SS付き電子限定版
一時期流行りましたね、苔玉。
何でも根腐れさせてしまうので、観葉植物すら世話できないわたしですが、その反動でこういう世界に憧れは強くて、うっとりしながら読みました。
盆栽が趣味の枯れた大学生・瀬川小太郎。
バイト先の塾でうっかりPCを落としてしまい、修理に持ち込んだ店にいたのは、ビルの喫煙所で煙草を吸っていた雰囲気のあるイケメン・中津。
見惚れてしまうほどカッコいい中津と共通点を見つけて、つい「友達になってくれませんか」と言ってしまったものの…。
苔玉が結ぶ縁です。
中津が祖父から引き継いだ苔玉や盆栽の世話をする一軒家の雰囲気が良くて、そこにいる猫のタローも可愛い。
ほのぼのとした雰囲気の作品かと思いきや、1話目から中津の元カレという爆弾が。
元カレのめんどくさそうな雰囲気に反して、ここでは「中津はゲイ」というお知らせ役、かつ後半ではなかなか良い橋渡し役までしてくれるのでご安心を。
不器用だけど分かりやすい小太郎に対して、中津がめんどくさいー。
3話目で中津目線の過去話から、小太郎の第一印象のことなどが判明するのですが、場数だけは踏んでいても真面目な恋になるとからきしダメなタイプですよ…。
「自分は対象じゃない」と思い込んでいるから、わりとストレートに言っても伝わらないし、伝わってないからぐるぐる。
伝えたつもりの小太郎もぐるぐる、というループ。
そのループから抜け出すのに一役買うのが、元カレでございます。
当て馬ではなく、こんなに役立つ元カレが今までいたでしょうか。ナイス元カレ。
ぐるぐるが長い分、終盤から怒涛のときめきタイムが素晴らしい。
描き下ろしまであまあまを堪能し尽くせます。
個人的には中津のおじいちゃんのエピソードと、中津が小太郎を「じいちゃんに似てる」と感じた辺り、そこからのラストという流れが好きでした。
意外に年の差CPですが、それを全く感じさせないので、どんな方でも好きになれる作品かなと思います。
盆栽好きで真面目でピュアな性格の年下ノンケ×美形でモテるけど見込みのなさそうなノンケばかり好きになる経験豊富な年上ゲイの話です。
ノンケ×ゲイって切ない要素が多くて、さらに受けの方がかなり年上なことにも引け目を感じていてなかなか友人から恋人へ発展しません。王道といえば王道なんですが、攻めが盆栽好きのクソ真面目という設定が面白いのと南月さんの他の作品だと黒髪受けの印象が強いけど今回は黒髪攻めなのが新鮮でした。
お話はちゃんとハッピーエンドになりましたが、気になったのが受けの友人兼元カレのような存在のヨージ。ガタイがよくて攻めっぽいビジュアルですがカバー下の漫画によると7:3の割合で受けらしいです。受けの十和との関係も多分ヨージ受けだったんじゃないかと思われ。これから女性と結婚するっていうのに悪い奴!なんだけど明るくて妙にリアリティあって魅力的なキャラでした。
南月さんの漫画ってラブネストのナルといい、ちょっと変わった性格の重要な脇役が出てくる所が面白いです。
盆栽オタクは初めてで面白かった。
お互い盆栽ずき。
でも攻めはウブで純粋な真面目くん、受けはPC修理屋さんで適当に遊んでる、でも恋に臆病っていうカップル。
受けの中津さんの幼馴染、ヨージさんがお話を回す役。
ヨージさんは婚約してるのに、中津さんに手を出そうとしたり、攻めのコタローにちょっかいかけたりと、だいぶ緩いのがちょっと残念。
盆栽をきっかけに仲良くなるが、臆病な中津さんと、恋愛初めてのコタローなのでなかなか進まない。
それで、育つまで、というお話になるんですね。
臆病美人が心を開くまでがじっくり楽しめます。
盆栽がきっかけになるのは斬新ですね。私も大人になってようやく盆栽の美しさが分かるようになったので、こんな始まりの恋も素敵だなぁと思います。ストーリーはノンケでワンコな攻めと、ゲイ(厳密にはゲイ寄りのバイ)でノンケとの恋に臆病な受けの王道な物語でした。攻めの小太郎がヘタレっぽくはあるものの、とにかく誠実で真っ直ぐなので、受けの十和が多少消極的でも安心して見守ることができました。
BL作品ではよく出てくる「普通の幸せ」という言葉。異性と結婚して子供をつくって、という将来を形容していることが多いかと思いますが、小太郎が十和から突き付けられたその言葉に「あなたを好きでいながら他の女性と付き合ったり結婚したりしろってことですか?」と返すシーンがあるんです。この「あなたを好きでいながら」という一言がなぜかすごくずっしり胸にきたんですよね。それまで割とベタな台詞が並んでいたんだけれど、その枕詞を付けて返した台詞は今まであまり聞いたことがない気がします。相手の「普通の幸せ」を決め付けてしまう身勝手さとその重みを、より感じさせられました。全体的にはそこまでシリアスになり過ぎることもなく、読みやすい作品だったと思います。
……と書くと、
なんだかシニアな恋愛なのかと思ってしまいますが、
そんなこともなく!
若者の初恋物語であり、
そして、ある意味恋愛熟練者の初、恋物語でもあります。
どちらも恋愛に不器用で、ピュアであるがゆえにすれ違ってしまう。
それが、盆栽というキーワードと、
理解ある友人の一押しで、もどかしくも微笑ましく、
じりじりと距離を詰めていく様子が丁寧に描かれています。
最初は十和さんの心情がいまいち読めないのですが、
後半は十和さん視点でもストーリーが進むので、
すれ違い加減がクローズアップされて、やきもき加減もアップします!
全編通して、イヤな登場人物が出てこないのが気持ちいい!
(強いて言うなら十和ママがちょっともやるけれど、わからなくもない)
そして何より主人公の二人がいい!
男前で、それでいてちょっと脆いところもある十和さんと、
不器用だけど一生懸命に十和さんと向き合うとする小太郎くん。
二人の行く末を、暖かく見守りたくなる一作です!
前の方々が書かれているように、
電子限定の書き下ろしが、またきゅんとさせられるので、
一読をお勧めしますv
よかったねvと、気持ちよく読破して、
評価は「萌×2」で!