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20Pほどのプロローグで一気に引き込まれました。
面識が殆どない死者への最後の晩餐に招かれた4人。
これからこの死者が遺した謎の薬で何かが起きるに違いないぞと、先に一体どんなことが待っているのか?と期待させながらページを捲らせてしまう木原先生の筆力の高さに唸ります。
舞台は数百国あった国々が統一された近未来。
世界的に流行した伝染病を根絶させた際のワクチンの副作用により、犬のような耳と尾を持つビルアと呼ばれる種族が産まれるようになった世界が舞台となります。
作中冒頭で「望みがなんでも叶う」真珠のような薬を、亡き死者の身内のような青年から2錠ずつ受け取った者たちが、それぞれの人生のワンシーンをオムニバス形式で綴っていく物語。
どのお話にも夢中になって読んでしまって、なぜもっと早くに読んでいなかったのかと非常に後悔しました。
作品全体の雰囲気はシリアスだったり、どちらかといえばややダークな空気を感じるものなのです。
けれど、話運びが上手くつっかえることもないですし、なんというか面白くて読み進めるのがやめられないんですよ。
それぞれ独立したお話かと思いきや、作中でリンクする部分があったり、さり気なく張られた伏線と、その伏線が流れるようにごく自然に回収されていく様は見事としか言いようがありません。
人の心というのは厄介なもので、大嫌いが大好きになることもあればその逆も往々にしてあることかなと思います。
そういった人間ならではの時に愚かで時に愛おしい感情と「望みが叶う薬」が交わることで、どんどん複雑で魅力的な物語に変化していく印象深い作品でした。
切なさや苦しさ、愛憎。そして、後悔といった人間くさい感情を描くのが木原先生は本当にお上手だなと。
私は「dear brother」がすごく好きです。
登場人物たちの選択を読み進めながら、あなたはこの薬をどう使いますか?と問われているような、そんな感覚になりました。
パラスティック・ソウルの世界は始まったばかり。
ハイビルア種。残りの薬。ブロイルスの研究。ライヴァン。
わずかにこの先きっと描かれるであろう点が残されているものの、まだまだ分からないことだらけです。
今後明かされる謎を早く知りたくもあり、ちょっと怖くもあり…と、続きを読むのが楽しみなシリーズに出会えてうれしい。
プロローグで、故人をしのぶ最後の晩餐に集った4人へ、飲めばなんでも願いが叶う薬を2粒ずつ形見分けとして配られる。
この4人はお互いなんの繋がりもない、そもそも故人との繋がりも希薄ないわば他人同士。(プロローグ時点では)
その薬をめぐって、それぞれの物語が綴られます。
1巻は「fake lovers」と「dear brother」の2本。
(巻末にfake loversのSSがあります)
「fake lovers」は、前述の薬を、自分をバカにする大嫌いな同級生に飲ませて、自分に恋をするように願うというものです。
嘲笑ってやるつもりでそうしたのに、健気に愛を語る彼を、いつしか愛するようになる。
恋人同士になっても拭えない罪悪感と不安。
相手の気持ちは薬によるものなのだろうと疑い、薬さえ飲ませなければ彼にはもっと似つかわしい人生があったのにと悔やむあまり、残りの1錠を使って最初の願いを打ち消す、という、もう木原先生らしいといえばらしいお話。
らしいといえば、2本目の「dear brother」はまさしくそうで、親の遺産を得るために前述の薬をつかって死んだ兄を蘇らせる。
墓から遺体を掘り起こして自分のアパートに連れ帰り、薬を口移しで飲ませて、「生き返って(遺産の受け取りに必要な)鍵の在処を伝えてその後再び死ね」、と願う。
これで願いが叶って生き返るわけなのですが、生き返った兄の方の視点で、生い立ちがずっと長く語られます。
子供の頃に偶然知ってしまった、自分は元は孤児で、養子だったという事実。
両親の実子である弟を妬み、可愛くて愛しいとさえ思っていたのに煩わしいと思うようになる。
片や弟の方は、兄を好きで、好きなのに冷たくされることが淋しくて辛くて、反発をした挙げ句の悪態。
生き返った兄に本音をぶつける弟。それでも養子の件は言えない兄。
二人の感情がものすごく伝わってきて、ぐるぐると迫られるようで、とてもよかったです。
兄の視点、弟の視点。夢なのか現実なのか、それすらもまやかしのようで、でもリアルで。
こういう、薄ら暗い感情を綴ることに長けている作家さんなのはよく知っているつもりでしたが、描かれている世界観(近未来、貧富の差、ビルア種、ハイビルア、願いの叶う薬等等)の謎も気になります。
人の感情というミニマムなところから、世界観という遠景、それらが今後お話が進んでいく中でどんな風に絡み合って、どのような結末を迎えるのか、すごく楽しみです。
1巻だけでも充分読み応えがありましたが、最後の晩餐に集ったあと2人。(うち1人は既に登場はして他キャラに絡んでいます)
続巻で新たなお話を読むことができるのでしょう。
こうやって、オムニバスのようにメインが変わるのも楽しいですし、点と点が徐々に結ばれていくのも気に入っています。
タイトルの「パラスティック」は寄生、ですか。このタイトルの意味も知りたいです。
雑誌の小説Dearプラスさんにて、とうとう『パラスティック・ソウル"最後の0篇"』が完結したので、文庫本を読み返しています。
私はこの1作目が1番好きかなぁ。
老人が亡くなり「最後の晩餐」に訪れた4人は、形見分けとして何でも願いが叶う薬を2粒貰う。
不穏な空気だけを感じる幕開けで、人物像も関係もさっぱり分からないまま。
薬を貰った人間のその後を描くオムニバス形式。
人類を襲った病気のワクチンの影響で、犬の耳と尻尾を持つ『ビルア種』が一定数存在する近未来。
ビルア種の中には、高い知能を持つ「ハイビルア」が生まれる。
しかし30歳前後で失踪し、見つかった時には5歳前後以降の記憶をなくし、5歳の精神年齢を宿している状態になっていた。
そんな状態を「フェードアウトした」と呼ばれていた。
そんな世界観のファンタジー。
第1話『fake lovers』
受け様は、白い耳と尻尾を持つビルア種の八尋。
攻め様は、八尋にベタ惚れのジョエル。
八尋は老人の形見分けとして薬をもらった1人。
当時、とても人でなしだったジョエルに対して、やり返す気持ちで自分を好きになるよう祈ってジョエルに薬を飲ませていた。
薬の効果をなくしても、それでも八尋が好きだ、というジョエルが、とっても読んでいてきゅんでした(*´ω`*)
捨てないで、と必死なジョエルと、ジョエルを本当に愛してしまった為に、不安と後悔に苦悩する八尋。
もう、めっちゃ私好みの切なさと萌とでした。
その後の『true lovers』
ドラマCD特典プチ文庫だそうだけど、ここまで読めてよかったー(≧∇≦)
第2話『dark brother』
同じく薬を貰った1人である芭亜斗と、亡くなった兄とのお話。
うわ〜これはなんと言うかダーク。
欲しかった夢を見せられた後の絶望よ…。
この段階では何にも真実は分からないけど、心に刺さる面白さです。
イラストはカズアキ先生。
ケモミミはいいですね(*^^*)
木原先生だからと身構えて読み始めましたが、思った以上にライトでサクサク読めました。登場人物がみんな若いからかな。
◾️ジュエル×八尋
表紙でピュアなかわい子ちゃんをイメージしていた八尋。最後の晩餐シーンではイメージと違ったと感じ、ジュエルを好きだと気づいている八尋はまたイメージがかわい子ちゃんに戻り、どうもキャラクターを掴みきれない謎の人。ガッツリBLというより、この世界と願いの叶う薬の説明…チュートリアルみたいな雰囲気の作品でした。
◾️ケビン&バート
ケビンの悪い夢のようで、実のところバートの悪い夢だったという構造が面白かった。BLかというとそうではない気もしつつ、ガッツリBLではなくても良い気分の時に読んだので問題なし。
薬登場シーンではもらった人自身が使うことを想像しました。この本では他人に使う話ばかりなのがちょっと驚き。まぁ怪し過ぎて他人で試したいのはわかる。
ファンタジーも先生らしさであふれていてとても面白かったです。
キャラも個性的でそれぞれの物語に興味をもたせてくれる。
個人的に『dear brother』が凄く好きでした…。
とうとう死人とカップリングを成立させるのか!?ととてもドキドキしました。
罪人ではあるものの兄のやわらかな空気が好きで推したかったのだけれど、死んでるんだよな~。
一緒になって本気で夢を見ていたので、目が覚める時にはちょっ、待って!と叫んでいました。
確かに生きていたけど、死んだまま…。
願いの叶う薬があっても決して全てを叶えることはできず、奇跡もおきず…全員がその薬のおかげで救われるハッピーストーリーでもないところがとても好きです。