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表題作魚住くんシリーズⅠ 夏の塩

久留米充
サラリーマン
魚住真澄
大学院生、25歳

その他の収録作品

  • この豊かな日本で
  • ラフィン フィッシュ
  • 制御されない電流
  • 鈍い男

あらすじ

普通のサラリーマン、久留米充の頭痛の種は、同居中の友人・魚住真澄だ。誰もが羨む美貌で、男女問わず虜にしてしまう男だが、生活力は皆無。久留米にとっては、ただの迷惑な居候である。けれど、狭くて暑いアパートの一室で顔を合わせているうち、どうも調子が狂いだし…。不幸な生い立ちを背負い、けれど飄々と生きている。そんな魚住真澄に起きる小さな奇跡。生と死、喪失と再生、そして恋を描いた青春群像劇、第一巻。

表紙:岩本ナオ
(注:挿絵はありません)

★以下、今回の文庫版の変更点を、榎田ユウリ先生のブログより転載させていただきました★

1.著者名義が榎田尤利から榎田ユウリに変更になります。
2.BLレーベルではなく、一般の文庫レーベルからの発売になります。
3.カバーイラストは岩本ナオ先生にお願いしています。中のイラストはありません。
4.書き下ろしはありません。本文の加筆・修正はちょこちょこありますが、物語の流れが変わるような大きな修正はありません。
5.ハードカバー版に入った『ハッピーバースデーⅠ』『ハッピーバースデーⅡ』は収録されます。

2巻『プラスチックとふたつのキス 魚住くんシリーズⅡ』は、9月25日発売予定

作品情報

作品名
魚住くんシリーズⅠ 夏の塩
著者
榎田ユウリ 
イラスト
岩本ナオ 
媒体
小説
出版社
KADOKAWA
レーベル
角川文庫【非BL】
シリーズ
魚住くんシリーズⅠ 夏の塩
発売日
ISBN
9784041017715
4.3

(25)

(16)

萌々

(4)

(4)

中立

(0)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
7
得点
108
評価数
25
平均
4.3 / 5
神率
64%

レビュー投稿数7

夏の塩

こまかいことを気にしない会社員の久留米と、トラウマ満載の大学院生の魚住のお話です。味覚障害になってしまった魚住が、久留米のアパートに居座るシーンが、とても好みで、たのしくよむことができました。

BLに女の子は必要ないとおもっていますが、この作品に登場する久留米の元彼女のマリが、サバサバした性格で、この物語にかかせない存在だとおもいます。

まだ序盤ですが、これから、どんどんおもしろくなりそうな予感がします。

0

だんだん可愛く見えてきたかも

いろんなところから出版されているらしい本シリーズ、角川文庫にて初読み。
最初はあまり好きになれなかった魚住だけど、周りの人たちがどう受け入れているかを知っていくうちに、少しずつそのキャラに馴れていき、気付けば可愛いかもしれないと思えていた。久留米は最初から好き。

書かれた時代によるものかな、と思ったのは、気遣いの範囲が狭い点。誰のためか分からない配慮がなされた言葉選びがキャラクターを越えて行われていたり、クレーマー対策かと思われる一文があったり、そういう最近の作品でよく見るクドさが一切ない。
(作者のデビュー作だから?)

また、登場するキャラクターが全員とても自由に生きているように見えた。心理的な制約が緩いというか、セリフも心理描写も率直。あるときには自分勝手に感じ、でもそれが魅力的に映るのは、今との違いに惹かれているところがあるのかも。

BLとして見ると、とてもゆっくりな進行。魚住視点だと、心より先に五感が唯一無二の相手を見つけたってことかな。久留米は気付いてフタをしてるので、どう解放していくんだろう。

魚住の生い立ちについては、まだ全てが語られているわけじゃない。人間として必要なものが欠落している原因が、先天的なものなのか、生い立ちからくる後天的なものなのかが気になる。

あらすじから久留米が主人公かと思ったらそんなことはなく。群像劇というほどいろんなキャラにスポットが当たっている印象もなかった。
温かみのある表紙の雰囲気が好き。

まだシリーズ一巻だからか、伝説的作品といわれてもピンとこなかった。全5冊を読めば分かるのか、とても楽しみ。

0

じわじわと浮かび上がる恋心

初めて読んだ作者さんの小説。
普段コミックス派で、BL小説はまだほとんど読んだことが無い者のレビューです。
現在シリーズ3冊目まで手元にありますが、まずは1冊目を読み終えての感想を。

全く生活力がなく、おまけに感情表現も下手でとにかく"残念な美形"魚住くんと、元同級生でサラリーマンの久留米のお話。
2人を取り巻く脇役も数人出てきますが、どの人物も個性的でひと癖あるけど憎めないキャラクターに描かれています。

久留米のアパートに魚住が居候を始めるところから物語は始まっていますが、しばらくはただの友人関係で恋愛関係になっていく雰囲気は無くて1章目の終わりに「ん?」と匂う程度でした。
その後徐々に久留米の方が友情以外の感情を抱き始めます。
だけどその感情に気づかないように意識して、蓋をしようとします。そんな気持ちを持つ事に罪悪感を持っているようで。
魚住の方は元来の鈍感さもあって、最後の方になって久留米に対する欲望を自覚します。

恋愛についてもなのですが、魚住という人物のバックグラウンドも少しずつ明らかになっていくストーリーで、ただの元同級生ラブという作品ではないなという印象。
色々残念な魚住がどうしてこんな性格になったのかもシリーズを通して明らかになっていくのでしょうか。
魚住の過去は重くて暗いのですが、本人はのほほんとしているのが不思議で少し不気味。
まだこの巻では魚住について理解しきれないと感じました。

続きを読むのが楽しみです。

0

シリーズ通して神評価

未読だった為、文庫で全て揃えてシリーズ読破しました。
交渉人やnezを先に読んでいたのですが、作品としてはかなり違いました。
デビュー作と言えるくらい古い作品の為、時代背景も少し古め。それが気にならないくらいすぐに世界観にどっぷりとなり読み進められます。

1冊目だけではBLとしては物足りないと思います。
ですが出てくるキャラクター全てが魅力的です。
今以上に偏見が大きかった時代だと思います。パンチの効いた一言があったり、真理を考えさせられる発言があったり、生きるということ、幸せとは何か、自分がどう生きたいのか、主役である魚住真澄の真っ直ぐな瞳を思い浮かべると無性に自分の生き方が恥ずかしくなったりもしました。
徐々に成長していく魚住くん。
その成長を見守りながら自分を見つめ直したりしてしまいました。

ゆったりとしたペースですが恋愛面もきちんと進みます。かなり焦れったいですが、焦れったい分、ようやく……のシーンはとてもよかったです。エロは薄め。けどこの作品を読むタイプの方はエロ重視でないだろうし問題ないと思います。

人の成長と再生と葛藤と。本当に色んな感情を齎してくれる作品です。恋愛以外にも様々な人の様々な人生を垣間見れます。
5冊目で数年後の魚住くんの姿まで描かれているので、そこまで読み切って頂きたいです。

動物の死、強姦、死や病気、リストカット等の描写が無理な方は読まない方がいいかも。(主人公達は合意のない行為はありません)

0

読了後、時間が経つほどに満足感が溢れてくる不思議な作品

※シリーズ読破した上でのレビューです。

小説とは面白いもので、初読時の感想がずっと変わらないものもあれば、その一方で
「最初に読んだときは正直あまり印象に残らなかったのに、その後、時折ふと思い出しては読みたくなる作品」
や、
「読んだときはすごく面白く感じたのに、その後、しばらくしたらどんな話だったかすら思い出せなくなる作品」
なんてものがあったりもする。
本作から始まる魚住くんシリーズもまた読み終えて以降、徐々に印象の変化していったお話でした。
しかも、いい方向に。

本シリーズは、読んでいる最中の感想は正直に言うと
「すっごく先が気になるから先へ先へと読んでしまうけれど、でも『萌える』とは言えないお話」
でした。
その原因はたぶん2つあって、1つは、物語が登場人物たちの心情を丁寧に描いてゆっくりと進むので、安易なハッピーエンドを目指していないのがわかるため、先の展開が見えないから。
そのために先が気になる反面、焦らされているようで「萌える」とまで言いにくい。
もう1つは、本作は受け・攻めのラブストーリーが主筋ではあるものの、それを第三者視点で描いた群像劇的な章談が多いので、最も知りたいところである受け・攻めの二人の心情を想像するしかないところがあるから。
受け・攻めの二人がどうなるのか、どう考えているのか、どうするのかが気になっているところでいきなり第三者が出てきて、その人の目線で状況が語られることによって攻め・受けのことを間接的に知る……ということになるのが、色々想像できて楽しい反面、ちょっとフラストレーションも溜まる。

そんなこんなで、次巻へ次巻へと読んでいるときは
「すっごく先が気になっちゃうけれど、でも『萌える!』とは言えない話」
であった本シリーズ。
でも読み終えてしばらくすると、じわじわと
「面白かったなあ」「いい作品だったよなあ」「あれは本当に読んでよかったなあ…」
としみじみと思うようになりました。
「萌えるとは言えない理由」として感じていた上記2つについても、しみじみ思い返せば本作はやはりあのようにしか描けなかったのだろうと思うし、あのように描かれたからこそ今感じているこの何とも言えない良さがあるのだろうとも思う。
もしも攻め・受けの目線でばかり語られていたら、この物語としての奥行きは出なかったのだろうと感じるのです。
しみじみ、「読んでよかった」「このお話に出会えてよかった」と感じる。
時間が経てば経つほどにそれを強く感じるようになる。
そんな作品不思議な作品でした。

お話の内容としては、他の方々が書かれているように、決して幸せいっぱいの話ではない。
むしろ、つらくて切なくて苦しい話だと思う。
人は救われるのだという希望を抱ける話でもない。
ハッピーエンドが必ず訪れるとも思えない。
でもそれでも、人は立ち上がれるのだ、生きていけるのだと思える。
そんなお話。
ラスト、榎田先生が文庫版のあとがきとして書いておられた次の言葉が胸に沁みました。

 親愛なる読者の皆様。
 あなたの中に、もし魚住真澄が住んでいるのならばどうか伝えてください。私はきみが書けて、とても幸福でした、と。

こちらこそ、魚住くんのお話が読めてとても幸福でしたと言いたい。
榎田先生に伝えたいな、と。そう思わせてくれる作品でした。

2

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