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表題作狂おしき夜に生まれ

吉水貴将 臣下で医師 28才
暁成 国主 18才

その他の収録作品

  • 狂おしき夜を重ね
  • あとがき

あらすじ

一族を失い、復讐を胸に国主である暁成に近付いた貴将は、哀れな境遇の暁成を操ろうとするが…。『清澗寺』シリーズ外伝。
(出版社より)

作品情報

作品名
狂おしき夜に生まれ
著者
和泉桂 
イラスト
円陣闇丸 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
リンクスロマンス
シリーズ
この罪深き夜に
発売日
ISBN
9784344825284
3.7

(11)

(2)

萌々

(6)

(2)

中立

(0)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
4
得点
40
評価数
11
平均
3.7 / 5
神率
18.2%

レビュー投稿数4

謎は全て解け…ない。

大好きな『清澗寺家シリーズ』の外伝。
今作では今まで謎に包まれてきたこの一族の起源が分かるということで、楽しみにしていました。

…が、謎、解けてないですよね…。

起源は分かった。
平安時代に清澗寺の家が起こった理由や人物、経緯は判明した。
でも、一番大事な部分が描かれていない気がして、もやもやしました。

昭成に淫乱の性質を宿したのは誰?なんのために?
貴将が人誑しなのはなにか外部的な要因が絡んでいるのか?
貴将が破滅を希う理由は?
俊房が貴将に記憶操作をするほど執着する理由は?

など。
説明不足な感じが終始漂っていて、読後感はやや「?」でした。
これまでずっとシリーズ作を読んできて、謎が謎であったために魅力的だった幻想を中途半端に拭われてしまったようで、正直なところ少し消化不良です。

神とか呪いとか理屈で説明できない要素を絡めるのは、逃げている感じがして好きじゃありません。
納得できない。
誰もが納得できる明確な理由が欲しい。
そこをきちんと描いてこそ“種明かし”と言えるのではないでしょうか?

とはいえ。

前作までの登場人物の性質を思わせる描写がところどころ出てきて、嬉しくなったシーンが多々ありました。
特に、冬貴。
『罪の褥も濡れる夜』のなかで、貴久が冬貴を評した台詞

「冬貴ほど我が一族の血が色濃く現れた者はいない」

その言葉を証明するような昭成の振る舞いに、この人たちは本当に彼らの先祖なんだなと感慨深く思いました。
また、円陣闇丸さんの絵がまたも美麗さを増していて、秀逸でした。
貴将の“この世のものとは思えない美形”という設定を活かしきれるのは、この方が挿絵を描いていてこそだと思います。

一応ここで第一部は一区切りとのこと。
雑誌掲載分は意図的に読まないようにしているので、次回作からシリーズ第二部が始まるのを、今から心待ちにしています。

3

破滅を願う一族の夜明けがここにあり。

第一部が完結した清澗寺家シリーズの外伝、平安時代編。

清澗寺のルーツの話ということで、ファンとしては非常に楽しみにしていたし、
実際シリーズのファンにとっては楽しい話だったのだけれど、
この話単体ではちょっと物足りないというか、
私は殆ど本編のキャラやイメージと重ね合わせたりしながら
(雪の情景とか「美味しい」とかね!笑)その楽しみで読んでしまいました。
全編シリアスなのに、クスッと笑っちゃったりして…

               :

一族を滅ぼされた恨みを持ち、関白への復讐を密かに誓う医師・吉水貴将。
時の帝・暁成は、その為の重要な道具だ。
年若くお飾りのような帝、関白の傀儡となっている彼は
国の最高位にありながら、身を小さくして孤独の日々を生きている。
偶然のすれ違いの印象的な出会い、ただ見つめることしかできない暁成だったが
彼が怪我をしたところに貴将が居合わせていたことから二人は再会する。
貴将に夢中になる暁成。誑かしたのは貴将、誑かされたのは暁成…だったのだが…

貴将が汚れのない大人しい青年だと思っていた暁成は、
実はそればかりではない存在だった。
暁成の秘密を知って衝撃を受ける貴将。
汚れているのに、決して穢れない、
いつの間にかそんな複雑な存在である暁成に惹かれていた貴将。
そして暁成は、貴将と共にいる為に自分の妹と貴将を結婚させる…

無自覚で残酷で、淫蕩だけれど禍々しいほど澄み切っている暁成は、善悪の彼岸にいる。
運命に翻弄される彼の姿は和貴に通じ、覚醒後の本性は冬貴に通じている。
妹露草の、現世を越えたところを見据えたような強さも、また清澗寺だ。
貴将と彼と露草と、歪んだ三人の関係が生み出した血の連鎖が、
大正の世へと続いて行く。


5

すべてはここから始まった。

清澗寺家の誕生にまつわるお話ですね。

幼い頃に里を滅ぼされ、その復讐を誓う貴将。
薬学・医学の知識を利用して、少しずつ復讐の階段を昇っていく。
そんな中で利用できると考えたのが、時の国主・暁成。
暁成は名ばかりの国主で政治的権力は祖父やその周りの者たちが持っていた。
というのも、暁成は斎女が産んだ子供で畏怖され忌み嫌われる存在だったからです。
敬われるべき存在のはずが、ただの傀儡。
貴将もそれを憐れには思うものの、利用する以外考えていなかったはずなのだが…。

異質なものが引き合うように巡り会って。
貴将は純粋な悪というかそんな感じで。
世を潰してやろうというような悪意で満ちていて。
一方の暁成は一見、健全というか健気な感じに見えなくもないが、その中身は貴将以上に捉えどころがないというか。
いうなれば、冬貴の元のような。
善悪という分け隔てが存在しないところに在るんですよね。
そういう考え方ではなくて。

そんな2人が恋をして。
それが恋だと自覚していくことになるんですが、元々が異質だからか貴将はわりと人間くさくなっていくんですが、暁成の方は貴将に比べると異質さが残るというか。
冬貴のような不思議な存在なんですよね、やっぱり。
そして、このお話で千年の孤独の謎も解けるんですよね。
最後は冬貴に通づるような場面もありました。

あと、個人的に結構好きかもしれないのが、貴将の従兄弟・俊房の流れ。
貴将の記憶を封じ、復讐をさせようとするも、最後の最期では貴将に逆らえなくて。
いつでも貴将に誑かされて。
そんな俊房が最後、「嵯峨野」と名乗るに至るんですよね。
これって、もしかして、あの嵯峨野のルーツでもあるのかな。
たぶん、そうなんだろうと思うんですが。
常に清澗寺に付き従う。
貴久と嵯峨野が結ばれなかったのはもしかしたらこういうことなのかなと勝手に想像してニヤニヤしてしまいました(苦笑)


それから。
この小説には帯が付いてます。
この後出る、第2部「暁に濡れる月」上下巻の帯と合わせて、小冊子の全サがあるようです。
この全サの締め切りが今年末なので第2部もそう遠くないうちに読めそうですね。
本誌でも読みましたが、今から楽しみですw

2

清澗寺の起源がここに

清澗寺シリーズの起源と言うべき大変興味深い外伝ストーリーでした。
千年の孤独のさだめの真実が明かされるお話で、清澗寺家はこうして出来たんだって
何やら感慨深い内容になっているのです。

主役の二人は、国主と臣下でもある医師なのですが、互いに似たような狂気に近い
さだめを持って生まれて来たように感じるのです。
ただ、その表れ方が微妙に違う、攻め様は元々は医師の家系に初めから属してて
でも、医術とは別に呪術の家系でもあったのですが、当時の国主の意向で攻め様の
里が滅ぼされ、親兄弟までも屠られてしまい、生き残った攻め様と従兄弟の二人で
いつかその復讐をする事を誓い合い、その目的の為に互いに別の人間として
身分を変えながら復讐の機会を狙っているのです。

それにこの攻め様は、人間らしさの感じられない冷淡な美貌の持ち主で行動も
その美貌と同じように冷淡、でも表面上はそのように見えない策士。
自分の手を汚さずに邪魔な人間を次々に排除していくのです。
それも、何かを明確に指示しなくても、まるで勝手に攻め様の意図を組んだように
攻め様の求める結果になっていくんです。
人ならざるものと言う表現がぴったりの人物です。

受け様は国主でありながら、母方の祖父の右大臣の傀儡に15の時からなっている。
そして誰からも敬われるべき存在のはずが、逆に皆に侮られ忌み嫌わられのです。
それは受け様の母親の出生に関係があり、更に今で言うなら霊感の持ち主だからで
その子供である受け様と同腹の妹は身内にも嫌われる存在なのです。
本来聡明なのですが、人と争う事を嫌い、傀儡に甘んじているのですが、隠された
本性はプライドが高く高貴なのですが、見方が誰もいないのです。

受け様は攻め様と出会った事で、次第に大きく変わっていく事になりますが
攻め様も人ならざるものと言われるくらい感情を揺らすことが無いのですが、やはり
受け様に出会ったことで逆に人間らしい感情を手に入れてしまうのです。
同じような業を背負った二人、本質は同じだったのに、出会った後は人間らしさが
逆転してしまうような怖さのあるお話でもあります。

天使だと思っていたら善悪の判断の付かない悪魔だったみたいな受け様。
冷徹な感情のない悪魔と思っていたら人間の感情を手に入れてしまい末代までの
孤独の呪いを受ける事になってしまう攻め様、まさに、清澗寺の始まりです。
シリーズも第二部に入るとの事で、この外伝で一部完結になるような設定ですね。
上下段に分かれた読み応えたっぷりの作品です。

1

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