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表題作深呼吸

谷地健司,43歳,弁当屋でバイトのリストラ社員
榛野佳久,34歳,外資系企業の元上司

その他の収録作品

  • 深呼吸2
  • あとがき

あらすじ

谷地健司は20年近く勤めていた外資系の会社をリストラされてしまい、40歳を過ぎて弁当屋でアルバイトを始めた。
リストラのショックが癒え、穏やかに過ごしていた彼の前に突然、榛野が現れる。
榛野はアメリカの大学院を卒業したエリートで、谷地に冷酷に解雇を言い渡した年下の上司だった。
無能と宣告されたような気持ちを思い出すので二度と会いたくないと願っても、彼は毎週末やってきては弁当を買って話しかけてくる。
その真意は…?

(出版社より)

※電子版もイラストが収録されています。
 尚、イラストは紙書籍と電子版で異なる場合がございます。ご了承ください。

作品情報

作品名
深呼吸
著者
木原音瀬 
イラスト
あじみね朔生 
媒体
小説
出版社
リブレ
レーベル
ビーボーイノベルズ
発売日
ISBN
9784862639066
4.2

(131)

(70)

萌々

(41)

(10)

中立

(3)

趣味じゃない

(7)

レビュー数
25
得点
547
評価数
131
平均
4.2 / 5
神率
53.4%

レビュー投稿数25

木原先生の描く受けってなんでこんな刺さるんですかね..

ちるちるの質問箱で、美しいことの松岡さんと似た受けが出てくる作品を質問したところこちらを教えてもらいました。
まず、リストラされた×リストラしたの組み合わせ本当に最高です。私は受けがステータス高い作品が性癖で普段から強気受け、高飛車受けを好むのでクリーンヒットでした。

でも、それだけじゃないです。やっぱりなんていうんですかね、、。木原先生の描く受けってなんかもう本当にいじらしくて可愛いんですよね。自分が攻めに嫌われたと思うと、電車から飛び降りて死にたくなる、みたいな思考回路とか。普段受けはそういうキャラじゃないのに凄く健気に攻めの事を好きでいて、恋するってこんな感じなのかな、、って凄く目頭熱くなっちゃうんですよね。感情移入させるのがとっても上手いなって思います。


攻めの谷地もゆったりした温厚なキャラで良かったです。やっぱり、40すぎて年下の上司にリストラ勧告食らうという屈辱も勿論持ち合わせているし、卑屈になったりもするけど、少しずつ榛野を受け入れていく様子も徐々にだからこそ読んでてなんだか心温まるものがありました。

最後のロンドンでの5日間も良かったですね。谷地はノンケなのにわりとスルッと男同士のあれこれを受け入れてましたね。もともと榛野の自分に対する好意は気づいていたから心の準備の時間が確保できてた分拒絶したりすることがなかったのかな。木原先生の作品は攻めが絆される事が多いと思うんですけど、私はそれが大好物です。

木原音瀬先生の作品は4作品くらいしか読んだ事ないですが、木原先生にしてはかなり優しい作品だと思います。おすすめです。

1

漂う空気感が好き

リストラされた職場の元上司が自分のバイト先に通い詰めているところから物語は始まります。
いい大人同士なのに、くすぐったくなるような初々しさ。
そこに猫がプラスされ素敵な時間を共有できます。


受けの榛野は情に流されず効率重視で動ける有能な男。
それは日常生活でも同じなはずが、谷地が絡むことにより歯車がズレていく。
相手を意識するほど、胸を張れるいつもの自分らしさがおかしなものに変わっていく。それに動揺し恥じる姿が可愛かった―。

谷地はゆったりとした独自の空気感、居心地の良さがこっちにまで伝わってきました。

注目すべきはラスト。

イギリス生活が終わる時は進展したどころかベストな関係になったにも関わらず、榛野があじわった喪失感のようなものに、こちらまで悩まされました。
幸せなはずなのにとんでもなく寂しい!!
それだけ谷地の存在を色濃く感じさせてくれたんですよね。
ハッピーなのに切ない!!
絶妙な塩梅の終わり方が新鮮でした。

イラストもベストマッチだったと思います。
谷地の容姿を見て某走り屋を思い浮かべたのはきっと私だけですよね(笑)
でも所々無意識ながら三木さんボイスで変換されていた気がしてきた(笑)

二人の空気感を身近であじわえる読みやすいお話でした。

0

ヤチさんと猫チャン

「たくさんあげたから、お腹がいっぱいになったはずだ。あの鳩は今晩、寝床できっといい夢が見られるよ」

そこまでネタバレはありませんが一応付けました。
木原さんのお話では地獄や性悪な人間を読むのが楽しく、「ほっとする」「癒し」は求めていなかったので後回しにしてしまっていたのです。それが読んでみたら本当に素敵で。無駄を省き合理的な現代人の榛野と同じように、ほっと谷地さんに癒され、家に居つきたくなりました…

ちるちるさんの作品評価基準は「万人にお勧め」なのが神評価との事。ですが私を含め多数の方々は、一部の人は受け付けないけど抜きん出て素晴らしい作品を神と評価する事も多いと思います(違っていたらすみません)。この作品はどちらに於いても神評価だと思いました。

自分と違う性格や考え方に触れて視野が広がるお話が好きです。木原さんの描く、側からみれば特別な特徴の無いような主役然としていないおじさんがどんどん魅力的な人になって好きになるお話も大好きです。
リストラされて弁当屋のアルバイトをする谷地さんは、きっと現実で出会っても会計を終えれば忘れてしまう人に過ぎないのですが、彼の時間の過ごし方、生き物との向き合い方に触れるとどうしようもなく『好き…』となります。

完璧なエリートで仕事人間の榛野が、聞きたいこと言いたいことをスッパリというのも気持ちが良いし(谷地さんも鈍感だから二人の会話が面白い)、話が進むにつれてどんどん甘ずっぱくなっていくのも良いです。彼の人間らしい部分、甘い部分が谷地に触れられ撫でられて猫のように流れていくのがとても可愛い。この猫という表現はありふれていますが、この作品にとっては根底に流れているキーワードであり、榛野の変化であるので、読み進めると何だか胸がいっぱいになります。

谷地の数々の台詞と行動が繋がり、本当に優しくてあたたかくなるのですが、それと同じく恋の切なさも凝縮されたラストは悲しいとか嬉しいとかでなく、愛に涙しました。

情事シーンは多くはないですが露骨具合も繊細さも、相手が好きで大切にしている感じがしてとても好きです。台詞も甘い…!
榛野の周りがちょっかい出すのも楽しいです。要らんことを谷地に吹き込む(勘違いで)医師、榛野とのワチャワチャも見てみたかった。イギリスの同僚も。

5

心情がとてもリアル

何度も読み返したくなるお話ですが
間を空けると序盤の谷地さんが気の毒なのと
坂口に「あいつは(榛野が)リバだから楽しいでしょ」って言われて
リバを若者の流行言葉だと思ってしまうどノンケ谷地さんに
わぁああああってなってしまうんですよね。
そして「坂口てめぇ何言ってくれてんだ!」になるまでセットですww
途中まで、リストラされた43歳の悲しさが書かれているので
妙な話ですがBL作品と意識しない感じなので
読み返すたびに驚くんですけど私だけかもしれません…。

谷地さん視点だと榛野の考えてることがわからず、
榛野視点だと谷地さんの考えてることがわからないので
随分もだもださせられるんですが
すごくリアルな心情でぐいぐい引き込まれてしまうんです。
自分でリストラを言い渡しておいてわざわざ弁当屋に来るなんて無神経だな、とか
あまりにも歯に衣着せぬ物言いが凶器みたいで
もう関わらないでいてくれたらいいのにと榛野に対して思いますが
榛野は榛野で初めての本当の恋に戸惑っていたなんてなぁ…。
自分の根底をひっくり返してしまうほどの相手が谷地さんだというのが
つい後からじわじわ来てしまいます。
ロンドン編ではとにかく谷地さんが絶望的に鈍いな!!と思ってしまうww
だけどそれも込みで榛野はどうしようもなく好きだから
自分の落ち度を呪いたくなったり恥ずかしさで消えたくなったり
日本人観光客の女性に嫉妬したり忙しいんですよね。
幸せの意味を知ってしまったあとの寂しさがまたしんどくて
あの榛野が…………と感慨深くなるのです。

谷地さんがあんなに頼りない感じだったのに
榛野視点だとなぜか別人のような余裕のある年上のひとに見えてしまうのは
もしかしたら榛野フィルターなのかなぁww
いやいや、実際谷地さんはいい人ですからね。
真面目過ぎて榛野の行為を途中で拒んだ時はつい怒りを覚えてしまいましたけども。
あんなに非効率的なことが嫌いだった榛野にずいぶんと人間味が出て、
ラストはちょっと切なくなりますがとても充足感を得られます。
もしかしたら木原作品で一番好きかもしれません。

6

じれったい!もどかしい!!

イタイお話が大の苦手で、なかなか手を出せない木原先生。これは大丈夫な方と答姐で書かれていたような記憶があり手に取ってみました。はい、イタくはなかったです、じわじわ萌えーとする作品でした。教えてくださった皆様、有難うございます。
b-Boy2002年11月号に掲載されたもの100Pほど+その続きの書き下ろし140Pほど。40代と30代という分別あるはずの大人のもどかしい恋模様 です。色っぽいシーンは少なく、地雷として40代おっさんに少々女子が絡むこと でしょうか。
とにかく年齢層がほんのちょっと高い・・・ので萌どまりです。この年齢でないとこの味はでないと思うんですけどね・・・やっぱり美しい~★というビジュアルの方が好き・・・・

継続して淡々と業務を行うという点において優れている40代さん。評価としてはやはり劣後となりリストラ対象になります。そのリストラした方が30代さんで、40代のおっさんが始めたバイト先(お弁当屋さん)に弁当を買いに来る。1回のみならず何度も・・・。
登場人物はこの二人と40代さんの親戚筋(♀)、30代さんの同僚、セフレ等 です。

弁当何回も買いに来てるやん、なんか気がつけよ と思うのですが、このおっさん、もともとの性格に加えて40代だからか、とことん気がつかない。そんな二人がちょっと近づくところまで が前半で、後半はロンドン赴任した30代さんのところへおっさんが電撃訪問してくるというもの。そんな行動力あるんやったらもうちょっと早くに動けよ という気もしますが、ここまで焦らしてくれたからのこの最後の感動かもしれないです。

とにかく最後がいいです。じれったくて途中苛々もしたのですが、この最後で全部OK!と思ってしまいました。

1

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