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表題作華は褥に咲き狂う~悪華と純華~

紫藤純皓、御台所、25歳
七條光彬、八代目将軍、21歳

あらすじ

恵渡に幕府が開かれて約百年余り。第八代将軍を務めるのは七條光彬。その妻となるべく西の都より輿入れをしてきた御台所は息を吞むほど美しく妖艶で、まさに大輪の華。だがその麗人は――紫藤純皓と名乗る男だったのだ。様々な困難を乗り越え、名実ともに夫婦として添い遂げたふたり。光彬の幼弟を跡継ぎに据え、幕府体制も整ったはずだった。しかし幕閣たちは「光彬の種」を残すべく、宮中より「御台所の相談相手」と体裁を取り繕った、実質上の側室候補を送り込んできて――!?

作品情報

作品名
華は褥に咲き狂う~悪華と純華~
著者
宮緒葵 
イラスト
小山田あみ 
媒体
小説
出版社
海王社
レーベル
ガッシュ文庫
シリーズ
華は褥に咲き狂う
発売日
ISBN
9784796411592
4.2

(44)

(27)

萌々

(6)

(8)

中立

(0)

趣味じゃない

(3)

レビュー数
8
得点
183
評価数
44
平均
4.2 / 5
神率
61.4%

レビュー投稿数8

まさかの側室登場

宮緒先生のお江戸BL『華は褥に咲き狂う』シリーズ三作目。スピンオフの『桜吹雪は月に舞う』も刊行されていますが、順番としては『華は褥に咲き狂う』→『華は褥に咲き狂う~鬼と剣~』の続編にあたります。

冒頭に純皓×光彬の関係についてさっくりとした説明はありますが、シリーズものなので前作未読だとちょっとわかりづらいかも。できれば前作を読んでからこちらを読むことをお勧めします。

ネタバレ含んでいます。ご注意を。







純皓が光彬のもとへ嫁いできて3年目。
相変わらず仲睦まじい二人ですが、光彬が側室を娶ることになり…。

という、ちょっとびっくりな展開からスタート。

光彬を陰から支え、家臣たちへの気配りも忘れず、男でありながら大奥の皆さんたちからの信頼を集めている純皓。子は産めない(産むとしたら光彬なのだけれど☆)夫婦ではあるものの、何より光彬からの寵愛を一身に受けていたはずの純皓。なのに光彬が側室を娶るだと…?

と思いつつ読み始めました。

将軍としてどうしても立ちはだかる世継ぎ問題。
公家との軋轢。
光彬が側室を娶ることになってしまった過程を、そういったバックボーンを上手に回収しながら進みます。

が、光彬に執着している純皓は…?

一言で言ってしまうと、通常運転の純皓でした。

側室として大奥へとやってきた富貴子を掌で泳がしながら操るさまはさすが。あっぱれです、御台所さま、といった感じ。

けれど、今作は富貴子が側室としてやってきた、子を産めない純皓ピンチ!といったストーリーではなく、もっと複雑なお話でした。裏社会で生き抜いて生きた純皓は、様々なルートを駆使して常に光彬を守るわけですが、光彬は守られるだけの将軍に非ず。

カッコいいです。

側室として大奥へと連れてこられた富貴子ですが、この子がいい子だったのもよかった。
そして、光彬の腹違いの弟くんも。
彼らの存在なくして、この後続く『桜吹雪は月に舞う』は成しえない。重要なキーパソンでした。

咲ちゃんと門脇の登場回数はやや少なめでしたが、この二人のお話も読んでみたいな。

それと小山田さんの挿絵は今回も神だった。
美しい…。
最後に小山田さんの描かれたイラストが1Pありますが、これがまた可愛い。

このシリーズの世界観がとても好きなので、楽しく読めました。
ぜひとも次作を書いてほしいなと切望しています。

14

『三年目の浮気』なんて、ありえないでしょ

やはりこのシリーズは面白いです。何と言っても書いている宮尾さんが楽しそうな感じがするのが良い!
三作目もノリノリです。

光彬が純皓を娶って三年。将軍と御台所の人気はとどまることを知らない恵渡ですが、光彬の直系の世継ぎを望む者もいない訳ではありません。どんなに優れた御台所でも男の純皓には子をなすことが出来ませんが、光彬は純皓以外に夜伽を申しつける気配がないため、譜代大名酒巻忠泰は御台所の上臈御年寄(御台所の相談相手。嫁ぐ際に同行するのが慣わし)の名目で公家から姫を大奥に迎え入れさせます。しかし、その姫、富貴子はどう見ても12歳位の少女。光彬は困惑します。また、同行した侍女、特に初瀬が富貴子をぞんざいに扱っていることも解ってきます。時を同じくして、祖父から受け継いだ光彬を守る聖刀『鬼讐丸』の鯉口が、誰も触っていないのに切れてしまうことが度々あり、光彬の夢に3歳位の童が何度も現れる様になります。手練れの純皓でさえ気づかないうちに迫る殺気、富貴子の大奥入りの目的、謎が深まる中で、純皓への愛を貫こうとする光彬と、光彬を自分だけのものにするためあらゆる手段を講ずる純皓の運命や如何に?

相変わらず美しくも真っ黒な純皓ですが、今回、富貴子に同情し彼女をおもんぱかるシーンが出て来ます(咲も吃驚していましたが)。その時、思ったんですね。『華は褥に~』の『華』ってひょっとして、純皓じゃなくて光彬のこと?
光彬という光は、あの純皓まで優しくしてしまうんですよ。
これは凄い。
このシリーズには漢と呼ぶべき人が沢山出てくるのですけれど(私のご贔屓は虎太郎さん!)光彬はその中でも白眉だなぁ。今作でも、男にも女にも無双と言うべきモテモテぶりですしね。それでも光彬の想い人は純皓ただ一人ですし、おまけに受けですし。もうその辺が逆に男らしいという。とんでもないパラドックスなのに、実に正統派の時代劇の主人公です。
まぁ、だからこそ『悪人』の純皓の、光彬に対する想いがいじらしく感じられてしまうのですよね。ほんとの悪党なのに、これくらい可愛らしく感じる悪党を生み出した宮尾さん、天才!

今回のお話には、光彬の異母弟、鶴松も登場します。
彼の登場によって、このお話はとても爽やかな終わり方をしています。
宮尾さんのお話はよく『犬』か『蛇』で、この恵渡シリーズは、どちらかと言えば『蛇系』のお話だと思うのですが、ドロドロとした部分もありつつも、痛快で清々しい。この辺が『極上のエンタメ』だなぁ、と。
是非、もっともっとこのシリーズを続けていただきたいです(欲を言えば、次作にも虎太郎さんを出してください)。

10

暗躍する攻様と正面突破する受様

本シリーズは公家から嫁いだ美貌の御台所と
文武に秀でた清廉な八代目将軍のお話です。

受様が迎えた側室を隠れ蓑にした暗躍が終息まで。

受様は陽ノ本の八代目将軍です。

受様は身分の低い母から生まれた上に
前将軍の7番目の男子であったため
城下にて祖父の勲等を受けて育ち
文武両道に優れた若武士となります。

しかし恵渡を襲った凶悪な流行病の為に
受様は16才で恵渡城の主となります。

そして公武融和の為と名門公家の姫を
娶る事となるのですが
西の都からやってきた典雅な姫君こそ
攻様となる礼儀正しく美貌な麗人でした。

攻様の妹に持ち上がった縁談が
受様に恋焦がれていた攻様自身の画策と
前将軍の側室で大奥の有力局の策略で
攻様の輿入れと相成るのです。

攻様は初夜の褥で受様を組み敷き、
情熱的に抱き尽くして受様を身体から
やがてはその心までも虜にします。

そうして3年
受様は異母弟を世継ぎと定め
2人は仲睦まじく過ごしていましたが

神君の代から将軍家に仕える
譜代大名家の当主から
将軍家の血を万全とする為にも
側室を望む声が上がります。

攻様一途な受様の応えは否でしたが
公家とのつながりも深い件の当主は
御台所の補佐役・上臈年寄として
有力公家の姫を差し出してくるのです。

実質側室として恵渡城入りした姫は
17歳との触れ込みを裏切る幼さでした。

実質公方様の側室となる姫君の入城は
恵渡城の大奥ばかりではなく
中奥にも様々な問題を引き起こします。

時期を同じくして受様の周囲でも
不穏な動きが現れて始め

西の都で暗躍した情報組織『八虹』を
率いて長恵渡城入りした攻様は
警戒を強めます。

本当に受様は側室を娶る事になるのか!?
そして裏で蠢く者達の真の狙いとは!?

本作は
陽ノ本の名君と誉れ高い受様と
麗しく慈悲深い攻様(裏の顔有)が
様々な危機を支え合って解決していく
痛快時代劇的シリーズの第3弾です。

今回は男の攻様にはどうにもできない
世継の誕生を迫られた受様が
嫌々ながらも側室を迎える事で起こる
暗殺未遂事件となります。

受様は誰でもが語る通り
清廉潔白な良き公方様なのですが

受様にご執心な攻様は受様に見せない
「八虹」の長としての顔を持っていて
いろいろと暗躍しております(笑)

基本的に攻様は受様以外は
アウトオブ眼中なので
側室候補で入城した姫君も
自らの妹扱いで早々に篭絡する事で
彼女の裏事情にも精通してくのです。

と、ここまでの流れでは
攻様が裏から受様の急事を
陰で暗躍して解決する様な展開ですが
事件を解決する鍵を探し当てるのは
何事にも誠心誠意対する受様なのですよ。

今回も
愛刀の怪異から暗殺計画に辿り着き
攻様とは別方向で解決の糸口をみつけ
最後には陰陽師の生む式神まで
退治してしまうというかっこ良さ♪

この受様の清廉さは
本性はけっこう冷酷な攻様をも
徐々に変化させてきています。

しかもちょっと天然入るほど
生真面目なので無自覚なハイパワー(笑)

攻様をして受様を
玉藻前か西施の生まれ変わりと
言わしめる終幕まで

とても楽しく読ませて頂きました♡

受様の乳兄弟の側近のはじめ
小納戸衆、小姓、町火消の頭、紅鞘の長、
攻様の配下でもある奥女中から
受様の弟君まで

多くの登場人物がそれぞれの思惑で
受様と攻様に絡み合っていますが
個々の個性が見事に活きていて
物語を盛り上げています。

受様の知らない実態を抱える
攻様の奥女中と受様の側近夫婦(夫夫)も
(同人誌だけの登場なので)
本編内でもう少し読みたいので
更なる続編を期待していま~す。

本作は
受様の弟が公方様となる別シリーズへと
繋がる布石にもなっています。
そんな関係をムフフって読むのも
面白いかと思いますよ (^m^)

今回は本作の関連作で
宮緒葵さんの既刊『桜吹雪は月に舞う』を
ご紹介作とします。
単巻ですが本作との関連を知って読むと
また違った面白さが発見できるかと♪

5

将軍の妻で、攻めで、男の純皓お姉さまっ……!!!

あらすじから、てっきり純皓VS側室の戦いが中心になるかと思いきや、そんな浅いお話じゃない。
登場人物の絡め方がうまいなぁと思いましたし、見せ場のあれこれにぐいぐいと読まされてしまいます。

そして、あらためて純皓の女優(?)っぷりに唸らされました。

光彬の前では、自分が御子を産めぬばかりに……としおらしくいじらしい妻を演じて、光彬から全力否定よしよししてもらい。
やってきた側室候補の富貴子に対しては、「私のことは姉と思って」とあくまで心優しき御台所様として振る舞い、完全に手懐ける始末。
そして「お姉さまっ!」と全力で慕う富貴子とまさかの百合展開。
ほんと笑えた。

将軍の妻で男で攻めでというだけでもどーゆーこと?なのに、お姉さまな存在になるって……
そして、影の組織・八虹の長だしね。(まだ光彬は知らないけど)
純皓、情報多すぎでしょ。

相変わらず光彬が尻で抱いてて、萌えました。
結果的には、純皓がド絶倫すぎるゆえに光彬を抱き潰す事にはなるんだけど、「愛しい妻(のチン○)を(孔で)抱くのが夫の務め」という矜持に満ち溢れているところが素敵です。
この二人の仲は本当に盤石って感じなので、周りが魑魅魍魎としていても、安心して読んでいられる。

そして咲と門脇……。
ほんと笑えます。
光彬はあくまで二人を仲睦まじい夫婦としか思っていないんですよね。
だから良かれと思って、なにかと門脇を咲の元へと帰してあげようとする上様の心優しきご配慮が、結果として門脇の不幸を生み出していて……笑える。

3

人気なのが分かります

宮緒先生の他作品に比べると漢字が多くて読むのに時間がかかりました。ちょっと進むと読み方を忘れてしまうトリ頭なので、章が変わる度にルビを入れて欲しいと思いました。汗

それでも毎回起こる事件を光彬と純皓が、それぞれ別方向から近づいて最後には一緒に乗り越えて行く過程がとても面白いのです。

純皓を天女の如く崇拝して愛する純粋な光彬と、純皓の光彬に見せる顔と咲に見せる姿の余りの違いにニヤッと出来ます。

そして閨の中で慎ましやかな妻と猛々しい雄の顔を切り替える純皓にドキドキしてしまうのです。

今回は光彬暗殺という陰謀渦巻く中で、光彬の側室候補の少女富貴子を手懐けようとする純皓と、富貴子に嫉妬する光彬の様子にお似合いだと何度も思いました。

『鬼讐丸』の活躍と光彬の異母弟の鶴松の聡明さは、今後の展開にとても期待が持てました。

最後に鶴松と富貴子の未来についての一文があり、光彬の世が続く事は分かるのですが、次はどんな事件があってどう解決して行くのかとても楽しみです。

2

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