“ヤバい男達が組んだ”

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表題作コオリオニ 下

鬼戸圭輔,北海道警察の警部補
八敷 翔,誠凛会塩部組の組長補佐

その他の収録作品

  • 第7話 オニごっこ(描き下ろし)
  • ロングキス フローズンナイト(描き下ろし)

あらすじ

1990年代、北海道――…全国を震撼させる警察の不祥事が幕を開ける。

道警のエース・鬼戸 圭輔(きど けいすけ)の父親は鬼戸と同じ警察だった。父親は上司から命じられた汚職に歯向かったことで左遷され、それをきっかけに酒に溺れ母親への暴力を繰り返すようになる。自らの父親の不遇を目の当たりにしてきた鬼戸は父親の教え通りに「言われた通りのことだけをする」ことが人生だと思ってきた。全ての決断において周囲の期待に応えることを選んできた鬼戸。それさえ守れば自分は安泰だと信じていたにも関わらず、世間は彼を排除する方向で動き出す。潜入捜査の失敗後は以前にも増して汚れ仕事に手を染めるようになった鬼戸を警察は持て余していた。窮地に立たされていく鬼戸に、八敷(やしき)は自らが生きたいように生きることを説く。腐臭の満ちる組織が瓦解していく中で、鬼戸は最後の選択を迫られる。似たように見えて正反対に生きてきた二人の男で見せる魂のドラマ。

作品情報

作品名
コオリオニ 下
著者
梶本レイカ 
媒体
漫画(コミック)
出版社
ふゅーじょんぷろだくと
レーベル
POEBACKS Baby comic
シリーズ
コオリオニ
発売日
ISBN
9784865891454
4.3

(85)

(56)

萌々

(13)

(7)

中立

(6)

趣味じゃない

(3)

レビュー数
16
得点
359
評価数
85
平均
4.3 / 5
神率
65.9%

レビュー投稿数16

この作品の評価、決めかねる

下巻も凄かった。
そんで、鬼戸が嫌いになった。
結局私ってば、勧善懲悪が好きなんだよね。
最後は正義が勝つ、悪は滅びる。
なので、この2人の結末は8話までで終わるのが良かった。
描き下ろし部分読んで混乱しちゃった。
えっ?この色黒マッチョ誰???って
(鬼戸なんですよね?)
えええーーー?!恋の逃避行すんの?
なんか違う。(私の主観です)

いろんな人貶めて殺して悪事働いてきた2人なんだよ?鬼戸記憶なくしてるし、そのままハッピーに2人で面白おかしく逞しく暮らしましたとさなの?

そんで、いい人だと思ってた奴らがことごとく悪くてなんか人は信用できないんだな。
胡散臭い奴には近寄らないのが得策と思ってしまった。鬼戸の奥さん、世間知らずのお嬢さんだったが為に堕ちるところまで落ちてしまって哀れ過ぎる。妊娠してから仕事を理由に家に寄り付かず孤独。そこにつけ込んだ鬼戸の情夫のチンピラヤクザ寺島にヤク中SEX中毒にさせられ、裏ビデオまで撮られてしまって挙句麻薬のせいで流産からの精神疾患……。鬼戸と出会わなければ良かったのに。
でも、ヤクザの女になった訳でなく警察官と結婚したのにこの未来は誰が想像できたよ?

ここ数日レビューしている作品群何故かどこかリンクする部分があって不思議。

この2人が出会ってしまったからこんな事になってしまった的な話ばっかりです。
なんという偶然。それぞれ濃厚な作品で趣が違う。

紙本で購入
黒海苔と黒丸修正

0

愛と咎の物語

読んで良かったと心から思える下巻でした。
堕ちたと思った鬼戸は、もう既に最初から、何なら生まれた時から堕ちていたのかもしれません。
それは、きっと翔も同じ。

鬼戸の過去は思っていた以上に壮絶でした。
そして、その一端を翔が担っていたこともまた衝撃。
出会うべくして出会った、運命の2人だと思う。
人生の迷路に迷い込み、行き場を失った鬼戸を救ったのもまた翔であり、最期まで翔を一人にしないという約束を守ろうとした鬼戸に涙が出ました。
翔に銃を向けたラスト……それは、自分の死を覚悟した鬼戸なりの翔への優しさなのだと思います。

悪事を重ねに重ねた2人は、もう天国には行けないだろうな。
それでもきっと、一緒に地獄に落ちるなら本望なのでしょう。

これもまた愛の形であり、一番欲しかったものは自分の傍にあったという「青い鳥」の教訓。
ここが、その後のハッピーな描き下ろしに繋がっているのだと思う。

あとがきも素晴らしかったです。
絶望と希望の象徴がスコップだとは思いもしませんでした。
でも、そう言われれば要所要所に登場していましたね。

作中通してドシリアスだけど、2人の軽いノリや可愛い表情に救われました。
緩急を大きく付けたストーリー展開、構成に脱帽です。

0

生きることへの叫びが詰まっていた

下巻、絵やコマが俄然読みやすくなってた(偉そうにすみません)
鬼戸(刑事)の過去も悲惨だった
彼もいかれていた。
だから翔と自分は似ていると言ったのか。

暴力や辛い場面は相変わらず続き、めちゃ痛そうで目を背けながら読んだ

生きることへの叫びが詰まってた
あとがきの「描いた事は青い鳥」に納得。

終盤、翔がかわいらしく素直になっていくので破滅エンドがよぎったけど、あとがきの言葉からそれはないはずと信じて読んでよかった。 

本編ラストはああなるよねとふに落ちた。
その後の短編で後日談を描いて下さっていて安心した。
2人が笑顔でのびのび生きていてよかった(夢かもしれないけど)

エロ迫力ありんした

0

かなり濃いヤクザもの

終わり方は切なかったけど、その後のお話良かった!

グロくて読むのちょっと大変でしたが、最後幸せそうなので何より。
もう1回読むと色々理解出来そうですが、痛くて読めないかなぁ…

0

爆弾ドクズ

電子版「悪魔を憐れむ歌」で梶本レイカ先生の鬼才ぶりにどっぷりハマってしまい、「コオリオニ」上下巻すぐさま購入。今回電子版はレーベルも変わっていろいろ書き下ろしもあるのかな?BL浦島太郎としては、うへ〜こんな読者を圧倒する作家がここ10年内に生まれていたのか、とただただ感服です。

さて、あらすじは割愛、感想のみですが。
とにかく登場人物ほぼクズです。クズって言うか「社会不適合者」。
警察官鬼戸と、女房気取りのヤクザ八敷の物語。
とくに八敷翔という男は、積極的クズなんですよ。女の臓器だって平気で売る。他人に共感できないのに、依存はする。破滅型と言うには自分に素直過ぎて、生存本能がハンパない。もうね、どんだけ魅惑的だろうと、現実では絶対側にいて欲しくない、一目だって会いたくないキャラクターなんです。同じサイコパスでも、刑事の鬼戸はちょびっとは社会に適合しようと足掻く姿が描かれていますが、八敷にはそれもない。 ロシアの血を引いた美しさに、幼馴染の元旦那役・佐伯いわく「神の子ドクズ」。でも、わたくし的には、勝手に「爆弾ドクズ」と呼びたいです。八敷の身体は導火線みたいで、エンコ切りや輪姦で、傷つきながらもじわじわと、周りの人間を追い詰めていく。それはチキンレースのようで、脱落者には死が待ってるんです。そこにはラブはなく、欲と本能のみ。鬼戸との関係も、始めはラブというにはあまりも欲と共依存にまみれ過ぎて、、、

でも、何故か強烈に惹きつけられてしまったんです。
「BLはファンタジー」を覆す梶本レイカのリアリズムは、大波に襲われる様な感覚で、私は一気に「梶本ワールド」に飲み込まれました。上下巻の、登場人物の視点の変化は流転のようで、でも説得力があり、そして読後は「ペッ」って浜に吐き出されるんですよ。この才能は異端審問レベルです。ハマる人は疲労と恍惚が待ってます。でも嫌悪も漏れなく着いてくるかもです。

最終話、傷を追った鬼戸と八敷は大海に漕ぎ出します。鬼戸は瀕死なのか?血に気づいた時の八敷の表情は嘆きなのか、「ハメやがったな」の悔しさなのか?ピカレスクとしては、最後は死で添い遂げるのがロマンでしょう。その後の書き下ろしは読者サービス?
正直、二人のサイコパスには戻ってきて欲しくないです。だってクズだもん。日本を平和にしたいもん。

でも、満点の星空の下、果てない地平線に進むボートは何故か悲壮感はなく、、、鬼戸と八敷に絶叫したい自分がいたんです。

「愛おしい!!愛おしいっ!!なんでこんなにもいとおしいんだっっ⁉︎」って。

2

「居場所を手に入れる」っていうのは二者択一、だと思う。

ひとつは、佐伯のように人の城の門を叩いて回って入れてもらえる城を探すこと。
もうひとつは、八敷のように自分が城主になれる城をどんな形でもいいから自分で築くこと。

さて、どちらを選ぶべきか。
それは人によるでしょう。結果にもよるでしょう。

中に入れてもらえる城が見つかって、そこで一生幸せに暮らせる人もいる。
中に入れてもらえる城が見つかっても、居心地が悪くてやっぱり出て行きたくなる人もいる。
居場所がなくなるのを恐れて、入れてもらえた城から追い出されないように頑張る人もいる。
頑張っても、追い出される人もいる。

入れてもらえる城が見つからない人はどうしたらいい?
居心地の悪い城しか見つからない人はどうしたらいい?
そこに居たくても追い出されてしまう人はどうしたらいい?
それを本作は教えてくれていると思う。

紙版が発売された3年前、梶本さんは自分の理想を「バカな理想」だと思いながらこの作品を完成させられたそうだ。
本作で描いていることは「青い鳥」だと言いながら、でも当の梶本さんは自分の青い鳥がすぐそばにいる事にはまだ気づかれていない。
青い鳥は絶対どこかにいるっていう信仰だけで、この物語を完成させられたのだと思う。
だからこんな刹那的な表現に留められたのでしょう。
「生き辛いどなたかにせめてひと時楽しんで戴けます様に。」
理想はやっぱりただの理想なんだと、自身は絶望しながら。

それからどうなったか。
その答えが、今回の電子版に追加収録された4ページの「寝覚めのいい夢」なのではないかなと思いながら読み終えました。
「ロングキスフローズンナイト」では鬼戸はまだ迷子中で、八敷はまだ“たぶん”としか言えなかったけど・・・
「今 掴まえた」
これがきっと、現時点での梶本さんなりのファイナルアンサーじゃないかなと。

読み終わった時、なんだかこの作品自体が生き物のように思いました。
3年前に一度読んでおきたかった気がします。きっと違う解釈をしたんじゃないかと思います。
3年後に読んだらどうだろうな。
梶本さんは漫画家としてちゃんと今も生きてらっしゃる。廃業されていない。
「とっくにこの物語は作者の手を離れて読者さんの物」と書かれているけど、梶本さんが生きてらっしゃる限り、この作品は梶本さんと共にあると思います。


※電子版下巻収録内容
第6話「ヒトごっこ」
第7話「オニごっこ」
最終話「トケルオニ」
番外編「ロングキスフローズンナイト」
番外編「寝覚めのいい夢」(電子版描き下ろし 4ページ)
(全220ページ)

【電子】ebj版:修正◯、カバー下なし、裏表紙なし

3

ヤバい男達が掴み取った幸せ

 上巻の途中まで悲劇のヒロイン風に描かれつつ、佐伯視点の描き下ろしで「おっと…?」と読者に思わせた八敷ですが、その流れを引き継いでこの下巻では今までと打って変わって彼本来の享楽的性格が前面に押し出されていました。反対に、八敷を見つけ出し救ったような存在だった鬼戸は、正常さと異常さの境目で彷徨い、苦しさから抜け出せない様子をまざまざと読者に見せつけ、同情や共感を誘うキャラになっていました。

 鬼戸の父親の教えである「言われた通りに動く」こと。就職も辞令も結婚も職務も、すべて上に言われるがままに従って、一度も最後までは歯向かわなかった人生。それが彼にとっての正常だった。でもここまで自分の欲求を出さず、従うことができるのってある種異常でもあるんですよね。それを八敷は早い段階から見抜いていたのかな。辛い目にばかり遭ったはずなのに、鬼戸は何気に切り替えも早いし、落ち込んでいるように見えて内心は空っぽだったり。自分でも無意識のうちに、ごく一般的な人間に擬態していたのかな、なんて思いました。

 彼の苦しさの真の原因は、周囲の理不尽な仕打ちにあるのではなく、彼自身が異常さを押し殺して正常に生きようともがいているから。そして、その異常性を解放してもいいと、自分も同じだからと、鬼戸を救い出してくれた八敷。最終的に、2人が辿り着いた楽園。私には究極のハッピーエンドに思えました。作中でサイコという言葉も出てきますが、私は2人は近いようでそれに似て非なる人間だと考えています。サイコパスならもっと人生上手くやれているような気もしますし。特に誰かを支配することが目的なのでもなく、ただただ純粋な快楽の追求。自分を偽らずに生きたいという普遍的な欲求であり、正常な人間にはとても難しい願い。ここで帯の「ヤバい男達が組んだ」というフレーズが活きてくるのかな。説明的部分も多かった上巻に比べ、下巻はメイン2人の関係性にぐっと引き込まれ、かなり満足感の高い結末でした。

0

お気の毒様

下巻は、各々の信じる社会と折り合いをつけていたのが破綻しだして、それぞれの隠しきれない本質がせめぎ合います。
「エッタ」でコオリを解かれても、社会に適応出来ないお気の毒様たちはどう生きれば良いのか。コオリは解かれるべきなのか。ゴッコの必要な社会…
とかいろいろ考えては負の思考ループにとらわれつつも、この二人なら…と、読了後の悶々が凄いです。

翔くんがスキテでした。外道美人ぶりに惚れた。
上巻含め、エゲツない事をする、される毎にギュンギュン美しく輝きを増す翔くん。
彼のロクデナシキング、いやクイーンぶりにゾックゾクです。
鬼戸さんの社畜、肉奴隷、執着、足掻きぶりもナイスです。
あと、地味に序盤から良いモブぶりを発揮していた沖置に合掌。クイーン相手に欲をかいてはいけないだろう。

最後の書き下ろしでアゲてくれます。痛いの、ギリギリのを欲して読んでるくせに、それに結構救われます。

2

コオリノオシロ

上巻のレビューを書いてから半年めにして、梶本先生が青年誌で復帰されると知りました。
休業宣言の裏ではいろいろ大人の事実があったようですね。
梶本先生の作品は何ていうのか、要求される水準が最初から高いように思います。内容がハードなだけに少しの綻びもごまかしが利かないような。
何はともあれ、また読めるのは嬉しいことです。

思えば上巻のレビューでは「怖い」ばかり書いていて(役ボ、押していただきましてありがとうございます)。下巻も鬼戸の闇に圧倒されますがそれだけではないですね。
下巻の始まりは、鬼戸の過去から。ヒトの皮を被った鬼の誕生が綴られていきます。
そこから現在に返り、ヒトであるのを止めた鬼戸が動きだします。
もう一人の鬼、屋敷と手を組んで。血まみれで破滅に行き着く男たちが描かれます。ですが、不思議にどんどん生き生きと、きらめいて見えてくるんですね。
bl的萌えがここまで薄い作品も珍しいと思いますが、鬼戸と屋敷がキラキラして見えてくる。
そして、二人の輝きとは対照的に哀しく浮かび上がるのが佐伯です。
佐伯の物語の陰にはごく普通の青年が垣間見えるんですよ。彼はたぶんディスレクシアだったと思われます。知能に問題はなくても、ちゃんと文字が書けない。それが彼自身のせいではないと分かっていたのだろうか。
周囲が気づいていたら、何よりも佐伯が分かったなら、その時から普通の男として生きていけたのではないか、なんて感じました。
それからラストですが、私は二人は死んだのだと思ってます。
「ロングキス、フローズンナイト」の二人はあらゆるしがらみから解放されて、あるがままになれた二人の意識下の姿なのでは、と。
ここの解釈は読者に委ねられたのでしょうね、生きていると思うもあり、私のような解釈もあり、でどれが正しいということはないでしょう。
それでは、梶本先生の今後の活躍が楽しみです。

5

地獄、完結

こういう世界が、多分本当に私たちのいる生活のすぐ横にあるんだろうなあ。
そんなパラレルワールドにも見えるこの世の地獄を描く「コオリオニ」下巻です。

冒頭は、刑事鬼戸圭輔の過去編。
公務員の中の公務員、身元が確かな者しかなれない警察官である鬼戸にも、信じられないような地獄の過去があった!鬼戸は翔と出会う前からすでに闇堕ちしていたのかもしれない。
そして警察もまた。防犯課長の言葉『ケイサツは、唯一の…我々異常者の砦じゃないか』。
「最終話 トケルオニ」のラストは、愛の成就のようでもあり、道行のようでもあり、生か死か、どちらとも取れる静かで安らかなエンディングだと感じました。

描き下ろし「ロングキス フローズンナイト」
いきなり明るく、生の輝きと翳のない笑顔がはじけている。このエピソードを入れて「コオリオニ」を完結させた作者様の心の動きがどんなものだったのか。
描き下ろしが無い方が多分「コオリオニ」上下巻の色合いは統一した、とは思う。でも、このエピソードが最後に入って、より一層暴力と死が楽しみや喜びの表裏に在る事、この世や人間というものは、喜びだけでは生きられず、同時に不幸のみで終わるわけでも無い事を描き出している様に感じられました。

6

ヤバイ男達が美しい

一読した際、最後の描き下ろしは始終救いの無かった重いストーリーだった本作の中ではかなり明るく感じられる話といった印象を受け、個人的には暗めのラストで終わった方が良かったのでは?番外編は不要だったのでは?と感じました。

ですがじっくり読むうちに実は結末はハッピーエンドともバットエンドとも受け取れる様になっているのではないか?と思い、ああ、なるほどな。番外編がある事でより深みが増しているんだなと。
作者様の力量に感嘆しました。

ちなみに私はバットエンドという風に受け取りました。凄く後味の悪い、それでいて爽快で、とても深く考えさせられる不思議な読後感を味わう事が出来、非常に満足です!

表紙や帯も目を惹かれるデザインです。読み手を選ぶ作品だとは思いますが、是非色々な方に読んで欲しい作品ですね。そして、またいつか作者様が復帰されたら嬉しいなと思います。

6

今年のこのBLが~に入らなきゃおかしいでしょ!

正直、人を選ぶ作品なのですが物語としての完成度は非常に高いですし、今年の「このBLがスゴい」の上位には入ってこないとおかしいです!作者の方が引退されたと聞いてショックです…。売れたらまた考え直してくれるかな…などと自分勝手な事を考えてしまいます。とにかく読んで損は無いと思います。BL界、たまにこういう天才が出てくるから腐女子やめられません(笑)。

8

難しい...

評価は中立にしましたが、決して話がいまいちというわけではなくて、
私がこの世界観、ストーリーについていけなかったからです。

ということで以下、ネタバレを含みつつおそらく的外れな感想です。


まず世界観にゾッとし、登場人物の狂気性にビビり、2人のその後を勝手に想像して不安になりました。

奥付に参考資料として北海道警やヤクザに関する本が数冊挙げられているのを見て、
ああ本当にこういう世界があったんだろうなと思うと少しゾッとしました。
それだけリアリティー満載な描き方だということであります。

そして登場人物に"良い人""正しい人"がいない。
そもそも正義の象徴である警察がヤクザと手を組んでいる時点で絶望的な気はしていたのですが、こういう"悪い人たち"がメインの話だと、それに立ち向かうもしくはその人達の中での希望となるような人物が出てくるという型に慣れてしまっていた私には若干衝撃でした。
このヒトだけは、と思っていた水谷さんも最後には盛大に裏切ってくれてね。
お前もか‼︎
また鬼戸、八敷、佐伯のどろっどろの本音というか人間らしさを見て、当分は他の漫画などを素直に読めないような気になりました。(ギャグ漫画とかなら大丈夫)
いわゆる良い人や正しい人が出ても薄っぺらく感じてしまいそうだからです。
そう思わせる程に人間らしさ、特に狂気性を丁寧に深く描かれているということなのですが...

この狂気性が怖い!
狂気性そのものがではなく、それを持った八敷がちょっとした拍子にプッツンして鬼戸のこともバッサリやってしまいそうな可能性がなきにしもあらずな所がです。
上下巻通して八敷の鬼戸に対する思いを見てきても尚、葛藤はあったものの佐伯にトドメを刺し、親父である塩部をあっさり捨てたり、"お友達"のロシア人を売ったりという所を見てきたら、八敷を信用できないのです。
(まあ私が信用しようがしまいがどうでもいいんですけどね^^;)

一方の鬼戸は...描き下ろしにてまさかの記憶喪失⁉︎
う〜ん、本編で綺麗にまとまっていたから突然の記憶喪失に驚いたものの、無邪気に仲良くしている2人を見られて嬉しいような、今までの鬼戸がいなくなってしまったのが悲しいようなもややーんとした気持ちになりました。


もう何度か読めば感想も変わるかもしれませんが、今の私には少し難しすぎるお話でした。特に2人の気持ちの面での関係性が。
自分の読解力のなさが悔しいですがとりあえずもう一度読もうと思います。

読むだけでけっこう消耗するので、これから読む方は「よし、読むぞ‼︎」ってなってから読むことをおすすめします〜

4

ふたり一緒なら怖いもんナシ!

下巻には6話〜8話+後日談が収録されていますが、こちらの7話がなんとまるまる描き下ろし!
BABYには、6話と8話だけ掲載されたんです。
でもこの7話がいっちばん大事だと思います!!
雑誌掲載時はとくに疑問も持たず読んでたんですけど、この7話があるかないかでこのお話の深みが全く違う。

6話では、刑事鬼戸の過去が。
両親のこと、妻のこと、犯した罪…
彼を創り上げた全てが明らかになると同時に沸き起こる八敷への疑惑。

7話から最終話にかけてがいちばん盛り上がりますね。
オニと化した鬼戸が八敷に吐き出した本音と流した涙。
鬼戸が初めて見せた人間くさい一面に、そしてそれを受け止める八敷。
この死に急ぎの異常者とも言えるふたりが涙して叫んだ『生』への希望。
このあたりがほんとうに感動的です。

“生きたいように生きる”
それはケダモノの生き方だと、ある登場人物は言うのですが、それは誰もが持つ欲で。
そしてこのふたりにとってはそうして生きることがいちばん幸せなんですね、もちろんふたり一緒に。

雑誌掲載時は死オチかと思っていて、それでいいと思っていました。
でも巻末の描き下ろしでのふたりを見て、普通とはかけ離れて生きてきたこのふたりには、これくらいの幸せがあったほうが良いと思いました。

下巻はなんといっても描き下ろしが素晴らしい!!
コオリが溶けて、自分の望むように生きることができる城を見つけることができた。
ここまでたどり着くのがハードでバイオレンスすぎたため、
このふたりが今をめいっぱい生きて、そして未来を見つめているラストに胸を打たれました。
文句なしの神評価です^ ^

8

読みごたえ、たっぷりでした

絵の美しさにますます磨きのかかった、この下巻。
騙し、騙されの怒涛の展開。

え、なにこれ
なに、
なに!

それまで見ていた物、見えていた物の全てが、
見ていた、見えていたとおりではなかったとすれば、
自分でも、自分自身の姿が見えていなかったとすれば、

暴力的で過激な描写は多いですが、次々と展開し転回していく物語の密度と熱量は、なかなかお目にかかれない代物で、読後の充実感がたっぷり。
指でも耳でも剥がした入れ墨でも何でも喰う心意気で、しっかり楽しんで頂きたい。
ちゃんと最後には、アカルイミライ?が待っている。

6

人間讃歌

※結末についてネタバレを含みます。
未読の方は閲覧にご注意下さい。

下巻は、鬼戸の過去編からスタート。
その過去も衝撃ですが、上巻から周到に貼られた伏線にも驚かされます。

正義を貫いたがために左遷された、鬼戸の父親。
精神を病んだ父親に「言われたとおりのことだけをしろ」と言い聞かされ育った鬼戸は、進路も恋愛も全て他人に従い生きてきました。
警察官となった鬼戸は、下っ端ヤクザの寺嶋という男と身体の関係を持ち、彼を情報提供者として利用するように。
良家の子女と結婚し、道警でもエースとして一目置かれ、順風満帆に見えた彼の人生ですが…。
ある事件を機に、彼は自身の正体に気付いてしまいます。

父親のトラウマ故に、自分を殺し社会の規範に沿って生きてきた鬼戸ですが、本来の彼は躊躇なく人を殺せる「異常者」。
上巻で彼が八敷を抱きしめて言った「見つけた」という台詞はロマンティックな意味合いだけでなく、同類に出会えたという意味も持っていたのでした。

そんな鬼戸を、今度は八敷が救う第7話(56ページの描き下ろし)の展開は非常に感動的。
自身の残虐性を隠すことなく生きてきた八敷は社会的には異常者かもしれませんが、鬼戸にとっては本当の自分を理解し受け入れてくれるかけがえのない人物。
「悪党」同士だからこそ分かり合えた二人ですが、そんな彼らが無邪気にイチャつくシーンはとても甘く、上巻同様癒やし要素の一つです。

そうやって八敷と生きることを選んだ鬼戸は「異常者」に堕ちてしまったのか?
個人的には否だと思います。
クライマックスで黒幕と対峙するも、その人物を撃たずその場を去る鬼戸には人間としての理性と矜持が見てとれ、それは八敷を愛することで彼が得たものなのではないかと感じました。

【結末について】
雑誌掲載分の最終話の後に17ページの短編が描き下ろされています。
その短編はなかなか意外な内容で、一読後は、雑誌掲載分の最終話で終わって欲しかった想いもありました。
ある種オペラにも通じる、滅びの美学のような様式美を感じさせるラストを気に入っていたので。
しかし美しく死ぬことを否定し、ありのまま生きるよう互いに励まし合ってきた二人の物語としては、やはりこの結末が相応しいとも感じます。

曲者揃いの登場人物たちによる騙し騙され、殺し殺されのサスペンス展開も楽しめる本作ですが、一番のテーマは「人間讃歌」ではないかと思います。
孤独な二人が運命的に出会い、ありのままの自分で世を謳歌する前向きな物語。
その惹かれ合う理由が「悪党同士だから」という点が皮肉なところですが、一緒に過ごすうちどんどん甘く可愛くなっていく二人を見ていると、人間もそう捨てたもんじゃないなと思えてきます。

過激な描写が多いため万人向けではないかもしれませんが、緻密なストーリー構成と濃密な心理描写により与えられる読後の充足感は格別。
一人でも多くの方に読んで頂きたい作品です。

21

この作品が収納されている本棚

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