ボタンを押すと即立ち読みできます!
雁須磨子先生の独特なテンポ、絵柄、何から何まで全てが素晴らしいと再認識する作品でした。
『傷』は少し前に単話で拝読して、もうとにかく素晴らしくて素晴らしくて大好きなお話です。
感情、感情、感情です。
そして、表題作含め他のお話もとても素晴らしかったです。
毎回毎回「雁須磨子先生、天才だーー!!!」と思わされます。
中でも特に『めがね』が大好きです。
少し自分には難解なお話もあったので、また機会を改めて読んでみようと思います。
一冊丸っと表題作かと思いきや、ちがいました。
同人誌の再録集とのことです。
◾︎傷
好きだ…残そうとした"傷"は写真を見て「楽しかったな」と笑う彼の前で引っ込めて、別の傷を作る。いつかは忘れる恋情でも、この一瞬はこれほどの想いなんだよ。
◾︎明るい花,why do
傷といい、こういう苦しい作品は好き。と思いきや実はそんなに苦しくない展開で、言葉が足りなかっただけという。すれ違いBLは数あれど、テンプレ感がでないのが雁須磨子先生で、常に作家さんの味があります。
◾︎遠くで電話が鳴ってる気がする
◾︎佐竹山富三郎(42歳,ストレスで退職)×江田宇多(大学生)
これ一冊読みたかった!!!おじさん、富三郎の思いをもっと掘り下げて知りたかった!!!謎が謎のままの部分も多いのでもどかしい
◆つきあってさんかげつ目(表題作)
いつの間にか自分の方が相手のことが気になって仕方なくなっているのに、中々それに気付かない土井が1人で悶々と考えているところが面白かったです。なんとなく視線を感じて、あの人私のこと好きなのかななんて一旦意識してしまうと、気付いたら自分の方が相手を目線で追うようになっている。誰しもある経験なんじゃないでしょうか。高校生らしくて可愛かったですね。
◆遠くで電話が鳴ってる気がする
甥と叔父の組み合わせ。ストレスで自宅に引きこもり、生活がだらしないばかりか不潔ですらあった富三郎が、甥の宇多と暮らすことで徐々に元の人間らしい生活を取り戻していく。短編集なので仕方ないですが、心情描写はもう少し欲しかったかも。それでも、年齢差や世間の目は気にせず叔父に積極的な宇多が素敵でしたし、富三郎も地味ながら包容力があり、最後は抱く側に回るというギャップにも萌えました。
◆先生と一緒
これが一番お気に入りかも。見た目上さほど歳の離れてないカップルかと思っていたんですが、実は元教え子と教師のカップルで。かつて生徒だったテツは、自分だって好きになったんだからと石嶺を慕う現男子生徒達に嫉妬する。それをスパイスにしながら熱々な日々を送る2人を、もっと読んでみたかったです。
電子限定で「Surging every day 1」「Surging every day 2」という雁須磨子さんの同人誌作品ばかりをまとめたコミックがありまして、そこに収録されている作品は全てこの「つきあってさんかげつ目」にも収録されています。
私は「Surging every day 」一巻&二巻を持ってますが、それでもこの新刊を買って良かったなと思います。
Surging every dayはシリーズものが続きではなくバラバラに収録されているので読みづらく、読んでる最中で誰が誰状態になってしまうのに対して、こちらのコミックスはシリーズものは続いて収録されているのでその世界感が途切れることなく読みやすいのと、こちらには【先生と一緒】という2014年同人誌の作品が一つと【デート】という描き下ろしが一つ追加されているからです。
そして雁須磨子さんの作品をとりあえず何か読んでみたいという方にもこちらを全力でオススメしたいです。(もしくは「こめかみひょうひょう」)
登場する多くのキャラが「あいつのことが好きだ!」みたいな熱い感情はないし、もしかしたら自覚すらしていないのかもしれないけれど、のらりくらりと会話したり二人でモダモダ過ごす時間が多くなるにつれ、恋に気づいていくというか、このモヤモヤしていた気持ちが恋だと気づく…みたいな絶妙なじわじわ感が雁さんの持ち味だと思うのですが、そういう作品ばかりだから。
いくつか好きな作品についてレビューします。
この中で一番好きなのは【傷】
こういう暗めのは商業作品には無いので、初めて読んだときはこんな短いページ数にキュっと切なさが詰まった作品を描かれるとは!と新たな一面を知った気がしました。
この作品は何度読んでも切なくなります。
理由は描かれていないけど、もう会わなくなるかもしれないほど遠くへ行くために、身の回りのものを処分している友人と、それを見守る主人公。
もう二度と会えないのなら、いっそのこと…と思いながらも何気ない顔をしている主人公に、餞別代わりに自分が焼いた器を差し出す友人。
本当に欲しかったものを言い出せなかった、それならばせめて傷でもいいから欲しかった、でもそれすら…という切なさが好きです。
インタビューで「告白したらうまくいったと思います。」という雁さんの言葉を読んで、おぉぅ……となりました。
【さいしょの一歩】表題作シリーズ
絶対、北村は俺のことが好きなんだよな、と気づいた土井。
言えばいいじゃん…と思う土井は、北村が告白しやすいように仕向けるのだけど…
指示語を多用する土井の回りくどさというか、土井自身、自分でも何を言ってるんだかわからないうちに、自分の本当の気持ちに気づいてしまう…といったところが雁須磨子さんらしいです。
あとがきによると【つきあってさんかげつ目】は、この作品だけ描き直したそうなので「Surging every day 」に掲載されているものと見比べてみましたが、見比べてみれば違いはわかる程度でセリフの変更はなし、人物の角度(真横向きが斜め向きに)が多少変わっているコマが数コマある程度でした。
【明るい花】【why do】
「おまえ 男ともできる奴ってマジ?」と声をかけられて以来、セフレ関係が続いている同級生二人を描いています。
肝心なことは何も話さない二人だけど、二人のやり取りから浮かび上がってくる彼らのほんとの気持ち、そして彼らのこれからを想像できるところがとても好きです。
【西日】
萌えっ萌作品です。
西日を遮るために、座席の前に立つよう先輩から頼まれた三島は、それ以来、先輩の日よけとして活躍中…。
ある日も律儀に先輩の前に立つのだけど、「まだこの時間じゃ西日も強くないし…そーだ!交代しようぜ」と三島に席を譲って立った後の先輩の一言が萌えます!
【先生と一緒】
お付き合い中の恋人達を描いた作品です。
これから♡って時に、一本の電話が…。
どうやら生徒が問題を起こしたらしく、教師の受けは現場へ向かいます。
残された攻めは学生名簿で問題の生徒を検索したところ、出てきたのは何とも冴えないオデブちゃんの写真。
(この写真を見て、「ふっ」と攻めがなるのですが、オレの敵じゃねぇな感が何ともいい。)
更に念には念を入れて該当生徒のツイッターを探し当てるのですが、「一番ソンケーしてる先生」というコメントと共に25kg痩せて変身した姿の生徒と受けとのツーショット写真を発見しちゃった攻めは…。
どうして恋人が受け持つ生徒のことがそんなに気になるのかと思ったら、自分がそうだったからなんですね。
さぞかし手のかかるというか、わざと先生に構ってほしいがために手のかかる生徒を演じてた感のあるワンコだったんだろうなぁという過去と、現在は受けの胃袋を掴んでイイ男に成長しつつある感の対比も良くて短いならも萌えます。
実は、雁須磨子さんをちゃんと読むのは初読みで。
「初・須磨子」が、初期同人誌ものだという僥倖。
初期作品というのは、作者様の「色」が一番濃く出るものだと思うし、それが商業ベースではない同人作品ならなおさら…!
本作は短編集です。
しかし、短くても作者様のコアな萌えがストレートに詰まっていて、各短編もそれぞれの読み応えがありますね。
「さいしょの一歩」
「つきあってさんかげつ目」
「つきあってさんかげつ目と一週間と3日。」
表題作シリーズ。
高校生の両片想い?ストーリー。
好きなのはどっち?ていう視点変換の妙がある。そしてリバーシブルへの言及。
実際の行為としてのリバーシブル性というよりは、お互い好き合ってるそのベクトルと熱量が同等だということへの着眼がいい。
『どうせ好きなんだし』。そう、その通り!
「傷」
この薄暗さ!
好きを言えず。大事な物を壊し。自ら傷をつけて。その傷すらすぐに消えてしまう…
中二っぽいけど、コアな感じが濃いです。
「めがね」
主人公は弱視?めがねが壊れて目の前の子が誰なのかわからない。
これ、時代物にしたところもいいですね。BLの萌芽…って感じ。
「明るい花」
「Why do」
短くて、起承転結も成立してない。でもそんな断片に潜む心の揺れ。
恋未満?性への好奇心?性欲のはけ口?
好奇心だけかと思いきや「好き」な気持ちが忍び込んでくる。
ほんとにいっぱい話してほしい。今のままだと誤解だらけの両片想い。
「西日」
別にBLじゃないね、っていう。でも高校生男子たちの謎の仲良し具合が和む。
「遠くで電話が鳴ってる気がする」
微妙な近親もの。
ぜーんぜんかっこよくない半病人で半メンヘラの叔父さんの秘密。
昔はキレイだった叔父さんに気があった甥っこ。
噛み合わないんだけど、これが須磨子ワールドの魅力でもあるのでしょうか?不思議な明るさがある話でした。
「先生と一緒」
高校教師と付き合っているテツ。
先生だから、学校や生徒が優先。そんな先生に嫉妬したり拗ねたり。
だって馴れ初めが、自分も生徒だったから!
「デート」
表題作の2人。デート先でのエスコート合戦。(これも一種の攻めx攻め攻防だろうか)
短い話で、しかも結末がはっきりあるわけでなく。でもこういう話大好きです。
雁須磨子先生のエッセンスが詰まった初期作品集、読めて良かった。