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表題作みのりの森

昌典,町役場に勤める青年
渋谷実,亡き慎太郎の友人

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

町役場に勤める昌典は、ある日、東京にいた親友・慎太郎の訃報を聞かされる。悲しむ間もなく葬儀の手伝いをしていると、突然見知らぬ青年が会場に現れた。男は実と名乗り、慎太郎の東京での友人で、四十九日の間はこちらにとどまるつもりだという。実を自宅に泊めることにした昌典は、その夜、誘われるがまま彼と一夜を共にしてしまい…!? 親友の死の真相、実の目的、昌典の秘めた恋――。謎と嘘が折り重なり、導き出される想いとは。山深い田舎町を舞台に二人の青年の不器用な恋を描く、珠玉のミステリアスBL!

作品情報

作品名
みのりの森
著者
まりぱか 
媒体
漫画(コミック)
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
バーズコミックス・リンクスコレクション
発売日
電子発売日
ISBN
9784344849365
3.8

(117)

(43)

萌々

(36)

(20)

中立

(14)

趣味じゃない

(4)

レビュー数
19
得点
433
評価数
117
平均
3.8 / 5
神率
36.8%

レビュー投稿数19

ミステリー調でドラマティックな作品

最初の方伏線が張られていてちょっと意味がわかんないな?ってところがあるんですよ。
人間関係とか、人物像とか。

真ん中あたりで、ショッキングな事実が明かされてえーーー?!ってなったところで、「あとがき」がくるんですよ。
え?!終わったの?ってページ数確認しちゃったもんね。真ん中にあとがきあるのなんて初体験。
これは、あとがきじゃなくない?とちゅうがきだよ。

若くして亡くなった慎太郎のお葬式に東京からやって来た慎太郎の自称友人実くん。
泊まり先提供した昌典と寂しさ慰めるようにその晩から体の関係に。
慎太郎の遺品整理をしながら二人で故人を偲び、実くんは田舎の人たちと打ち解けていってここでの生活に馴染んでいくの。

実くん、なんか謎な行動してそうな描写がチラホラあるんよ。そこがモヤモヤさせられるんだけど、後々明かされていきます。

1人の死をキッカケに色々と考えさせられる。
結局慎太郎が名指しを選ばざるをえなかったのかは、本人のみぞ知るなので残されたものには知りえないんだけど、あんな手紙残して亡くなるなよ〜。
あの時連絡取れてたらとかたらればで、考えちゃうよ。

切なさも抱えながら生きていくしかないし、実と昌典は2人で幸せになって欲しい。

hontoで購入
白抜き修正

0

喪失から始まる物語

うーん、これは読む人によって受け取り方が全く変わる作品だと思いました。
繊細な人や、身内/友人に同じような人がいるとか。
私自身は…
自分ごととしては共感できず、ただ寂しさを感じました。
慎太郎という男性が亡くなり、その葬式で地元の親友だった昌典と、駆けつけた「友人」と名乗る渋谷実が出会う。
慎太郎は自殺で、その重みに潰されかける昌典に寄り添う実、という形でストーリーが展開していくわけだけど。
実が本当はどんな人間なのかは中々明かされず、そこがミステリアスな味を添えています。
まるで哀しみの昌典を慰めるためだけに存在するような実、慎太郎への隠し続けた恋心をどこかにそらせるためにやってきた実。しかし、夜中に山で何かを探している…
ミステリーというより犯罪が絡むような不穏な空気感すら。
しかし、実の本当の事情が明かされて、物語は一気に切なさを帯びて。

私ね。死にたい、と思ったこと一度もありません。
慎太郎がなんで死に傾いて、そのままそちら側に行ったのか。その理由や感覚が今ひとつピンときません。
でも、はっきりと描かず曖昧な所がいいんだと思う。
曖昧な部分にわからない人もわかりすぎる人にも感じさせる何かがあるんだと思う。
だからこそ、最初っから昌典と実が寝てしまう部分が逆に惜しいような気がするんですよね。
一度は堕ちた男と、喪失に苦しんだ男の再生。は良かったと思う。
絵柄も「男x男」の感じがよく出ていると思いました。
総合「萌」で。

1

深くて心に残る作品


自分は作品を読んで号泣しました。

ストーリーは、慎太郎の自殺をから繋がっていく人物たちが交わってそれぞれの心情が絡み合っていく物語です。

読み終わった後の感想は、『腑に落ちない』『やるせない』でした。物語の軸となる慎太郎という人物の自殺ですが、慎太郎はどこか他人と違う脆さを持っていて闇をかかえているという表現だけで結局なぜ自殺をしてしまったのかが分かる表現やセリフなどが無く、そこが1番腑に落ちないところでもありました。

慎太郎の死に、たくさんの人物が悲しさや悔しさ、懐かしさなど思うことは様々です。昌典や実の流す涙を見るとこちらも涙が出そうになります。しかし、そんな彼らも誰もかもどこか諦めてるというか『なぜ死んだのか』を知ろうとしてないんです。言うならば、『そっか、死んだのか』という感じです。まだこの世にいるような雰囲気です。

だからこそなのか、読んでる側の腑に落ちない感覚も段々と無くなっていくのだと思います。
でもやるせなさだけはずっと頭にこべり着いていて、
凄く頭にも心にも残る深い作品だなと思いました。

レビューを書いてる皆さんも言っている通り、死ネタ軸として発展していく物語なので抵抗がある方は少なくないと思います。でも、自分は読んで良かった。出会えて良かったと思う作品です。
もし、少しでも興味があるなと思ったのであればぜひ読んでください。

3

"大号泣"はしなかったけれども

まりぱか先生の作品を読んだのは確か2作品目だったと思います。
初めて読んだ「エンドランド」がとても良かったのでこちらにも期待して読みました。

帯にあるよいに"大号泣"まではいきませんでしたけど、少し寂しさの残るような、温かくなるような、よい余韻を残す作品だったと思います。

段々と物語の全貌が見えてくるようなお話運びは、ドラマみたいで、実が良い人物なのかそれとも悪い人物なのか始めはわからずにハラハラしたりしながら、どんどんお話に引き込まれていきました。

昌典の寂しさから身体の関係になるんですが、それは良いとして実が昌典の事を会う前から気に入ってた「会いたいなぁ」と思っていたという部分に若干の違和感を感じましたかね。
それとも見た目がめっちゃ好みだったのかな?

あと何故みのるだって偽ってたんだろう?
そこが2周読んでも分からなかった…読解力の問題でしょうか?

ラストいい感じで終わったので、その後の2人を見たいですがきっと幸せに暮らしてると想像して余韻に浸りたい作品でした。

1

じわじわ泣けて、ふんわり勇気をもらう

 「大号泣」
 帯を読んで想像していた以上に泣きました。
 大切な人を失ってしまった悲しさと、それでも続く日常。重くなりがちな主題ですが、最後に前を向いて生きていこうとふんわり思えるあたたかい物語になっています。
 登場人物はみんないい人で、優しい。失ってしまった人に想いを寄せながらも、日常生活を保っているので、物語全体がしんどくなりすぎません。
 登場人物が、それぞれの悲しみを、少しずつほかの人と共有していく様子が丁寧に描かれています。失った人と他の人とのつながりを、知れば知るほど、失ってしまったことが悔しくて、悲しくて、涙が止まりませんでした。同時に、その苦しみを他の人と共有していく中で生まれるつながりに支えられていく登場人物の姿に、勇気をもらう思いがしました。

1

オーソドックスな再生系のラブストーリー

うーーーん…という感じでちょっと盛って”萌”です。
すでに他のレビュアー様が指摘されている通り、”号泣”とか”ミステリ”ではないので外装と内装のギャップで、ちょっと煮え切らない読後感になってしまったな~という印象で、別に攻受CPに関するラブストーリー(再生系)としては悪くないよな~というところの評価です。

で、メイト様リーフレットの番外編がかなり!好きだったので、もうこのCPだけの話でいいんだけど?な気分になってしまって、亡くなった彼に関する周辺ストーリーを余計なもののように感じてしまったのでした。しかも、おそらく”ミステリ”的な部分って全部回収されてないような??(諸々の動機が私には理解できなかったのですが。。)てなところがスッキリしないんですよね。読解力及ばす、点と点がつながりませんでした…。

でも、このCPは好きな感じなんだよ~というところで、違うきっかけで出会った同じCPの牧歌的なラブストーリーだったらめっちゃ好きだったかもしれません。アフターストーリーをもっと読みたいかもです。

2

うーん・・・これは

読み終わって、評価が真っ二つなのではないかな?と思いましたが、その予想は正解でしたね。
帯に惹かれて読むと「なんか違う」って感じです。逆に「大号泣」なんて書かれているから、変に期待してしまったのでしょうか。
泣ける場面がわからないどころか、後半は話がわかりにくく、読み返したりしていたのでお話に入り込めませんでした。
亡き親友も・・・うーん、と思うことばかり。
実際リアルならこんな感じなのかもしれませんが、創作なのだからもっとキャラクターの掘り下げや「死」を持ち出すのであれば納得できる理由が欲しかったです。

7

もうほんと ひねくれ者ってイヤよね

大号泣の帯に釣られて買ったわりに ちょっと病みすぎて読むの躊躇ったんですよね

したら ついに「いつ読むの?」って本たちが勝手に暴れだしまして
で 崩れた先頭でスライディングアタックきめてきたのがこの子で じゃあ読まねば と


あの いい人アピールするわけじゃないんだけど
自分は案外涙もろい人間だと思ってたんですよ 

情緒不安定に見えるくらいに 悔しきゃ泣くし 感動すりゃ泣くし
犬猫が旅しただけで泣いてるときもあるし
子どもがよくわからん理由つけられて買い物いかされるだけで泣ける
なんなら 話してる相手が泣いてる ってだけで貰いそうになる

なんですけどね

亡くなった子の母親がなぜ一緒に死ぬ子だったって知ってるの? 遺書すらないのに とか
その理由がわかっても 個人情報とかってどうなってんの?とか
レンタカーが1日早く借りられる事になった件も ちょっと違和感あったし

個人的に一番大事な部分(故人の思い)が丸っとなくて どこで泣けばいいのか?

いやそれがないからこそ辛いのか?
明日にでもふらっと帰ってきそうな そんなモノを残された事が苦しくて 辛くて 泣きたくなるのか?

故人の思いや弱さ 恨みつらみは秘められたまま ってほうが美しい?

んんん

優しいお話ではあったんです 優しい人しか出てこないし
だから尚更 生きることに挫けた部分や その情が見えないがために泣くに泣けなくなってるというか 萌え削がれたみたいな …



自分のためではなく 誰かのためにを見つけ強く踏み出す1歩 ってところは盛大に盛られていたので ほんとにもう少しだけ故人の思が欲しかったな いや これって帯に煽られ過ぎちゃって 逆に冷めちゃったって感じなのかな?

コメディタッチの実と昌典の掛け合いに ふぉのぼの感しかわかなかったんだけど?

なんか ほんとごめんなさい
また評価下げるみたいになっちゃうけど 他人さまと読み方が違うあたしが全面的に悪い 
って事で まぁ いろいろお許しくださいッ!

5

亡き親友を巡る二人の恋

(※タイトルは帯タイの煽り文です)
発売後即重版!!……と、帯タイにデカデカと載せている通り、都内アニ⚫イトさんではしばらく店頭在庫がなかったりしたコミックスです。
表紙イラストのクオリティが本の最初から最後まで続きます。作画の質だけでも大変高いのですが、内容の質も高いです。
ほのぼのとしたBLが好きな人は苦手かもしれませんが、シリアル寄りのBLが好きな人は満足する展開と内容だと思います。
個人的には全てに救いがあるご都合主義的な展開よりもこういうお話の方が好きです。(闇の腐女子)
フィクションだから気持ちのいいハピエンがいいという方も当然いるかと思うのですが、こういう❝タラレバ❞が残る物語は現実との延長線を感じられてとても素敵だと思います。

ノット三角関係です。トライアングルBLが苦手な人も読めます。
(帯や裏表紙のあらすじに死ネタの表記があるので死ネタが苦手な人は自衛しているかと思いますが)死ネタが苦手な人は、終盤が最も苦しい展開かと思います。

この先微ネタバレ要素(?)










死んだ親友・慎太郎について
とても魅力的なキャラで、作中では生前・実と出会った経緯などが描かれています。
とても魅力的なキャラだったからこそ、個人的にはもう少しバックボーンが欲しかったですけど(骨だけにとかいう話じゃないですよ!)、物語の中とは言え、人の死を書き切るとなると1冊じゃ纏まらなさそうな文量になるだろうと考えるとあれくらいがちょうどおさまりがよかったのかな、などと思いました。
実を導く優しいお兄さん的な立ち位置で描かかれており、昌典×実のメインカプの邪魔にもなっていない点は流石だと思います。

2

あたたかな森

昌典と実、ふたりを繋ぐものは"慎太郎の死"という重たいものなので切ない雰囲気が漂っていて…
でも悲しみだけではなくそれが無ければ感じられなかった温かさも確かに存在しているような深いお話でした。

実の正体がはっきりするまでは、複雑な理由がありそうだし親切すぎるのが逆に怪しくもあって。
枕元に残された土の謎や慎太郎の母の意味深発言もあったので、何者かを知るのが怖くもありました。これ以上昌典にツラい出来事が起きなければいいな、と。
でも慎太郎と実の関係や自殺をするまでのふたりの日々、そしてその後の実の気持ちから見えてきたのが誰かを傷付ける結末ではなくてホッとしました。

日々いろんなことに折り合いをつけて生きていても、ふとその狭間で立ち止まって全て投げ出したくなることはきっと誰にでもあるはずで。
そんな時にふたりは死を選ぶことを決めて、そして死までの日々を共有した、と。
その時に話に出ていた昌典と会ってみたいと思ったことで実は自殺を思い留まり、そして実際に想いを通わせることが出来たことは
慎太郎が巡り合わせた縁なのだなと感じました。

きっと慎太郎は昌典と電話で話せていてもいくら実が止めても、その心は揺るがなかったのでしょう。すごく悲しいけれど昌典宛ての遺書にさえも弱さを見せなかったのはそういうことだったのではないかと思いました。

慎太郎の死が話の中心にあるので暗さはどうしても拭えないけれど
"生きる""死ぬ"というのは捉え方次第でいくつも道が出来て、それは遺された人にとっても同じだということや
そんな時にも人の温もりや優しさは心を和らげるのだということを伝えてくれてくれるような素敵な作品でした。

2

初めて中立にしました

あくまで個人的感想として、はっきり言います。
これは号泣する話でもないし、ミステリーでもない。
1人の自死に直面した人達の話です。
残念ながら私には、萌も全く感じませんでした。

なので、初めて中立にしました。
まりぱか先生が初読みだったので、こういう感想になったのかもしれません。他の作品を知っていたら、もっと先生の意図が汲み取れたのかもしれませんが…、ただただこの2人が、今後も一緒にいる事が、幸せでも良いことだとも思えませんでした。

ストーリー的には、2人が一緒にいることを、亡くなった友人が望んでるように描かれていますが、果たしてそれは2人の為になるのでしょうか。疑問が残りました。

友人が亡くなった直後はお互い支えになったと思います。実は特に、昌典の存在を知って「会ってみたい」と思い、自殺する気がない事に気がついた。それはとても大きい。でもこの先も、もしかしたら昌典があの時電話に出ていたら、友人の自殺を止められたかもしれないと言う事を、一生隠して生きていかなければいけない。友人の母に言われたように背負わなくてもいいかもしれない、その事実を、昌典と一緒にいれば忘れられないかもしれない。

ただただ辛い関係だと思いました。
そんな事実をつゆ知らず、昌典は実と前に進もうとする。地獄だな、って思ってしまいました。

たらればの話で、もちろん誰も悪くない。実の話に「誰も悪者は出てこない」と昌典が言ったように、誰も悪くないから、余計に辛くて苦しくなりました。

もちろん、それでも2人が幸せになろうとするなら応援するしかありませんが、それが救いには思えなかったのが、残念でした。

6

何度も読みたくなりました

まりぱか先生の話を読むのは「エンドランド」以来2作目です。

エンドランドでかなり泣かされてしまったので、帯の号泣必至‼︎の文に警戒しながら読んだのですが、号泣する程ではなかったです。

親友が自殺という方法で亡くなってしまった昌典と、その親友の友人という実。
謎に包まれた実を家に泊める事にした昌典ですが、寂しさを埋め合わせるように体を重ねてしまいます。

実については最初何も分からない謎に包まれた人でしかないのですが、親友を失ってボロボロになっている昌典に寄り添っています。
時折見せる辛そうな顔や、自己犠牲の域に達している昌典への尽くし方に、何かあるんだろうなと思いながら読み進めました。

話が進むにつれ、親友と実の関係性や、自殺する前の親友の足跡などは分かりますが、親友の死の真相など明らかにならない話もあり、ちょっとモヤモヤは残ります。
でも残された2人の話なので、これが良かったのかなと思います。

全ての真相を知った後にもう一度読み返すと、涙腺が緩むポイントが増えました。
じわじわと泣かせに来ました。

自殺という暗いテーマを扱っているので、人は選ぶ作品ですが、自分は読んで良かったです。

2

君と過ごした日々のその先へ

幼馴染みの慎太郎を亡くした、地元の役場で働いている明るく優しい昌典(攻め)と、慎太郎の葬儀に突然現れた、自称東京での慎太郎の友人の謎多き青年・実(受け)の、大事な人を失って迷った者同士が手探りながら手をとってやがて道を見つけ出す、シリアスラブストーリーでした。参考までに書くと、表紙の顔が見える彼は受けの実です。死ネタあり、というかむしろ主題です。ネタバレ気味になりますが、感想を書こうと思います。

切ない。やるせない。でも面白い。
私の中でいろんな感想が出てきたけど、一番ピッタリ来るのがこれです。私は電子で買ったのですが、297ページありまして、その中に色んなテーマ、伝わってきた思いが沢山ありました。

どうして?どうして??と、何かヒントや手がかりは無いかとページをいったりきたり拡大したりしながらあちこち読みましたが、真実はわからなくて、憶測の域を出ないんです。初めはそこにもどかしさや歯がゆさを感じましたが、昌典と実、慎太郎の母の気持ちを追いかけると、段々とその割りきれなさがキャラクターとシンクロしてしまい、「それもそうか」とストンと落ちて納得してしまい、同時に切なくなってしまいました。

「彼」と「彼」の過ごした十数年
「彼」と「彼」の過ごした約2週間
「彼」と「彼」の過ごした49日間
それぞれの時間が、かけがえなく、繋がっていて。

二人を通して前向きになれる、素敵なお話でした!

7

人の人生とは

とてもテーマの深い作品でした。

BLというよりも、後悔、懺悔、想い残しに苛まれるときにそばにいてくれたのが男性だったという捉え方の方が自然な気がします。
その流れからラブに発展したという流れでしょうか。
BLというくくりにせず、是非色んな方に食わず嫌いせず読んでほしいなぁと思いました。

『死』ましてや『自殺』、、、人って本当にいきなり目の前から消えてしまうんですよね。慎太郎が何故自殺をしたのか、はっきりとした理由は作中には出てきません。繊細な人というだけで。
けど、そこがリアルで訴求されているようだなと思いました。亡くなる時は本当に一瞬なんだなと。だからいつだって後悔のないように、伝えたいことは絶対に今伝えようと思わされました。

5

ぜひ一度だけではなく何度か読み返して欲しい

『ハニカム』に続いて読んだ まりぱか先生の作品です。

町役場勤務 昌典と無職 渋谷 実のお話。

――東京で暮していた親友が死んだ。
小学校からの幼馴染みで、面白くて賑やかで真面目な慎太郎。
山奥の田舎で執り行われた家族葬に一人の青年が訪ねてきた。
その青年は、東京で慎太郎に世話になったと言うけれど…。

裏山にある「みのりの森」
嘘つきは道に迷って元の世界には戻れない。
そして、「みのりの森」は昌典と慎太郎にとって遠い日の遊び場所。

小学生の頃に東京から田舎の祖父母に預けられた昌典。
母親は我が子を残したまま行方不明になってしまいました。
まだ幼いため寂しさもあった昌典ですが、慎太郎や周囲の人たちに支えられ、優しく純粋に育ちます。
やがて時は過ぎ、いつも一緒にいた昌典と慎太郎は別々の道を歩むことになりました。
田舎に残る昌典と東京に行く慎太郎。
それが、永遠の別れになるとは知らずに。

一方、四人兄弟の末っ子で唯一出来が悪かった実。
大学受験に失敗して家を追い出され、バイトをしながら受験を目指すも挫折します。
――誰かのために頑張りたいと思っても自分の周りにそんな人はいなかった
結局、自分のためにすら頑張れなくなり、たどり着いた答えは…。

「死」を題材にした作品は重く暗くなることが多く、しばらく引きずりかねない繊細なテーマです。
しかし、こちらはミステリー要素と少しだけコミカルな雰囲気を絡ませており、今までにない切なさとやるせなさを味わえ、人生について考えさせられる一冊に仕上がっていました。
まりぱか先生の作家インタビューに書かれていた「絶対に誰も悪役にしない」の通りに全てのキャラクターに愛情がこもっています。
丁寧かつ力強さが感じられる絵柄と作品の世界観がマッチしていて最後まで物語に入り込めました。
個人的には、慎太郎が上京した理由を含めてもう少し掘り下げたエピソードが読みたかったです。

決して他人事ではなく、誰にでも起こり得る大切な人との突然の別れ。
残してしまう苦しみと残されてしまった悲しみは、きっと当事者以外にはわかりません。
それでも、残された人達は前に進まなければならない。
昌典に隠している実の秘密とは?
そして、実が訪ねてきた本当の目的とは?
290Pにも及ぶ本編を読み終えた時…まるで映画を観ていたかのような充実感に溜息が出るでしょう。

このお話には、当て馬は登場しません。
脇キャラとしては、亡くなった慎太郎、慎太郎の母親 幸子さん、町の人々が登場します。
息子を失った幸子さんの悲しみを堪えた気丈な振舞いにグッときました。

Hシーンは、本編で2回あります。
どうしても作品のテーマが頭にあるので幸せなエロさを感じられませんでした。
でも、2回目のセックスでは辛さや寂しさからではなく、お互いに求め合い愛情を注ぎこんでいるのが良かったです。
とくに、昌典が実のことを大切にしているのが感じられてキュンとしました。

――真実を知らん方がいいこともある。
人は誰でも弱くて脆い。
その弱さと脆さを見せられる相手に出会った2人。
亡き親友が残した繋がりが明るく愛に溢れる人生を送れることを願っています。
ラストは、昌典と一緒に眩しさで目を細めました。

読んだ人によって捉え方や考え方が異なるとは思いますが、ぜひ多くの方に手に取っていただきたい作品です。

7

スッキリしなさも含めて良かった

すごく良かったです。号泣はしなかったけどすごく心に残る作品でした。

キャラの心情が丁寧に描かれてて、でも重すぎず表情豊かに描かれているので読んでても辛くなりすぎませんでした、でも最後残るものがある。

人の気持ちはその人にしかわからないし、それを全部説明しなかったところに私はすごく誠実さを感じました。
理由はたぶんつけようと思えばいくらでも納得いく形でつけられると思うんですが、それをされなかったからこそ安心して最後まで読み切ることができました。

人生はスッキリしないこともあって後悔も残るしもっとこうであればとか色々考えるけど、それでも前を向いて生きて行けたらいいなと思うような最後でした。

9

生きるとか死ねないとか死とか

大きな打撃を受けた後、自分はどうするのか?死なない限り生き続けます。生死のチョイスと生を選んだ場合又は死を選べなかった場合の生き方。そんなお話だと思いました。

評価がバラつく理由は恐らく最後まではっきりスッキリしない点があるからかな、と思いますが、私はそこが良かったと評価しました。やっぱり「死人に口無し」で不明瞭なケースが多そうな気がしましたし、そのモヤモヤ感の為にみんな気持ちの切り替えし辛い→でも切り替えなきゃさ!という頑張りに焦点が当たったかな、と感じています。

11

BLとはいえ、もう少ししっかり描き切ってほしかった…

うーん、帯の〝大号泣〟は、煽り過ぎじゃないかと…

まりばかさんの作品は『エンドランド』が好きでして、謎や伏線が一点に集約していく構成が素晴らしかったんですよね。
今作も同じ雰囲気を感じて期待しながら読んだのですが、ページ数の割には真実が見えてこなかったなという印象でした。

親友の死、葬儀に現れた謎の青年・実、意味深な「みのりの森(正直の森)」…謎と嘘が幾重にも重なり、物語を複雑に、ドラマチックにしていきます。

主人公の昌典ですが、非常に思慮深くて優しい青年。
他者を思いやり、親友の死に深く傷ついています。
そんな昌典の前に現れたのが、亡くなった親友・慎太郎の友人・実。
実と慎太郎の関係、実が村に滞在する理由ーここが最大の謎。

ただ、明かされた真実は、それほどの驚きもなく。
逆に謎が深まるといいますか、慎太郎が亡くなった理由がハッキリせずモヤモヤ…。
ホテル暮らし、明るい性格。
しかし、母親は、慎太郎には弱いところがあったと言う。

慎太郎の弱さとは?
その裏付けが、裏アカにしか見てえこない。
しかも、その裏アカの内容もぼやかしており、仕事のことが書いてあるような雰囲気しか分からない。
慎太郎の真の人となりが見えてこない。
ここは本当に残念。

誰にでも起こりうる可能性がある「自殺願望」。
それを、実行してしまった人が悪いとは思わない。
きっと、抱えきれないほどの感情の膨らみがあったのだろう。
でも、自殺を扱う作品を作るなら、その人がどうして死んだのかを描ききる覚悟を持って欲しかった。
それが、命に対する敬意になるのではないかと思うから。

…とまあ、厳しいことを書き連ねましたが、この作品は死をきっかけとした救済と再生の物語でもあります。
慎太郎が昌典と実を引き合わせてくれたのだと思うし、そう考えると胸がいっぱいに。
次回作も期待してます。

17

もしかしたら好みが分かれる作品かも。

作家買い。
まりぱかさんはシリアスなものからコミカルなものまで描かれる引き出しの多い作家さまですが、今作品はシリアス寄りのお話。「死」にまつわるお話なので苦手な方は注意が必要かもです。

ネタバレ含んでいます。ご注意ください。






昌典は田舎の町役場に努める青年。
彼の幼馴染で親友の慎太郎が亡くなった。悲しみに暮れる時間もないまま葬儀の手伝いに駆り出された昌典だったが、そこに一人の青年がやってくる。家族のみの葬儀であることを伝えても帰らないその青年・実は慎太郎の友人だという。

とある事情で慎太郎の友人は誰も参列していない葬儀で、実だけの嗚咽が聞こえてきて―。

慎太郎の死因。
明るく人気者だった青年の葬儀に誰も来ない理由。
そして、実と慎太郎の関係は―。

序盤、それらが分からないままストーリーは展開していきます。
物語のキーとなるのは慎太郎と実の関係。読み始めたとき、実は慎太郎の恋人だったのかな?と思ったんですけれども。この二人の関係について、ぜひとも手に取って確認していただきたいです。

昌典にとって慎太郎は初恋の相手であり幼馴染であり、親友だった。
そして、実にとっても慎太郎の存在は大きい。

「慎太郎」という大切な人を失った二人の男たちが、傷口を舐めあうように身体を重ねていく。

と、簡単に説明するとそういうお話なのですが、そこにいくつもの因子が絡み一筋縄ではいかないストーリーに仕上がっていました。二人が慎太郎の葬儀で初めて出会い、そしてすぐに身体の関係を持つに至ります。その展開が急すぎて、頭の中に「?」が飛び交いました。そこに行きつくまでをもう少しじっくり描いてほしかったなあ、とか思いつつ。けれど、読み進めていくと昌典の慎太郎を失った痛みと、実の贖罪の気持ちが透けて見えてくるようになり、それに従って、彼らが性急に身体を繋げた理由も見えてくる。

秀逸だなと思ったのはタイトル。
彼らの住まう町にある山。嘘をつくと帰ってこられなくなってしまう「正しい山」と呼ばれているが、その山の名前は「みのりの森」。その山に隠した秘密や慎太郎と昌典の子ども時代の楽しかった記憶、そして実の名前と絡めていること。

凄く味わい深いタイトルだなと思いました。

大切な人を喪う。
それは、それだけで大きな痛みを伴うことですが、人それぞれ立場や関わり方があって、だからこそ痛みも大きい。「たら・れば」を封印し、精一杯生きよう、後悔のないように。そんなまりぱか先生のエールのように感じました。

「慎太郎」という青年は、昌典たちの回想という形でしか登場しません。しませんが、彼の中身がきちんと読み取れる。その描き方も素晴らしい。だからこそ慎太郎を喪った痛みが読者にダイレクトに流れ込んでくる。

人の死を扱った作品ですので、もしかしたら好みが分かれるかもしれません。
けれど、いろいろな、壮大な愛の形を描いた良作です。
精一杯生きる若者たちに、心からのエールを送りたいです。

12

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