3人の深く切ない愛の物語。

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表題作あいのはなし

死んだ父に似た息子 桐嶋椢 9歳→19歳
愛する男を失くした 岸本波瑠 21歳→31歳

あらすじ

愛する男を失くした岸本波瑠は、彼の9歳の息子・桐島椢とあてのない旅に出た。奇妙なことに、椢は自分の中に父親がいると言い、そして時おり本物の彼のように振る舞った。不思議で幸せな三人での生活。だが、幼い椢と他人の波瑠が長く一緒にいられるはずもなく、逃避行は悲劇的な結末を迎えた。――それから10年、あの日姿を消した波瑠を、椢はずっと捜し続け…。時をかけ、三人の想いが絡み合う不思議な愛の物語。

作品情報

作品名
あいのはなし
著者
凪良ゆう 
イラスト
小椋ムク 
媒体
小説
出版社
心交社
レーベル
ショコラ文庫
発売日
ISBN
9784778115234
3.9

(169)

(76)

萌々

(48)

(21)

中立

(12)

趣味じゃない

(12)

レビュー数
24
得点
647
評価数
169
平均
3.9 / 5
神率
45%

レビュー投稿数24

疑問 罪は多数決で決めるものでしょうか?

凪良先生の、「死んでも死んでいない」物語の一つ。
あいを平仮名書きしたのは、あい=愛=哀、とかけたからかな?
この作品は、死んだ恋人が、彼のの息子の中に意思(魂)が宿るバージョン。

岸本波瑠と、恋人・裕也の9歳の息子・桐島椢の物語。
裕也は、美貌で寂しがり屋の年下の恋人と、9才の幼い息子を遺して、海で急死する。
葬式の日から、恋人の息子の言動が変わる、死んだ父親そっくり。

9才の子供の「出よう」の言葉に従い、波瑠は子連れの逃避行に出る
・・子供の要望に従ったとはいえ、他から見たらそれは「誘拐」。
当然、訪れる旅の終りは、とても悲惨で最悪な状況。
悪意が無くても、それを犯罪と指摘されたら、波瑠に逃げ道はない。
波瑠を罪人にすると気づかない、幼い子供の無邪気が起こした悲劇。

そして法の裁きによる別離の後、椢は波瑠を探す。
・・・だけど椢は未成年。
誘拐犯にされて、接触禁止条項を設定されて居たら、また波瑠は追い込まれる。

★恋人が死んで、彼の息子の中に魂が宿る・・でもそれは有り得ない。
波瑠を想う子供の悪意ない嘘で、演技だったと、10年後に椢は懺悔する。
波瑠も寂しさを抱える人だから、子供の演技に縋ってしまった。

・・でも最後の最後で、椢に居憑いた裕也の魂が別れを告げる場面がある。
  裕也の字で綴られた「あい してる」を瓶に詰めて海に流す波瑠。

★笑いながら泣かせる文で誤魔化す達人の「煙幕構成」にはぐらかされるけど、
扱うテーマは重い。
凪良先生は、悪意のない行動を「罪」と断定される「冤罪」を扱う小説をいくつか書いてます。
本人が語る事実より、シナリオにはめ込まれて誘導捜査をされたら、逃げられない不条理。

凪良先生の「冤罪」ものは、抗う力も知恵も無いキャラが主役。
何とかならないのか、と、読後のストレスが物凄い。モヤモヤする。

この物語、いつかもう一度編集加筆して、再刊してほしい。

0

現代社会のテーマに陳腐なファンタジーが合ってない気がします。

凪良ゆうさん、一般小説でも有名になっている方なので、文章はまとまっていて読みやすいのですが、話自体まとまりすぎていて起伏がない…伏線もない…ドキドキするシーンがない…という印象です。

話のテーマが誘拐だったのか?愛する人の死を乗り越えることなのか?振り切れてないような中途半端さを感じます。
設定や人物を散りばめるのみで、受けや攻めの心理描写、彼らを見守る人たちの心理描写が足りていないために読者の気持ちが入っていかないように思えます。

後半にエロが1シーンだけありますが、この話の薄さの割にベッドシーンを詳しく描写するのはバランスが悪いんじゃないかなあと思ってしまいました。

また、誘拐事件の犯人となった受けが実刑四年というのもどうかな?と。子供と犯人に元々関係があったこと、子供に危害を加えられていないこと、期間の短さなどから執行猶予がつくんじゃないのかなー?と思ったんですが、いかがでしょう。

さらに、誘拐事件の過去を背負う2人を描いた話…という社会派的な要素にラストの荒っぽいお粗末な超現象が妙に浮いていて全く感動できず…。

「まばたきを〜」も設定が好きで読みましたが、そちらも現代物に妙なファンタジーが入るのが納得できずあまり感動できませんでした。

散々長ったらしくレビューしてきましたが、凪良ゆうさんとは相性が悪いのかもしれないです。確かめるべく、他の作品も読んでみます。

3

泣けました。

ラストで号泣…。
ファンタジー割合のさじ加減が絶妙でした。

波瑠は学生時代から裕也だけがずーっと好きで。裕也との関係は恋人ではなかったけれど、だからこそ別れる事もなく一番近くで過ごせて。

裕也と椢の波瑠に対する親子関係に萌ました。「二人で波瑠ちゃんを守る!」って親子共闘が萌です。

ラストで椢と伯父さん夫婦がどんな話し合いをしたのか気になります。
それも含めて続きがよみたいですね。
椢が俳優として人気が出れば過去の事件が取り上げられるだろうし、その時に波瑠との事をどう説明するのか、読みたいです!!

6

あまりにも無責任なのでは、、、

凪良さんは大好きな作家さんですが、このお話には大変がっかりさせられました。

話自体は大変読ませるものなのですが、話の肝となる重要な場面で海洋不法投棄を行うのはいかがなものでしょうか。

純粋な、やむに止まれぬ感情に突き起こされてしてしまった行動が、理不尽にも世間からは犯罪という烙印を押されてしまった可哀相な二人という設定が、この行動によって覆されてしまいました。
この後は、周りの迷惑を顧みず自己の感情のみを優先する無責任な人達としか思えなくなり、過去の事件への見方も変わりました。

思い出にさようなら、で何かを海に投げ込むのは印象的な、絵になる場面ではありますが、それなら有機物にして頂きたかったです。
貝殻でいいのに、会話にも出ていたのに、、、まさかの海洋不法投棄、、、


プラスチックごみの大量投棄でプランクトンの体内からも微量なプラスチック成分が見つかるという今の時代に、ごみがもう一つ増えても大差ないという考え方もあるかとは思います。
しかしながら、有機分解できない物を海に捨てる行為は、主人公たちの繊細な感情や愛情を表すのにふさわしい行動なのでしょうか。

細やかな心理描写を得意とされる方だけに、とても残念に思いました。

ちなみに波にさらわれて死亡する状況は他の作品にもありましたので、また同じ死に方なのかと思ったことも付け加えておきます。

2

境界がぼける。

夏の海を核にした愛の物語……なのに、はじけるような明るさと太陽の匂いではなく、夕暮れより後の暗くなりかけた浜辺の少し滞った磯の匂いと、テトラポットの太陽の当たらない面の気配に満ちた作品でした。

ファンタジーかもしれない、でも現実かもしれない……という少しあやふやなところを残した空気感に、描かれている事実(ストーリー上の、ですけどね)の厳しさ、切なさ、痛さもぼんやりと曖昧になってきます。

作者様後書きで、「波瑠と椢のラブをもっと!と助言されつつもこうなってしまった」といったことが書かれていましたが、確かにこのジャンルの本として、その方が収まりがよいのかもしれません。でもこういうある意味危ういバランスこそが、この作品の独特の魅力ですね。

凪良さんの作品は、いつも何か断定しないままの部分が残るところが余韻を残しているのだと思います。
夜に、自分の世界に浸って読みたい一冊です。

2

3人じゃなくて、2人の愛の物語

電子書籍版を購入。
丸ごと1つの話です。

3人の深く切ない愛の物語ってことですが、3人というより2人じゃないんでしょうかね?

ええ、わかってます。
裕也を、はずしちゃったらダメなんでしょうね。
3人の愛の物語ですとも。

今回、「神」にするか、「萌×2」にするか、悩みました。

ものすごく感動したし、泣きました。

でも、でも……裕也の扱いが……
私の好み的には、2人の愛の物語がよかった。
裕也には、でしゃばってほしくなかった。
存在を主張するな、さっさと成仏しておけよ……的な。
最後のオチで、急に安っぽいドラマになってしまった気がしました。

あの最後のオチがなければ、文句なしの神だったのに……

あのオチがあるからこそ、涙を誘って、感動するというのが大多数なのでしょうが……。

といいつつも、結局、神評価をつけさせていただきます。

素敵な話、ありがとうございました。

6

繋がれる想い、託される想い

子供の頃に出会って居場所のない波瑠の避難場所のような存在だった裕也。
いつしか恋心が芽生えるけれど、裕也に恋人ができても結婚しても思い続けた末の喪失と悲劇と再生の物語です。

半ば裕也に依存していた波瑠にとって裕也を失うことは、半身をもぎ取られるほどの喪失感と生きる気力を奪うものだったのが良くわかります。
だから、裕也の息子 椢が父親を亡くした自分の悲しみよりも弱っていく波瑠が父のあと追うように消えてしまうんじゃないかと感じて幼いながらも一生懸命に波瑠を生かそうとしている姿が健気で泣けました。

子供の望みとはいえ保護者の許可もなく大人が子供を連れて行けばどうなるのかも考えなしに行動するとはどんな状況なのかと思っていましたが、読んでいてそんな行動に走った二人の関係や裕也の存在を読んでいくとそうせざるを得なかったことがよくわかります。

波瑠を椢の誘拐犯として訴えた叔父夫婦の心情は理解できるし波瑠の行動は非常識ですが、本当に椢のことを思ってもっと話を聞き心を分かってあげられる大人がいてくれなかったことは残念です。
満たされない想いと喪失感を抱えた二人が、この先再会することもなく別々の人生の中では満たされる道を見つけられないように思えたので、分かたれた二人の道がまた一つになったことは本当に良かったと思いました。

作者があとがきで『年の差トライアングルラブ』と語っていましたが、
プラトニックでも裕也を愛し続けた波瑠
口には出さなかったけれど波瑠を愛していた裕也
子供の頃から波瑠を大切に想い続けた椢
同時期に取り合ったりライバル関係にはならなかったのですがある意味トライアングルといえなくもないのですが、私は裕也の想いの先に椢の想いが繋がっているように感じました。

波瑠は裕也が自分ことを弟のように愛してくれたと思っていたけれど、エピローグで裕也からのラブレターをみて報われた思いがしました。
それを現実的に椢の演出だとか波瑠の思い込みによる幻想というんじゃなくて最後の贈り物を二人に残して祝福しているように思えました。

3

切なくて体力消耗。でも読んでよかった

凪良ゆうさんの作品を片っ端から読むぞ〜と読み始めた4冊目。あらすじは他の方が上手に書かれているのでここでは触れません。
死んでしまった裕也の忘れ形見、椢。幼い椢は自分の中に裕也がいると言う。椢が見せる裕也のようなしぐさや話し方。それを信じたい波瑠。
ん?これはオカルト的な展開?以前読んだ「まばたきを三回」は、思いっきりあの世とこの世が交差する世界を描いていたので、今回もそういうことかな〜と思いながら読み進めていくと・・・。
他の方が感想に書いていらっしゃいますが、そういうファンタジー的な不思議要素は好き嫌いが分かれるところだと思います。私はもともとそういうのはわりと好きな方ですが。このお話に関しては、その部分はあまり全面には出てきません。
それよりも10年たっても変わらずに波瑠を愛している椢と、裕也を忘れられない波瑠の二人が再会して恋人同士になるまでが、なんとも切ない!
BLを読んで、まだほとんど泣いたことのない私もうるっときました。でも、涙は出なかった。相当にやさぐれて乾ききってるからね。普通の人なら泣いてるところだと思います。
ただ、他の方も書かれているように、くっつくまでのこの部分を、もう少したっぷりと読みたかった。もっと深く丁寧に二人の葛藤があったら、なお良かったと思います。
最後のエピローグ。椢の中にやっぱり裕也はいたんだ!?と、思わせる終わり方。苦手な方はいると思いますが、私はすっきりしました。死んでしまった人の気持ちを知ることなんて現実にはできないことだけど、小説の中でくらいいいかなと。
痛くてヒリヒリして、切ないながらハッピーエンド。ちょっと体力消耗するけど、おすすめです。覚悟して読んで良かった!

2

一途な思いが重なり合う

恋人という明確な関係はないけれど、ずっと一緒に暮らしていた波瑠と裕也そして裕也の子供である椢。
家族ではないけれど家族のようにいつもそばにいて、それでいて家族以上の存在。
そんな幸せな生活を裂くように、裕也が突然亡くなってしまいます。

大事な人を失った波瑠と、大事な父親を亡くした椢。
そしてその悲しみから大事な波瑠まで失ってしまうのではないかと幼いながら波瑠を守ろうと必死にふるまう椢。
椢に裕也の面影をかぶせてしまう波瑠。

亡くなった裕也を挟んで、波瑠と椢の複雑な感情が絡み合います。
亡くなった裕也を忘れられない悲しみ。
それぞれが、相手を思いやるせつなさ。
大事な人の死を思い出に変える勇気。
胸がぎゅっと掴まれるせつなく優しいお話でした。

また読み返すと思います(^^)

7

何度読み返しても泣きそうになるのは、私だけではないはず!

9歳の息子を残して、好きだった男が死んだ。
波瑠はずっと10歳年上の裕也が好きだった。
9歳の時に裕也と出会い、裕也ができちゃった婚をして椢が産まれ、離婚して、それからずっと裕也と椢と三人で生きてきた。これからもずっと三人で生きていくと思っていた。
なのに、夏の日に裕也が海で死んだ。
裕也の死を実感出来ず葬式から抜け出した波瑠に、椢が自分の中に父がいると言い出す。裕也と同じ口調、同じ仕草、同じ笑い方で。
椢に誘われるまま波瑠は葬儀を抜ける。このまま椢と裕也との思い出と自分とで、誰も自分たちを知らない場所で暮らしていけたら・・・
けれど、そんな逃避行が成功するはずも無く、誘拐犯として波瑠は実刑を受け、椢は伯父に引き取られシンガポールへ移り住んだ。
それから10年後・・・・・・

そう!10年後がメインなんです!!
この過去の話だけで胸がいっぱいになっているのに!!!
椢が波瑠に送れないメールを打っている場面で、堪えきれず嗚咽しました。今まで読んだBL本で一番マジで泣きました。
椢と裕也と波瑠の三人で過ごした夏の日から、どこへも進めないままの10年を過ごしている二人が、せつなくてせつなくて。
視点が椢から波瑠に代わることによって、波瑠がこの10年をどんなふうに消費したのかが伝わってきて、また涙。
この10年間の波瑠のように、独りで誰とも繋がらずにいたら、愛なんて生じないし、生きてる実感も、生きたいという気力も湧かないと思います。
波瑠が「死ねない」じゃなくて、「生きたい」と思えたのは、傍に椢がいてくれたから。ただ息をするんじゃない、生きるってことには、愛が必要なんだよ、って言われたような気がしました。だから「あいのはなし」なんだなって・・・上手く伝えられないのが歯痒い・・・とにかく、素敵でせつなくて、いい話なんです!!

小椋ムクさんの表紙絵に惹かれて買い、凪良さんの作品を手に取るきっかけになった小説です。
本当にもう大好きな一冊です。オススメです!!

7

優しいお話

年の差大好きな上に凪良さんなので期待して購入。
読みやすくて、よかったです。
何となく「天涯行き」とイメージがかぶるのですが、あっちはとてもまとまっていましたけれど、こっちは何故か尺が足りないように感じられました。
純文学よろしく、もう少し出所後のはるちゃんの日常を淡々と描いてもよかったんじゃないかなあ。BLには不必要かもしれないですけれど。
あと、重要なのはわかりますが最後の不思議要素はなくてもよかったような気もします。
逆にああいう形に想いを伝えてしまうのは野暮のような気も。

雨の中に立っていた椢に手を伸ばすシーンは、引き込まれました。
ここら辺の描写は流石だなあ。

しかし、凪良さんの小説の実刑率が半端ないです(笑)そこまで読んでいないのに、これでもう4つ位あったような。

2

ぐっ

切なさで目が溶けそうです(ノД`)・゜・。
涙なくしては読めないわけですが
好きな人が死んでしまうそれほどに切ない表現はないわけで
受がとらわれていると同時に読んでる私も囚われてしまいました
やだ、ないはずの思い出が。。。。
おいといて
のっけから好きな相手の死に直面する受からスタートですね。
自分の中のすべてだった男が死に
残された息子は・・・・な部分なのであります。
正直、懲役くらってーまで必要だったのかどうなのかと
思う部分はある。それから離れていた期間。
いくら連絡がとれなくなっちゃったからって攻が初めてを
適当な相手と・・・ていうのが何とも。
受がやけになって~なのならなのだけれど。
や、一途な攻が好きなのです。
とはいえ、そういう部分含め人間臭いのかなぁとは思いました。
ふわふわふわふわ。
ちょっと不思議な雰囲気はあるものの、
やっとこれでハッピーエンドの読後が良い作品でした。

2

泣きましたね~。

最初に言っておきます。皆様みたいに上手く話せなくてごめんなさい。

いや~ラストですっごく感動して涙が止まりませんでした。それで、皆様にも読んで欲しくてレビューでも……!と思ったのですが、文才がなく。上手く言えないのがもどかしいですが……。

波瑠と裕也に幸せになって欲しいと最初は思ったけど、裕也は亡くなってしまった。波瑠は裕也を死ぬほど愛していました。椢のことも愛していたと思います。

椢はいい男ですね。波瑠を死ぬまで守ってやって欲しいと切望。バイクもう乗らないで…!貴方まで死んでしまっては困るよ……!(余計なお世話かな?)

で、あんまり詳しく書くとこれから読まれる方がつまらないかもしれないので控えますが、最後の最後で、なんで出てくるのー!もう、その直前から泣いてたけど、その登場にはドキリとして、嗚咽してしまいそうでした。

いくつか読んでいますが、もっともっと凪良作品が読みたくなりましたね。

切ないお話が好きな方は是非。

9

好きな人と、その息子と。

好きな人を亡くしたところから物語は始まります。もう、その時点で色々切ないのですが、亡くした悲しみを抱えて一緒に逃亡する相手は好きな男の息子。小学生。二人の束の間の日々が温かく穏やかであるだけに崩れ去ったあとの虚無感はひとしおです。

それにしても、波留にとっての裕也への気持ちと椢への気持ちは、きっと最後までイコールではなかったのだと思います。それでも、二人とも脆くて儚い波留を救った存在であることは確かで、波留の二人への愛情は本物なんだろうなぁ。
エピローグで、存在を匂わせていた裕也が本当に意志をもって行動するとは。
波留と椢がやっと前へ進み出したところでの裕也からの告白。これは波留を前へ進ませるための行動いうより裕也自身、愛していた波留と決別するために取った行動に思えました。

1

色々なあいのかたち

レビューを拝見して、少し痛い話なのかなと読むのをためらっていましたが、読んでみました。

内容は皆さま書いてくださっているので感想を。

出てくるキャラ全員が、お互いの大切な人をその人なりのかたちで愛している話だなと思いました。

裕也は不器用ながらも一人息子の椢の子育てをし、年下の友人である波瑠に恋心を抱いてはいけないと自戒しつつ大切にしている。
波瑠は孤独だった子ども時代に寄り添ってくれた裕也をひたすら想いながらも椢への思いを断ち切れずにいる。
椢は子どもの頃から一途に波瑠を慕い、でも自分の気持ちを押し付けてはいけないと自重している。

みんながお互いを想い、大切にしている気持ちに思わず涙が出て止まりませんでした。凪良作品の中で、一番号泣した作品かも知れません。

子どもの頃に過酷な体験をしたからか、ポキッと折れてしまいそうな脆さを持った波瑠を、9歳の時も、19歳になった時も、変わらず支え、愛情を注ぐ椢の男気に惚れ惚れしました。

裕也の想いもずっと残ってたんだと思うんですよね。椢が波瑠を見つける時の不思議な感じも、最後に手紙を書くのも、やっぱり裕也の想いだと思うんです。オカルトっていう意味ではなくて、人を愛する気持ちって、一番強く残るんじゃないかなって。最後に波瑠が裕也にきちんと別れを告げられて本当に良かった。裕也からしたら波瑠が幸せになれるかが一番の心残りだったんじゃないかと思うので。

あと駐在さん。波瑠の事をきちんと理解してくれている人がいたのも嬉しかった。

誘拐犯と被害者。この立場でいる二人にはこれからもしんどいことがあるかもしれない。でも理解してくれる人だっている。色々な困難も乗り越えていくこの二人のもう少し後まで書いて欲しかったなとは思いました。

小椋ムクさんの優しい絵柄がお話にあっていて、すごく良かったです。

7

ふしぎなあいのはなし

売れない役者の裕也、彼を子どもの頃から支えにして生きて来た波瑠、
そして短い結婚の末妻に去られ残された裕也の息子・椢(カイ)。

互いに支え合いながら、過ごしていた3人の日々は、
波瑠が大学生、椢が9歳の夏に、突然の裕也の死によって砕け散ってしまう。

葬儀の会場から抜け出して過ごすつかの間の日々の果て、
それは誘拐事件となって波瑠は捕まり、離ればなれになって10年。
服役、出所後も心を忘れたかのようにただ生きてきた波瑠、
子どもから青年に成長する中、ひたすら波瑠を忘れずに求めてきた椢。


……死んだ裕也を波瑠が昇華していくまで、そして
生きた体温のある椢と、過去ではなく今、ここで、繋がるまで、
が、この物語なのだと思う。

情けなさを含めて波瑠の苦しさに心惹かれながら読んでいたのだが、
後半、二人で一晩過ごしたあたりからの持って行き方が
現実面では消化不良だし、
クライマックスは既視感もあり好きじゃない。

悪くない話だっただけに、う〜ん、勿体ない、と思いながら読了。
凪良先生の作品は好きだし、暗いのも痛いのもダメじゃないけれど
「天涯行き」には感動したのに、
「まばたくを三回」「真夜中〜」も今ひとつ感動出来なかった私。
どうも、個人的にはこの系統がイマイチ乗れないような気がします。


5

恐る恐る、読んでみました。

「痛い」本を、評判が良いから、と手を出してみては、話が面白くてもやはり合わないなとがっかりすることが多かったので、この本はかなり迷った末に読みました。

面白い上に、「痛い」内容でも、主役二人が相手にいやがらせをしたりするような痛さがなく、気持ちよく読めました。

これをきっかけに、凪良先生の本で、まだ読んでいない本も全部読むことにしました。

現在絶版の本も、来年新装版を出されるそうで、ありがたいことです。

4

凪良ゆう先生!今作も、しっかり楽しませていただきました!

最近、ホント珠玉な作品が次から次へと、…BL作家様の質も、厚みも増したからなんでしょうか?凪良ゆう先生、ライトなんだけど、じわっと胸に滲みるお話しを毎回楽しみ待ってます!(*´∀`)今作も、最後まで身をゆだねるように読んでしまいました…。とっても、よろしゅうございした♪o(^-^)o(あ・また、200字未満ですか…いいんです!作者様を応援して、ステキなお話し読みたいだけなんです!)

5

ページたりなくない?

どこかでよんだような感動作をつなぎ合わせたようなストーリーは、すごくすっきり整理されていて読みやすいし、泣けるとこでは泣けるんだけど。

前後編のように二冊にするとかすれば、もっと面白くラストももっと感動納得できたんじゃないのかな。
あまりにも展開が早すぎて、そこまでのめり込むことはできなかった。

でも、キャラクターは悪くないと思うし、好きなところもなくはなかった。
すっごいおすすめ!ってわけではないけど、読んで損した!とはならないよ。

3

よかった

ちょっとレビューに出遅れちゃったけど、、、

ああ、よかった。

ファンタジーじゃなくてリアルなオチが付いて。

って

「よかった」が掛かるのはそこかよ!
なんですが、、、

歯切れが悪くて申し訳ありません。
私自身がスランプなのかなぁ、

椢 が子どもの頃からの、刷り込みのような思いを貫いて、波瑠の身も心も手に入れるって言うストーリーの本筋はいいのですが、、、
この波瑠がねぇ、、、
子どもに手を引かれて逃避行した挙げ句に、唯々諾々と誘拐犯として実刑で服役しちゃったわけでしょ、
で、今は裕也が死んだ海の近くで、偽名でキャバレーのボーイをしつつひっそりと死んだように生きつないでいる、微かな椢の熱の記憶だけを頼りにね。
そして、成長した椢 が現れて、、、。

私自身がスランプなのかなぁ、
この波瑠にいい感情を持つことができくて、、、ゴメン。

5

凪良先生、大好きですv

凪良先生らしい、優しくて強い愛のはなしを今回も読めました。
触れられなくても何処かに居るだけで嬉しい存在を、もうどこにもいないけど存在した愛しさを、そばにいられる幸せを、考えさせてくれました。

だけど、自分の中のブラックが言うんです。

波留(はる)を守りたくて、9才の椢(かい)は、波留が愛した裕也が、自分の中に入ったかのような演技をしたのは、幼い優しさ?
それもあるけど、それだけじゃないって。
このままでは離れ離れになるから、父親の死で大好きな波留との繋がり切れるから、椢は演技したんだ。
自分の為でもあったはずだろって。

もしかしたら波留が自分自身を壊してしまうかも知れない。
懲役までは考えられなかっただろうけど、「父ちゃん1番、オレ2番」が、もうオレしか居ないから「行こう、波留ちゃん」
これも、波留と離れたくない欲だよね?

どの言動を見ても、椢はとことん波留をがんじがらめにする。
まっすぐな熱い思いは、計算しなくても的を射る力を発揮するものだと思う。
椢の執着に完敗で乾杯させてくれーって思った。
だから、自分には、最後の自動書記ファンタジーのくだりはちょっと違うんです。
ちゃんとお別れをさせたかったのかも知れないけど、波留はもうケジメ付けていたし。

敬愛する凪良先生の作品に「萌え」と「萌え×2」で悩むなんて信じられないんだけど。
すみません;



※波留の実刑が4年だったのが悲しい。酌量の余地多いにあったし。
未成年誘拐(3か月~5年)の4年って;
判例を調べたら、トニ―谷の子供(6才)の社会的にも騒がれた身代金目的の誘拐事件(3年~無期懲役)で3年だった…

7

号泣したかった…!

彼しか愛せない、という男の死を受け止められず
その9歳の息子と短い逃避行の末
熱を出し病院へ連れて行ったところ、アシが付いてしまい…という
悲しい“プロローグ”と“夏の檻”の後、
裕也の息子・椢が成長した“Re:”が始まるのですが
椢の何年も持ち続けるぶれない想いに胸を打たれました!

波瑠の、何のために生きているかわからないような
ただ繰り返すだけの毎日。
誰とも気持ちをかわさない日々の中に
裕也との思い出と元気でいるであろう椢とのたった一つのささやかな繋がり。
自分の父親の仄暗い血にどこか囚われていて
平凡な明るい未来すら見い出せない波瑠が不憫でした。
やっと会いに来た椢の為を思って突き放し、
揺さぶられてどうしようもなく、初めてキスするシーンは
ドキドキしてしまいましたよ!

椢の叔父に、「二度と椢に近づくな。今度見たら警察を呼ぶ」と脅され…。
何をもってしても、波瑠以外に大事なものがない椢の一途な愛、
ああ、これほどの想いを持てたら人は強くなれるのかな…。

ようやく体も繋げ、裕也への気持ちもケリを付けられたあとの
“エピローグ”、ここ、かなり読みどころです!!
しかし……。
書き文字でとか、それまでの多少既視感のある設定に
私はどうしてもひっかかってしまい、泣けなかった!!!(がーーーん!!!)
『まばたきを三回』は、あの最後のメッセージにやられ病院の待合室で泣き、
『天涯行き』でも、手紙の内容に空港でむせび泣き、
ようやく自宅でゆっくり泣けると思ったら……OMG!!
いえ、テーマもそれぞれ違うんですけど、
これは期待値を一人で勝手に上げ過ぎたという例のアレなのかと…。
そんな自分に非常にがっかりしました…。
あーもー!!自分のバカ!!!

読む方によっては「は!?これでなんで泣けないわけ!!??」と
お思いになるかも…。すみません!!
あくまでも私はそうだったというだけなので
未読の方は凪良さんの、ちょっとファンタジーも入った一途な愛に
是非じっくり浸っていただきたいと思います。

それにしたって椢はいい男になったなぁ……。
年下攻めの年の差LOVE、やっぱりいいですね!
凪良さんの、するっと入ってくるような表現、描写に
切なくさせられながら、温かい気持ちにもなれました。

4

東雲月虹

鞠生さん、こんにちは!
貴女様もでしたか…。凪良さん、好きな作家さんなんですけどもね!!
“波瑠に対する飢餓感”!
その貪欲な椢の愛が裕也の呪いなんじゃないかと…?w
ある意味そのくらい強い想いって事ですよね!!!
どちらかが女性だったらとは考えず読みましたが
うーん、壮絶そうですよね…;;
まさしくBL万歳!!!
ありがとうございました♪

切なくてやさしい

一途で不思議な愛の物語でした。
過去に囚われて抜け出せないというより、愛に見守られ続けてきたんだなと
想いは引き継がれて約束は果たされる、始まりは絶望でしたが、そうやって希望と未来を感じさせるものとなりました。

波瑠が裕也と出会ったのは波瑠が9歳、裕也が19歳の時。
それから兄弟のような存在で、デキ婚から出産して逃げた嫁が残した裕也の子供の椢と共に、穏やかな日常で3人が共にいられればよかったはずなのに、喪失は突然やってきます。
裕也の葬儀の日、雨の中椢と波瑠はそれとなく逃避行に出てしまいます。
しかしそれは未成年誘拐事件となってしまい、たった1週間の二人の時間は失われ、離れ離れになってしまうのです。
そして10年後・・・
血は争えない椢は劇団の俳優として活躍し、とうとう波瑠との再会を果たすのです。


物語の展開的には、こうしたものなのですが、
その中に語られるそれぞれの事情と気持ち、立場、想い、様々な要素が重なり「あいのはなし」を紡いでいくのです。いえ、受け継がれていくというのでしょうか。

裕也も椢も波瑠を大好きだった。
裕也と波瑠は幼いころからの付き合いがあり子供もあったことからきっと心は通じ合っていても恋人となることはなかった。
裕也の葬儀の時、椢が見せた裕也そっくりの仕草と、彼の言葉。
子供なりの必死の波瑠の慰め方だったのですが、本当に裕也が椢の中にいるのでは?という疑問を残しながら、青年になった椢が波瑠と再会するのも、ずっと波瑠を想い続けるのも、心の中の父親の存在が故なのか?
ひょっとしてそこに椢の本音はあるのだろうか?と若干オカルトめいた要素を感じながらこの愛って本物なの?波瑠を幸せにするという刷り込みなのではないか?疑ってみたり。
でも、何だか読み進めて行くうちに人格が同じだろうが別だろうが、支配されていようが、それはどうでもいいのだと思うことに気が付きました。
椢は固い信念を持っている。
子供の頃から波瑠が好きだった。
本当は悠也だって波瑠が好きだった。
裕也の想いと椢の想いは同じだったからです。
椢は父親が出来なかったことを自らの意思で引き継いだまでなのです。

裕也と恋人になれていたら、波瑠はまた違った人生を歩めたかもしれないのですが、そうでなかったからこんな運命になってしまったのかもしれません。
波瑠の父親にまつわる引き継ぐ血への恐怖が彼を臆病にしてしまっていたかもしれません。
しかし、服役して社会に復帰してその間の彼を想像すると、椢と再会してからの彼を見ても切なさと悲しさがまとわりついてたまらないものがありました。

クライマックスに、もうっ!!という技を出され思わず涙を誘われてしまいました(チクショー!またやられた)
これではっきりと、バトンタッチがなされた瞬間のシーンだったと思います。
二人はこれからです。

切なくて優しい「あいのはなし」でした

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愛する人の喪失と向き合うまでのお話

凪良さんには大きく分けると2つパターンがあって、
ダークでシリアスなお話と、明るくコミカルなお話に分けられるのですが(最近の作品にはどちらにも偏らない作品が増えていましたが)、今回は久しぶりの重め設定でした。

読む前、あらすじに「椢が自分の中に父親がいると言い」と書いてあるのをみて、『まばたきを三回』に似ているのかなぁと思っていたのですが、今回はあそこまでのファンタジー設定ではなく、どちらかといえばchara文庫さんの『天涯行き』を彷彿としました。
(淡々と描かれているところや、逃避行・犯罪・海…といったキーワードが同じで雰囲気が似ているだけでテーマは違うので、『天涯行き』の近親相姦や凌辱設定は一切ないのでご安心ください。)

愛していた男・裕也が急に亡くなって、その喪失と向き合うまでのお話です。
序盤は裕也がなくなって裕也の息子・椢と二人で逃避行を図るお話で、椢は9歳、波瑠は19歳。後半3分の2は10年後、19歳になった椢と29歳になった波瑠が再会してからの物語。
設定としては重いのですが、凪良さんの文章はとても読みやすく、そして結末が気になって仕方なくてページを捲る手が止められなくなり、私は一晩で読破しました。
波瑠の繊細さと不遇な展開、そして椢の健気さに、ギリギリ胸が締め付けられて、気が付くと涙を流していました。読み切った時には枕が涙でぐっしょりでした(笑)
凪良さんの本は毎回萌えとかではなく、今回一番心に残ったのも9歳の椢の日向のような愛でした。子供だから不器用で無力な、でも精一杯の9歳の子供の愛がしんしんと波瑠に沁み渡っていることが分かったシーンは泣けました。
ムクさんのイラストと口絵も、切なく苦しいけどあたたかいイラストがとても作品によくあっていて、腕枕のイラストや砂山のイラストは見ているだけで泣けます。
読み終わってから凪良さんのブログを拝見したのですが、今年の春に愛犬をなくされたそうです。その体験があってのこのお話だったのでしょうか。ご冥福お祈り申し上げます。

ちなみに、chara文庫の『恋をするということ』の呂久さんの元カレで引っ掻き回し役だった奥田も登場し、裕也と椢は奥田の劇団「裏窓」に所属しているという設定でした。
奥田は今回も核心をつくようなことを言い、引っ掻き回しつつも、椢のことを見守るような親心もあり。劇団の大きさを見るに、『恋をするということ』のあとのお話なのでしょうか?

また作中に、Akeboshiの「peruna」を9歳の椢が鼻歌で歌っているというシーンがあって、実際の曲がBL小説の作中出てくるのは珍しくて驚きました。
ちょっと9歳が歌うには重すぎるし難しい歌だなぁと思いましたが、改めて聞き返すと、この本のイメージにぴったりの歌です。

凪良さんのお話は、よく受や攻が高確率で警察のお世話になっており、毎度無情に感じる(執行猶予がつかないことが多い)裁きを凪良キャラはしんしんと受け止めるのですが、今回終盤に出てくる警官キャラにとても救われた気持ちになりました。
ファンタジーに感じられるエンディングは賛否両論かもしれませんが、重い話の中にも優しさが滲んでいて、最終的に見えてくる希望に心が優しくなれるお話でした。

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