【電子限定おまけ付き】【イラスト付き】
良いお話でした。
草原に生きる人々や景色など想像して楽しめました。
なんというか、言い方!!
言い方を直せばすぐ通じたのに!まあそれを言っちゃあおしまいよなんですがね。
だってお互いずっと忘れられずせっかく再会できたのに、お互いが自分とのことを覚えてないと思い込んで…。
人質だから義務だからって言い方でセルーンはソリルを傷つけ想いは通じず、ますますソリルを頑なにさせて。
ソリルもついむきになって抱いてしまったことで後悔して自分を責め、セルーンに尽くされてもますます苛立ち。
やっと最後の50ページくらいで、えっ?おぼえてたの?となり…。
ソリルと馬を並べて走りたい、笑顔が見たいとのセルーンの願いが叶いましたね。
一時はもう傍にいられなくても気配を感じられる場所でソリルの夢の実現を見届けたいと思ってたのに(泣)
まさか馬を並べて走りたいにそんな意味があったとは!
ここまで読者を引っ張る文章というか筆力にさすがです。焦れったくもうこのまますれ違い続けるの?と思ったら!
これからもソリルの優しいところを教えてあげてね。
「誤解・思い込み」「すれ違い」ものが読みたいって人にはピッタリだと思います。
人質だったソリル(攻め)と、幼いセルーン(受け)は出会って、ひとときを過ごし、「馬を並べる」約束をした仲だった。
ところが月日が流れ10年後に再会した時、ソリルはすっかり自分のことは忘れているようで、その事に傷つくセルーン。
おまけに、ソリルはすっかり冷え冷えとした瞳を持つ男になっていて、セルーンに酷い仕打ちを…ってなわけで、なんか読んでて心が痛かったです。
少しは自分のことを覚えていてくれるのではないか?という期待はすぐに裏切られ、それどころか女のように抱かれてしまうセルーンが可哀想すぎて。
再会ものは大好きなんだけど、忘れられない相手から、お前は誰だ?扱いされてしまう再会モノって読んでて辛いですねぇ。
初めてこういうパターン読みました。
これなら、相手が実は記憶喪失にでもなっててくれたほうがよっぽど納得いくし、マシだわ。
セルーンが本当にめちゃくちゃ健気でした。
そばに居たい一心で、ひたむきに尽くします。
なのに時折苛立つ様子を見せ、拒絶するソリル。
セルーンが「お捧げします、心を」と嘘偽りなく述べているのに、その言葉に激怒するソリルの姿に、正直難儀なやつ……と思ってしまいました。
ソリルの「地雷ポイント」がどこにあるのか、セルーンにも私にもわからない……。
その後、泣いてはいけない……と思いつつも、抑えきれぬ涙をポタポタ落とすセルーンの姿に胸がぎゅーっとなります。
で、なぜソリルがこんな笑わない男になってしまったのか、ソリルは何を目指しているのか、そういったものを知るうちにセルーンも強くなっていくんですよね、元々気高い草原の子なんだけど、さらに強く。
ただただソリルが好きだから側にいたい、だけではなく、ソリルが目指す理想の世界を自分も見たい、そして自分自身もソリルの支えや力になりたいと決意する。
けっしてマッチョではないんだけど、セルーン自身も立派な戦士。
そこが草原の民の、しかも族長の息子っぽくて魅力的でした。
で、誤解・思い込み部分ですが、なんじゃそりゃあああああ!!!となった。
あぁぁ、ソリルが少しは目をちょびっっっっとでも見張るとか、おっ?みたいな動作をしてくれればなぁ……。
あの場の雰囲気、そして勝者と敗者であり人質という立場での再会じゃなければ……とは思うけど。
それにしてもその後も冷たすぎたし、もう少し何か透けて見えるものが……と思わざるを得ない。
でも自己嫌悪も充分してるし反省もしてるし、何よりもセルーンが許してるのでまぁいいか……ってなったけど。
「馬を並べる」という表現も素敵だったし、終始広大で、乾いた草原の香りが感じられるような舞台、そこがとても良かったです。
再読はするかなぁ?
すでに裏事情は知った神視点で読めるけど、それでも攻めのあまりの塩対応ぶりに、チッ……!とか思ってしまいそう。
あとがきによると、このシリーズは「民族BL」なのだそう。
草原の民の部族が2話。
1.草原の王は花嫁を征服する ソリルとセルーン
2.恋人たちは草原を駆ける夢をみる オーリとハワル
「草原の王は花嫁を征服する」でソリルが草原の王となって、部族の統合をはじめます。そして「恋人たちは草原を駆ける夢をみる」でも、ソリル王が登場。東の国の軍隊にオーリが密偵として入り、草原の部族の統合をやっと果たします。
神々を信仰する秘境の遊牧民が1話。
3.転生の神王妃 ~夜に抱かれる少年~ シグマとニュイマ
「転生の・・」は、「草原シリーズ」と重なる部分はないけれど、遊牧民出身のキャラが主人公。乗馬シーンがあるので、関連本として読みました。
どれもエロス度低いけれど、ストーリー性が高い読み物として面白かった。
夢乃先生らしい民族もので、キャラは今一つ惹かれなかったですが読後感が良かったので萌にしました。最近でた「恋人たちは草原を駆ける夢をみる」の元作品です。本編250P弱+あとがき。民族ものがお好きな方でしたら是非。
草原の1部族の族長三男坊として生まれたセル―ン。ある日、一人で羊を牧草地に連れて行ったら、見知らぬ男が馬で駆けてきて「狼を見た!」と助けてくれます。彼は人質としてセルーンの部族に来ていた他部族の族長長子で・・と続きます。
攻め受け以外の登場人物は
ザーダル(攻めの右腕)、ナラン(攻めの側室、人質)、攻めの師父、受けの家族ぐらいかな。
++攻め受けについて
攻めさんは厳しい感じだなあ。溺愛とか激甘とかはなくって、草原を一つにまとめるべくキリキリ働く厳しめ王様という感じ。その彼が唯一心を託すってことで、萌えを感じる方もいるのかも。
受けさんは穏やかに密やかにひたすら忍耐づよく粘りづよく、攻めさんの側に仕え、攻めさんを支える方と感じました。自分がなれるとしたら一番なりたい役柄!ただ若いので、一生懸命攻めを想うという一点張りなので、そんなに惹かれなかったでした。若いからしょがないか。
お話としては草原の民をまとめあげていくというストーリーなので、面白いのですが、攻め受けに超入れ込むということなく、あんまり残らないかもなと思った一冊でした。国を作り上げるというところは面白いんだけどなあ。
夢乃さんがあとがきで書いているんですよ。
『これは「民族BL」というくくりになるのかな、と思います』って。
そうなの。その『民族』の部分が面白いの。
モンゴルを想定したファンタジーとのことですが、草原や幕屋などの描写が素敵なのに加えて、遊牧民の文化が下敷きになっているため「ああ、だからソリルは同じ文化を持つ『遊牧民の国』を作りたいと考えるわけね」とか「下働きをしていてもセルーンがみじめったらしい感じにならないのは、族長の子どもでも小さい頃から何らかの仕事を役割としてやってきたからなのね」とか、とても納得できるつくりになっていると思ったんです。
文体が良いのです、実に。
『セルーンが幼い頃、戦に負けたため自分の部族の人質になっていた少年(ソリル)との淡い交流があって、長じてから今度は自分がソリルの国の人質になる。ずっと気になっていたソリルは自分を一切覚えておらず、セルーンは人質としてソリルに凌辱されてしまう。それでもセルーンはソリルの笑った顔を見たいが故に、彼の使用人として側にい続ける』なんていう非常にウェットな展開なのですけれども、文章はドライなんです。
草原に吹く風の様に乾いているんですよ。
これが描かれる風景にマッチしていて、雰囲気をもりあげるんですよぉ!
「この表現、とっても好きだなぁ」と印象に残っているのは『馬をならべる関係』というもの。『互いを特別な相手として選び、体を重ね、実の兄弟よりも優先する相手』なのだそうですけれども。
遊牧の民にとって馬に乗るということは日常であると共に、不可欠なことなわけですから、この表現、2人の関係を表すものとしてかなり痺れました。激萌。
雄大な草原の中で繰り広げられる『民族を守ろうとするひとりの英雄』と、その志を理解しながらも『志のために自らの感情を捨て去る様な生き方をさせたくない、と願い続ける人質』との物語。
このお話の醸し出す雰囲気に触れて、私の心は大草原に飛んで行きました。
実に爽やかな読後感です。