これが初恋だなんて気づかなかった

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表題作白のころ

太一,中学生→大学生
藤本,中学生→大学生,転校生

同時収録作品春は半歩先/春が来ちゃった ~幸男のきもち~(描き下ろし)

朝見幸男(サラリーマン、社長の甥)攻め受けなし
森口(サラリーマン)攻め受けなし

同時収録作品オフィーリア/その後のふたり ~葉山のきもち~(描き下ろし)

木下由良(高校生、美術部)攻め受けなし
葉山(大学生、美術部のOB)攻め受けなし

同時収録作品クリスマスブルー/お正月ピンク ~むっちゃんのきもち~(描き下ろし)

橘あおい(大学生)攻め受けなし
岩尾睦彦(サラリーマン)攻め受けなし

同時収録作品まほうのおくすり

日野(サラリーマン)攻め受けなし
羽田頼正 攻め受けなし

その他の収録作品

  • 青のころ ~藤のきもち~(表題作の描き下ろし)
  • あとがき

あらすじ

片田舎で暮らす太一の中学に、都会から転校生・藤がやって来た。
背が高くクールな藤とチビで元気者の太一、見た目も性格も真逆なふたりだったが、バスケをきっかけに意気投合。
格好いい友達が出来たことに、ひとり浮かれる太一だったが、藤から突然キスをされて―?

(出版社より)

作品情報

作品名
白のころ
著者
三田織 
媒体
漫画(コミック)
出版社
東京漫画社
レーベル
MARBLE COMICS
発売日
ISBN
9784864420563
4.2

(65)

(33)

萌々

(21)

(7)

中立

(2)

趣味じゃない

(2)

レビュー数
15
得点
272
評価数
65
平均
4.2 / 5
神率
50.8%

レビュー投稿数15

切なくて優しい三田織ワールド

三田織先生のデビューコミックス。短編集です。
デビュー作の「まほうのおくすり」以外は、描きおろし後日談ありです。
特に好きな2作を。

表題作「白のころ」はザ・三田織ワールドといった作品。
都会からの転校生・藤。なかなか馴染めなかった藤の心をピュアな太一が解いてゆく。
太一への想いを自覚する藤。恋を知らず藤との関係性に戸惑う太一。そして藤は再び都会へ。
初恋のほろ苦い思い出で終わるかと思いきや、描きおろし「青のころ」でその後大学生になったふたりが・・・想像と受け攻め逆だったw
チビだった太一がでっかいワンコになってて可愛いかったです。

「クリスマスブルー」この作品がいちばん泣けた。
大学生あおいのバイト先の定食屋のお客さん睦彦さん。
あおいへ密かに想いを寄せる睦彦さんは、彼女へのクリスマスプレゼント代を工面しようとしているあおいに時給4000円の「お話相手」のバイトを提案する。話の展開としては正直言って突飛だなーと感じたんだけども、睦彦さんが「そうでもしないとホモの自分の相手なんかしてくれるわけない」と気持ちを吐露するシーンは思わず泣いちゃいました。睦彦さん健気すぎる(泣)
結局あおいは睦彦さんからもらったお金は使わず、彼女へプレゼントも渡さず別れることに。
お正月はなぜか睦彦さんちで過ごすあおい。睦彦さんへの想いが育ち始める…。

三田先生の描くちょっと切なくて優しい世界観にあふれた作品集でした。

0

優しさの詰め合わせ

作家買いしてる三田織先生の短編集でした。
5つのお話と、4つにはその後の描き下ろしつき。
最後のお話は三田先生のデビュー作だそうで、描き下ろし無しでした。

どのお話も優しさに満ちていて、読後はほっこりとした温かい気持ちになれます。
短編だけでは物足りない部分を描き下ろしで補足してもらえる、安心感。そんなところまで優しい。

どれかにフォーカスするとすれば、最後の『まほうのおくすり』でしょうか。
高校時代の辛い思い出から、出会い、幸せな現在の2人の生活。
"まほうのおくすり"はもう必要ないんだよっていうお話なのですが、くすりの中身をああいう風にすることで母親の気遣いや愛情も感じられて、ちょっと辛い設定ですがそれを昇華できる展開になってるのが素晴らしいと思いました。
こんなに短いお話で色々考えさせられて、読後感の良い作品はなかなか無いのでは。

こういう作品をもっと読みたいなぁ、って思える一冊です。

1

愛おしさの連続

◆白のころ(表題作)
 初っ端から可愛い中学生達だなぁと、萌えと胸キュンが止まらない2人でした。背が小さくて丸っこく、目も純真でくりくりな太一が可愛いのはもちろん、思春期に都会から田舎に転校になりもっと不貞腐れていてもおかしくなさそうな藤本が、バスケや雪ではしゃげるところも年相応で可愛くて。藤本の告白によりぎこちない別れになってしまった2人は大学で再会し、恋人に。ここで体格差が逆転して、太一が攻めなのがまたたまらないんです。顔は可愛い系のままだし、おっとりした性格も変わらないけれど、幸せ過ぎて不安がる藤本を、穏やかでどっしり構えた言葉で安心させるところに、イイ男になったなぁと思いました。

◆オフィーリア
 好きな絵の作者だという先輩・由良を、真っ直ぐ追いかけ続けた葉山が素敵でした。何か気に障ることを言ってしまったかも、と思ったらすぐ戻ってきて話したり。本当に素直なんです。一緒に海に行って楽しそうにしている様子も、これは愛おしいと思わずにはいられないよなぁと。傷心だった由良が、新しい恋に踏み出せた嬉しそうな表情が印象的でした。

◆クリスマスブルー
 大学生に時給4000円を払って話し相手になってもらうサラリーマンの話。なかなかのトンデモ導入ですが、あおいとただ一緒に過ごしているだけで満たされている睦彦を見ていると、いくつになっても純粋な恋ってできるものなんだなぁと温かい気持ちになります。でも、今までの寂しさが募りに募って爆発した、彼の本音は切なくて。結局はなあなあで付き合っていた彼女と別れたあおい。彼はただ孤独な睦彦に絆されたわけではなく、今まで共に過ごした時間が彼の心に沁み込んでいたんだろうなぁと思います。

1

その一つ一つがいとおしい。

『白のころ/青のころ ~藤のきもち~』
中学生の太一の通う学校に都会から藤が転校してきます。
田舎っ子たちの間で都会の子として浮いている藤でしたが、
バスケをきっかけに2人は仲良くなり…。

坊主頭に太眉の純朴な太一とイケメンで
同年代の子たちに比べると大人びた藤。
恋の甘酸っぱさを先に知ったのは藤でした。

友情から恋に変わるとき、一足先に恋をしてしまった藤と
真っ白なままでまだ恋を知らない太一のすれ違いが切ない…

このまま終わってしまうの?と思ったら…
なあんだ、そういうことか。
思わず頬が緩んでしまいました。

描き下ろしは2人の再会と恋人同士になるまで、なってから。
小さくて、子ザルのようだった太一が大きくなっていてびっくりです。
これは完全に攻受交代です(笑)
でも、中身は相変わらずで、大きくなっても素直なまま。
幸せいっぱいな2人がすごくいいなぁ~


『春は半歩先/春が来ちゃった ~幸男のきもち~』
彼氏にフラれてしまった森口。
気持ちの整理がつけられず、元カレの花屋を覗きに通っていると、
現場を社長の甥っ子に目撃されて、花屋の〝女性〟店員に恋している
と勘違いされてしまい…。

社長の甥っ子・幸男が能天気でおせっかいで、
はじめのうちはそんな彼にイラっ☆としてしまいました。
だけど、ちがった、本気で良かれと思っているみたいで、いい奴でした。

酔った森口にゲイであることをカミングアウトされて、
「ゲイの苦しみがわかるのか」って言われて、
引くでもなく、逆ギレするでもなく、真顔で考え込んで
「わかんないや」と真摯に答える姿にイメージアップ!

描き下ろしでは
「俺のこと好きになってもいいよー」なんて言われて
赤面しちゃう森口と、ゲイじゃないくせに
そんな森口の反応にドキドキしちゃう幸男のやりとりにニヤリ。
もはやバカップルでは?と恋の予感を感じ終えます…。


『オフィーリア/その後のふたり ~葉山のきもち~』
一枚の絵が繋いだ2人。
学園祭の催しで由良はずっと憧れてきた絵画の作者に出会います。
過去に悲しい恋の思い出を抱える葉山だけれど、由良に救われて良かった…。

描き下ろしでは由良の憧れが恋に発展して…。
葉山の方ではとっくに恋になっていたんだね。
鈍くて、初々しくて、もじもじする由良が可愛かったです。
葉山先輩、頑張って!


『クリスマスブルー/お正月ピンク ~むっちゃんのきもち~』
彼女に高価なクリスマスプレゼントを買うために
掛け持ちバイトを探していたあおいに常連客の睦彦が声をかけてきます。
それは突然の〝愛の告白〟と、〝話し相手になる代わりに時給4000円払います〟
というものでした。
怪しみながらもお金が必要だったこともあり、引き受けてしまうあおい。

そこにある想いは誰よりも純粋なものなのに、
お金という不純な動機から繋がった睦彦とあおい。
はじめはただのお金目当てで、睦彦には無関心なあおいだったけれど、
一緒の時間を過ごすうちにあおいの中で何かが変わり始めて…。

「俺ホモだもん」なんてそんなこと言わないで。
お金でしかあおいを繋ぎ留めれないって思ってるの?
なんでそんな悲しいこと…
だけど、きっとこんな風に自虐的になるしかないような
たくさんの辛いことがあったのかな…と切なくなりました。
睦彦が健気で、一途すぎて泣きそうに泣きそうでした。

描き下ろしではそんな睦彦がほんの少し報われます…よかった~(´;ω;`)
本編でがんばった睦彦へのご褒美パート。
睦彦の健気さに心打たれ、やっと正面から向き合いはじめたあおい。
まだ恋にまではいかないけれど、これはきっと恋の予感♡
ばあちゃんが寝たふりしたり、フォロー入れようとしたり
しているのに笑いました。


『まほうのおくすり』
同性愛者の息子を病気といい薬を作り、
幸せになれないなんて呪いの言葉を吐き続けてきたお母さん。

だからこそ、今、好きな人に出会い、愛し合い、
幸せそうな2人があることにこの上なく幸せを感じた。

ある意味、このお母さんもちょっと病気なのかもしれない。
ありのままの自分を見ようとせず、受け容れるようで拒み続けてきた
母親を捨てるでもなく、受け容れようとする終わりは意外に後味は悪くない。

恋未満のお話から、恋が成就するお話、
恋に破れてまた新たな恋の予感が訪れるお話、
と色んな恋の形が詰め込まれた短編集でした。

決して派手ではないけれど、どれも心に突き刺さる
すごく素敵な話ばかりでした。
一つ一つのお話が読めば、いとおしさで胸がいっぱいになりました。
描き下ろしだけでは物足りなくて、もっともっと
その後の彼らのお話を読んでみたいなあと思ってしまいました。

1

これは運命の二人だよ、きっと

三田織さんの初コミックです。

良かった!なんか上手く言えないけど空気感とか距離感とかキャラとか時間の流れとかみんな良かったです。

表題作は田舎の中学に横浜から藤が転校してきて。都会からのイケメン長身バスケもできる転校生。
太一が裏庭のバスケットゴールを使わせてあげて仲良くなっていきます。

しかしこの時点ではまだ太一が子供過ぎて…藤の想いに応えられません。一緒にかまくら作って中学卒業と同時にお別れ。

そして3年後大学受験会場で太一が腹痛を起こして座りこんでる所に知らずに助けに声をかける藤。
びっくりする二人。
そして太一が藤が初恋だったよと告げて。

そして現在、同じ大学に通ってお付き合いもしてて。藤にとっては太一は忘れられない人で、出会ったのも再会できたのも付き合えたのもみんな奇跡の連続で、一生の運を使い果たしたのではないかと。

そしたら太一が運命だよって。

あー太一だなあ。ちょっと大人になって藤を受け止められて。
本当に良かったなあ。あの頃には出来なかった事が分からなかった言えなかった恥ずかしかった事が皆出来るよ。

0

うーやっぱり天然ってかわいいなあ・・・。

三田先生の別作品「僕らの食卓」が神りすぎていたので
過去作購入しました。

絵の素朴さは変わらず、作品集としては色々なものが読めましたので満足です。

一番好きなのは「オフィーリア」です。
恋人を亡くした大学生×天然後輩
この天然具合がすごくいいとこつくんですよね。

「先輩より長生きするから!」とかキュンとします。
本人には特別な好意がないけれど、相手をキュンとさせるのって
こういうところなんだよ・・・とグッときます。

その後のデートの短編もよかった。
にぶいっていうか、先輩もちゃんと言えよ!!雰囲気でこの天然が気づくか!!
とこっちがヤキモキするのをこのページ数で感じさせるとは・・・
大好きです。

あー早く新しい作品でないかなー。次の作品が楽しみです。

0

愛おしいキャラばかり

三田さんの作品に登場するキャラが好きです。
声高に主張せず穏やかで人当たりが良くて、それゆえ時々傷つくようなことがあってもどこかグッと我慢しちゃうような読んでてつい愛おしくなってしまうキャラたち。
そういうキャラが出てくると、どうかこのキャラがこれから先、辛い目に会いませんように…とか、さらなる幸せがいっぱい降り注ぎますように…とか読みながらついつい願ってしまうことが多いのだけど、この一冊の中にもそういうキャラがたくさんいます。

【白のころ】【青のころ・描き下ろし】
これが一番好き。
都会からやってきた転校生の藤と太一は仲良くなるのだけど、藤からキスをされてしまい…。
藤は恋を自覚しているけれど、恋を知らない太一はクラスメイトに揶揄われたこともあって俺はホモじゃない…と動揺してしまいます。
そんな矢先、藤が再び横浜に戻ることが決まり、これで全部元どおりじゃ!モヤモヤともおさらばできる!と思った太一は、藤に「ふるさとに戻れるんじゃ!ほんまに良かったー!うれしいじゃろ?わしもうれしいっ!」と笑顔で言っちゃう。ぎゃー残酷。
藤がキスしてきた意味もわからないような太一、そしてこんなことを面と向かって言えてしまうくらい太一は子供だった訳で…。
再会してからのお話はとても嬉しい。藤が幸せすぎて不安に感じるほど太一のことが好きなんだというところが、なんだか過去の思い出と相まって切なくなるのだけど、「運命じゃ」と言い切る太一が身長だけではなくちゃんと心も成長したんだなと思わせてくれて好きです。

その次に好きなのが【クリスマスブルー】
彼女からのクリスマスプレゼントのリクエストは5万円のブランド財布。それを買うためにバイトを掛け持ちしようかと思っていたところ、それを聞きつけたバイト先の常連から時給四千円で話し相手になってほしい、好きです…と告られて…。
この告ってきたリーマン・むっちゃんは普段はきっと物静かで控えめ(どころか引っ込み思案だと思う)な人だと思うんだけど、ただただ一緒にいたい…!という気持ちが募った末の申し出でして、恋は人を大胆にするんだなと。
あおいは友人からぜったい掘られるぞ!なんて警告を受けていたんだけど、そんな雰囲気はさらさらなく二人でのんびりこたつにあたっておしゃべりしたり、テレビを観たりしてまったり過ごすだけ。

むっちゃんが純でめちゃくちゃいい人なんで、このむっちゃんのことを絶対に傷つけないで〜!あおい頼んだぞー、お前がしっかり幸せにしてやれよー!といつも思ってしまう。

【春は半歩先】【春がきちゃった】
花屋勤務の恋人に振られてしまったゲイの森口。彼の事が諦め切れなくて、変装して花屋で働く元恋人の様子をこっそり伺っていたところ、同じ会社で働く社長の甥っ子にその現場を目撃されてしまいます。
おまけに花屋の女店長狙いだと勘違いされてしまい…。森口さんの恋を応援する!とおせっかいを焼かれるのに辟易していた森口が、俺がつきあってたのは、ずっと見てたのは男の方だ!バァーカ!と泣くところが切なくなります。

【オフィーリア】【その後のふたり ~葉山のきもち~】
高校の美術室にある絵に一目惚れして美術部に入った由良。その絵を描いた葉山先輩と出会って…。
絵のモデルは高校時代の葉山の恋人(男)でこの絵を描いた直後にそのモデルは事故で死んでしまい…という過去持ちの葉山。

由良が超ワンコ気質で可愛いんです。
悲しい過去を抱える葉山のことをこのままほおっておけない、なんとかしたいと思った末に、辛いことがあったらためこまないで俺に言ってね、「先輩より若いし、長生きするし、だから安心して大丈夫!」とか何そのセリフ、かわいいー。長生きするし…とか癒される。
「恋ってどういうものですか?先輩とこうして二人でいると楽しくてドキドキしてこれって恋なのかなぁ。こんなの初めてでよくわかんなくって…っ」って葉山に聞いちゃうところもかわいいんです。
そして超無自覚&超ニブチンなんだけど、自覚したら無敵のワンコになって葉山のことを愛情でくるんでくれること間違いなし。

【まほうのおくすり】
同性愛を治すお手製の薬をせっせと作り続けている母親。同性愛が治る薬があったら死ぬほど欲しいと願っていた時もあったけど、今、恋人と幸せに暮らしているからそんなものがあったとしても必要ないと思える二人。
同性愛を病気だと決めてつけている母親という何とも胸がざらつくようなキャラが登場するけれど、後味は悪くないです。お母さんはお母さんなりに幸せを願っているんだと思えるからかな。

萌萌よりの神です。
三田さんの作品読みたい病真っ最中で久しぶりに読み返しましたけど、やっぱり好きだー。
コミックス未収録の短編をまとめたやつでいいので、来年はコミックスなにか出てほしいです。

4

優しいお話。…ですが

とても優しいタッチの表紙に惹かれ、ジャケ買い。
内容も、絵柄を表すようにとても柔らかで優しいお話でした。
…しかし、問題なのはカップリングです。(一番重要)
私は表紙のイメージから藤本×太一だと思い手に取りましたし、それを想像しながら読み進め、とてもほっこりしていました。
表題作の「白のころ」だけではどちらとも取れる内容なので、勘違いは勘違いのままで良かったと思うのですが、問題は書き下ろしの「青のころ」です。
一気に想像していたカップリングが崩れましたし、柔らかで優しい世界観も音を立てて壊れていくようでした…正直に言って蛇足です。
こちらが勝手に勘違いしたまでですが、作者様とカップリングの趣向が合わなかったのだと思います。
絵柄が好きなだけにとても残念でした。

2

手元に置いておきたい短編集

良作です。短編集なんですが、方言やリーマンやちゃらい大学生や純真な高校生や同棲カップルといろんなカップルが見られます。ほのぼのしつつ繊細で、ちょっとシリアスもある作風は共通していますが、いがいと傾向ばらばらなので飽きずに読めるかと。
読むとじんわり心にしみる話が多いので、手元に置いておいてたまに読み返したいです。

絵柄は羽海野チカみたいなかんじ。きれいめの男の子のまつげがひたすら美しい……。目も澄んでる。こういう絵好きです。エロはないけど甘い雰囲気にきゅんときます。

3

やわらかく、ほのかな棘と繊細な世界

表紙の印象から想像していた内容と、実際の中身とは良い意味でずいぶん違っていました。好みのド真ん中を撃ち抜かれたのです。

ふわっとした印象のあるイラストですが、漫画ではむしろコツコツしてかつ、くっきりとした絵です。ざくざくがりがり、それでいて丁寧な線で描かれた横顔や目元もすてきです。
短編集ですが、ここで終わり?なんて物足りなさはあまりなく(欲を言えばそりゃあもうもっと彼らの話を読みたいです!)まとまっていると思います。

【白のころ・青のころ】
この太一の性格ですよね。
無垢で無邪気で純粋でまっさらでそして真っ直ぐで自然のままの厭らしくないこの性格!
なかなか転校してきたばかりの子を遊びに誘えません、太一の社交性が藤の心を溶かしたんだと、だからこそ藤は心許したんだと、よく分かります。
藤もまだまだ子供で(田舎に越してきた心境を語る口調なども、子供です)スレてしまってもおかしくなかったろうに、太一に救われていたのでしょうね。そして思い余っても、太一は困り果てながら藤の笑顔の方を取っちゃうような良い子でした。
いやぁでも…優しすぎるのも罪ですけれども!
なんというかこの優しすぎる太一の気持ちも、そしてそれと分かりながらつい甘えたままの藤の気持ちも、でもそれぞれが叶えたい想いや感情があるということも、離れたくはないけれど諦めなきゃならない現実も、上辺も本音も、理解できたり太一同様感情が付いてこなかったり…とにかく苦しかったです。ほんの数ページなのに、白い雪・最後の旅行・田舎町、そんなことがすべて絡んでいるからかもしれません。
ああもうだからこれが過去のお話でほんとうに、ほんとうに良かった…!!
太一ではないけれど、今生の別れかと思いました!

そこからの青のころ、がまた良いんです。
えっちがしたい、なんてこれもストレート(しかし変な方向へ純粋さが育ってしまっている…!笑 うでまくらしたげればええもんね…かわいい!)な誘い文句でかわいいというかカッコいいというか、太一らしい!
感想を話しだすと藤と太一それぞれに対してもうたまらなく萌え転がって仕様がなくなりますので控えめに…と思いつつもひとつ! ひとつだけ!
運命って太一! チューも太一! 藤の心臓がもたないよ~っ でもこれからもぜひそのままでーー!

【春は半歩先・幸男の気持ち】
陰気と陽気は相反するものだけれども、少しずつ混ざり合うことはできる…と思うのです。恋愛叶えようぜ!な幸男のことを、森口はたしかに面倒だったかもしれませんが、きっかけひとつで暗いだけの気持ちが上向いて登りはじめますもの。
このご陽気全開!エブリディハッピー☆な幸男だから、ただ面倒くさいだけの人かと思いきや、傷心で泥酔した森口が盛大に感情を吐き出したとき、きちんと痛みを受け止めてくれていたことで印象が変わりました。「分かんないや…」と言ってくれること、簡単に「分かるよ~」なんて言わないところ、好きです。ていの良い嘘よりも、こういうときは本音が欲しいと思うのです。
鉢を一緒に育てるはずなのですが、幸男ってば森口の心にも自分の心にもニブちんなようで、前途多難ですな…がんばれ森口! まずは自覚させるところから!笑

【オフィーリア・その後】
と言えばかの絵画が浮かんだわけですが、そういう絵を残していたのでしょうか葉山先輩…。すこし、つらいな。
由良との出会いが彼にとって癒しになるのですよね。
亡き彼女が導いてくれた巡り合わせ、なんて言ってしまうと彼女をダシにしたようで悪い気がしてしまうのですが、葉山先輩のことを彼女も心配しているでしょうし、葉山先輩の世界観を好いて慕ってくれる由良ならば大丈夫だと思います。
あの頃の思い出をひとつひとつ昇華するように、絵筆を運んでいたのでしょうか。
粘土こねてる由良もかわいいのですが、先輩に詰め寄られてドギマギしている由良もまた可愛らしいですね。おもちシリーズ、付けてくれているじゃないかっ!

【クリスマスブルー・お正月】
むっちゃんてばハイパー突飛な行動ですが(下手すればタカられますし付け込まれますしヒドいことも考えられるのに!)結果オーライで良かったね、となんだか親心ならぬむっちゃんのおばあちゃん視点で読み進めてしまいました。
お話自体の視点はあおいくんなのですが、なんとなくこのむっちゃんのホワッとした雰囲気を感じ取るからか、どうしてもおばあちゃん目線に…笑
あおいくんがまた、少しキツめな見た目とは裏腹に良い子というか、偏見とか嫌な感情とかを持たないところも好きです。ややおっとりしたむっちゃんと、まっとうな恋愛してほしいなぁ。

【まほうのおくすり】
やわらかいタッチで、でも残酷な思い出が描かれていました。身体的にではなく、精神的に。
でも“おくすり”のなかにクローバーの種を入れてくれていたということは、なによりもよりちゃんの幸せを願っているからだと信じたいです。
人によって幸せのかたちは違うし、万人が同じ方向には進まないし、だから理解できたりできなかったり…たったひとりでも、理解してくれたときに救われると思うのです。それが、よりちゃんにとっては日野くんだったんですよね。
母の好意だけれども、治さなくったっていいもの。大切な幸せを大切にしていいんだよよりちゃん。
三田先生の繊細な世界観の根幹が表れている作品でした。

既に次の作品たちが楽しみになるほどです。評価は迷いに迷いました、萌えるところ、たくさんありました…。
延々と三田先生の作品を色々拝読していたいです。とにかくとてもとても、好きな作風!

4

それは運命

雑誌に掲載された短編と、書き下ろしでその後日談をセットにした短編集。

この気持ちは、恋なのか?
って、ようやく気付いていく、その心の動きを丁寧に紡いだようなお話ばかりなので、
雑誌掲載時には、恋愛の成就って所まではたどり着かず、よって、当然のようにエチいシーンなんて皆無。
せいぜい、子供っぽい触れるだけのキスが精一杯。
書き下ろしの方では、そこから多少は関係が進んでいますが、
表題作「白のころ」に対する「青のころ」で、再会した二人が恋人同士になっているくらいで、他のお話は、せいぜい「もうちょっと恋心を自覚する」レベル。
どのお話のカップルも、受け攻めすらあまり定かではない。

でも、この「恋を自覚していく」過程こそが好きな私としては、じつに楽しかった。
手書き、手塗りのこの絵のタッチも、昔好きだった乙女チックな少女マンガに通じる物があって、懐かしくてよかった。

かなり「神」に近い「萌×2」です。

4

丁寧で優しい物語集。

5編の短編集。
それぞれにじんわりと、思うところがあって
良いコミックでした。
なんか、三田さんの人柄が表れてんだろうなー、みたいな。
あとがきの字がね、とても丁寧な字で。
力が入ってなさそうだけどもきれいな字なのですよ。
性格が表れてそうだなぁと思ったのです。

で、内容ですが。
表題作の『白のころ』と続編の『青のころ』が
個人的には一番好きかなぁ。
切なさでは同本の中で断トツな気がしました。
BL王道の『男同士だからと悶々と悩む』まで
いかないほど幼いころの恋って感じだったから、
今までに読んできたBLとはなんだか違う切なさだった。
自分の気持ちすら分からない幼さと
相手を傷つけたくないという思い。
そこが詰まった雪の中でのシーンは切なかったよ。。。
太一の心情が胸に迫ってきて。
「今は これ以上 返せんでごめん」
この心の中でのセリフがとても印象深い。

物語の終盤、別れのシーンの後、
急に現在になってて一瞬「?」ってなったけど、
1P目のモノローグ考えたら納得。
「電車に乗ると…」っていう回想の終着点なのね。
ちょっと分かりにくいけど。
『青のころ』では、太一が逃げずに
「初恋じゃった」と伝えるシーンが最大キュンだった。


他作品もそれぞれにじんわり胸に来るポイントがありました。
ゲイだともう自覚していたり、
同性を好きになることに疑問や嫌悪感を
あまり抱いていなかったりするから、
他作品は切なさ度合いは低めかな。

全体的にはBL的萌えではなく、
「かわいいな」「いいな」と思う感じ。
少女マンガに比較的近い印象が強いかもしれない。
優しいストーリーをお好みの方にはおススメ。

ストーリーには全く関係ないけど、
誤植が一点気になって仕方ない(笑)。
今は直ってんのかも。

2

みんな、それぞれに何を望む?

 三田織先生の初作品集とあったので、どんな先生、どんな作品なのかなと楽しみにしながら読みました。

 『白のころ』『青のころ』

都会からの転校生、藤を太一が出会って両思いになるまでの話です。同性を好きになって、悩んだりもするのですが、話はいたって王道です。その上、台詞も設定もBLというより、ノーマルな恋愛という感じが終始漂っていて、萌えられませんでした。

 『春は半歩先』『春が来ちゃった』
 
 森口は花屋の彼氏が忘れられず、元彼氏が働いている花屋をそっと覗いてしまう日々を送っています。その場面を、会社の同僚でお茶目で目立ちたがり屋の幸男に見つかってしまい、幸男は森口がゲイであることを知ってしまいます。こちらもBLというよりは、一般コミックのほのぼのする話といった感じです。

 『オフィーリア』

 葉山の描いた絵に一目惚れして、美術部に入った由良。その絵に描いてあるのは葉山の好きな人だと知っても、あきらめるどころかますます好きになっていく。甘いお話ですが、萌えられませんでした。

 『クリスマスブルー』『お正月ピンク』

 学生のあおいがバイトしている先に突然現れた男、岩尾。話し相手になるというバイトを持ちかけます。岩尾はあおいが前々から好きなのに、お金でしかつながることができないというところに寂しさを感じました。
 
 『まほうのおくすり』

 中学生の時に、男の担任に告白して振られたという頼正。そのことは母の知るところとなり、母はハーブなどで頼正の「病気」を治す薬を作り始めます。数年後、別々に暮らす母と頼正。お茶に煮出すパックを煎じ薬として頼正に送るのですが、その薬のパックを頼正が開けて、種をまいてみると、温かい植物が育ちます。

 全体的に、BLというよりもほのぼのしたコミックといった印象です。

3

いいBLを読んだな~という気持ちになれました!

よかった!とーってもよかったです!!
表題作『白のころ』を以前cabVol.18で読んだことがあり、それがとてもいいお話で
気になっていた先生だったのですが、単行本が出ていたなんてまったく知らず、
本屋さんで見つけて即ゲット!しました。

表題作以外に4編収録された作品集なのですが、描き下ろしも多いですしどれもハズレ
なしで買ってよかった~♪と大満足な1冊なのでした!
作家買いする先生がまた増えて嬉しい限りです。
どの作品も『相手を想う気持ち』がきちんと丁寧に大切に描かれていて、絵も可愛らしくて読みやすいですし、読み終わった後になんだか嬉しい…なんだかじわじわくる胸キュンが
たまらんです。恋っていいなぁ…!(笑)

どの作品も素敵なのですが、特にお気に入りな作品の感想を書かせていただくと…
表題作『白のころ』
これはまさに少年の初恋が描かれていて、ちょっぴり切ない、でも幸せ!な
可愛いお話なのです~!
都会からのイケメン転校生・藤本と、片田舎で暮らす眉毛が濃くておさるさん(でも可愛い)な太一。
気が合って2人で一緒にいるのが楽しくて、藤本は太一への想いを自覚して、太一へキスをします。
そんな突然のキスに戸惑いながらも太一は藤本へ好意を自覚できないまま、
周りに「ホモ」とからかわれて逃げてしまって…。
一旦別れが見えた2人ですが、きちんと幸せが待っていてくれておもわず応援したくなる
ほどとっても可愛いカップルなのでした♪攻めと受けが逆でも萌えたかな~なんて!

『オフィーリア』
美術部の由良が美術部に入部するきっかけになった一目惚れした絵を描いた先輩・葉山と
出会い、その絵が実は先輩の亡くなった恋人の絵だった…というお話で、
この由良が!可愛いのですよ!純粋で素直で鈍感でまっすぐで…!
憧れの先輩の絵に対しての情熱は熱く、そして次第に先輩自身に対しても意識をするようになって…
それを当の本人に「恋ってどんなものですか?」と聞いちゃう由良が
可愛いのです。由良が制作したおもちシリーズも可愛いです。わたしも欲しい!(笑)
先輩がもらったおもちストラップをなにげに鞄につけてるというところにまた萌え!

『クリスマスブルー』
このお話が一番のお気に入りだったりします…!
クリスマスプレゼントに彼女が5万円する財布を欲しがり、そのためにバイト先の常連で
自分を好きだという会社員の男の話し相手をするバイトをかけもちですることになった
「あおい」。それが時給4000円で、おばあちゃんと2人で暮らすその男・岩尾の家で
週に何度か年賀状用の切り紙をしたり、テレビを観たりケーキを食べたり…。
自分に手を出してくるようなこともしないし、ただただコタツでまったりしてお金だけ
払う岩尾にあおいは疑問を抱きますが、岩尾は「あおい君と一緒にいたいだけなんだ」と
顔を赤くして答えます。その後の2人は…
岩尾が純粋で、あおいしか見えてないまっすぐ具合が可愛いです!
きっとものすごくお人よしで優しい人なんだろうな~と勝手な妄想です。でも意外と
行動力があるのです!恋ってすごいなー!
これからもなんだかんだずっと一緒にいて、少しずつ発展していくのかな~という
2人でした。ちょいちょい出てくるおばあちゃんが可愛いです。

読み終わった後に心がほっこり、なんだかいいBLを読んだな~という気分に浸れる作品
でした!今後も三田先生の作品に期待です~♪

5

人を好きになるということ

表題はじめ4本の作品にそれぞれその後日談が相手の視点で付けられており、本編では恋愛未満で終わっていたそれぞれにその後を見ることができます。
表題に限らず、この1冊を通して、
人を好きになるって素敵な事だな~と、改めて思わせてくれるような何かが含まれているような気がして、とてもキュンキュンさせられて、、、というのではないのですが、心がほっこりとあったかくなるよな、そんな柔らかさが、手描きのラフな線で描かれる絵が訴えてくるのです。

表題は特に、少年期の心というものがピュアに描写されていて、始まりから心を掴まれます。
中学3年の二学期に家の都合で都会から越してきた藤本。
見た目もイケメンなのに、笑わない愛想のない表情に、皆距離を測りあぐねて遠巻きで見守るしかない。
背が小さい太一もまた彼を見ているだけだったのだが、藤本がバスケをやりたいと先生に訴えているのを聞いて、家にバスケのゴールがあるからと彼を誘う。
それがきっかけで仲良くなる二人。
都会と田舎の対比なのか、まだ恋をしたことのない太一と、それを恋と自覚する藤本の気持ちの差が、
二人が仲良くしていることからクラスでたったホモの噂に傷つく太一の姿があったりして、
そんな場面が思春期らしくて、キュンとさせるものがある。
藤本が高校は地元に戻ってしまうと聞いてほっとしてしまう太一の心もとても理解できるものだ。
こうして友達として彼等が迎える別れ。
切ない初恋物語で終わっていた本編に驚愕の続きが!!
ここでは、チビだった太一がでっかくなって登場しています♪
愛からわず田舎言葉丸出しで(微笑ましい♪)そしてワンコでv
彼等の再会がキセキだという藤本に、これは運命じゃし、、と言い切る太一の成長したことよ!
太一のショタキャラも、大学生になったキャクターも素朴で、とても魅力的なのです!

『春は半歩先』
花屋で働く恋人に仕事に専念したいからと振られた冴えないサラリーマン森口。
海外出張から帰国した社長の甥で、調子者の朝見に、花屋の女の子が好きだと誤解されて、俺が取り持ってやるからと色々とちょっかいを出してくるのがいちいち神経を逆なでする。
本当は元カレに嘘をついてふられていたと知ったとき、彼は酔っ払って朝見に本音をぶちまける。
まだきちんと恋愛をしたことのなかった朝見が、森口を見直す話。
そして後日談は・・・あいも変わらずな(笑)

『オフィーリア』
卒業生の書いた絵に一目惚れして美術部に入った由良は、学園祭でその先輩・葉山に出会う。
その時から葉山を慕って彼のもとを訪れる由良は、彼の絵に描かれている人がきになって誰だか聞くのですが、それは亡くなった恋人だったのだという。
無邪気で天然な由良に葉山が救われるお話で、その後日談は・・・(笑)

『クリスマスブルー』
彼女にクリスマスプレゼントにブランドものの財布をおねだりされてバイトをなんとかしないとと焦る大学生。
そんな彼に「時給4千円で話相手になってください、君の事が好きなんだ」というバイト先定食屋の常連の会社員が声をかけてくる。
金の為にそれを受ける大学生だが、毎日ただテレビを見たり、何かを手伝ったりと、普通に過ごすだけ。
ただ一緒にいたいだけという彼の気持ちに、、これで本当にいいのかな?と疑問を抱く大学生。
本編は、会社員に謝礼を返すシーンで終わっています。
そして続きは・・・何故か正月を一緒に過ごしている二人(笑)

『まほうのおくすり』
作者さんのデビュー作品だそうです。
同性愛なのは病気なんだと、自ら野草やハーブを調合してそれを直す薬を作る母親を持つ主人公。
大人になった彼には、同性の恋人がいます。
今彼は幸せなのに、母親は幸せになれないと思っている。
その母親が調合した薬には何かの種が・・・
いつか、母親にも幸せなんだということがわかってもらえるといいな~と想いを馳せるマイノリティのお話でした。
これには、その後がありません。
でも、彼等は幸せなのですから。。。

「恋」という心に真摯に向き合ったお話たちだったと思います。
切なさも悲しさもすべてひっくるめて、素敵だな~とおもえる彼等です。

9

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