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キャラ文庫で復刊されている1945シリーズ、復刊の第二期1冊目。
待ってました。いまのところ第二期は3冊分タイトルが発表になっていますが、この後も続刊予定だそうなので嬉しい限りです。わんこ待ちしています。
さて、「彩雲の城」。
本のほとんど丸丸一冊が表題作の「彩雲の城」ですが、ほかに、本編の補完ともいうべき「CLOUD9~積雲と天国」、続編の「家」「胡蝶の夢の続き」の全部で4編収録です。「胡蝶の夢の続き」のみ書き下ろしです。
この二人のことを最初は掴み所の無いCPだなと思っていました。
元々、二人それぞれに背景(生い立ちとか南方に来た理由とか)があって、それなりに込み入っていて重くて、それだけになかなかお互いに歩み寄れない。ほかに誤解もありましたし。
でも胸襟を開いて少しずつペアらしくなっていく辺りは、後から考えるとこの二人らしいなと。
伊魚の危うさを藤十郎がカバーするのが目立ちますが、藤十郎が沈み込む時には伊魚が寄り添っていたり、二人でいるからこそ藤十郎が彼らしく居られるように思えるので、これまで登場したCPの中で一番対等かも知れないと思いました。
呪いの人形・呪いの札のエピソードは面白くて、特に仏像は戦後になっても禍々しいなどと言われて笑ってしまいました。
藤十郎の外見の描写が少なくて、想像するのに掴み所がなくて、挿絵に頼ってしまったところが少し残念でした。
はじめの頃は伊魚が潔癖症かとの推測で語られていまして、軍隊で潔癖症は成り立つのかと疑問でしたが結果そうではなかった。
伊魚は潔癖症ではなかったけれど、そういう人も実際には居たと思うので、辛かったのだろうなと。
ただ、「CLOUD9~積雲と天国」を読んでいるともう潔癖という以前に生死が直面していて、生きていくためには仕方ないとはいえ、人とケモノの境目みたいなことを感じました。伊魚と藤十郎ふたりで居るから人間性を保っていますが、一人だと精神的に相当来ると思いました。
「CLOUD9~積雲と天国」は読みながら、密林で終戦を知らないまま生きておられたYさんのことを思い出しました。
「胡蝶の夢の続き」で、藤十郎の社会性、社交性を目の当たりにして、戦後となった今は本当は相手は自分ではないほうがよいのでは、と内省的になるシーン。全然そんなことはないのに勝手に自分で自分を切り離そうとする伊魚に、言葉と態度の両方でお前が唯一だと言う藤十郎が良かったです。
本編には琴平・厚谷ペアが、「胡蝶の夢の続き」には鷹居千歳が出ます。そういうのも楽しいです。
恒なんて出番が少ないのに、「貴様のペアの名前を言え」という科白が強烈で、頭から離れません。
牧先生の挿絵はいつも素晴らしいですが、今回は特に巻末の見開きイラストが気に入っています。
どうしようかなと思ったけど購入。伊魚が可愛いなと思ったのと、多分忘れなさそうなので萌2に近い萌にしました。戦争はしんどいんだよ…。本編300Pほど+小編3編70Pほど+牧先生のイラスト(沁みます)。
今までの隊が解隊となったのを幸い、後ろにのる偵察員に厚谷を希望して走り回った藤十郎。残念ながら厚谷とペアにはなれなかった上に、扱いにくい最新鋭の飛行機、彗星とそれにくっついてきた偵察員の伊魚とペアになることになって・・・と続きます。
攻め受け以外の登場人物は
厚谷、琴平ペア、堀川(整備員)、受けの元上官(伝聞)ぐらいでしょうか。千歳もちょびっと。
++しんどかったところ
最初はいいですが、ラバウルですから、終戦に向かってあれこれ厳しくなるんですよね。恋話というより多少綺麗に整えた戦争話を読んでいるような心地になるんです。血みどろ話は無いんですけど、それでも怖い。爆撃の話が少しとか弾が当たった話が少しとかなんですけど、迫りくる恐怖といえば良いのでしょうか。どうなるのどうなるのと不安に思いながら読むのが、しんどいんです・・小心者なもので。
二人が少しずつ心を通わせていく様子はとても良かったし、受けのモールス信号はきゅーんとしたんですけど、やっぱり戦争もの(かなりリアル寄りなもの)、しんどいなあ・・平和を守らなきゃと思うご本でした。飛行機飛んでいるシーンは、ほんとにハラハラです・・・
1945シリーズの新装版
彗星ペア、凛々しい姿の藤十郎、伊魚の新しい表紙でまた彼らに再会できました。
何よりもキャラ文庫編集部に感謝しつつ、尾上先生や牧先生の作品に対する愛情が新装版になってますます強く感じられ読者の一人としてこのシリーズに再び再会でき、大変嬉しく思っています。
それぞれのペアの魅力は様々ですが、この彗星ペアは伊魚のクールでありつつ心に秘める藤十郎への想い、藤十郎の優しさとナチュラルな人柄に惹かれます。
切なく胸痛いエピソード
その間で揺れる彼らが愛おしくて大好きです。
この作品のみならずシリーズがこれからも多くの方々に読み継がれていくことを願ってます。
過酷な戦地を舞台に繰り広げられる人間ドラマが非常に魅力的な1945シリーズの新装版も5作目。
おそらくこちら単体でも問題なく読めるかなと思いますが、先に碧のかたみを読まれているときっと時折ちらりと姿を現す人々にうれしい気持ちになれるかも。
1945シリーズの最大の魅力はどこか?と考えると、やはり文字通りすべてを預け合う、唯一無二の「ペア」要素でしょう。
今作のペアはというと、彼らの機体も搭乗する側も個性的な組み合わせで新鮮な気持ちで読めました。
遠いラバウルの地で、操縦員と偵察員として組まされることになった藤十郎と伊魚。
どちらもラバウルにやって来るまでのバッグボーンが複雑ではあるのだけれど、特に伊魚の過去が複雑がゆえになかなか深いペア関係になってくれなくて困りました。
本編はほぼ藤十郎視点で進むのもあって、どう見てもわけありな伊魚の頑なさと危うさの理由が分からないのです。
ですが、寝食を共にしながら彗星に乗る日々の中で、本当に少しずつ伊魚のいじらしくかわいらしいところが見えてくるんですよね。
彼が指先でそっと叩くトントンツー…から始まる言葉の意味を藤十郎が知った時、読み手側もどうしようもなく心乱される。
なんてじれったいのかと頭を抱え、そこからはただひたすらに、居場所がなかった2人が身も心も預け合う唯一無二の関係になるまでの過程をじっくりと見守りました。
こうと決めたら真っ直ぐで、一度懐に入れたらずっと包み込みそうな藤十郎の人柄が好ましかったなあ。
甘さと辛さのバランスがちょうど良い2人だったと思います。
藤十郎が伊魚に心から惹かれていく気持ちが理解できてしまうほどに巧みな心理描写と、彼らが見たものの情景が頭に浮かぶような文章力が素晴らしかったです。
戦中の戦地でありながら、個性あふれる藤十郎と伊魚の趣味のエピソードなど…ところどころでほっと一息つける平穏さもあるのだけれど、きちんと1冊の中でグラデーションがかかっていてピリッと締めるところは締めて読ませてくれる作品でした。
共に食べて、共に語って、共に眠れる。
何気ないことのようですが、おかえりとただいまの4文字が言える場所があるというのは本当にかけがけのないことだなと感じます。
シリーズ復刊5作目
ありがとうございます。
今回はなかなかに癖の強いペアでした。
頻繁にコメディが展開されるが故に、戦禍の只中にも平和はあれど、その平和には未来が存在しないのだと改めて思い知らされるばかりでした。
「ただいま」「おかえり」がある生活の尊さ。
〜以下ネタバレ〜
奇跡的に生きて辿り着いたのは、戦と無縁の楽園の孤島。
花は咲き乱れ、鮮やかな南国の蝶が舞う。
そこには人間の居場所は無く、命が尽きていくのを待つだけで......
文明と隔たった静けさが、とても印象的でした。