俺が笑うと、みんながうっとりする。……きみもだ

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小鳥たちの巣 ―新米諜報員と寄宿舎の秘密―

kotoritachi no su

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表題作小鳥たちの巣 ―新米諜報員と寄宿舎の秘密―

ティモシー・ウェルニッケ,パブリックスクールの生徒
ミラン・シェーファーと名乗る諜報員,パブリックスクールの生徒,20歳

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

ギムナジウムに潜入した諜報員のミラン。
仲間との密会をルームメイトのティモシ―に知られ――


これはつまり、採用試験だ――諜報部隊に育てられたミランは、初任務に臨む。
舞台は少年たちが寝食を共にする寄宿学校。同室のティモシーは、どうやら同性も抱くらしく…。
きみは、ぼくに下心があるの?
――なりゆきで彼と関係することになったミランは、情報通の男を利用してやるつもりが深みにはまり…。
そして、用務員として潜入していた仲間が何者かに襲われる。
ミランはティモシーと共に学園に巣くう闇に挑み、真相へ近づくけれど…。

作品情報

作品名
小鳥たちの巣 ―新米諜報員と寄宿舎の秘密―
著者
高月紅葉 
イラスト
九鳥ぽぽ 
媒体
小説
出版社
二見書房
レーベル
シャレード文庫
発売日
電子発売日
ISBN
9784576211176
4.4

(10)

(5)

萌々

(4)

(1)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
5
得点
44
評価数
10
平均
4.4 / 5
神率
50%

レビュー投稿数5

一風変わったギムナジウムもの

出自様々な年若い青少年たちが寝食を共にしながら暮らし、共に学ぶギムナジウム。
学園の中に、諜報部員に育てられた過去を持つ美貌の青年・ミランが諜報員という身元を隠して編入する…と、一般的な寄宿舎・パブリックスクールものとは異なるアプローチの作品で面白かったです。

ギムナジウムものの何に1番心を惹かれるのか?
それはやはり、学園という閉鎖的な空間で築き上げられていく濃厚な人間関係や、モラトリアム期の真っ只中にいる青少年の青臭くも尊い複雑な感情が渦巻いているところかなと思います。
今作は、そんな閉鎖的空間にミランが介入し、更には学園に巣食う薄暗い闇のような事件要素も描かれていく。
しっかりとギムナジウムものらしさもありながら、ミステリーも楽しめるんです。
と、ミステリー部分は非常に面白く楽しめたのですが、肝心のBLのLの部分に惹かれたかというと微妙なところ。
どちらかというと学園での出来事に重きを置いていたように見えてしまって、ティモシーとミランのバックボーンや魅力が強く伝わって来なかったのが惜しいです。

ミステリー部分も察してしまうところはありつつ、けれど読ませる文章で最後まで飽きさせません。
大人と子供の狭間にいる未熟な青少年の、キラキラとはしていないけれど、夏を感じさせるような青さが印象的な作品でした。

0

サスペンスBL

犯人捜しのサスペンス。
伏線回収が一つ一つ仕込まれていて、終わりまで読まないと、結末が分からない。
想像と予想はつくけれど、引き込まれていく展開。
すごく面白かった。

ギムナジウムに潜入した諜報員のミランにとって、親が子供=雛を預ける「托卵場=小鳥の巣=学園を守る今回の任務は、採用試験でもあった。
大人の中で育てられた美貌の孤児;ミランは、大人達に守られて愛されて育った自覚がない。
心配して潜入した連絡役との密会をルームメイトのティモシ―に見られてしまう。
・・美丈夫の貴族の五男、ティモシは凄く謎深い。なぜなら、キーマンだから。

事件が解決した後の完結部分が、BLらしいまとめ方で、さすがだなーと感心。
この作品は、凄く面白い。

サスペンスだから、感想はネタバレ無し。読んでみてください。


0

美しくも危うい世界観にドキドキ

ギムナジウムの謎を明かす為に編入したミランは同室になったティモシーに惹かれていく‥
ティモシーとミランの危うい関係にドキドキティモシーと関係があった生徒に自分を重ね合わせたり自分の役割を考えて、自重してるのが切ない。
ストーリーが核心に迫るにつれ緊張感がすごくて、手に汗握りながら読みました。
生き方が1つしかないと思っていたミランが、ティモシーと出会い、希望を持てたのが夢があって良かった。面白かったです。

2

寄宿舎BL三部作

萌寄りです。

寄宿舎BL三部作のトリを飾るのは、作家様初めてのシャレード文庫さんから『小鳥たちの巣 -新米諜報員と寄宿舎の秘密- 』。作者ご自身が企画して自ら楽しんでいらっしゃる独自路線、大好きです。

この三部作、舞台設定の他にも裏企画として、文体七変化がそっと仕込まれているようです。確かに『戀は秘めたる情慾に -旧制高校モラトリアム- 』とは全く異なる味わい。舞台となる国がどこであっても文体が変わらない、もしくは変えることが許されない作家さんが多い中、BLでチャレンジしてしまう遊び心やそれができてしまう力量ともにユニークな存在だなぁと思います。

第一弾の『春淫狩り -パブリックスクールの獣- 』は、笠井あゆみ先生のカバーイラストが実は苦手で未読。(笠井あゆみ先生の絵自体は好きなんですけど、表紙絵で突然発揮されるアクロバティックで肌色全開なやつがニガテ…)これを機に拝読しようと思いました。第二弾、第三弾と徐々に服を着ていくカバー仕様ですが、肌色ゼロ状態の着衣エロスが最も難易度が高いと思われるので、表紙は本作がエロス度個人的ナンバーワンです。

上流階級の子息たちが様々な事情で寮生活を送っているグランツ・ブリューテ・ギムナジウム。編入生として名門校への潜入調査を命じられたミランは、校内一魅力的な上級生、ティモシーと同室になる。ティモシーの方から同室を請われたミラン。いつのまにかティモシーのお気に入りとみなされ、下級生たちの羨望と嫉妬を浴びながら、校内に蔓延る怪しげなリアスト教と降霊術クラブの繋がりを暴いていく…といった、ちょっとミステリ要素有りのハピエンBLです。

個人的な印象では、パトリック・レドモンドさんが書かれたイギリスのパブスク作品を彷彿とさせるけれど、本作はブロマンスではなくしっかりいたすBL。18才にして性的に成熟した攻めの色香と、年齢の割にほぼ処女な美貌受けの秘事が最も美味しいところかも知れません。

今作の文体が大変好みで、文章に溺れながら拝読したのですが、文体からイメージされる雰囲気ばかりに注意力が持っていかれちゃって、ストーリー&ラブがあんまり入ってこなかったのですよね…(文体に溺れすぎたかも笑)

時代背景やミランの諜報活動に関わる情報が演出上のためか割愛されているためか少々薄口で、それら詳細を含めた事件そのもののインパクトがもっとあるはずなんだけどな…と。

映画しか観ていないけれど『ピクニックatハンギング・ロック』(こちらは女子校)に近い心理的ホラー感があってもいいくらいだと思ったんですけど、そういえば作者は怖いの嫌いだったんだと思い出しました笑

作家としてのスタンスがむっちゃ好みだってことに気づいたのは、ご本人のTwitterがきっかけです。昔、シリーズものと知らずいきなり『インテリヤクザ』を読んで作家様を敬遠していたのもあって、仁嫁シリーズデビューしようか大変迷っておりまして…。あっ、でも時々単発ものも書いていただけたら、間違いなく飛びつきます♪

4

複雑なバックボーンが絡むストーリー

作家買い。
高月さんの新刊はパブリックスクールもの。高月さん作品×パブリックスクールものというと『春淫狩り』が思い浮かびますが、そこに九鳥さんの描かれたそこはかとなく淫靡な空気感漂う表紙が加わることで期待値も高まり、発売を心待ちにしていました。ネタバレ含んでいます。ご注意ください。




ミランと名乗る少年が、とあるパブリックスクールに転入してくるところから物語はスタートします。

「ミランと名乗る少年」、ということで、彼の本名がミランではないことが序盤から読者に提示されており彼が単なる生徒ではないことがうかがえる。そして早い段階で、彼がとある任務を課されてパブリックスクールに転入したのだということも描かれています。

タイトルにもついているように、ミランはある組織の諜報員。パブリックスクールに転入したのは任務だ、ということも。

パブリックスクールものに諜報員だと…?
面白そうじゃん!と心鷲掴みにされ読み進めました。

ミランは捜査遂行のために一人の同級生に目をつける。ティモシーという名のその少年は色香を纏わせ同性の生徒たち相手にいかがわしい淫行にふける少年ではあったが、その人気の高さから情報にも精通していた。

が、情報を得るために近づいたはずが、少しずつティモシーに惹かれてしまい―?

というお話。

ミランが何の捜査をしているのか。
恋多き男・ティモシーとの恋の行方は。

そこを軸に進むストーリーです。

凄くお上手だなと思ったのは、きちんと「パブリックスクール」という舞台が生きていること。

子どもから少年に、そして大人に移行していく年齢の男の子たち。
山奥にあり、世間から、家族から遮断された場所で学んでいること。
寄宿舎で、全寮制であるがゆえに人間関係が濃くなっていくこと。

こういったバックボーンがストーリーにきちんと盛り込まれ生きているために話が上滑りしていない。

そこにミランの生育環境とかティモシーの魅力、ミランが追いかけている謎(仲間の一人が襲われるという事件も発生します)、さらに二人の恋の行方という部分が加わることでミステリとして読んでも、BLとして読んでも面白い。

しいて言うとバックボーンが多いためか、それぞれが若干浅くなってしまったのが残念に感じました。

ミランの過去とか、彼が追いかけている「もの」とか、あるいは「犯人」とか。それぞれ非常に魅力的なバックボーンでありながら、いやだからこそか?もう少しそれぞれを深く掘り下げて描いてほしかったなあ、という感想も。クソでクソな外道たちにはもっときっちり鉄槌が下ってほしかったと思ったりもしました。

が、それ故にシリアスになりすぎず、救いのある展開なので痛すぎるストーリーが苦手な方でも手に取りやすい1冊かと思われます。

ミランとティモシーの身体の接触、という部分は、それなりに多いです。ミランはティモシーから情報を得るための手段としてちょびっとそういう関係にもなるので。けれど、挿入にまで至るのは最後になってから。この濡れ場がめちゃめちゃエロいです。今までの余裕が二人から無くなり、ひたすらに相手を求めるセックスシーンは綺麗でエロかった…。

今まで自の殻の中に閉じこもっていたミランが、ティモシーと出会い世界が広がっていく。彼らのその後を読んでみたいなとか思いつつ。

高月先生×パブリックスクールというと、個人的にちょっぴり淫猥な空気感をイメージしてしまうのですが、そのイメージを損なうことのない、そんな作品でした。

4

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