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表題作マンハッタン・プロポーズ

アダム・ヘイワード,33歳,現地社員
遠野圭,25歳,総合電機メーカーアメリカ本社の駐在員

あらすじ

学生時代、家族にゲイであることがばれ、以来、周囲の理解を得られぬまま偽りの生活を送ってきた圭。そんな彼に転機が訪れた。総合電機メーカー・サミーに就職して三年目、ニューヨークにあるアメリカ本社への一年半の駐在だ。自由の国そして最先端の街…ここでなら自分の性的指向を偽ることなく新しい恋に出会える。期待を胸に渡米した圭だったが…。
上司のアダム・ヘイワードは大層なイケメン、引き抜きで入ってきた仕事のできる男だが、いかんせんストイックで愛想がない。だが、圭はそんなアダムとも交流をもちたいと積極的に声をかけランチを共にするようになった。やがてニューヨーク生活も充実してきたある晩のこと、初めてゲイバーを訪れた圭は帰り際数人の男たちに囲まれてしまう。
レイプされる!…恐怖に慄く圭を助けてくれたのはたまたま通りかかったアダムだった。彼は茫然とする圭を己の部屋に連れていき一晩泊めてくれて…。

作品情報

作品名
マンハッタン・プロポーズ
著者
桜部さく 
イラスト
桜之こまこ 
媒体
小説
出版社
シーラボ
レーベル
ラルーナ文庫オリジナル
電子発売日
4.3

(39)

(22)

萌々

(9)

(7)

中立

(1)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
7
得点
168
評価数
39
平均
4.3 / 5
神率
56.4%

レビュー投稿数7

根性で読了

性的指向を否定されてきた者同士が出会い、寄り添い合って前向きに生きていこうと決意していく。勇気をもらえるような優しいストーリーでした。

神評価が多かったので楽しみに取っておいたのですが、うーん、やはり作家様の文章と相性が合わないみたいです、すみません。

だからか、萌え以前にストーリーがすんなりと入ってこなくて…。メインの二人についても、わたしの印象では『運命の王子と幸せのシュガーパン』とカップリングが被っていて、どちらもその魅力が伝わりにくいキャラでした。アダムは属性でいうとクーデレ?ツンデレ?圭は天然?健気?でも結構グイグイ行くから、誘い?

展開においても思わず「いつのまに?」とツッコミを入れてしまう状況が多々ありました。しかもそこ説明大事なところじゃない?と。メインの二人ともがエスパーなみに相手の心情を汲み取り合っていて、その部分を会話シーンで確認することもなく(つまりは読者の了解をとらずに)ストーリーが進んでしまう。読者は推測の域を出ないままどんどん先に連れて行かれます。圭はいつのまにアダムに片想いしてたの?アダムが恋を遠ざける理由をどのタイミングで高木が圭に伝えていたの?アダムってアルコール駄目なタイプじゃなかったっけ?

物語の舞台は、アダムと圭が勤務する総合電機メーカー「サミー」アメリカ本社。本社がアメリカだからとはじめは外資系のアタマで読んでしまっていて、日本企業だったっけ…と確認するために一から読み直したり。(すみません、そこは粗忽で無知な自分のせい。)圭の実家は仕出し料理屋さんなのに本人は料理ができない演出はなんだったのかなとか。でもおせち料理だけは詳しいとか。なんていうか、文章を読みながらわたしの頭の中に想起される色々なイメージと、作者の描きたいとされるものとが、ことごとく噛み合わない感じというか。たぶん、表現にピンとこないことが多かったので、文章との相性に阻まれているだけなんだと思いますが…。

同性愛への理解をテーマに、リアル寄りのお話を書かれる作者の作品はとっても貴重です。でも個人的にはBL萌えって感じもしないし、思いっきりリアリティーに特化したシリアスドラマでもないしなぁ…と、モヤモヤな読後感を持て余してしまいました。

最新作も気になっているんですが、なんだか挫折しそう…。もし次を選ぶなら、作家様のオメガバースかファンタジーにしてみようかな。

2

表現のひとつひとつが優しく、丁寧

なんて素敵なお話なのだろう。
こちらの作品、すごく好きです。
作家様の別作品が面白かったので、特殊設定ではない現代ものも読んでみたいなと購入したのですが、これが大当たり。
レビューを書いている今、とても心地の良い読後感に包まれています。

自由の国・アメリカを舞台に、自由なようで自由ではない部分や、宗教や文化・習慣の違いを交えながら、男性同士の恋愛を真面目に、じっくりと丁寧に描いた作品でした。
同じ企業に勤務する、恋愛対象が「男性」の圭とアダム。
生まれも育ちも異なる2人ですが、自身のセクシュアリティに関して家族から理解を得ることは叶わず…と、過去に心に傷を負っているところは同じなのです。
これほどまでに自由な国だというのに、自分たちの中ではごくごく普通の恋愛でも、その対象が同性であるだけで、1番認めてほしい家族にはすんなりとは受け入れてもらえず、異質な者として見られてしまう。
アダムの家族の宗教観もあって、場合によっては日本よりも風当たりが厳しい部分もありますね。

差別・偏見・宗教と、かなりセンシティブなテーマを描いているのだけれど、お話のトーンは決して暗くはないのです。
むしろ、すごく前向きで優しいお話だなと感じました。
読み進めていくと、はじめはぼんやりと曇っていた空にうっすらと陽が差して、淡い色でグラデーションを描きながら少しずつ晴れていくようなイメージ。
導入からするりと読みやすく、それでいて非常に丁寧で繊細な描写が光ります。

桜部先生の文章の雰囲気が、なんだか読んでいて「いいな」と心地良さを覚えてしまう文章なんですよね。
すぐに恋愛関係になるのではなく、同じ痛みを知る圭とアダムが出逢い、ゆっくりと一歩ずつ。
心の交流を重ねながら、ただの同僚から友人になり、もっと親しい友人に。
2人の距離の縮まりがアメリカでの何気ない日常生活と会話で自然に表現されているのが良いのです。
傷を舐め合う2人ではなくて、お互いに支え合って前を向く2人だったのも素敵でした。
頑なだったアダムの変化と、圭の前向きさ、そして何より、誠実さと優しさを持ち寄るかのような2人が好きです。
恋愛面に関してはぜひあなたの目で。
こちらもときめきあり、ロマンティックさありで素敵ですよ。

食事・文化・宗教・育った環境。
日本とは異なるアメリカという国の一面をちょっとだけ覗き見ることが出来たような気がします。
食事の描写もひとつでも丁寧で、作中に登場する料理がどれも本当に美味しそうだったんですよね。
うーん、ポップコーンを片手に映画を観たくなりました。

アダムの家族に関しては、もう少し長めに読めればもっと良いまとまりになったかなとは思いますが、それでも自然とこちらの評価を押している自分がいます。
ああ、恋愛っていいな。
読後にはそんな気持ちになれる素敵な作品でした。

2

NYが舞台の大人のラブロマンス

ゲイであることを家族に知られて腫れ物のように扱われるようになり、生きにくさを感じていた受けが、赴任先のNYで同じ傷を抱える攻めと出会って恋に落ちていくラブロマンス。とっても良かった〜!

テーマがマイノリティに焦点を当てられているので重くなりそうなイメージなのですが、受けの圭が自由の国アメリカで、1年半というタイムリミットがあるからこそ、ここでは自分らしく正直に生きようと決めていて、何事にも素直に前向きに向き合おうとするので、読者もそれにつられてポジティブな気持ちで読めます。とっても健気ないい子です。

ゲイというだけで自分を否定されて周囲に理解されない。傷つけられるまえに自分から距離を取り、防波堤を作ってしまう。そんなお互いの傷も痛みも分かるからこそ、決して強引に踏み込んでいかず、ゆっくりと歩み寄って愛を育んでいくのがとてもロマンチックで良かった。

同情やいっときの激情ではなく、傷の舐め合いともまた違っていて。相手の心地よい距離感で共感することでお互いを癒し、少しずつ惹かれあっていくのが大人の恋愛って感じで自然で素敵でした。

寡黙でシャイだと思っていた攻めが後半めちゃくちゃスパダリになり、大人の包容力ある愛し方で受けを宝物のように扱うのがものすごく萌えた〜。外国人らしくパートナーに対する甘い言葉もベタなアプローチもこれでもかと発揮してきてにやにやした。攻めのアダムが自分が信じると決めた人にはとことん甘い、愛したがりな人だと分かってほっこりでした。

劇的なストーリーや伏線が貼られた練り込まれた物語ではないですが、ゆっくりと丁寧に恋を育んでいく受け攻めが好きな人にはおすすめしたい作品です!ラストも明るい未来を想像させる、余韻を残すラストで素敵でした。

2

丁寧で優しい

NY赴任を機にゲイの自分らしく生きようとする人懐こい主人公が、現地採用の切れ者エリート、アダムに恋する物語。

2人は同僚として出会うのですが、主人公が人を寄せ付けないと言われているアダムと積極的にコミュニケーションをとるなかで、段々と打ち解けていき、ある事件をきっかけにアダムの誠実さと優しさに触れ、次第に心を寄せるようになります。

アダムも実はゲイなのですが、宗教上の理由から家族にゲイであることを否定され、恋人を失って以来、孤独に生きていました。
でも、主人公と出会うことで少しずつ心を開いて前向きになっていきます。

物語の中で、アダムが家族と和解できるかが焦点になる部分が、ご都合主義というか、(ページの枚数の都合もあるでしょうが)駆け足だなあと感じてしまい、正直そこはちょっと気になりました。
宗教と差別というデリケートな話題に敢えて触れるなら、もうちょっと丁寧に描いても良いのでは?と。
(全部がご都合主義的な軽いポルノっぽい物語だったら気にならなかったのだと思うけど、そうじゃないから逆に気になるのかも)


とはいえ、2人の恋愛模様も、行為の仕方も、誠実で丁寧。
全体として優しい物語だなと思いました。

1

文句なしの神評価

ニューヨーク マンハッタンで繰り広げられる、素敵なラブロマンスに浸りました。

タイトルから分かる通りハッピーエンドの物語ではあるのですが、そこに至るまでの過程がただの王道ラブストーリーになっていなかったのがよかったです。
それは、圭とアダムの過去を掘り下げ、苦しみから逃げない姿をしっかり描いているからだと思います。

圭の過去は序盤で明らかにされるのですが、アダムの抱えている闇は後半まで分からないのです。
だからこそ気になって引きつけられたし、分かった時の衝撃も大きかった。 
圭だから分かるアダムの苦悩。
一人では立っていられないアダムに寄り添い、どこまでも支えようとする圭が健気でいい子でした。

同情じゃなくて共感。
2人が誠実で優しいのが分かるし、お互いの気持ちを汲んで行動できる思慮深さに感動しました。
恋心を隠しながらゆっくり近付いていく2人が、自然でとてもよかった。

マンハッタンというロケーションもロマンチックで、同じ経験をしてきた2人のシンクロニシティ……ここに運命を感じます。
アダムのキザな部分も、イメージにぴったりで素敵でした♡

〝理解しなくてもいいから、否定はしないでほしい〟
これが、自分らしく生きる自信に繋がると思います。
余韻を残すラストも素晴らしかったです。
分かってもらえなくても、気持ちはきっと伝わると思う。

3

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