イラスト付き
その昔、人との間でしか子を成せない竜と人は、外敵や災害から守り自然の恵みを与える代わりに70年に一度花嫁を差し出す契約をしました。
日向は竜の花嫁選びの祭事を司る子爵家の後継者でした。
花嫁選びの日に竜を退治して宝を奪おうと考えた村人によって殺されそうになったところ竜に浚われた日向です。
竜のもとから逃げ出した日向が偶然出会ったにが森の番人フィレンツでした。
日向は、子を成すために人の意思を無視する行為を糾弾し、竜伯爵のせいで自由を奪われている番人であるフィレンツを解放したいと考えた。
村人のため、フィレンツのためにと竜伯爵を倒す決心しフィレンツにも共に戦おうと計画するのでした。
最も切ない展開は、伯爵が自分の存在こそが人に対してどれほど恐怖であり許されない存在であるかを知った時、日向の持つ神剣によって命を絶ってもらうことが最善なのだ考えるところです。
自分の存在を消すことで最期の竜族を消滅させ苦しみを終わらせたいと思ったのです。
孤独を知ったフィレンツが愛しい人の幸せのために愛しい人の手にかかって消えることが幸せに思い、その日を目指してカウントダウンしていく描写が悲しかったです。
愛を知り、共にいることの幸せを知ったとき、仲間も家族もいない、愛されることもなく憎まれるだけの人生を終わらせることに喜ぶフィレンツの心情に胸が締めつけられる思いでした。
日向が竜伯爵への憎しみや存在することへの害悪を語るのを聞くフィレンツが、共に倒そうと強く答える場面が幾度かあり、好きな人の口から自分への憎悪を聞く気持ちを思うと悲しくなりました。
面白かった。華藤先生のヨーロッパ物大好きです。親族が向こうにいるので余計に物語の舞台の想像(妄想)が掻き立てられます。ハンガリーのスープのレシピを思わず検索してしまいました。途中、日向よ、何故気が付かないと焦ったくなりましたが、そこは龍伯爵ことフィレンツの切なさが伝わって来て萌えたので良しとします。こう言う切ないの大好物です。ハンガリーの森の奥の薔薇園のあるお城見てみたいですね。それにしても教会のステンドグラスとか祠の壁画とか、他の作品ではタペストリーとか華藤先生は上手いですね。龍の赤ちゃん見たかったです。
タイトルからもわかるように竜と人間の切ないおとぎ話風ファンタジーです。
竜伯爵や竜一族の事を思うとすごく切なかったです。
攻めの竜伯爵が孤独や人間から忌み嫌われているとされてる存在・状況に何度も涙してしまいました。
作品内では薔薇や音楽や建物などとても美しい情景が描かれています。
素敵な愛情と共に描かれて美しい世界でした。
そして、美味しい食べ物の描写もあって、食べたくなるものばかりでした!
様々なデザート、ハンガリー料理やパブリカのスープ美味しそう!
でもこういうの読むと本当に人間が一番怖いな・・・とつくづく思います。
直接関係はないけれど、華藤えれな先生の人狼譚シリーズ含めてyoco先生のイラストが、奇譚シリーズの世界観にとっても嵌っていてそこも見どころでした。
ハッピーエンドなのはわかっているのですが、本当に幸せになって良かったです。
そして、過去にも添い遂げた花嫁がいたと知って安心しました。
末永くお幸せに!
えれな先生の獣婚ファンタジーシリーズ。
華藤えれな作品の新刊は作者買いしているので、うっかりすると、直ぐにどれが既読でどれが未購入かわからなくなっちゃうけど、今回は間違いなく予約購入の届きたての新刊。
今回の舞台はハンガリーのそれも迷信深い辺境の地。
深い森に囲まれた、絶壁の岩山に住む最後の竜と、伝統の竜の花嫁選びのお話。
竜の時間と、人間の時間。
その長さの違いから、現代を生きる人間の社会では、竜と人間の間で交わされた契約の本当の意味は忘れられ、竜はただ恐れられ、憎まれるだけの存在となってしまっていた。
そんな現代で、竜伯爵との契約の担い手である子爵家の跡取りとなった日向が、70年に1度の竜伯爵に花嫁を捧げる儀式に臨みます。
お話自体は、最初から結末がわかっている所へどんどん進んでいくようなものなので、安心してフェレンツの健気さに涙しながら読んでいけます。
この文体とこの雰囲気が好きだから、私は、気持ちよくうっとりうるうるですっきりできました。
yocoさんの描かれた表紙とあらすじに惹かれ購入。
主人公は日向。
両親を事故でなくし、その後母の祖父(日向から見たら曽祖父)に引き取られた青年。
日向の両親は駆け落ち同然に結婚し、以降母方の実家とは疎遠だったという経緯がある。そんな日向が曽祖父に引き取られた後に聞かされたのは、彼の家が子爵として受け継いできた「竜とのかかわり」で…。
最近ファンタジーものといえば=竜、というくらい竜が出てくるお話を読んでるなあ…、と思いつつ読み進めました。
両親を亡くし、接点のなかった曽祖父に引き取られた。
竜に、花嫁として連れ去られてしまった。
というバックボーンが日向にはありますが、彼に関してはあまり悲壮感はない。主人公は彼で、あくまで彼視点でストーリーは展開していきますが、彼の目を通して描かれているのは彼を連れ去った「竜」の孤独でした。
過去にあった、人と竜との闘いの日々。
視点が変われば、見方も変わり、どちらが正しいとか間違えている、といった単純なものではない。そういったものが、細やかな描写で描かれています。
健気で薄幸な受け、というのはよくありますが、このストーリーは、健気で薄幸な攻め、のお話でした。
視点が攻め・受け交互に描かれているので、日向が出会い、恋をしたフェレンツの正体は早々に分かってしまいます。このストーリーの軸となるのは、フェレンツの正体は?という部分ではなく、そこから読み取れるフェレンツの孤独と彼の決意だったように思います。そんなフェレンツがなんとも悲しく、思わず落涙しました。
そして、フェレンツの本当の想いを理解できない日向にジレジレ。
このもどかしい二人のすれ違いに、激しく萌えました。
しいて言えば、日向の感情が淡々としているためにさらっとストーリーが進んでしまったな、という感じが。フェレンツが思い悩んだ分だけ、日向にももがいてほしかったな、と思ったりしました。
ただ、この淡々としたストーリーに、yocoさんのイラストがぴったり。
優しく、もの寂しく、けれどどこか温かい。
そんな世界観が、ストーリーと挿絵の相乗効果でより一層鮮やかに描かれていたように思います。
個人的にスパダリな攻めさんが好きなのですが、この作品のような健気・薄幸攻めもいい!
とにかく攻めさんにKOされる、素敵な作品でした。