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表題作ビター×スイート

村山稔,受様に一目惚れした社交的なカメラマン
三日月,人付き合いが苦手で倉庫管理の仕事をする青年

同時収録作品雑巾姫

雨宮遥,大会社の社長令息
灰谷,清掃作業員

同時収録作品君は間違ってる

大手町,花形部署の規格戦略室勤務の有望株
竹芝,半年前に攻様の会社に配属された派遣社員

同時収録作品cleaning-世界で一番小さいクリーニング屋の話-

クリーニング屋の客
小さなクリーニング屋

あらすじ

一杯のコーヒーを楽しみに孤独に過ごす寡黙な青年・三日月。そんな静かな日常に快活なイケメン・村山が現れ突然の告白――。村山との出会いは三日月の人生をコーヒーのように甘く、時に苦い味わいで彩っていき…。描き下ろし大量収録の著者初単行本。

作品情報

作品名
ビター×スイート
著者
ARUKU  
媒体
漫画(コミック)
出版社
リブレ
レーベル
ビーボーイコミックス~BE×BOYCOMICS~
発売日
電子発売日
ISBN
9784862632975
4

(81)

(43)

萌々

(14)

(16)

中立

(4)

趣味じゃない

(4)

レビュー数
28
得点
323
評価数
81
平均
4 / 5
神率
53.1%

レビュー投稿数28

これが初コミックス?天才なの?

ARUKU先生のデビュー作です。
今更ながらに読みましたが、感動しかないですね。
天才としか言いようがない。
ストーリー、構成、キャラ……何一つ曇りがない。
意地っ張りだけど愛らしくて憎めない受けと、男らしいのにどこか弱気な攻め。
ARUKU先生お得意のこの設定は、当時から活きていたのですね。

表題作のビター×スイートが一冊の殆どを占めます。
コミュ障気味の三日月が、エリートイケメンの村山に告白されたことから動き出す甘辛いラブストーリー。
三日月の気持ちの変化が丁寧で、戸惑いや不安がリアルに表現されていて共感できました。
また、ファンタジー要素の入った少しホラーな面もあったりして、村山の過去には驚かされた!

村山が三日月を振り回すお話だと思ったら、いつの間にか村山が振り回されていて、その中で男らしく成長している三日月に気付かされたり……と、長いのに全く飽きさせない構成が本当に素晴らしい!もう、脱帽です‼︎

こちらは番外編まであり、かなりなボリュームで楽しめます。
ラストは二人なりのハッピーエンドで、らしいな(笑)という感じで大満足。

その他の短編集は、それはそれは切なくて苦しくて……
なんですか、この余韻は。
涙が止まらないんですけど……

特に、『cleaning』は辛かった。
お願いだから幸せになってと願わずにはいられなかった。
最後に片想い相手からかけられた言葉が、彼の生きる希望や糧になってほしい。
どうかお願いだから、〝最期〟にはしないで欲しい。

エロ要素はほとんどなし。
表題作ですらプラトニックです。
でも、だからこそ愛を感じられるってところもあるんだと思う。

2

アルクワールド

アルク先生の作風って、本当に唯一無二だなと改めて思わされました。
日常に潜む非日常とか、現代の日本が舞台のはずなのにどこか微妙にずれているような感じとか。
もしかしたら、アルク先生はこことは違うパラレルワールドを舞台に描いているのかもなぁ…、なんて。
その不自然さのようなものがすごく病み付きになります。
以下感想のみ。

「ビター×スイート」
これも不思議な雰囲気の漂うお話でした。
一見普通のボーイ・ミーツ・ボーイだけど、主人公そっくりの青年が回想に出てきたり、主人公の幼少期にそっくりの少年がちらっと出てきたり。
主人公が読んでいる本に『夏への扉』があるのがまたなんとも(『夏への扉』はタイムトラベルを題材にしたSF小説です。)
アルク先生ってSF好きですよね絶対(^-^)

もちろんBLとしても面白いです。
クールなように見えて不器用で、近づけば近づくほど可愛い部分が見えてくる三日月くん(受け)に萌えました。
初めて店員姿で現れたときには私も鼻血がでるかと…。
お相手の村山くんも、歯の浮くようなことを平気で言うくせに、どこかつかみ所の無いような、アンバランスな雰囲気が魅力的でした。
そのアンバランスさも彼の過去を知ればしっくりきました。半分はもうこの世の人間ではないのかな~?なんて。
そんな二人が徐々に近づいて、最終的にはバカップルみたいになるのが最高です。萌え~。

「雑巾姫」
シンデレラへのオマージュ的な短編。
遊び人なふうを装って強がる受けって、やっぱり可愛いですね。攻めにバレているのがよりいっそう可愛い。
どうぞ幸せにしてあげてくださいm(__)m

「君は間違ってる」
攻めが刺されるBLにはたまに出会うけど、BL界には傲慢で薄情な男が多いのかな。
この攻めもやっぱり傲慢で薄情。自分のスペックを鼻にかけたイヤな奴でした。
そんな攻めが受けと出会って恋して変わっていく。その様子を眺めるの楽しいですね(笑) 
鼻持ちならない奴がどんどん女々しく(可愛く)なっていくのにニヤニヤしました。
それと名字。攻めが大手町さんで、受けが竹橋さん、同僚が九段下さん。
思わず笑っちゃいました。こういう遊び心というか小ネタというか…好きです。

「cleaning」
童話!
『幸福な王子』とか、そういう系統の童話ですね。めでたしめでたしにはならない。
やるせない話です…。でも綺麗。


密度の高い一冊でした。アルク先生の世界に浸るにはおすすめの本です。

3

初単行本

初単行本ですね。これが原点かあ。色々読んできましたが感慨深いです。このころからARUKUさんはぶれないですね。

主人公三日月がやはり恵まれない境遇で孤独で。寂しい人生を送っていて。
そんなところに現れたイケメン村山が一目惚れしてきて。
村山のアプローチにも三日月はなびかず。でもずっと好きでいてほしい。素直になれない三日月です。

三日月がだんだん前向きに変わって行きましたね。村山とは距離ができたりしましたが、三日月は夢に向かって頑張って。村山と三日月のやりとりや三日月の反応が可愛くて。

最後の短編では三日月のキャラがずいぶん変わっていましたね。

他には人生勝ち組のエリートイケメンが派遣社員に恋をして、うまく伝えられずジタバタしたり。

潰れそうなクリーニング屋さんでお客さんに恋をした店主が切ない片想いをして、でもとうとうお店が潰れて。
個人的にARUKUさんの作品は主人公が孤独で寂しい時に理不尽な目にあっているのが特徴な気がします。

でもコミカルなところもあり、ファンタジっくで独特な絵柄が気にならないくらい世界に浸れます。

1

ストーリー構成力に脱帽

短期間でBLを大量に読んでいくうちにストーリーにはいくつかのパターンがあって、オリジナル性のあるものよりパターンに沿ったものが多いことや、えろす度が上がれば上がるほどストーリーはあってないものという作品も多くあるのだなと思っていたのですが…。
今日、ARUKUさんの作品をいくつか拝読させていただいて、群を抜いた構成力と文章力に度肝を抜かれました。
こんなことを言ってしまうとあれなのですが、人物の絵は好みではなくて。味はあるなと思うものの表情の表現やたまにデッサンが狂うコマがあるのももったいないと思ってしまう。背景や食べ物で画力が素晴らしいのは分かるのですが、こればっかりは個人の好み…。
それはさて置いて、どの作品も小説を読んだ後のような満足感がありました。

食べ物大好きなのでカフェや食堂が舞台の作品は大好きです。
表題作に出てきたカフェは雰囲気もすごくいいしサンドイッチもおいしそうで、行ってみたくなりました。
村山と三日月の距離感や三日月の成長の描写も素晴らしくて、途中の駆け落ちのエピソードは美しいラストシーンまで映画を見ているような気分になりましたが、あれはどういう事情で駆け落ちしたんだろうという謎は残る。単純に村山の「自分についてきてほしい」という願望からだったのでしょうか?
世界中を飛び回る自分についてきてほしいけれど無理強いは絶対にしない村山と、店を守るため、店を再建するためという自分の夢を捨てない三日月。それぞれが自分のやりたいことややるべきことを尊重して出来上がった関係は、四六時中べたべたしているわけではないのに強い絆を感じられて素敵だなと思いました。
だからこそ最後の話が生きる。三日月の決断がカッコイイ!ラストはジム・ジャームッシュの映画のようでした。

2

私の妄想あり

表題作よりも「雑巾姫」と「cleaning」が印象的です。

まず「雑巾姫」はシンデレラをベースにしたお話です。社長の息子で会社で“王子と呼ばれている非の打ちどころのない男と、冴えない清掃会社勤務の男のもどかしい恋模様を描いた作品。本当は王子の事が好きで好きで仕方ないくせに、いつ捨てられてもいい様に、好きじゃない素振りをする優介が切ないです。
最後のシーンでもらった王子からのラブレター(?)をきっと優介はずっと取っておくんだろうなぁ。

そして「cleaning」
この話は、人魚姫あたりをモチーフにしているんですかね?
小さなクリーニング屋をたった一人で切り盛りする小さな男の話です。
同じような毎日を繰り返していたある日、男は恋をしてしまいます。
その恋がどうなったのか、クリーニング屋の男はどこへ行ってしまったのか、結論は描かれていません。
結末はとてもあっさりとしていて、それがまた一層悲壮感を際立たせていました。
“自分の人生にはもういいことはないとわかっていました”という一言で涙が出ました。

もやもやが消えないので、私的には…
[店の経営が悪化]

[例の弁護士の兄さんに相談] 話すきっかけができてラッキー

[相談がてら何度か食事] 兄さん元々ノンケだけど、酔ってキスしちゃう

[店をたたんだ後、仕事探すけどみつからん] ちっさい男しょんぼり

[じゃ、俺のYシャツだけを一生洗濯しちゃいなよ!] ついでにパンツも

[イエス、フォーリンラブ!!] 古い…
ってゆう、なんじゃそらな展開を勝手に妄想してます。

あの終わり方では、あまりに悲しいので“これ以上”を足して
『自分の人生にはもうこれ以上いいことはないとわかっていました』
というのが、私的な見解です。妄想につきあって下さってありがとうございました。

8

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