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君にはふれると鳴るとこがあって

kimi niwa fureruto narutoko ga atte

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表題作君にはふれると鳴るとこがあって

矢戸 樹(明るい高校生)
香野 灯司(コミュ障な高校生)

その他の収録作品

  • それのこと(描き下ろし)
  • 先のこと(描き下ろし)
  • 音のこと(描き下ろし)

あらすじ

ある雨の日、通学電車の中で灯司のイヤフォンのコードが樹のボタンに絡まってしまう。
それをきっかけに知り合った樹は、灯司が人付き合いが苦手だと知ると、一緒に遊ぼうと誘ってくれ、ふたりで過ごすようになる。
徐々に、灯司は樹のことをもっと知りたいと思い始めるが…。
悩みを抱える高校生男子の恋心を描いた、瑞々しい青春ラブストーリー。

作品情報

作品名
君にはふれると鳴るとこがあって
著者
早寝電灯 
媒体
漫画(コミック)
出版社
ホーム社
レーベル
アイズコミックス.Bloom
発売日
ISBN
9784834264173
4.1

(142)

(65)

萌々

(48)

(22)

中立

(4)

趣味じゃない

(3)

レビュー数
19
得点
587
評価数
142
平均
4.1 / 5
神率
45.8%

レビュー投稿数19

早寝先生の青春ものも、やっぱりいい・:*+.

本棚整理をしていて取り出し、読み耽ってしまったこちらの本。

表紙からして夏!!という感じなのですが、冬に読んでもやっぱり良かった…胸に沁みます。いいものは、いつ読んでもやっぱりいいものなんですね。。(当たり前

早寝先生の描き出す独特の空気感が大好きで、ほぼ全作集めています。(電子では全部、紙本は本当のお気に入り作品だけ。。)

早寝先生の作品って社会人ものが多いと思うんですが、こちらは高校生同士の青春もの。とっくに通り過ぎてしまった青い春を、これでもか!と肌の近くに感じさせてくれます。

もう、序盤のお祭りのシーンから、世界観に引き込まれます。
攻め視点で見る、お祭りの日の櫓に立つ”神様”(の格好をした)受け。
ハッと目を奪われていると、そこに「チリーン」と風鈴の音が響いてー。

そこで場面は”今”に変わり、電車の中で受けのイヤフォンコードが攻めのボタンに絡まってしまうシーンになるんですね。

個人的に一番萌えたのが、とあることから攻めを避けるようになった受けと話をしようと、攻めが懸命に受けを追いかけて自販機の前で「逃げないで…」と言うシーン。
切羽詰まった表情で攻めが必死になってるの…いい!!!

あと、なぜか分からないんですが読み返すまで私、こちらの作品は「エロなし」だと思い込んでいたんですね。
でも読み返してみたら、少なめながらもちゃんとそういったシーンはあり…
これは自分の中でより強く印象に残っていたのがエッチシーンではなく、二人の関係が構築されていく過程とか、心の動きとか、そういうことだったからじゃないかな、と思います。

とにかく夏じゃなくてもぐーーーっと心を掴まれること間違いないので、ぜひ沢山の方に読んでいただきたいです・:*+.

0

お祭とストーリーが見事なシンクロ

とても良かったです。
早寝先生はちょっとした非日常(今回は祭と山)をモチーフにして、ストーリーに織り交ぜる展開が絶妙にお上手ですね。

おじいちゃんの言うように
「祭りは山も人も全部つなぐ」
お話だった。

冒頭、樹がお祭りで灯司を見たシーンが、終盤2人が抱き合い、お祭りに一緒に出る流れにつながるのがおおお!!と気持ちよかったです。

子どもの頃の2人がお祭りで出会い直したんですもんね。

その間の2人のお話もとても良かった。
樹は言葉にせずとも、灯司に触れたくて仕方がない、好きなんだなとわかったし。
灯司が樹に惹かれていくのも手にとるようにわかって。

キャンプの中での2人もかわいかった。
とてもいいシーン。流れがすばらしい。
いいムードの中、思わず零れた灯司の言葉を聞いて抱きしめちゃう樹。萌え〜。
照れる樹もかわいい。

その後、樹が灯司にキスをして手を出しちゃうところもわかるし、戸惑う灯司も自然に感じました。
こちらもドキドキいいシーンでした。
セリフやコマ割りがいいですね(この場面だけじゃなくて全部に言えますが)

ただ、気持ちが通じ合った(ここもめちゃくちゃいいシーンでした)後、いきなり最後までしちゃって灯司大丈夫?!とは思いましたが(大きなお世話w)

灯司の
「相手のことを本当にわかることはない」
「から こそ きっと 好きになるのかもしれない」
や、その他彼の考え方にも共感しました。


いちばん、さりげにかっこいい〜と思ったのは、1章のラスト
「初夏の気配」
「どこかで気の早い風鈴の音がした」です。

灯司が樹と出会い、勇気を出して向き合って、相手が自分のことを知っていた…何かが始まる、変わるような…この時の心境をこう表現しますか〜と痺れました。


灯司の妹ちゃんがナイスキャラでした。

描き下ろしは、らぶらぶな2人が見られてたいへんうれしゅうございました。


完全に好みですが(5☆満点)
すごい ☆☆☆☆
面白い ☆☆☆☆
内容が好き ☆☆☆☆
絵が好き ☆☆☆
キャラが好き ☆☆☆☆
萌える ☆☆☆☆

0

わからないことは怖くない

高校生の灯司は人付き合いが苦手。
幼い頃から山に入る機会が多く、山では自分らしく過ごせることを知っているので
人との距離感や温もりにどうしても戸惑ってしまい、コミュニティに溶け込めないことに不甲斐なさすら感じる日々。

一方、ひょんなことから友達になった同級生の樹は
相手の気持ちを汲み取り、気遣うことの出来る人。
うまく言葉に出来ない灯司の気持ちを察してくれたおかげで
灯司が変わっていくきっかけにもなったのに
樹は樹でそんな自分を肯定しきれないところがある、と。

ふたりとも悩みを抱え、それは時に心に影を落としながらも
彼らなりの答えに辿り着く様子は
とても高校生とは思えない大人びた道程だったなと感じました。
ふたりの物事の捉え方に感動し、そしてまたこのふたりだからこそ辿り着けたんだろうなとも思いました。

場面ごとの音も印象的で、風鈴の音や祭囃し、風の音はその情景が目に浮かぶようだったし
恋するふたりが纏う空気はキレイな音が聞こえてきそうなほどキラキラしていて眩しかったです。

表紙の爽やかさから、高校生の甘酸っぱいお話なのかと思っていましたが
大人めなお話で早寝先生らしい美しい表現がたくさんつまった作品でした。

2

キャラの解釈違い?

 全体を通しての雰囲気は好みだったのですが、祭りの幻想的なシーンが何度か描かれてるにも関わらず、良くも悪くもストーリーが普通であまり心に残るものがなかったというのが正直な感想です。別にもっと根の深いトラウマを抱えていて欲しかったわけでも、キャラクターの性格に癖があって欲しかったわけでもありません。ただ、祭り、自己否定、恋心、欲情という1つひとつの要素が自然と絡まっていく感じがなかったかな。今までの流れでこうなるか?という違和感を覚えてしまったり。

 2人の性格上、体の関係を持つまではもっと時間がかかっても良さそう、むしろ高校生の間はなくてもいいくらいだったと思います。プラトニックな恋愛の方が余程自然だったのではないでしょうか。まだピュアな関係性、少し触れれば壊れてしまいそうな脆い関係性の時に、突然性的なシーンが訪れるので、いまいち心情を上手く掴めずに少し引いてしまいました。私にはもはや恋愛かどうかも曖昧なまま、ゆっくり距離を詰めていく、いつの間にか相手が隣にいると心から安心できるようになっている、というような関係性が自然なように思えました。最初に2人から受けた印象と、期待したものがずれてしまったようです。

1

表紙買いです

青空をバックに水彩風タッチで、お友達距離の高校二人。
このタイプのカバーイラストの本には、積極的にホイホイされがちなんですが、
まあ、これに私の好みが集約されているのは間違いない。
同性の友人のラインを、どこで、どこから、どうやって越えるのか、揺れ動く気持ち。
自分の気持ちを、ちゃんと恋愛感情だと認めて、お互いの間にあるのは恋愛感情だと認め合って結ばれる。
それを素直な高校生で描いたハッピーエンドの物語。
重要なエピソードに絡むアイテムの選択も、さりげなくっていいです。
ええい、もう、神にしちゃえ。

2

音が聞こえそうな作品

全編通して爽やかです。
早寝電灯先生の作品はBL漫画なんだけれど、BL漫画的過ぎないところが好きです。

この一冊で完璧に完成されているのですが…特にラストシーンなんて最高の終わり方です。祭りのざわめきや緑の匂い、風鈴の音色や吹く風まで伝わってくるようでした…彼らの冬や、これからが見たいと思う。

登場人物には人間的に嫌な部分もあって欲しいのだけれど、自分のダメな部分を開示できる素直さがある、純粋すぎるほど純粋な高校生2人です。同級生は少し人間味が見える子がチラホラいたな。
もっと2人のいやらしい面も見たかったけれど、この作品の良いところでもありますね。人間的な毒が見えたのは、樹(表紙左)が突然 灯司(表紙右)を押し倒したところぐらいかな?

先生の既刊でも感じましたが、原風景を作品に落とし込むのが非常にうまいです。一般誌に行ってしまいそうでヒヤヒヤ

※電子書籍ひかり 局部描写無し
カバー下、裏表紙無し

2

青春!

いいお話だった…
甘酸っぱくて爽やかで、リアリティとファンタジーのバランスがすごくいい作品でした。
受の灯司くん、可愛い…でもわかりづらい可愛さで、そこに気がつく樹くんはさすがだなあと(笑)やはり神様の導きなのか。
妹のあかりちゃんや樹くんのお友達のコーロギくん鉢山くん、脇のめんめんも魅力的でした。
個人的に宿題と予習は自分で!の竹内くんが好き。いい味出している。
早寝電灯先生の作品は、リアルとファンタジーのバランスの良さが魅力ですね。
作家買いする先生が増えました

7

世界観がいいね

灯司に共感しました。でも彼はお祭りで大切な役目を果たせたし、山では生き生きとしてるから自分とは違うなと。

樹いいやつですね。樹も灯司に興味や好意があったからこんなに親切にしてくれたのかな。羨ましいな。

人に出来て自分に出来ないことがあっていいんだよって、救われますね。私も出来ずに落ち込むことが多いので。

わりと障害もなく友情から恋愛に進んで行きますね。本格的な祭や大家族や山など世界観もいいですね。

樹の兄の気持ちも共感してしまう。後から入った人が自分よりグイグイ行ったり出来ると複雑ですよね。でもそれを弟に言うかな。

しかし毎回思うのですが高校生なのに進んでますな。

1

あ〜良かったよ〜

以前読んだ「明日、起きたら君は」がとても良かったので、こちらの作品もずっと気になってたんですが、学生ものってあまり刺さらないので迷ってました。
が、今回割引だったのと改めて皆さんのレビューを読んで購入。

いやあー買って良かった…!
凄く良かった!
もっと早く読むべきでした!

手の平挟んでチューとか、普段なら「あーハイハイ」な私なんですが、もうこの二人はギュンギュンきてしまいました。

色々読んでると、末永く幸せに暮らして欲しいなと思わせるカップルって、皆さんいらっしゃるかと思いますが、そんなカップルがまた一組増えました。

完全に自分にハマった作品に会えた時、最高に幸せですよね。
二人の5年後10年後を盗み見たい〜。

5

夏服DKよすぎ…

個人的に、夏のDK祭りやってます。

以前から大好きで、何度か読み返してしまうお話。

引っ込み思案と、察しちゃう頼れるくんの恋。

タイトルが、良いですよね。「君にはふれると鳴るとこがあって」

高校生の、ぐちゃぐちゃしちゃう自己の、他人が気がつく良さや、心の琴線にふれる部分。
これらが、田舎にすむ高校生の日常で巡っているんです。


樹と灯司が、互いについて語り合って近づいていく感じが良い❗

前に自覚した樹が、我慢出来なくて衝動的に灯司を押し倒しちゃう。キスされて、あまりの衝撃に灯司が突き放して、走り帰る場面。

そう、そう、なんだよ!ビックリするよ。急な性的なリアクションだもん。気持ちが追い付かないよね~すごく、自然な反応ですよね!

灯司の妹ちゃんが、なかなか兄想いのかっこよさをみせてくれます。

そこからインターバル。ちゃんと気持ちが何なのか、考える灯司。樹も一端、距離が出来たことで冷静になるんです。

心の琴線が触れて、互いが鳴りあった二人。
高校卒業後まで、一緒に居たいと思う仲に成れて良かった!

個人的に、たびたび入る地元のお祭りと、テントのえっち場面がお気に入りです。

テントの中って❤️不自由そうだけど盛り上がるんだろな~

夏に本当に読んでいただきたい作品ですね~

2

スッキリしているのに読みごたえがある

良すぎてどこから語ればいいのやら……

まず始まりがいい。
本編は灯司視点ですが樹が初めて灯司を見た場面からスタートします。
祭りの喧騒や風鈴の表現が「君にはふれると鳴るとこがあって」というタイトルに繋がるような音を意識させる良き導入だなと思います。
扉絵をはさんでいるのも一呼吸おけるし、より樹の神様との出会いが際立ち素晴らしい。


このように本作は無駄な表現が一切ないなと感じました。

特に体育祭の使い方です。
高校生で体育祭と言えばビッグイベントでいろいろ盛り込みそうなのに、体育祭が近いことも灯司や樹の言葉ではなくモブの言葉で知らせて、体育祭当日も競技をしている場面を見せないという話の本筋がぶれていない余計なものは排除している描き方がかっこよすぎです。
そのくせ樹と女の子を並ばせるのは体育祭について話すことがあるからで、決してそのイベントを無駄にはせず、高校生ならでは感が出ているのがいい!!

これについては樹の部活動や風鈴の猫のくだり、妹の存在なども言えるのですがそれは割愛するとして、兎に角ぶれない!無駄がない!だからこそ登場人物の気持ちや成長がじっくり楽しめます。


全体的に爽やか~な風が吹きまくっているので読み終わった感覚はスカッとしています。
けれど感情や考えを丁寧に描いているので満足度は高く読みごたえはあるかと。

最後に「あの時ボタンからまってよかった……」と仲良くなった切っ掛けを振り返る灯司に対する樹の返答がめちゃくちゃかっこよすぎです!!!!

6

あ、可愛いいい♡♡♡青春だな

と思ったら、いきなり攻めがオスになってキュンキュンした。
攻めの樹が男らしい!受けがビックリして逃げても諦めないでぶつけてくる攻めで嫉妬もいいし大好きな作品になった。
早寝電灯先生の他の作品も読んでみたい♡

3

君のことを知りたい

総じて、非常に良かったです。
絵柄の良さ、舞台設定、人物造形、ストーリー展開、全てが高水準という感じで、誰が読んでも「これいい!」となる作品だと思いました。
コミュ障気味?というか、人に対してまごついてしまう消極性のある高校生・香野灯司が主人公。
電車内でイヤホンとボタンが絡まった事がきっかけで仲良くなった同級生の矢戸樹(いつき)との、とっても清潔な近づき方とそこからの恋物語です。
山に近く、夏に大きな祭りがある地方の町、梅雨の終わり頃の出会い、緑が燃え始める初夏の空気、2人のキャンプ…
学校や行き帰りでのたわいない会話や、一緒にゲーセンに行ったり、ファストフードを食べたりの楽しい時間。そこから一歩踏み出すテントの中での語り合い。
といってもHなことじゃないよ。明るくって自分とは真逆と思ってた樹の心の澱を知って、心の距離感が一気に縮まる夜。
それはお互いがそれぞれ自分の恋心を自覚する夜。
で、私としてはこの両片想いが粛々と続いて最後思いが通じる、で良かったんだけど、そこは高校生の生理なのか、樹は早まってしまう。
こういう事にも慣れるか?って感じでキスしてしまう。
灯司は引きますよね、当然。
でも灯司はフェードアウトしません。樹の告白を受けて、自分も好きだと伝えます。
さて、次ページでHになってしまうのですが、ここはどうかな…私個人としてはHしなくてもよかったように思うけど…。
明るい樹と通じ合えてとても笑顔が可愛くなった灯司がいいですネ。
そしてそれぞれの思い出のある祭りの風景と音…サウンドスケープ、まっすぐ曇りない恋…
甘酸っぱい、というよりは、木々の爽やかな香りと風のような物語です。おすすめ。

4

ピュアっピュア

とにかく爽やかの一言!!
久しぶりに毒っ気のない正統派の作品を読んだなーという印象。
なんと言ってもタイトルが良い。
それだけで透き通るような世界観を感じ取れます。
ただ、とても穏やかに過ぎていくので、もう少し波があっても良かったかなーと。
受けには好感が持てましたが、攻めの性格が今ひとつ?魅力的なんだけど、いまいちハマりきれないというか。。
良くも悪くも想定通りの流れだったので、もう少し期待を裏切ってほしかったというか、先生らしさは薄めだったような気がします。

2

風鈴の音が聞こえてきそうなどこかノスタルジックな恋物語

早寝電灯先生の作品を知ったのは以前「輪廻転生BL」を個人的趣味で探していた時でした。
デビュー作の「半壊の花」もそうですが、どことなく懐かしい、味のある作品を描かれる先生で、今回は発売前から予約し、この作品をとても楽しみにしていました。

とある事がきっかけで、【明るくスキンシップも多い・矢戸樹】と仲良くなった【コミュ障で人の体温が苦手な・香野灯司】。
何故か灯司の事を「神様」と呼ぶ樹に理由を聞くと、昔、お祭りで山車に乗っていた姿を覚えていたからだと打ち明けます。
それじゃあ、がっかりしたろう、と申し訳なく思う灯司。
家の裏手に祖父の持ち山があり、小さいころから山に親しんで来た灯司は「山でなら安心してしゃべれる。でも街でも学校でも落ち着かなくて人の体温も苦手で、自分の居場所じゃないって感じる」と悩んでいました。
「じゃ、俺と遊びに行こう!」と誘う樹。
学校帰りにゲーセンで遊び、映画を観に行き、ハンバーガーを食べに行き、少しずつ「高校生らしい遊び」に慣れ、より親しくなっていく2人。
ただ、樹はたまに自嘲めいた困った顔をすることがあり、今までは自分のことで手一杯だった灯司は、樹の考えていることを知りたいと思うように。

夏休み、初めて自分から樹を山へキャンプに誘う灯司。
夜、テントの中で樹は、自分と兄のある一件で「人の心を察するのが得意だと思っていたのに兄が自分に対し劣等感を抱いていたことに気づけなかった自分が恥ずかしかった」と打ち明けます。
自信を無くしていた樹の前に偶然現れた灯司があまりに焦っていて、こんな自分でも助けてやれるんじゃないかと。ただの親切心ではなく、自分のために助けたのだと。

灯司は思わずそんなところも含めて樹が「好きなのに」と言ってしまい、お互い意識してしまう2人。
自分の気持ちがハッキリしないまま、樹の家で勉強していると、
「灯司、彼女いたことあるか?」と突然言い始める樹。
もっと慣れてみるかとキスされ、体を触られた灯司はびっくりして逃げてしまいます。
それ以来樹が恐くて逃げてしまう灯司。
妹と話し、自分の考えをまとめた灯司は、樹が怖いんじゃない、
彼がどう思っているか、自分はどうしたいのか、
何もわからないから怖いと気づく。
そしてちゃんと樹と話し合うことを決めます。

体育祭の日、応援団姿の樹につかまり「逃げないで」と言われ、
誰もいない教室へ。
この前突然キスしたことを謝り、好きだと告白する樹。
もう迷いのない灯司は自分から樹に抱きつき、
笑顔で「俺も大好きだ」と告白。
灯司の行動にびっくりし、手を震わせながら「ギュウ」と抱きしめる樹がなんだかとてもかわいかった。

『誰かに』
『あなたに』
『さわりたくなる日がくるなんて』
『思ってもみなかった』
という灯司のモノローグが切なかったです。

そしてそのまま樹の部屋でのエッチシーンに繋がるわけなのですが、私はこの流れ好きでした。
人の体温が苦手だった灯司が樹をちゃんと受け入れたことが分かり易く伝わってくるし、二人とも笑い合いながらエッチしているのがもうかわいくてね。
この後、灯司の表情がやわらかくなって、笑顔が増えたのも嬉しかった。

タイトルの意味もずっと考えていたのですが、もしかしたら、灯司の心に何かが触れた、灯司の心が揺れたときに風鈴の音がチリーンと鳴るのかな~なんて思ってみたり。
いろんな解釈が出来る素敵なタイトルだなぁと思いました。

ただ、今回なぜあえてごく普通の高校生モノを描こうと思ったのか、そこがちょっと残念でした。もちろん早寝電灯先生特有の暖かさ優しさ繊細さがしっかり描かれた作品だとは思います。でも、今までの2冊と比較してしまうとやはり何か物足りない。
こういった高校生の恋愛モノに特化した作家さんは山ほど居り、早寝電灯先生のような独特な設定の作品を描ける方のほうが少ないように感じます。
毎回転生モノや双子モノを描き続けるのは難しいかもしれないですが、出来れば早寝電灯先生特有の世界観を活かした、凝った設定の作品が読みたいなというのが正直な気持ちです。

でも今回は王道ゆえに高校生2人の繰り広げる青春物語がまっすぐに伝わってきて、切なかったり、きゅんと来たり、樹のメガネに萌えてみたり、今までとはまた違った楽しみ方が出来る作品でした。
読み終えたら、カバー下も是非見てみて下さい。
際立った派手さはありませんが、心に沁み込むような、
とても優しい作品です。

5

爽やかさと暖かさ

すごく爽やかな物語です。
何でもそつなくこなし、人の気持ちを察するのが得意な攻・樹と、人と接するのが苦手な受・灯司。
それぞれ悩みを抱え、でもお互いと歩み合う中で自分なりに糸口を見つけていきます。

一見絵も少し粗い感じで、背景なども描き込まれた印象はなかったのですが。
ふとした感情の描き方に、この作家さんの技量を感じます。
あ、すごく自然に上手に描くんだなと。

あとネタバレになりますが、攻・樹の応援団姿がすごく良かった!
ぶっちゃけ樹は好みではありませんが(ごめんなさい)、応援団姿で突然バンッ!と現れたシーンはかなりときめきました。

全体として、とても優しく爽やかなお話です。
何度も読み返す内に新たに気づくことがありそうな作品。
素敵な恋だなぁと素直に思える、そんな物語でした。

8

評価に迷う

作家さん買いです。

コミュニケーション能力が高くて人との距離が近い高校生×コミュ障で人の体温が苦手な高校生のお話です。

冒頭の風鈴の音色とお囃子の音、そして闇夜に浮かび上がる山車とその上で舞う踊り子の姿。
なんとも幻想的で夢かうつつか…………みたいなお話かと思いきや、一転して日常のお話になるので、あれは何だったのだろう?と思いながら読み進めると、攻めがいきなり受けの事を「神様」呼びしたりするのも何とも意味深で、前作「転じて恋と生き」が転成ものだったこともあり、これも夢とか深層心理とかそういう類のものなのかなぁ?とか疑心暗鬼で読み進めてしまいましたが、ごくごく普通の青春ストーリーです。

街育ちの攻めと山育ちの受けがちょっとしたきっかけで仲良くなるのですが、お互いの慣れ親しんだ場所も性格も正反対な二人。
ゲーセン行ったり、山でのキャンプなどを一緒に体験することによって驚いたり、喜んだりして少しずつ距離を縮めていく様子がいいです。

そして少しずつ……と思いきや「もっと慣れてみるか?」とほぼ襲う形でいきなり攻めが手を出そうとしてしまうのには、えっ!!??性急すぎない???と驚きました。
その後の弁解シーンで「おまえにめちゃくちゃ触りたくて」というのが突っ走った感といい抑えきれないほどの衝動といい、青臭すぎるほどの若さを感じて、まぁ仕方ないか…とは思えたのだけど、やっぱりこの二人には寝てほしくなかったなぁ。

神様とかお祭りとか山のキャンプなど、どこか非日常と日常を行き来するような雰囲気を感じていたのに,
ここで一気に性衝動がお盛んというある意味リアルなんだけど、ありふれた高校生BL世界になってしまった気がするんです。
あぁ、この二人もやっぱりやっちまうのね……的な感じで生臭くなってしまったというか、尊さが損なわれてしまったというか……。

人の体温が苦手だった受けが、人を触りたくなる、相手を受け入れるという象徴=セックスだというのは重々承知なんだけど、だからこそ、キスとか、手を繋ぐとか、抱きしめるみたいなものを一つ一つ丁寧に段階追ったほうがキュンと出来たと思うのに、ファーストキスから2P後にはセックスになってしまっていて、早いな!!と。

「半壊の花」の【稲穂に帰る道】で号泣した事がある私は、早寝電灯さんに物凄く期待しているからこそ、もうちょいキュンと描けるはず、惜しい!と思ってしまいました。
でも次も買います!!

山と里を(今は街)を繋ぐお祭りが、知らず知らずに彼らを結んでいたという冒頭、そして晴れやかな終わり方はとてもいいと思いました。

7

甘酸っぱいDKの恋のお話。

作家買い。

早寝電灯さんの今までの作品はシリアスなものが多かった気がしますが、新刊は優しく、温かい雰囲気に満ちている。そんな作品でした。

主人公はDKの灯司。
祖父ちゃん所有の山で子ども時代を過ごしてきたからか、人と関わるのが苦手。そんな彼が、電車で出会った、同じ高校に通う樹という青年と知り合いになるところから物語はスタートします。

ちょっとしたアクシデントから、友人になり、そして距離を縮めていく二人。

ゲーセン。
山でのキャンプ。
高校の体育祭。
そして、恋。

まさに青春。
灯司も樹も、コンプレックスを抱えながら、それでも前に進んでいく。
どこにでもいそうな等身大の高校生の姿が、瑞々しく、そしてまぶしく描かれています。

彼らが住んでいる場所が田舎であるとか、高校生であるとか、そういったバックボーンが上手に生かされ、ちょっとずつ惹かれていく二人の姿に萌えが滾りました。

このストーリーは「神様」がキモになっています。

樹が灯司のことを「神様」と呼ぶ、その理由や、そう呼ばれるようになった過去の灯司の体験が、甘いだけではなく物語をキリっと引き締めているように思いました。

そして、彼らを取り巻く家族や友人たちの存在も良かった。
様々な形の愛情に満ちています。

しいて言えば、二人が恋愛感情を持つに至った経緯の描写が若干甘かった気もしましたが、ともに成長し、恋心を育てていく二人の姿が、甘酸っぱく、そしてさわやかな読後感に満たされます。

タイトルも秀逸でした。

3

高校生の ”the アオハル”

早寝電灯先生、3冊目のコミックスは、”the アオハル” って感じです。
作家インタビューによると、前作『転じて恋と生き』が転生ものだったので、”ストレートに高校生ものを描こう” と意識したとのこと。

コミュ強とコミュ障、新興住宅地と山沿いの地域、いろんな対比で物語にメリハリを作っています。


灯司は、祖父から山のことを教わって、一人でも山には居場所があると思えるのに、現実で人と関わるのは苦手。
電車の中で、同級生の樹のイヤホンと絡まってしまい、お菓子をもらっても、「ごめん」も「ありがとう」も言えないコミュ障です。

樹は、灯司がしゃべるのが遅くても待っていてくれて、背が高いから頭をかしげて小さな声でも聞こうとしてくれる気づかいの人。
そして「向き不向きがあるんだから人にできることができなくたっていい」と言ってもらえて、灯司は樹に心を開いていく。

ゲーセンとか都市に慣れてる樹と、山に詳しい灯司、自分のテリトリーに相手を入れて、違う世界を体感していくこと、それは二人の距離が縮まっていくように感じます。

灯司にとって樹は、コミュ力が高くて、友達もたくさんいて、それでいて優しい、何でもできる人だと思っていた。
でも樹にはどこか影があって、灯司は樹のことを知りたいと思うようになる。

樹は自分でも人の気持ちを察したりするのがうまいと思っていたのに、兄が自分にコンプレックスを抱いていたと知って、身近な家族のこともわからなかったことで自信を失くしていたけれど、灯司と出会って、灯司の考えていることは察することができ、まだ自分にもできることがあると思えるようになる。
そのことを黙って、灯司と一緒にいたことに樹は罪悪感があって…
隠し事をしちゃいけないって、高校生らしい青臭さを感じます!

でも樹が灯司と一緒にいた理由を告白すると、灯司は「隠していたことに悩んでいるのもそれを言おうとしてくれたのも、それも含めて好きなのに」と。
友達としての好きに受け取れる言葉だけど、灯司のなかにはそれだけじゃない気持ちもあって…
人を好きになるのは浮きたつような嬉しさがあるのと同時に、その先を考えて怖くなってしまう部分もある。
その灯司の気持ちを表現した箇所はその通りだなーって思いました。

正反対に見える二人だけど、灯司は樹と出会ったことで山だけだった世界が広がって、樹も灯司と一緒にいるのが楽しそうに見えます。
樹は子供の頃の祭で、灯司が山車に乗って神様役をやっていた印象が残っていて、再会できた時からほんのり恋心があったのかもしれない。

その人を大事にしたい、一緒に変わっていきたいと思える、高校生の淡い恋。
この辺はキューンとしていいなーって思えるのに、樹の手がめっちゃ早い!
灯司は聞くまでもなく、なんの経験も無いと思うんですよ?
キスまでは良いとして、いきなりシャツをめくって背中を触り、しかもお尻の穴まで触っちゃうのって…
樹は人の気持ちを察することができるのを自信にしてたんじゃないの?いくら気持ちが急いてしまったからって、やりすぎ!

もちろん灯司はテンパって、二人はちょっとすれ違ってしまうけど、灯司が気持ちを明かして、、、からの展開も早い。
ページの都合とか制作側の事情もあると思うんですけど、ここはもっとゆっくり進んだ方が、二人が育てた恋心にジーンとできたと思います。
いっそのことエロシーンはなくても良かったのに…

人はそれぞれ違うから、ちゃんと話し合って、わかろうとしなくちゃいけないんだ。
当たり前のことだけど、高校生の成長のなかで語られると、ハッと気づかされました。
でもエロシーンへのいきなりの突入が、せっかくのストーリーを台無しにしちゃった気がします。

”ストレートに高校生ものを描こう”
普通っぽさという点では成功していると思います。
でも前作『転じて恋と生き』は転生ものでも、”昔の叶わなかった恋をやり直しましょう” ではなく、”いまの二人として出会おう” とした部分に、”今を生きてる” ってメッセージを受け取ったので、設定は特殊でも私にはキワモノには思えませんでした。
今作も設定ではなく、二人の心情とかに独創性があることを期待したのですが、コミュ強×コミュ障って既読感が否めず、私にとっては期待ハズレでした。
せめて高校生の淡い恋にキュンとさせられたままだったら…

4

この作品が収納されている本棚

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