文ですら、村上は酷い。
でも、ここで終わっているからこそ、
まだ読者は打ちのめされなくて
よいのだと思う。


木原作品、コミカライズは
『キャッスルマンゴー』以来でしたが、
小説は初めてでした。
文体などに読みにくさはなかったけれど、
ここまでリアルに容赦なく描かれると
読むときに気持ちは辛い。
私が木原作品初挑戦だから
そう感じたのだと思いますが、
他作品がどうなのか気になります。

BLの甘さが欲しい方には
糖度ゼロなのでオススメしません。
読んだ後にすっきりはしないし、
誰にオススメしていいかも
わからないのですが
心にひっかかりを残す作品でした。
ノベルズだけ読んでもよいと思いますが、
コミックだけでやめない方がいいんだな、
というのは一番の感想です。

12

愛でも恋でもない思い

コミックから読みましたがノベルズの「期限切れの初恋」→コミック→ノベルズの「人でなしの恋」が良いかも知れないと思いました。
「期限切れの初恋」はノベルズをそっくりコミックにした感じです。
コミックを見た後すぐに小説を読んだのでかなり読み飛ばし気味でもったいなかった。
「人でなしの恋」はリアルでした。
BLがファンタジーなんて大嘘です。木原節炸裂(笑)
初恋に恋心にけりをつけたい宇野と転落人生から立ち直ろうとしている村上と・・・。
汚い臭い痛いの三拍子が揃っていますが読んでいて本当にありそうな話で胸にきます。
結局、ふたりの関係に決着は着きません。
読んだらわかりますが着くわけがない。
愛でも恋でもない村上の宇野への思いは何処へたどり着くのでしょう。
それでもラストは、BLがファンタジーに歩み寄ったラスト(特に糸井さんの最後の挿絵が・・・)なのでご安心ください。

10

最低村上。

もう途中から今回は駄目なんじゃないか、二人は幸せにはならないのではないかと思っていた。

いつもながらの木原作品に出てくるとんでもない男。
村上!最低過ぎ。
こんな最低攻め男は、あまりいないのではないか。
何だかんだ言っても、結局のところは雛乃が好きだし、これからも好みの女性が現れれば宇野に容赦なくまた「お前では駄目だ」と言ってそちらに行くことだろう。
で、そちらと駄目になったり、また落ちるようなことがあれば宇野のところに戻って来るのだろう。

そんなことが見えるのに、何故か最低村上に怒りが湧かず嫌いになれないのだ。
何故か、何故かというと、それは村上の過去にあるのかもしれない。

会社を上司のせいで辞めざるを得なかったこと。そして就職もそれが理由で上手くいかなかったこと。
両親が二人そろって自殺し、第一発見者になったこと。
パチンコにハマり借金まみれになり、あっという間にホームレスへ人生転落していったこと。
そして村上の周りには誰一人としていなくなったこと。

今まで順風満帆に挫折をその年まで知らず生きてきた人間にとって、それらのことは何と大きい過去か。
充実していた時も転がり落ちて過ごした日々も、全て村上の物なのである。
いくら村上が立ち直ろうと過去と決別して頑張って生きていこうと、全て村上の物なのである。

誰もいない暗闇のどん底から救い上げてくれたのは宇野。
辛く大変な時にずっと村上を勇気付けてくれ、傍にいてくれたのは宇野。

いくら村上が今後も他に目を向けようとも、絶対に宇野に戻ってくると思う。
結局は村上は宇野に傍にいてもらわないと駄目なのである。
宇野にとってはそんなこと、本当に堪らないだろうけど。

村上がそれを自覚できる時が来るのは、先のことだろうけど。

村上、早く宇野という存在が最も重要なんだということを認識してくれ。
そして宇野を幸せにしてあげて~。

こんな最低男の話を、私は何度も読み返してしまう。

それというのは、こんな最低男が宇野という存在の大きさに気づき、傾く様を見たかったからかもしれない。
どこかで完全に宇野に落ちた村上が読みたくて仕方ない。


13

愛とは別の

前半は、同時に発売になった、糸井のぞさんによるコミカライズの原作部分。
後半は、攻めの村上視点で、宇野に拾われてからと、その後のお話「人でなしの恋」。

やっぱりなぁ、という、木原作品らしい、むしろ、テッパン、安定の、超・人でなし展開。

人間同士、同じ熱量、同じ重さで、愛しあえるわけないじゃん。
いくら愛されても、そこにあるのは愛とは別の物で、
だからといって、簡単にそれを切り捨てて別の道へ進めるかというと、
もう、そこからは引き返せない。
そして、二人は永遠に分かち難い番となって、
未来永劫、偕老同穴、
めでたし、めでたし。

木原エッセンスがきっちり凝縮されて、実に木原風味がわかりやすい作品。
長さもお手頃なので、これって、これ以上の木原作品について行けるかどうか、木原入門(踏み絵)作品にちょうどよさそう。

9

はぁ疲れた〜

コミック→小説と読みました。
コミックからはいったぶん村上の汚さありありと想像できて吐きそうになりました_| ̄|○
そして、想像以上の村上のだめっぷりに読んでて疲れました。


期限切れの初恋 受けの宇野視点で話しが進んでいきます。コミックと同じです。より宇野の感情が読み取れてさらに理解を深めました。

人でなしの恋人 攻めの村上視点で宇野との関係が見えていきます。人でなしです。けど、そんな人でなしを愛して逃げられない宇野が切なく愛おしく思える話しです。
村上の宇野に対する気持ちがダイレクトにわかるので辛い辛い_| ̄|○
期限切れの初恋では想像だけでしたが突きつけられた現実には目を背けたくなりました。

コミックの感想で最後に思ったとおり、
やはり、宇野と村上は甘いだけじゃいられないその通りな感じでした。
村上のひどさったらないよ〜_| ̄|○
ひどくて優しく男、自分には辛い仕打ちするくせにけして手放してくれない。
宇野の加護を受け心癒され新しい仕事にも糧を見出しはじめた村上は宇野との関係に違和感と焦り、罪悪感を感じます。
そんな中、大学時代の元恋人と再会し宇野に対する気持ちに恋愛感情がないことをはっきりと認識してしまう。
特別な清掃会社(自殺、死体の現場)で働くうち自分の親や元上司などさまざまな思いにかられ宇野のもとへ訪れる。

自分勝手で宇野の前で元恋人を愛していると泣きながら言い切ってしまうのに、寂しいから一緒にいてくれと言ってしまう村上が憎いです。そして保護欲をかきたてられます。
人でなしと泣きながら村上を罵倒する宇野は愛おしいです。

ラストと二人はほっとさせられました。
ようやくスタートです。

8

さあ、未来の話をしようか。

穏やかなふたりだけの生活。

しかし、宇野は分かっていた。
心を取り戻した村上が、いつまでも自分のところに留まっているはずがない、と。
一年後の約束をするのも、なんとなく気が引けていた。

そして、仕事を始め、疎遠になっていた友人たちとも交流を取り戻す村上。
その中には、過去酷く傷つけた元恋人・雛乃もいた。
未だに雛乃と別れた事を後悔していた村上は、雛乃に再び惹かれていく。


雛乃に対して抱いている「愛情」と、宇野に対して抱いている「安らぎ」
ふたつの感情の中で揺れる村上。
そして、



 お前じゃ無理

二人の未来は、想像できない。
愛せない。雛乃のように好きにはなれない。

それが村上の答えだった。



 君は優しくて、強くて、正しい人だ。もう何があっても道を誤ったりしない。
 君は誰よりも幸せになれる。

 幸せになってください。


ふたりの未来は、交わることができるのか。

9

こんなダメ男でも見放せないって恋は怖い

表題だけを読んで終わりだったなら、限りなく趣味じゃないと感じる作品でしたね。
『泣けるBL』がテーマだったとあとがきで知った後も泣けるどころか気分が悪いと
個人的には感じてしまう。

大学時代から片思いし続けた相手が無職で友人知人に借金をしまくりホームレス状態。
そんな好きだった相手の噂を聞き、自分の片思いの気持ちが消えるかも知れないと
人知れず探し、偶然再会し、噂以上の酷い状態の姿を見せつけられ、
自宅に泥棒でも飼っているのかと思えるような展開、それでも何も言わず
自分のお金が消えていても、そ知らぬふりでただ黙って共にいる。

片思いの相手の村上が堕ちていく様を目の前で見せつけられても嫌いになれない、
人を好きになるって理屈じゃないから、こんな悲劇的なことも起こり得ると
感じて切なくなってしまう。
それでも何も言わず傍にいた事が村上を堕落寸前の場所から引き揚げていたりする。
減り続けていた現金が増え始め、抜き取る前と同じ金額になり、今度はそれ以上の
お金が封筒に入れられるようになって、嫌いになれるかも知れないと思った気持ちが
逆にもっと惹きつけられてしまう結果になり、立ち直りかけている村上にとっては
残酷なタイミングでアパートを追い出す。

その一連の流れも、その後の宇野の隠し通していた思いが溢れ出てしまった後も
やっぱり泣ける感じはなくて、表題だけ読むと明るい先が見えない気がします。
表題は宇野視点で、『人でなしの恋』が村上視点ので描かれています。
この村上視点があったから趣味じゃないが萌えになりました。
人を好きになるって理屈じゃないと感じさせられたように思います。

11

神様のような人


すごく、人、というものを考えさせられる作品です。

人を何年も会わずに好きでいること、って、凄く大変だと思うんです。でも、それが、なんていうか、自然とできる人間、というのが、宇野なんだと思います。そして、この宇野の恋は、どちらかといえば、燃え上がるものではなくて、ただ、じっくりとみていたり、思い出をそっと心のアルバムから開いてみるような、そういう、植物染みたなにか。そして、それが、宇野の恋の形なんだろうと思います。そして、きっと、たぶん、村上を神聖視していたのだろうなあ、と思います。

そして、村上。彼のプライドも、彼の中身も、たぶん、落ちぶれてもなにしても変わらなかったのだろうなあ、と思うのです。きっと、本質は変わらなくて、ただ、空気のようにその場にいるものが宇野、という彼の中の位置づけは、宇野を神様のような人、と思わなければ変わらなかったのだろうと思います。ただ、私の中では、この、神様のような人、って言う言葉が、今一歩村上が宇野へ恋できないキーワードのような気がします。

神様のような人、つまり、村上にとって、宇野は、大事な人で神様になっているわけです。つまり、神様を愛するということは、信仰に変わる、つまり、てをだす事すらいけないような、神聖な、ままならない存在になる、ということではないか、と思います。宇野を自分とあまり変わらない場所に置くには、彼は、宇野に恋をしてはいけないのではないか、宇野を愛してもそれに気づいてはいけないのではないか、それが、宇野も村上も、村上の中で人間であるために必要なことではないか。

彼らの関係は、そういう意味で、歪で、恋であって、恋ではなくて、依存していて、依存していなくて、アンバランスであるからこそ、保っていける関係なのだろうなあ、と思いました。

きっと、この、神様のような人、という言葉が、たぶん、関係性を表しているような気がするのです。

とても好きな作品ではありますが、お互いに見方がすごく食い違っている作品なので、萌え評価、かなあ、と思います。

8

宇野は保険

やっぱり容赦ないですよね。ものすごく現実を突きつけられた作品な気がします。
宇野の心に恋心は見えるけど、村上にはない。
全てを失って、偶然再会した宇野に拾われて、彼の心を知って自分が寂しくならない為に強姦のように身体を奪った【期限切れの初恋】
一番のこの本の核は村上と宇野のその後の【人でなしの恋】にありました。
人でなしの恋という題名だけど、自分にはやはり村上は宇野に恋心を抱くことはできなかったと思います。

宇野の元で生活し、セックスをするもそれは彼の様子を見てであり自ら欲情してではない。
自分から行った時は乱された感情を発散するため。
彼等のセックス描写に甘さはなく、女性の身体と比較したり遅い宇野に早くイけばいいのにと思う村上がいて、どうして宇野が遅いかと思えばきっとそこに優しさがない一方的な彼の行為があるからなのだと思う。
特殊清掃ではあるが、良い人達のいる職場に恵まれ昔のような仕事に対するこだわりも捨てることができたのは、借金を返すという目標があるから。
だけど、昔の友人達に借金を返し始めると彼の中に再び昔に戻ろうとする気持ちが働くのは否めないだろう。
雛乃との再会に宇野を比較に思う。
昔のように明るく接してくる友人たちに宇野を忘れる。
自業自得とはいえ、荒んでいた時彼等は迷惑をかけた村上を見捨てたのだが、立ち直った姿を見て喜んでいて、昔通りとはいかないもののそこに彼等と村上の甘さが見える。
一番辛い時を見守った、立ち直らせた宇野はやはり大学の時と同じに部外者になるのだ。
誰も宇野の凄さを褒めず立ち直った村上のことばかり。
そんな昔の仲間との再会に、オレはもう大丈夫と思ったのか、昔に戻りたいとおもったのか、一人暮らしを考え出て行く村上。

しかし、この村上の姿は非難できるものではないです。
これってノンケで相手に愛情がなければありうる姿だと思うのです。
宇野視点に立てば、酷い奴極まりないのかもしれないのですが・・・

村上って宇野の上にあぐらをかいて甘えてるんですよね!
「お前とはありえねぇわ」と言って切ったあと、宇野に彼女が出来たのを知った時急にわき上がる独占欲にも似た気持ちは、実にエゴイスティックだ。
自分が寂しいから。
植物のようだと思った宇野に感じる安らぎを手放したくないから。
もう雛乃はいないし、自分が酷い状態の時何も言わずに彼を置いてくれた、自分を解ってくれている人・・・そして村上の事を好きだ・・・恋心を利用した確信犯だ。
それを村上も絶対薄々気がついているはず。
村上にとって、宇野はシェルターのような保険なんだと思う。
絶対、この後誰か村上の寂しさを癒すような女性が現れたら絶対に葛藤しながらも宇野を傷つけるんだと思う。
宇野よ!強くなれ。もっと傲慢になって村上をがんじがらめにしろ!と密かに思わなくもないw

まっとうな普通の互いが恋をしてという流れでない男同志の関係を描かせたら木原作品は絶品なんだと思う。
夢は見れないかもしれないけど、救いはないのかもしれないけど、クズ男の描写はたまらなく、その苦しさに伴う快感がある~読者をドMに突き落とす!?(時にドS)

素敵だった~!萌えた~!という作品でないことは確か。
でも、それがわかっているからこの作品はこれでありだし、徹底的に村上が人でなしだったのを貫いてくれて(宇野にとって)それは見事だと思うのデス♪
とても好きな作品ですが、評価がしづらいので「萌」になっています。

17

見捨てない。

木原作品はあいかわらず読み終わるとざわざわする。ざわざわ。
誰かを好きになるってことが軽くなく、普通の少女マンガだったら決してない「あれ、俺ほんとにこいつが好きなのかな…?」って揺らぎをためらいなく描く。しかもこのままアンハッピーエンドもありえるんじゃ…ってくらいリアルに。でも人って、恋愛ってそうだし、それを乗り越えての「気付き」だからこそ、読んでるこっちも登場人物の気持ちを信じれる。本物の愛なんだって思える。
つまり萌えたー!!
受けが健気というか諦めというか、すごく冷静に攻めの幸せのために自分がいるか否か考えてて、冷静だからって傷付いてないはずないのに、ひたすら幸せを祈ってる。攻めはひどいけど、ひどいけど、最終的に気付いてくれるならなんでもいいや。
きっとすごく優しく甘やかしてくれる恋人になると思う。

8

難しい・・・・

泣けるBLに掲載されてた宇野(受)目線の話と今回追加された村上(攻)目線での話なんだけども、そもそもが泣けるBlと謳ってただけにちょっと期待外れだったのもあります。しかし木原節炸裂な箇所は随所に散りばめられていて流石だなと唸るところはありました。(攻)村上が実に正直なんです、元カノと冴えない(受)に対する熱が如実に違うんですよ。男の嘘のつけない部分をガツンと描いていて、こんな(攻)嫌いだという人もいるだろうけども、木原作品の良さって男の弱さや狡猾さ駄目さをこれでもかと描いてくれてるところが最大の持ち味でもあるのでそういうところは今回も如何なく発揮されてました。けど何か物足りなさを感じずにはいられませんでした。作品の殆どが痛い系なのでパターン化されてる気もしたり、持ち味の一つである不細工にオッサンや爺さんとか様式美から外れたキャラクターも時折うんざりします。木原音瀬作品は異彩を放ってる稀有な作品ばかりです。しかし今回の作品はこれまでの木原作品の様式美がギュッと詰まったところが上手く完成され過ぎていてかえって新鮮味が無いという印象でした。木原作品以外にも最近は痛い系をがっつり描く方も増えてきて、例えば凪良ゆう作品は痛い系以外にもキラキラした青春モノやコメディーまで幅広く描いたりするので振れ幅が大きく感じます。それを木原作品に求めるのはナンセンスだと判っているのですが痛みも慣れると鈍痛になります。しばらく木原作品とは距離を置くとまた新鮮味がわくと思うので、その時はこれでもかというくらいヒリヒリする痛みある作品にまた出会いたいです。

21

この作品が収納されている本棚

マンスリーレビューランキング(小説)一覧を見る>>

PAGE TOP