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表題作ファンタスマゴリアの夜

永見嘉博 小学生からの同級生で今はバーテンダー 
束井艶 28歳 事故で子役を引退し今は貸金業者 

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

元人気子役で現貸金業の束井艶が、永見と出会ったのは小2のとき。
小5の時に、永見に告白されるが、艶はフッてしまっていた。

そして月日は流れ、同窓会の時、成長した永見に会う。
永見は夢を叶え、自分の店を持ち、バーテンダーとして働いていた。

永見に惹かれながらも束井は離れていくが…!?

作品情報

作品名
ファンタスマゴリアの夜
著者
砂原糖子 
イラスト
梨とりこ 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
幻冬舎ルチル文庫
発売日
ISBN
9784344827530
4

(144)

(59)

萌々

(52)

(20)

中立

(8)

趣味じゃない

(5)

レビュー数
25
得点
571
評価数
144
平均
4 / 5
神率
41%

レビュー投稿数25

読後の爽快感の素晴らしさ

物語は、ゴミ集積所でホームレスに捨てられたマネキンと間違えられる、束井の姿から始まります。
サスペンスドラマのような幕開けですが、話は一旦過去へと戻り過去と現在を行き来する構成に・・・区切り区切りに、年代だけではなく表題のファンタスマゴリア由来のタイトルもあり、とても素敵です。

小五の時、永見の告白をレイダーマンを観るためにあっさりふってしまった束井。
でもそれ以来、束井は永見のことがどんどん気になっていって、いつしか心の中を大きく占める存在となっていきます。
一方、束井への恋心を秘めたまま、嫌われない距離で束井を見守り、さりげなくかばったりもしてくれる攻の永見、かっこいいです。

同窓会を契機に、再会した二人。
永見は夢を叶えて自分の店を持ち、束井は父親の事業を継いで街金を営んでいるのですが。
この束井の街金に、束井が子役生命を絶つ原因となった大瀬良が現れてから、話が急にきな臭くなっていき、冒頭のシーンへと謎が解かれていきます。

大瀬良と対峙する束井。
整形した大瀬良の顔が束井の顔に似せたものであったということに、彼の束井へのねじれた執着度合いを感じゾッとします。
立体駐車場で大瀬良の車に追い回される束井・・・もう、ハラハラドキドキで。
結果は・・・さすが、エンゼルの艶ちゃんでしたけれど(安堵)

早々に束井のピンチを悟った永見は、自分の店を売ってまでして大瀬良の情報集めの資金を作り、集積所の束井を救いにきてくれます。
「俺は、俺が大切だと思う人間の名誉を守りたかった。それだけだ」
・・・永見の男前なセリフに、クラクラ。
そして、二度目のHシーンは、本当に幸せいっぱいで。
二人の喜びがグングン伝わってきます。私にとっての幸せなHシーンベスト5に入りそう(笑)
ああ、ほんとよかった!!素直になった束井の可愛らしさは反則ですね(*'v^*)
ラスト、永見の横で笑んでいる束井。笑顔を取り戻せた束井の姿に、心からおめでとう!!と言いたくなりました。

もうですね。
この“ファンタスマゴリアの夜”は、ラストへ向かって場を支配していた負の札がすべて吹き飛ばされて、一面幸せカードになる爽快感がたまらなかったです。
二人の再会のキューピッドである外見フランケンの妻田や、二人のよき理解者になってくれるヒラメ兄の蜂木など、脇役のキャラもとても魅力的でした。
ああ、面白かった~!!

余談ですが、艶ちゃんがハマっていたレイダーマン。
これって、イノセンスの睦くんや高潔であるということの真岸が好きだった特撮ヒーローですよね。砂原ワールドの男の子達の心を虜にするレイダーマン・・・なにか懐かしくて私まで息子達と観たことあるような気になってしまい(笑)思わずニヤリとしました^^

8

めちゃくちゃ切なかった

一気読みでした。
それもこれも冒頭の書きだしがとても気になる内容で、「これは一体どういうことなんだろう」と最後まで本を閉じることができませんでした。
そして幼少期から始まる苦しいまでの切なさ。
鎧をまとい続ける受けと、本音を隠すことが巧みな攻めの人物像がすれ違いの切なさをより引き立てていたと思います。

受けの艶(えん)はただ不憫というのではなく、不憫が生んだ歪みが描かれています。
大人になった現在の姿だけを見たら、分厚い鎧をまとったこんな人間よく愛せるなと思ったかもしれません。
しかし彼の孤独な幼少期から大人になっていく過程を見ると応援しかできなくなりました。
しかも仮面の下に隠されている優しさがたまに垣間見えて、余計たまらない気持ちになりました。
人の喜ぶ顔が好きという健気な本心も泣ける(ノД`)
ファンタスマゴリアな物語は切ないけど、それ以前に彼の両親が課した重荷もとても重大だと思います。
そこで苦しみもがく艶が本当に可哀そうでした。
彼を放っておくことができない永見の気持ちもよく分かる。

そして攻めの永見は、愛している人物は艶ただ一人というのが読んでいてそこはかとなく匂ってきました。
学生時代、艶の前で恋人をとっかえひっかえしてきたのに軽薄に見えない所が凄いと思います。
永見に本気だった子達にとっては可哀そうだけど、永見は結局艶至上主義だったんですよね。
その時にとり、友人という形は最良であって永見なりに艶をしっかり捕まえていたんだろうと思います。
後半になるにつれて永見の真骨頂を見ることができました。

お話のトーンは暗く読んでいて結構辛かったですが、こんなにも早く結ばれてほしいと願ったカップルはなかなかいないかもしれません。
走馬灯を使って艶の心情が表されていたり、2人の物語が展開されていく所がとても印象に残りなんともいえない余韻が残りました。
萌×2では足りない気がしたので神評価です。

8

読み応え完璧です!

タイトル良し!
ストーリー矛盾なし!
軽すぎず、でも重すぎず!
キャラはたってる!
胸キュンあり!
読後感良し!
コメディはなし…。
いやぁ〜久々に完璧なBLを読ませて頂きました〜。
ツッコミどころもなく、勢いだけじゃなくストーリーでも読ませて、かつ萌えもあり。
しかも私の好きなワンコ攻めの要素も入ってて…なんでしょうか?この満足感w
丁寧な文章で描かれていて、全てがキラキラ輝くファンタスマゴリアのようです!
これはBL初心者からベテラン?まで幅広くオススメ出来る作品です。

4

長い長いすれ違い

約20年あまりの人生の歩みが丁寧に表現されていて良質の映画を見ているようなそんな感じでした。

人気子役だった艶。その人気を妬まれ若干9歳の同じ子役の男子に罠にかけられ子役を辞めざるを得なくなる。
月日は経ち艶は父の後を継いで金融業を営んでいた。ある時間違って出席で出されてしまった同窓会へしぶしぶ出席し、小学校からの同級生で唯一会いたい相手、永見に約10年ぶりに再会する。
再会してからふたりの止まっていた時が再び動き出します。

ふたりの関係を表すのに約20年あまりの長い月日を丁寧に描いています。
小学校時代の出会いから、中高校生時代のお互いへの重苦しい気持ちや葛藤、再会してからの関係と気持ちの変化。

艶を陥れた元子役の俳優は約20年経っても艶を羨み再び陥れようとしてマスコミも巻き込んでの事件が起こる。
それを永見が捨て身で助けようとするところは圧巻です。

その想いに艶も応えようと最後に同じような行動をします。これからはふたりで歩んでいくのだと。
長い長いふたりのすれ違いはようやく終わったのです。

永見が艶を本当に長いこと艶を想いつづけてきたその想いに圧倒されます。艶が永見から逃げて会えなかった間も想いつづけ、でもまた逃げていた艶も実は永見を求めていたのです。
そんな二人の物語り。絆の深さに心地良く酔いました。

4

シリアス好きの方に全力でオススメしたい

砂原糖子先生の御本は2冊目。
『イノセンス』がとても素晴らしくて、先生の作品を他にも拝読したいと思っていたところに、書店で見つけてお迎えしたのがこちらの作品。
新品の紙本在庫があって良かった...(『イノセンス』は電子で読んだためイラストを拝見できなかった)

そして、何から何まで完璧な作品でした。

1ページ目から引き込まれる文章。
最後までページを捲る手が止まりませんでした。

超がつくほどシリアスなストーリー。
時間軸が何度か行き来しますが、先生の手腕が素晴らしく、すんなりと頭に入ってきました。

ふたりの出会いやタイトルの意味など、徐々に明らかになっていく要素によってどんどん深みが増していって、とにかく凄かったです。

『イノセンス』に登場した"レイダーマン"なる特撮ヒーローアニメがこちらにも登場していてワクワクしました。

梨とりこ先生のイラストも素敵です。
木原音瀬先生の『月に笑う』シリーズの挿絵も梨とりこ先生のご担当ですが、先生のイラストは裏社会系の作品ととてもマッチしているなと感じました。

2

この作品が収納されている本棚

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