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表題作真白に綴る愛しさは

高槻士郎,32歳,ガラス工房勤務の元商社マン
草薙凛,17歳,心的外傷で話せない元妻の弟

その他の収録作品

  • 真白な世界に愛は降る
  • あとがき

あらすじ

傲慢なエリート商社マンだった高槻(たかつき)士郎(しろう)は失脚をきっかけに辞職し、虚飾に満ちた生活を終わらせ雪深い山奥のガラス工房へと引きこもっていた。そんなとき、離婚した妻が現れて「しばらく弟を預かってくれ」と言い出す。元妻に対する負い目から承諾したはいいが、心的トラウマからしゃべることができずホワイトボードに文字を書いて会話をする弟の凜に、人嫌いの高槻はどう接したらいいのかわからず戸惑う。ぎこちない同居生活を送るうち惹かれあってゆく高槻と凜だが……。

作品情報

作品名
真白に綴る愛しさは
著者
伊勢原ささら 
イラスト
六芦かえで 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
幻冬舎ルチル文庫
発売日
ISBN
9784344846357
3.8

(61)

(27)

萌々

(17)

(6)

中立

(1)

趣味じゃない

(10)

レビュー数
12
得点
222
評価数
61
平均
3.8 / 5
神率
44.3%

レビュー投稿数12

一緒に幸せに

絵柄に惹かれて購入しました。

士郎は寡黙な人間なのですが、ある日元妻が士郎のもとにやってきて
自分の弟(凛)をしばらく預かって欲しいと言います。
断ろうとする士郎ですが色々あって引き取ることになります。
凛は過去のトラウマから言葉を話すことが出来ず
士郎と凛の生活はぎこちなく始まるのですがー…。


私の大好きな不憫攻めが幸せになるお話でした。
攻めの士郎もある意味では凛に救われるので
二人がこうして出会えてよかったなぁと思いました。
その元になる凛の過去はかなり痛々しいですが…。

最初はぎこちない二人なのですが、そんな二人の心の距離が
徐々に近づいていく様子の書き方がすごく上手くてお話しに引き込まれました。
凛に対する気持ちを自覚し、手放したくないけど
凛のことを考えて手放そうとする士郎に涙が出ました。
士郎の心の葛藤がとても切なくて…。

そこからの展開もとても感動的でした。
凛の義父以外みんな良い人ばかりだったのでほんとに良かった…!


読んだ後、心がほっこりとする作品でした。
読んでよかったなぁ。

0

喋れない少年と無口な30代

伊勢原さんの作品では「きみがくれたぬくもり」も、トラウマにより話せなくなった少年のの傷をじっくりじっくり癒していくお話でした。
こちらは母の恋人から暴力を振るわれ表情と声を無くした少年と、エリート街道から離れ大自然に孤独に暮らす無口30代が、お互い得難いものと成長を獲得するお話。

コンプレックスと幼少期の貧乏生活から、自分に向かない一流商社の営業でがむしゃらに働き、男に惹かれると知りつつも結婚し、それらを全てを失いガラス工芸に転職する高槻。
人と馴れ合わないエリートなんて嫌な奴に感じますが、「気になる男がいても想いを黙殺し、その男を思い浮かべながら無理矢理女を抱いた。」という独白がいじらしくて(そういう設定大好き)、凛を半年預かれないかと元妻からの打診にタジタジなのも人間的な未熟さが良い。普通嫌だよね。

それからきのこ狩りや職場、湯たんぽや星空など生活エピソードが微笑ましく、二人のささやかな触れ合いが丁寧に書いてあるのが素敵でした。
それと「きみがくれたぬくもり」もそうでしたが、少年のトラウマのなかに性的虐待が入っているのも良い。最後までではないというのが都合良いと言えば良いし、その点のリカバリーは書かれないけど。

個人的にそこまで良いと感じられなかったのが革で加工したホワイトボード。確かに両手塞がるのは大変だし人嫌いな高槻らしさもあるけどもうちょっと何とかならんかったのか…

元妻の弟に手を出すなんてと高槻にはもっと悶えて欲しかったですが、彼にとって漸く自身の人間として求めるものを得たことや、沢山お喋りするようになった凛に余計無口になったりタジタジになってるのが面白かったです。

1

壊れた人形のような凛

B-PRINCE文庫の新人大賞で、奨励賞を受賞した作品を改稿した作品。

伊勢原ささらさんは、「嫌われ魔物の大好きなひと」とか、喋れないものの切ない心情を描くことが上手。

高槻士郎:32歳,
信濃のガラス工芸作家。元商社マン 30代、ゲイ。

草薙理沙子:士郎が3年前に別れた妻。
冷たい美貌のせっかちな女性。凛にはとても優しい姉。

草薙凛:17歳,
理沙子の母と愛人の子。母の死後、母の愛人から様々な虐待を受けたことで、失語。

元妻が、離婚慰謝料の代わりに半年だけ預かってほしいと置いていった弟の凛。
凛は、理沙子の母が愛人との間に産んだ子。7年前に母が死亡、その後行方知れずになる。
母の愛人と暮らしていた凛を理沙子が見つけた時、凛は声を失っていた。

信州にいたいと望んで、凛は高槻と暮らしだす。
凛が声を取り戻すまでの物語。

★挿絵担当の六芦かえで さんについて、何もプロフや情報が無いのが残念。



1

攻めの救済物語

初めて読む作家さんです。
内容は皆さんが書いてくださっている通りなので省きますが、読み終えて感じたのが、タイトルにある通り攻めの救済物語だったなぁ、という気持ちでした。

不幸で恵まれなくて健気な受けが、年上の攻めに救われて幸せになるシンデレラストーリーをよく読むんですが、結構な割合で、思うんですよね。
これは実際、攻めが救われてるん話なんじゃないかなぁと。

このお話も、一見受けと攻めのお互いの孤独が溶け合って少しずつ和らいでいく、というようなお話に思えたんですが、実際、しろうさんが深い孤独で長い間閉じていた人生を変えられたのは、凛ちゃんの存在があったからで。

そういう唯一無二、みたいな存在ってほんとに刺さるというか。

はっきりいって劇的に何か起こる訳では無いんですよ。
けれど飽きもせずただ淡々と紡がれる季節の移ろいと2人のやりとりが、とても穏やかで暖かくて、そして切なくて、とても素敵なお話でした。

お姉さんとこのあと気まずいな、とか、ちょっと上手く行きすぎだな、とか、もう少し色々な問題に対してじりじり長々したやりとりが読みたかった、みたいなのもあるので萌え2評価ですが、嫌われ魔物の〜の方もぜひ読んでみたくなりました。

0

雪の中の温かさ

エリートサラリーマンだった士郎は、仕事を辞め離婚をして山奥の工房で働いていた。1人でいるのにも慣れており、このまま静かに暮らすはずだったのに、元嫁から弟を預かって欲しいと言われ半年預かることに。
現れた凛は、過去のトラウマで声を出せなくなっており、ホワイトボードでの会話。
何をするにもビクビクして、人形のように表情もない。
そんな凛の心を溶かしたのは、士郎だった。

 後半士郎が凛を手放す決意をした時の気持ちが、本当に泣けてきました。寂しい1人の未来も凛の幸せのためなら何でもないと思いながらも、心の奥底では凛と一緒にいる温かな未来を望んていて、胸が締め付けられました。
凛は実はしっかり考えていて、人形じゃなく感情があるんだと徐々に感じられる書き方をされています。
ゆっくりと進む展開に、2人の感情が伝わりやすく、読んでいてとても引き込まれました。
何度も読み返したくなる作品です。

2

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