「卑怯ですね」 「君より大人だからね――ごめんね」

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表題作フリップ・フリップ・スローリー

萩原 康太,23歳,図書館司書(補)
八月一日 尋一,34歳,文化人類学非常勤講師

その他の収録作品

  • 書き下ろし

あらすじ

「なんと読むのだろう」それがきっかけ――。

閉塞的で目新しい物もない田舎町。
図書館に訪れた、人目を惹く静かな男。
司書の萩原は、自ずとその男を目で追い、彼が本棚の端から順番に本を借りているという法則に気づく。
きっかけは些細で、けれど確かな興味だった。
次第に几帳面に見える男・八月一日の素を知ることになり――。

オオタコマメの紡ぐ、センシティブラブストーリーが一冊に。

【描き下ろし15Pあり】

作品情報

作品名
フリップ・フリップ・スローリー
著者
オオタコマメ 
媒体
漫画(コミック)
出版社
一迅社
レーベル
gateauコミックス
発売日
電子発売日
ISBN
9784758024679
4.3

(83)

(46)

萌々

(24)

(11)

中立

(2)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
21
得点
361
評価数
83
平均
4.3 / 5
神率
55.4%

レビュー投稿数21

しっとりと進む雰囲気が最高

プレイアフターコールがすごく良かったのでこちらの作品も。

まずもう作品全体のしっとりした感じがすごく良かったです。謎めいて見えて悲しみを抱えていて抜けているお茶目なところもあるけど一線を越えさせない八月一日。彼を包む空気ごとどこか物悲しくて哀愁を帯びていて、それが作品にも伝播している感じ。そんな雰囲気を打破するような萩原の真っ直ぐで素直な人柄もすごく良かった…正直者で真面目な感じだけどうるさくなくて不躾に踏み込みすぎたりしないけど八月一日が守ろうとする一線を越えようと行動はしてくれる。そんな2人の人柄で全体的に静かだけどちゃんと動きのある1冊になっています。

そして個人的にドライブの描写がとても良かった〜!ドライブってぶっちゃけ何が楽しいんだろうと思っていたのですが、この過ごし方めちゃめちゃ贅沢だ…これはちょっとドライブ憧れちゃいます。景色の描写も車内の描写もすごく良かったです。

静かな時間にしっとりと読むのにすごくいい1冊です。

0

濃密でも自然に流れていくストーリーの心地よさ


一冊の長さの話を、
まるで短編の一編を読んだように
濃密で、さり気なく、読み終わった後に
爽やかな読後感を味わえる話は
とてもいい話なんだと思う。

全然、知らなくて
たまたま他の方がレビューしているのを
読んだのをきっかけで初読みしたんですけど

伝言ゲームのように、私もとても良かった
おすすめしたい一冊になりました。

なぜか目が追ってしまう、離せない人
その理由を、自分も、そして相手にも伝わっていた。
とても、ロマンチックで
図書館の静かな場所、ドライブする2人
本と海を眺めながら、向けられる熱
そういったひとつひとつがキラキラして
とても綺麗なんです。
個人的に、まつ毛フェチなので
先生の描く繊細なまつ毛もツボに入りました。

大人の素敵な恋
こんなはじまりかたもある、っていうのが魅力ですよね。
ラスト、描き下ろしも2人のこれからに
思いを馳せる余韻が、自分でもしっとりとした気持ちになって、とても良かったです。

1

優しいお話

図書館の司書である萩原が利用者の八月一日と出会うところから始まります。

司書と利用者という関係から少しずつお互いを知り、休日にドライブに行くまでになります。
萩原からの好意に気付き先手を打つズルい八月一日でしたが、萩原は八月一日を諦めず、徐々に八月一日が萩原に絆されていくところにじんわりと萌えていく優しいお話でした。

描き下ろしは初夜でしたが、修正が入る描写はありません。
初めての萩原を八月一日がリードしていく展開が良かったです…!

0

映画を見ているようでした

穏やかで静謐な、独特の空気感を感じます。映画を見ているみたいでした。

図書館に勤務する萩原は、最近図書館を利用するようになったばかりの八月一日(やぶみ)と親しくなる。
最初は図書館のカウンター越しに話すだけだったのが、休みの日に会ってドライブするようになる。
東京で大学の非常勤講師を務める八月一日は、セクシャリティが原因で折り合いの悪かった父を亡くしてから一年、どこにも行けず、戻れず進めず、小休止を決め込んでいる大人。
萩原は彼にどうしようもなく惹かれ、自分との違いを噛みしめながら、寄り添いたいと願う。というお話。

10歳以上年齢が下の萩原が、自分に足りないものを意識しつつ、傷つきながら果敢に言い寄るのが清々しいです。
画面の美しさにもうっとりします。
顔がアップの大ゴマがとても多いのですが、美しいので見とれてしまいます。目の表情がすごく良いです。
心情変化を丁寧に追っているので、最初、大人らしくスマートに躱した八月一日が、どのように萩原に心引かれていったのか伝わってきます。
それこそ萩原が不器用でありつつ、気づけばするりと心の中に入ってきていたのだと。
大人の振りで結構揺れていたことなど、第5話で答え合わせが出来てよかったです。

0

ドライブは人を雄弁にさせる

 萌えたかどうかでいうと、攻め受け2人の組み合わせが好みから外れていてあまりハマれなかったというのが正直なところなのですが、ストーリー展開や台詞についてはとても良質な作品でした。萩原の働く図書館と、彼の運転する車の中でほとんど完結していて閉じられた雰囲気があるのですが、憂鬱な閉塞感というよりは、最初からどこか明るい光も感じるような、落ち着いた明るい空気感が漂っていて心地良かったです。

 相手が貴重な同類である、という仲間意識と恋愛的好意の境界を見極めるのって確かに難しいよなとか、ノンケだろうとゲイだろうと16歳でセックスが怖いのは確かに当たり前だとか、改めて気付かされることもあり。萌えは度外視して、BL読者として読んで良かったなと思える作品でした。

2

文芸系雰囲気系

おだやかでちょっとセンチメンタルな大人ラブでした。
司書さんと大学の先生、そこはかとなく文芸のかほり…。
どこが舞台なんだろ~~?ってモデルになっている場所があったら巡礼してみたくなるくらい情景描写が素晴らしかったです。
んでもって、デジタルツールがほとんど登場しなくて、対話を重ねてじわじわと距離をつめていく司書さんと先生の間に、ゆったりと静かで濃密な時間が流れるのです。

初デート?、ドライブし海辺に車を止めて読書するっていう場面がめちゃエモ!!煩わしい日常から束の間エスケープするふたりが、同じ行為を通して交流してリラックスしてる雰囲気がとても伝わってくるんです。

年の差(23と34)だけど、そんなに開きを感じないくらい司書男子が落ち着いてて大人っぽいんですよね。年上先生のほうが危うさ(訳あり感)があって、またそれが色気なんですけど、なんだかいいバランスのふたりです。きっと読み返したくなるだろうなという独特の雰囲気があります。
本を携えて、どこか遠くにドライブしたくなりました…。

1

大人に染みる

田舎の図書館に現れた、田舎に不似合いな大人の男に目を奪われる年下司書くんが攻めの萩原くん。
八月一日と書いて「やぶみ」と読むその人目を惹く大人の男が受けです。

じっくりゆっくり関係を縮めていく系のストーリーで、距離が近付くにつれてやぶみさんの地元もこの辺であることや、実家の事情で東京から戻ったことや「ゲイと自認した少年期の過去」「家族との確執」を知っていきます。
そして、やぶみさんに惹かれていることを見透かされた上で「僕はやめておいた方がいい」と告白するより先に告げられてしまいます。

ズルい大人と、純朴で誠実な青年の構図です。

この2人のやりとりや距離感、そして静かに流れて行く時間の描写がすごく素敵。
そしてモノローグやセリフの端々に知的さが漂う。
絵がいいんですよね。風景や視線や空気感さえすごく細かく描かれてて。

前作よりもまつ毛の長さやビシバシ感が控えめで耽美さは減ったけども、その分「大人の色気」があります。とにかく素敵。

ストーリーも山あり谷ありみたいな劇的な展開はなく、描かれてる季節は夏の終わりくらいなんだろうけど、心象としてはしんしんと静かに降り積もっていく雪のよう。


この作品は、私の場合はもし10代で出会ってたら「中立」とか付けていたと思います。
つまんな…とか思ってしまう可能性すらある。
大人になって、10代を「子供だった」と振り返れるようになった今だからこそ染みる作品でした。

10代の頃って自分のことをもう大人だと思ってるから、大人になって振り返るとかなり危なっかしいし、もったいない!と思ってしまう。
「初体験なんて一度きりなんだからもっと大切にしなよ!」とか、「もっと言葉を選んでしゃべりなよ!」とか。
そういう自分の青くささや苦さを思い出す作品でもありました。

だからこそ、書き下ろしの荻原くんの「やぶみさんは悪くないよ」という言葉の救済力よ…
染みました。

たぶん、これから年齢を重ねて大人になるたびに、私の中の評価がますます上がってく作品になると思います。

0

今後も気になる作家さん

デビュー作でかなり好感をもったオオタコマメ先生の二作目。
絵柄は、一般的なとっつきやすさは増していましたが、セクシーさは話の内容の影響もありデビュー作に軍配。どちらかというと以前の方が好みだったけど、沢山の方に読んでもらえる絵柄は断然こちら。それにしても車内を描くのはなかなか難しいのに、構図で工夫してるところもあり、お上手です。
デビュー作で気になっていた二人の箱庭感は変わらず。どちらも話の軸を考えると特に世界を広げる必要はないんだけど、カバー下の康太の父なんか非常にいい感じなので、もっと登場人物多めの作品が読んでみたいなぁ。
康太が図書館司書補で、八月一日がその利用者という主役2人なだけあって、作品全体に文学っぽさが漂ってました。邦画っぽさもある。気怠さがいいです。
自分は総じてデビュー作の方が好きだけど、今後も気になる作家さんです。

1

ゆっくり進む物語

ゆったりとした心地よいテンポで物語が進みます。
素敵ななお話だなと思いました。

この中でも描き下ろしがとても好みで感動しました。
何度も読み返したくなる作品です!

0

繊細な画づくり

透明感を感じつつもどこかに湿度もあるアンニュイな作風がとても魅力的でした!
出会い方がとても自然で、ゆっくり穏やかに歩んでいく二人の関係。

大人の傷をそっと救済していく展開が見ていて心地よかったです。
セリフ回しも個人的にとてもツボでした。
次回作も楽しみにしています!

1

フリップ・フリップ・スローリー

すごく穏やかなお話で沁みました
好きです
前作のDomSubのお話も好きで、表紙も印象的だったので手に取りました

お話のテーマは恋愛が主なのですが、家族とか葛藤とか生き方そのものとか、深いものが描かれているように感じました

なので、二人の関係もすごく深いところでの結びつきを感じられて良かった

視線や二人の空間に色気とか下心があるように思えてそれもすごく好きです

多くは語られないからこその、心情描写が繊細で余韻の良いお話でした

描き下ろしやカバー下にほっこりしました
それもすごく好き
満足度の高い一冊でした

1

書店で絵に惹かれました

こちらの作品は全然事前にチェックしていなかったのですが、たまたま書店で複製原画が数枚展示されていて、そちらを読んで惹かれて購入しました。
絵も綺麗でストーリーも優しいお話で本当に書店で見かけて購入出来て良かったです。
最近は通販で購入することが多いので決まった推し作家さんの作品ばかり読んでいましたが、こういう出会いもあるのでリアル書店に足を運ぶのも良いものです。
田舎町の図書館で司書をしている萩原と、そこに通う八月一日という変わった名前の目を惹く男性。
最初は図書館での顔見知りみたいな関係から、ちょっと気になって萩原が声をかけて送っていく友達のようになってから、ゆっくり距離が近づいていくようにみえたけれども・・・というところから、話が展開していってというお話で、なんとも言えない読後感でしたが、先生のストーリー展開がおじょうずなので物凄く自然にふたりの関係の変化を寄り添って見守ることができました。
ミニシアターで上映されるような映画を1本観たような気持になりました。
あまり詳しく説明しすぎると面白味が減ってしまうと思うので、できれば内容調べ過ぎずに読んでいただきたい作品です。じんわり心が温かくなりました。

2

読後の余韻がいい

フリップ・フリップ・スローリー
オオタコマメ
2022年10月発売

紙コミックにて購入
カバー下、あり
あとがき、あり

図書館司書の萩原康太(はぎわらこうた、23才)が勤務する図書館に頻繁に本を借りに来るようになった八月一日尋一(やぶみじんいち、34才)。2人が出会い徐々に親しくなっていく過程が凄く自然です。
  
2人とも落ち着いた性格なのもあり、割と淡々と物語は進みますがラスト近くの展開に胸がざわつきました。八月一日のちょっと諦めたような冷めた気持ちで生きる姿勢が分かる。そしてそれは間違った生き方ではないんだけど本心からそんな生き方をしているのかと問われたらまたちょっと別かなと。荻原の若さと純粋さ、ちょっと人生諦めた感がある八月一日だからこそおきた化学反応。2人が出会い混ざり合って、新たな人生が始まった。これだけしっかりと心の動きを丁寧に描いたお話をよく一冊にまとめ上げたものだと感心しました。激しさはないものの、読後感がとてもいい作品でした。書き下ろしもとっても良かったです。

1

大人の傷を癒す救済ストーリー

素晴らしい、こういうのが読みたかった…
静かに静かに二人の気持ちが向かい合って少し離れて溶け合う、その過程を丁寧に描いている、けど全くくどくなくてシリアスすぎない日常感に溢れている。どこかにいそうと感じさせる二人を美しくみずみずしく描き切っていて没頭しました。若いあの頃誰かに言ってもらいたかった、こういうふうに気持ちに寄り添って欲しかったという尋一さんの思いに等身大で寄り添おうとする萩原くん。展開が自然で大げさな感じがしない、でも漫画らしい美しさ。繊細なタッチで紡がれる大人のラブストーリーでした。表紙裏も感動する。二人が肌を重ねる場面も美しくて涙が出そうになりました。初めて読んだ先生ですが大好きど真ん中でした。何度も読み返したい作品です。BLだけど自分の中の穴も埋まるようなそんな癒しの救済ストーリーでした。

1

台詞回しの妙

著者のはじめましての作品はDom/Subユニバースでした。
まだDom/Sub作品がそう多くない中で繊細ながらも
Dom/Subの世界観を明快に描かれ、次回作も楽しみだなぁと
思った記憶があります。

そんな印象が残ったまま読んだ本書。
今作も感情の機微や台詞選びなど繊細さはそのままに、
人肌の心地よさが伝わってくる味わいあるお話でした。

物語の舞台は小さな田舎町。
図書館司書の萩原は利用者として訪れる男・八月一日に興味を惹かれます。

人目を引く外見で、端から順に本を借りてゆくどこか不思議な空気を纏う男。
気付けば目で追っていた。

ある日、バス停で八月一日を見かけた萩原は車に乗らないかと声をかけ…。


第一印象は大人の恋だなぁ、と。
といってもセクシャルな、という意味ではなく。

大人だけれど、純粋さも、繊細さもあって、
熱はあるけれど勢いで踏み込みすぎるようなこともなく、
変に予防線を引いてしまったり、伺いながらじわじわと
距離を詰めていく二人にああ、ちゃんとした大人同士だな、と感じてしまった。
そう、大人って臆病なんですよね。

田舎でゲイとして生きることの息苦しさや家族との関係、
恋愛感情の板挟み感が伝わってきてほんのり切なかったです。

八月一日は家族や友人に本人の意志に反して性的指向を知られ、
地元で生きづらくなってしまったという経緯があるのですが、
そんな八月一日の傷を癒してくれる萩原くん、包容力に溢れておりました。

まっすぐ純粋で、見た目は地味だけど、23歳にしてこんなに
人間力が出来上がっているなんて、将来が有望すぎでは?
過去のトラウマですっかりひねくれてしまった面倒くさいおじさんな
八月一日とはまさに割れ鍋に綴じ蓋でぴったりでした(笑)

派手さはないけれど、二人の人物描写がゆっくりと、
丁寧に描かれているのがとてもよかった。

台詞の一つ一つにもその人の体温や人柄が感じられ、
二人の言葉のキャッチボールが面白く、文字を読むことに小説を
読んでいるようなわくわく感がありました。

お色気は控えめです。
八月一日は常に艶めいてはいるけれど。
濡れ場といえるのは最後の描き下ろしくらい。
初めてで緊張している萩原を大人の余裕で導いてやる
八月一日の色っぽさの何たることでしょう。
都会で相当場数踏んできたんかなぁ…なんて不埒な妄想を掻き立てます。
萩原の言葉に16歳の頃の八月一日が救われてよかった…。

今作は主要二人以外にも登場人物がいるのですが、
脇役たちの人柄も魅力的揃いでした。
主に萩原の家族になるのだけれど。
中でもお父さんの人柄が底なしに温かく、脇役にしておくには
もったいないと思わせる程に人間味が滲み出ていました。
読後、カバー下のやりとりを読んだ時にも
息子のカミングアウトに対する父の返事が優しすぎて
涙腺にじわりときてしまった。

やっぱり著者様の作りだす空気感や台詞回し、好きだなぁ。
次はどんなだろう?次回作も楽しみです。

7

表紙買い

男性2人がドライブ中に正面からこちらを見上げているようなアングル。綺麗なブルーの色合いといい、あまり見ないような素敵な構図だったので試し読み後久々の表紙買いをしました。

おしゃれな都会のゲイストーリーかと思いきや、閉塞感のある地方で人目を忍んでの密やかな恋。自嘲気味の年上受けは地元や親との過去にトラウマもあり、なかなか心を開いてくれません。30代前半ならそんなにおじさんでもないと思ったけど攻めがとても若かったのでそう言ってしまう気持ちもわかりました。大学の教え子とそう変わらないと思えば。

攻めは新卒司書のDTゲイでしたが、DTパワーでひたむきに受けへアタックし続けた結果攻め落とす姿に好感を持てました。攻めの悲しい過去を愛の力で解放してあげるようなシーンがロマンチックで良かったです。

3

目が印象的でした

この作家さん、私は初めまして、でしたが、目が印象的ですね。
じっと見つめられる感じがしてドキドキしました。

田舎の恋。最近も田舎が舞台の話を読みましたが、田舎は噂好きで隠し事ができない感じ。そして閉鎖的。
やぶみさんは自分がゲイということが知られてしまい、親に勘当同然で東京に行ったけれど、父親の死をきっかけに田舎に戻ってきた。親と生まれ故郷を嫌いになり切れないんですね。優しい人です。
ここに住むのも東京にもどるのも、ほんの些細なきっかけで決まりそうな微妙なバランスだったんでしょう。
自分の境遇と似たような康太と出会い、前を向いて歩けるようになって良かったです。

BLを読んでいて、運命の相手というか、性格、考え方、人間性の相性ってあるんだなと思います。今まで止まっていた時間が大切な人との出会いでうまく回り始める感じ。
そういう作品が多いのがBLの魅力の一つだと思います。

書下ろしのえっちも良かった。二人のことが田舎で噂になるかもしれないけれど、親の理解もあるし、今度は二人で乗り越えられると思います。

4

心地良い

司書さんと大学講師のお話でした。
どこか謎めいた雰囲気を纏っている八月一日ですが、しっかりしていそうで実はちょっぴり抜けているところもあったりして。知れば知るほどその印象が変わっていくのも魅力的でした。
八月一日が先生だと知ったとき、それを萩原が「解像度が上がった」と表現したのがすごくしっくりきて、上手いな〜と思いました。

ふたりの間には恋に落ちるキッカケになるようなエピソードはないのだけど、なんとなく気になる存在から始まっていく恋がふたりらしさを表していて素敵だったな、と。
お互いに抱えるものや考え方は違っても、真っ直ぐに向き合えば交わる想いがあるのが美しかったです。

すべて読み終えてから彼らの年齢を知ったとき、ふたり共想像していたより若くてちょっとびっくりでした。

大きな波はなく穏やかに展開していきましたが、それが静かなふたりの雰囲気とマッチしていてとても心地良いお話でした。

3

オトナの心はセンシティブ

前作が良かったので注目してました。
本作はDom/Subとかオメガバースとかではない、社会人同士の普通の出会いと恋愛感情の物語。どちらかというと地味で静かな。

舞台は普通の田舎町。
主人公はその町の図書館に勤める萩原。
その図書館にある時から一人の男性が通うようになる。
彼の苗字がとても珍しい難読苗字で、それで萩原はその人の事を気に留める、という始まり。
その名も「八月一日」さん。「やぶみ」さんです。読めない。
はじめは名前から。目を惹かれていく萩原。
終バスに乗り遅れたやぶみを送ったことから少しずつ距離が縮まり…
…みたいなストーリーなんだけど。
このやぶみ氏が何とも低温というか、のらりくらりしている。
本心を見せないというか、周囲に対して見えない壁を作っているような空気感。
その意味は中盤である意味唐突に明かされるんだけど、やぶみはゲイ。そして萩原もゲイ。
だけど、オレには惚れるなよ、と言わんばかりの牽制をかましてくる。あくまでも静かにね。
でも、大人しそうに見える萩原が意外と頑張る、というか食い下がるんです。
ストーリーとしては特別なイベントも事件も起きません。
やぶみはともかく、萩原はそれほど生きづらさを感じてなくて比較的自然体です。
やぶみが萩原の感情を受け止める事にしたのは、どんな心境の変化があったのかな…
2人は約10才ほどの年の差。
少年の頃、自分はゲイであることが可哀想な事だった。でも萩原は違う…そこに気づいた、のかな。可哀想じゃない自分を萩原とやり直す、そんな感じ?

本編中にエロはなし。描き下ろしが全部2人のラブシーンとなっています。
萩原はDTでした〜。

絵柄はとても綺麗。目のアップとか特に美しい。
前作のレビューでも書いたけど、耽美系が合うんじゃないかなと思ってます。

5

切なくて優しい

作家様買いです。

前作の『プレイアフターコール』の雰囲気がすごく好きで
こちらも購入したのですが、やっぱり独特な雰囲気があってよかったです。

田舎の図書館の司書萩原くんと、そんな図書館にある日突然やってきた八月一日とのお話。
エロは少なくお話重視になっています。
恋愛よりもマイノリティや家族についての話のほうが多い気がしました。
同性を好きになる葛藤なども描かれており
高校生の頃の八月一日のことを思うと、読み終わった今でも胸が痛みます。
でも、萩原くんのとある言葉は、今の八月一日も、あの日の八月一日のことも救ったような気がします。

八月一日が萩原くんと出会えてよかったし、二人が付き合ってよかったなぁと心から思いました。
簡単にはいかないことがこれからもあると思うのですが
二人で寄り添って生きて行って欲しいです。

0

あっさりだけど深みはある?

作家さま買いです

なんですが 作家さまが醸し出すあのなんとも言えない優しい空気感をあたしの性格や口汚さで語ってはいけないような


なので サクッと



読んでいて感じるのは 水平線に沈む夕日をいつまでも眺めているような 果てしない空の隅っこの夜明けをまちながら微睡んでるような

淡く儚いんじゃなく 鮮明で苦しいっていうのか
えっと 何いってるかさっぱりわかんないですよね すみません

だからあたしじゃムリなんだってッ! こういう繊細なお話


図書館司書と大学の非常勤講師

その恋愛対象が同性であることに戸惑いながら 家族とすれ違っていった八月一日(やぶみ)
彼の中に残る傷が 自覚はあっても口にすることはなかった萩原のキモチに先手を打つ


あの ほぼエロなしです
立ち止まっている心に寄り添い癒していくお話しなので 逆にエロの必要性を感じないというか そう思わせてくれるのでエロに関しての物足りなさはなかった

ただこの口をついてでたドライブの誘いから動き出す 斜陽の中にあってどこか陽だまりみたいな暖かさを感じるような ゆっくりと流れる時間に季節を重ね想いを繋いでいく優しいお話しの何をどうすりゃネタバレなしで語れるか?


正直これと言った何かがあるわけでもなく 年のわりに萩原が大人すぎたり ここからが恋ってところで終わってるので物足りなさとか中途半端感はある

あるんだけど 多少はあるんだけれども 
携えた性格の違いや家族とのつながり 受け入れるその関係の魅せ場がカバー下まで続いていて 優しいものにゆっくり馴染まされていくみたいな

そう 目にも優しかったの
 
エロの過剰摂取でチカチカしてたあたしにはこれくらい穏やかで綺麗ごとなのが丁度よかった


えぇ 上手くまとめるチカラがないのでこの辺でとんずらしますが オオタコマメさんが描かれるこの何とも言えない優しい空気 ほんとすき 癒しだわ

6

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