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ARUKUさんの遙々アルク名義での、なんと初コミックスですか!
すごいレベルですね…。
初期の絵柄はどうしても抵抗があってずっと読んでなかったんですが、談話室のARUKUさんトピのおかげで「猿喰山疑獄事件」を克服したので(しかも超ド級神作認定)、本作もポチリ。
①表題作(これだけ短編ではなく、全体の約6割を占めます):
喫茶店で繰り広げられる「積極的な明るいイケメンx対人恐怖症のブルーワーカー」。
2007年の作品なので差別用語がバンバン出てくるのは仕方ないとして、やっぱり端々に女性の代わりを連想させる表現が使われたり(実際に代わりにはしないですが)、主人公(受け)の中身がやはりいつものARUKU作品に多い感じの乙女思考・言動で、あまり好みではありませんでした(見た目はすごく男っぽくて好きなんですが)。
でも飲み物に月を浮かべて飲むシーンで、柴田淳さんの「月光浴」の歌詞を思い出したし、各話のサブタイトルがコーヒーにまつわる用語なのがコーヒー好きには嬉しかったです。
てかパパも登場!いけおじ…(じゅる
はっ!いかん(拭う
最後の特別編でAntonio Carlos Jobimのレコードが出てきてめちゃくちゃ嬉しかったです(でもたった1か月でアルゼンチンで起業はさすがに無理があるw)。
ほんの一部だけ微グロ注意。
②「雑巾姫」:
なんと!ARUKUさんの描く三白眼の男らしい受けなんて、激レアじゃないですかー!
口元にホクロまである!
すごく短い短編ですが、これだけでも買った価値がありました。大好きです!
③「君は間違ってる」:
これラストちゃんと生き延びてほしい!
④「cleaning」:
受けが145cmで、顔も長くない!可愛い!
でも内容はせつなすぎて私にはムリでした…
絵柄は初期でも、斜めの顔は長いですが正面顔はそこまで長くなくて、目がすごく大きいです(なので意外と読みやすかった)。
②③がすごく良かったし、短編はどれも相変わらず度肝を抜くラストの展開が素晴らしかったので☆4。
ARUKU先生のデビュー作です。
今更ながらに読みましたが、感動しかないですね。
天才としか言いようがない。
ストーリー、構成、キャラ……何一つ曇りがない。
意地っ張りだけど愛らしくて憎めない受けと、男らしいのにどこか弱気な攻め。
ARUKU先生お得意のこの設定は、当時から活きていたのですね。
表題作のビター×スイートが一冊の殆どを占めます。
コミュ障気味の三日月が、エリートイケメンの村山に告白されたことから動き出す甘辛いラブストーリー。
三日月の気持ちの変化が丁寧で、戸惑いや不安がリアルに表現されていて共感できました。
また、ファンタジー要素の入った少しホラーな面もあったりして、村山の過去には驚かされた!
村山が三日月を振り回すお話だと思ったら、いつの間にか村山が振り回されていて、その中で男らしく成長している三日月に気付かされたり……と、長いのに全く飽きさせない構成が本当に素晴らしい!もう、脱帽です‼︎
こちらは番外編まであり、かなりなボリュームで楽しめます。
ラストは二人なりのハッピーエンドで、らしいな(笑)という感じで大満足。
その他の短編集は、それはそれは切なくて苦しくて……
なんですか、この余韻は。
涙が止まらないんですけど……
特に、『cleaning』は辛かった。
お願いだから幸せになってと願わずにはいられなかった。
最後に片想い相手からかけられた言葉が、彼の生きる希望や糧になってほしい。
どうかお願いだから、〝最期〟にはしないで欲しい。
エロ要素はほとんどなし。
表題作ですらプラトニックです。
でも、だからこそ愛を感じられるってところもあるんだと思う。
アルク先生の作風って、本当に唯一無二だなと改めて思わされました。
日常に潜む非日常とか、現代の日本が舞台のはずなのにどこか微妙にずれているような感じとか。
もしかしたら、アルク先生はこことは違うパラレルワールドを舞台に描いているのかもなぁ…、なんて。
その不自然さのようなものがすごく病み付きになります。
以下感想のみ。
「ビター×スイート」
これも不思議な雰囲気の漂うお話でした。
一見普通のボーイ・ミーツ・ボーイだけど、主人公そっくりの青年が回想に出てきたり、主人公の幼少期にそっくりの少年がちらっと出てきたり。
主人公が読んでいる本に『夏への扉』があるのがまたなんとも(『夏への扉』はタイムトラベルを題材にしたSF小説です。)
アルク先生ってSF好きですよね絶対(^-^)
もちろんBLとしても面白いです。
クールなように見えて不器用で、近づけば近づくほど可愛い部分が見えてくる三日月くん(受け)に萌えました。
初めて店員姿で現れたときには私も鼻血がでるかと…。
お相手の村山くんも、歯の浮くようなことを平気で言うくせに、どこかつかみ所の無いような、アンバランスな雰囲気が魅力的でした。
そのアンバランスさも彼の過去を知ればしっくりきました。半分はもうこの世の人間ではないのかな~?なんて。
そんな二人が徐々に近づいて、最終的にはバカップルみたいになるのが最高です。萌え~。
「雑巾姫」
シンデレラへのオマージュ的な短編。
遊び人なふうを装って強がる受けって、やっぱり可愛いですね。攻めにバレているのがよりいっそう可愛い。
どうぞ幸せにしてあげてくださいm(__)m
「君は間違ってる」
攻めが刺されるBLにはたまに出会うけど、BL界には傲慢で薄情な男が多いのかな。
この攻めもやっぱり傲慢で薄情。自分のスペックを鼻にかけたイヤな奴でした。
そんな攻めが受けと出会って恋して変わっていく。その様子を眺めるの楽しいですね(笑)
鼻持ちならない奴がどんどん女々しく(可愛く)なっていくのにニヤニヤしました。
それと名字。攻めが大手町さんで、受けが竹橋さん、同僚が九段下さん。
思わず笑っちゃいました。こういう遊び心というか小ネタというか…好きです。
「cleaning」
童話!
『幸福な王子』とか、そういう系統の童話ですね。めでたしめでたしにはならない。
やるせない話です…。でも綺麗。
密度の高い一冊でした。アルク先生の世界に浸るにはおすすめの本です。
初単行本ですね。これが原点かあ。色々読んできましたが感慨深いです。このころからARUKUさんはぶれないですね。
主人公三日月がやはり恵まれない境遇で孤独で。寂しい人生を送っていて。
そんなところに現れたイケメン村山が一目惚れしてきて。
村山のアプローチにも三日月はなびかず。でもずっと好きでいてほしい。素直になれない三日月です。
三日月がだんだん前向きに変わって行きましたね。村山とは距離ができたりしましたが、三日月は夢に向かって頑張って。村山と三日月のやりとりや三日月の反応が可愛くて。
最後の短編では三日月のキャラがずいぶん変わっていましたね。
他には人生勝ち組のエリートイケメンが派遣社員に恋をして、うまく伝えられずジタバタしたり。
潰れそうなクリーニング屋さんでお客さんに恋をした店主が切ない片想いをして、でもとうとうお店が潰れて。
個人的にARUKUさんの作品は主人公が孤独で寂しい時に理不尽な目にあっているのが特徴な気がします。
でもコミカルなところもあり、ファンタジっくで独特な絵柄が気にならないくらい世界に浸れます。
短期間でBLを大量に読んでいくうちにストーリーにはいくつかのパターンがあって、オリジナル性のあるものよりパターンに沿ったものが多いことや、えろす度が上がれば上がるほどストーリーはあってないものという作品も多くあるのだなと思っていたのですが…。
今日、ARUKUさんの作品をいくつか拝読させていただいて、群を抜いた構成力と文章力に度肝を抜かれました。
こんなことを言ってしまうとあれなのですが、人物の絵は好みではなくて。味はあるなと思うものの表情の表現やたまにデッサンが狂うコマがあるのももったいないと思ってしまう。背景や食べ物で画力が素晴らしいのは分かるのですが、こればっかりは個人の好み…。
それはさて置いて、どの作品も小説を読んだ後のような満足感がありました。
食べ物大好きなのでカフェや食堂が舞台の作品は大好きです。
表題作に出てきたカフェは雰囲気もすごくいいしサンドイッチもおいしそうで、行ってみたくなりました。
村山と三日月の距離感や三日月の成長の描写も素晴らしくて、途中の駆け落ちのエピソードは美しいラストシーンまで映画を見ているような気分になりましたが、あれはどういう事情で駆け落ちしたんだろうという謎は残る。単純に村山の「自分についてきてほしい」という願望からだったのでしょうか?
世界中を飛び回る自分についてきてほしいけれど無理強いは絶対にしない村山と、店を守るため、店を再建するためという自分の夢を捨てない三日月。それぞれが自分のやりたいことややるべきことを尊重して出来上がった関係は、四六時中べたべたしているわけではないのに強い絆を感じられて素敵だなと思いました。
だからこそ最後の話が生きる。三日月の決断がカッコイイ!ラストはジム・ジャームッシュの映画のようでした。