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本人の意思ではなく、不老不死の薬を飲み、死ねない体になってしまった司波と何故か暗闇と閉所が恐ろしい矢代が七夕の霧雨の夜に出会う。
司波はある一人の男への思いを引きずり約150年も孤独に耐えて生きていた。矢代はそんな司波を不憫に思い、司波が死ねる方法を一緒に探す決意をする。
司波が不老不死の薬を飲んでしまった経緯や、矢代が暗闇と閉所を怖がる理由が重なり、全ての謎が解ける。
あとがきで先生ご自身も賛否両論ある(きっと否が多いでしょう)と仰っていますが、本当にビックリする終わり方でした。これをハピエンと解釈するのか、メリバと思うのかは読み手によるのかな…と思います。属性としても夜明けなのか黄昏なのか…(きっと黄昏なんでしょう)。でも私はこの最後に至るまでの重要なポイントになっていた霧雨が最後こんな風に使われてるというところに先生のこだわりを感じ、とても良かったなと思います。
欝々とした雰囲気が漂う作品で、重苦しさから逃れたい一心でぐいぐい読める。切り替え頻度の高い両視点に感情移入を阻まれ、無心でストーリーだけを追えて面白い。前半半分までは神評価。ラストはとても好き。
メイン二人はどちらも秘密を持っていて、どちらの視点に移っても暗くしんどい。わずかな明るさが見えると、すかさず光を閉ざすように意味深な描写を差し込み、どんよりした空気を保ち続けるのが良い。素っ気ない文章が陰を引き立て、とても好き。
引っかかったというか落胆したのは、中盤で矢代の秘密が見えるところ。使い方は昔ながらの、といった感じだが、設定そのものは今流行りのアレか……と。この時点で残りの展開はいくつかのルートに絞られ、結末も限られる。ラストに向けた感動の作り方が見えすぎなのが残念。
後半は感情移入しない読み方が仇になり、どのルートか確かめるただの作業に。構成を考えればこうしなければ成立しないのは分かるが、ベテラン作家とは思えない安易さ。流行りもの設定作品の一つという小さな場所に印象が納まってしまった。
前世設定にBLを絡めると、まったくの同一人物でない点がモヤる。今の矢代と昔の彼で自我が統合されているわけではないし、今の矢代には司波を知らずに生きた27年がある。司波が矢代の中に彼を見ないことはなく、今の矢代として一緒にい続けられるのかと。
ストーリーの重さに比べると深刻さの釣り合わない描写になるかもしれないが、BLとしてはそこが気になった。まあ私だったら生まれ変わりだろうと自分は自分だと思いそうだから気になるっていう、それだけ、たぶん。
ラストはとても好き。既視感を覚えながらも、不老不死ものの落としどころとして好みのタイプなので、言葉にできないぎゅっとなる感じやもどかしさを感じられて良かった。
その後あとがきを読まなければとても後味良く幸せな読後感に浸れた。正直一番引っかかったのはココ。特定の一人について二十年前のことをこんなところでこんな形で出した後に小説への情熱とプライドを語られても……。
元々ファンなら好意的に受け取れたのかな。作家をよく知らない私には作品の余韻をぶち壊すのに十分な不快なあとがきだった。
私にとっては初めての作家さんでしたが、あとがきを読んでデビュー20周年のベテラン作家さんだと知りました。
あらすじも知らず、多分ランキングに入ってる時に買ったのだと思います。
不老不死の男と転生する男のファンタジーBLでした。
最初の出会い方がなんだか唐突な感じがして、その後の展開にも「そんなに上手くいく?」と感じる所が序盤にはあるのですが、読み進めると何故そういう風に2人がするすると引き寄せられていったのかが分かります。
お互いがそういう相手なんだと気づくまでのすれ違いが切ないし、もどかしいし、危ない目に遭ったりもするのでハラハラしました。
死を求めていた司波が「死ななくてよかった」と言えるようになったことが感動的でウルっときました。
幸せな描写は長く続かず、その先は読者に委ねる書き方と、ラストのハッキリと再会を表現しない部分にモヤっとする読者さんもいるかもしれません。
私もハピエンを求める性格なので、イチャ甘が短いと物足りなく思ったりもしますが、この作品はこのラストだからこその余韻と深みが印象に残り、忘れられないインパクトを残すのだろうと思います。
作家さん買い。
最初はあらすじを読んでて「どうかなぁ、不老不死ってファンタジー寄りなんかな〜」と入り込めないかもと不安でしたが、読み始めたらなんのその。
死ぬことが出来ない司波、それをなんとか助けてあげたい矢代。矢代には過去にトラウマを受けたのか、閉所、暗所に恐怖を感じるという精神疾患があり、今は休職中の身。
矢代はいつの間にか司波に対する感情があることを自覚します。司波の方も同じように、過去に好きだった人がいるのに、矢代に巡り合ったことで、死んだように生きてきたことから抜け出します。
不老不死を治すために色々調べる二人。
途中、小室教授?とのやり取りがまさに不老不死の辛さ、悲しさ、やるせなさを感じさせます。娘さんのためになるのはどういう行動か?
そんな中、矢代が前世の記憶を思い出し…。運命、というのが一番しっくりくる言葉。
エロは司波が生い立ちからして百戦錬磨な設定なので(多分)、もうちょい派手でも良いかな?って思ったりしましたが、物語のバランスからして控えめになっているのかな。
いやぁ、切ない。でも幸せが感じ取れる。そして二人の感情の動きがリアルに感じ取れて、そしてラストは…。
作者のあとがきにありましたが、私はこのラストで良かったと思います。予定調和なラストよりも、そういう二人が居たんだ、どこかに存在するのだろう、と思わせる終わり方で。
いやぁ……言葉が出ないですね。
涙と鼻水がひたすら出て、明日は腫れぼったい瞼確定です。
不老不死の男・司波と出会い、「死にたい」と願う司波の願いを叶えてやろうと思う矢代。
死ぬ方法を一緒になって探しているうちに、「死なせてやりたい」と思っていたはずなのに、「死んで欲しくない」と思うようになる。
心が変化していく過程が丁寧に描かれていて、なかなかだなぁ〜なんて思ってたけど、いやはやラストで全てを持っていかれました。
私は基本、光の腐女子、夜明け成分もOKなので、全てがうまく解決して大団円!!やったね!!はっぴっぴー♪みたいなのが大好きなんですよ。
でも、このラストはアリです。
琴線に触れました。
本当になんて美しいのかしら……。
矢代の包み込むような愛を感じます。
本当に慈愛に満ち満ちていて、泣けて仕方ない。
そして司波も「いまだ死ねない」という状況だけ見ると、抜け殻状態で生き続けなくてはいけなかったあの頃と変わりがないのに、何百年待っても心は穏やかで幸せも感じられるって……。
愛し、愛された、そして今も愛しているってことはここまで人を強くするのね。
そしてどんな形でも矢代なのね。
ここも泣けて仕方ない。
蝉の羽化のシーンもとても印象的でした。
「命は尽きるから美しい、俺はただ浅ましく生き続けるだけだ」と言う司波と、残った抜け殻を見て、「司波の心も、とうの昔に誰かのもとへ‥‥」と思い重ねるシーンが本当に美しい。
文句なしの神です。
そして作家生活20周年、おめでとうございます。