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命を懸けた、せつない片想い。
まさかこんなことをされるなんて!
一生忘れられないような出来事がありました。
小説としても大変おもしろかったです。
攻めの執着が意外とすごい。
幼少期に助けてもらったから憧れたみたいなきっかけだと言っていますが、別に彼にだけ助けられたわけじゃないので、単純に一目惚れとかそういうものだったんだと思いました。
手の甲のホクロ、そんなに気に入られてたんだな…
攻めのお父さんが普通にいい人で良かったです。
受け非常に大切に取り扱ってくれる、常識的なお父さんでした。
瑠璃色のとんぼ玉。鏡写しのオリオン。
傷ついたルリビタキ。透明なインク。
これらを鍵にしながら、物語は進んでいきます。
尾上先生の1945シリーズの1作目で、太平洋戦争時代を生きた人達の物語。シリーズの中でもこの作品は少し異色で、日本を舞台に物語が進んでいきます。痛くて、苦しくて、切ないけれど、とても美しいお話。私はシリーズの中でこれが一番好きです。
舞台は昭和19年で、終戦間近。戦況が思わしくない日本が、起死回生を狙って特攻隊を募り、敵軍を撃墜させようと躍起になっている時代。そんな中で、受けの希は自分の命の恩人であり、初恋の人でもある資紀が、特攻に行かなければならない状況にあると知る。希は自分が彼の身代わりとなるために資紀の家に養子としてやってくるけれど、資紀は自分を助けてくれた昔とは違う、冷たい青年に成長していた。それでも希は、昔の恩を返したいという一心で、特攻に行くまでの短い期間、資紀に報いようと様々な手を尽くすけれど、そんな希に、資紀はただつらく当たってくるばかりで…。というお話。
戦争の時代をテーマにしていますが、掘り下げすぎることなく、軽く扱っているわけでもなく。尾上先生独特の美しい言葉で物語が綴られていて、とても読みやすいです。戦闘機などの描写も、この作品ではほとんど出てきません。理由は主な舞台が戦場ではなく、出撃する前の日本での生活だというところが大きいかな。ただ平和な今の時代とは違い、常に死と隣り合わせという状況があるので、そこから生まれる感情や葛藤、覚悟なんかは重く苦しいものが多いです。でも読んでほしい。物語後半は涙無しには読めませんでした。
主人公の希がただひたすらに健気。天文学を志す父の元に生まれたため、賢くて聡くて、どこか達観してる所がある子なんですけど、そんな賢い子でも理由が分からないくらい、攻めから色んな理不尽な扱いを受けます。到底叶えられない無理難題を押し付けられたり、大切なものを壊されたり、無理やり体を暴かれたり…。でも、それでも希はひたすらに攻めを疑わずに慕い続けようとするんです。5歳の頃助けて貰った大切な思い出と、長年大事に温めてきた資紀への気持ちを、その張本人からどんどん粉々に壊されても尚。その姿が見ていて可哀想で、痛々しくて。読み進めるのが辛いシーンもありました。ほんとにこの子がいい子すぎて健気すぎて、攻めの資紀さんに対して疑心暗鬼になりながら読み進めました。
攻めの資紀の性格がなかなか拗れてて読めないです。優しいのか、冷たいのか、昔の彼と今の彼のどちらが本物なのかがほんとに分からない。彼の内面に触れられる描写が物語中にほとんどないので、読者は希と同じ気持ちで話を読んでいくことになると思います。なんで?どうして?そんな気持ちではらはらしながら私も読みました。
王道の展開かと思いきや、衝撃のシーンが待っていたり、なぞかけのようなものが端々に隠されていたり。読み応えは十分です。戦争物にありがちなきな臭さ、生臭さはあまり無く、星を大きなテーマとして、どこか幻想的で美しい雰囲気でストーリーは展開していきます。少しだけネタバレを含んで言いますと、死ネタ、バッドエンドはありません。そして読み終わった後は、資紀の視点でもう一度読みたくなるはず。私は彼が唯一優しく希を抱いたシーンを読み返して、涙が止まりませんでした。本編後の短編で、穏やかな2人のその後を垣間見ることが出来ます。この手のお話が苦手ではない方はぜひ、読んでみてください。
そして尾上先生が出されている同人誌「葉隠否定論」ではこの作品の資紀視点で物語が繰り広げられ、彼の葛藤や希への狂おしいほどの愛が描かれています。作品を気に入った方には必読かと思います。そちらも合わせて是非。
奇跡の泉シリーズで、尾上さんの描く命がけの愛に強く惹かれるものがありました。
そこで1945シリーズも思い切って読んでみました。年代から死に別れを連想してしまい、なかなか手を出せずにいました。
読んでよかったと思いました。別れの切なさを越えた、星空のように果てしなく深い愛が描かれていました。
日本の敗戦がささやかれ始めた頃、希は、名家の跡取りで海軍中尉の資紀の身代わりとなり、特攻に行くことを決めます。希は、幼い頃に命を救ってくれた資紀のために死ぬことは喜びだと懸命に伝えますが、資紀は強引に希を抱き、冷たい態度を取り続けるのでした。
資紀の真意は、あるとき突然、希にだけ分かる形で明らかになります。その衝撃の大きさに、私は物語のページを戻り、「あっ」となりました。最初読んだときは、資紀の手の中のルリビタキを、資紀と希が見ていると思った挿絵ですが、資紀は希の右手を見つめていたのです。裏返しのオリオン座の形にホクロが並ぶ希の右手を…。この右手を残酷な方法で奪い、自分の命を懸けて、希の命を守ろうと、ずっと前から資紀は決意していたことが、陰のある微妙な視線で暗示されていました。
資紀のために命を捨てようとする希は健気で、それだけで十分に心打たれるのですが、愛する希に本心を告げず、冷たい態度で思い出すら残させず、ただ一人、全てを抱えて特攻に飛び立つ資紀の想いの深さに圧倒されます。それは、静かにどこまでも広がる星空のようです。切ないけれど、資紀の愛の美しさに感動することを止められませんでした。
生きること、恋することが難しかった時代があったのだと、あらためて思わされます。
あとがきに尾上さんも書かれていましたが、二度と繰り返してほしくないと、私も切に願います。
最後に救いが用意されていたので、本当によかったです。未読の方も安心して読んでください。
この前に読もうとしたのがとんでもない作品だったので、これには非常に癒やされました。
こういうときに読むといいのかな?
これまで尾上作品は私にはNGで、おセンチな感じが合わないな、と思っていたのですが、これはよかったです。涙腺を刺激されました。
「碧のかたみ」と関連する作品ですが独立して読めます。
りりしい坊ちゃん、資紀と、その身代わりとして特攻に行くことになった希の恋。
幼いときに資紀に会い、凜々しさと聡明さに一目惚れした希。資紀の身代わりとなって資紀の家に養子に入り、特攻として死ぬことに喜びを感じる。一方、資紀は希を手ひどくだき、ひたすらつらく当たる。
このあたり、あとで種明かしはあるもののちょっとイライラします。
そもそも抱かなければいいのでは?と思ってしまうのですが。。
やがて事件は起こり、希は残って資紀が特攻として散ることに。そのとき、ようやく希は資紀の愛に気づきます。これっきりか、と思ったがカタルシスが用意されています。
8年後(だったかな?)、薬やを営むようになった希は、偶然、オリオンのほくろが刻まれた手を保存したいという人物がいることを知り、会いに行きます。
そこからはハッピーエンド。
甘い後日談もあります。
初恋の人を守るために特攻に行くことを決意した、航空兵、希(ゆき)の物語です。
尾上先生の1945シリーズ第1作目の舞台は唯一の日本国内で、そのためかシリーズの中でも独特の雰囲気があります。
5歳の時に助けられてから、ずっと忘れることのなかった名家の坊ちゃん、資紀(もとのり)。
資紀の身代わりになるために、成重家の養子となる、その道中を描いた冒頭は日本の童話のような趣きがあり、引き込まれていきます。
それから希は初恋の人、資紀とお屋敷の中で暫く暮らすことになるのですが、資紀は気難しい青年になっていて・・という展開です。
いつ、特攻の命令が下されるか分からない日々の中で、一途に資紀を想い続ける希。対して何を考えているのか分からない、現代にはいないタイプの男、資紀。二人の関係は昭和十九年という、閉塞感に満ちた中で静かに、だけど異様な緊迫感を持って描かれ、衝撃のクライマックスを迎えます。
(以下、ネタバレです)
希の右手首を切り落として、資紀は希を守るのです。何と凄絶な!
これは、この時代を描いたblならではですね。
巻末の「サイダーと金平糖」では、戦後の穏やかな二人が見れてホッとしましたが。
5歳の時の初恋を貫いた希と、如何にも戦前生まれといった感じの古風な男、資紀。なかなか印象に残る二人でありました。
そして希の兄、琴平ワタルが主人公のシリーズ2作目となっていくのです。