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表題作は本のトップではなく、二話目に入っています。一話目は「溺れる魚」という高校生のお話なのですが、これを読んだ時点で、神評価に疑問無しでした。前半二作は文句なく誰にでもお薦めできるものになっていますが、後半には読者を選ぶ少し挑戦的な作品が並んでいます。近親相姦だけでなく、陵辱等、抵抗があるもののオンパレードではありますが、一部の芥川賞受賞作品なんてそんなものですし、ただ病的な中に美はあるので、作品として受け取る事が出来る方には、是非読んでいただきたいです。
緒川先生の男の子の目は、切れ長で本当に美しくて美しくて、空や海が透けて見えるようです。この作品で先生の人物の美しさだけではない、色々な美を見せていただいたと思います。フレームワークや進行も素晴らしく、正直こんなに素敵な作家さんだったことを改めて知らされた形です。
私個人としては矢張り倒錯している世界は例え物語であっても、率先して見たいほうではないので、前半二作が気に入りました。表題作は勿論のこと、「溺れる魚」をトップに持ってきたのは、大成功だったと思います。学校のプールの澱み、塩素臭、光の反射が全体を通して漂っていて、思春期の鬱屈から再生、希望まで映しているようでした。
表題作は、非の打ち所のない王子、女の子にしか見えない程綺麗な身寄りのないラクダ使いの少年、二人ともとても純粋な人物たちで、砂漠の話なのに清涼で潤った空気が漂っています。周囲にも祝福された二人なので、読後感はとても幸福なものです。ラクダもとても愛らしいです。特に何か目新しいドラマがある訳ではないけれども、とても美しくて素敵な作品です。
後半に地雷が埋まっていようとも、前半二作だけでも一読する価値があると思える作品です。
溺れる魚:受けがFree!の主人公かと思った。2013年8月7日発売のMAGAZINE BE×BOY初出なので無関係でしょうけどビジュアルが黒髪無表情なのと水泳依存キャラなので連想してしまった。攻めはいつもどおりスパダリ。「俺は俺を好きな人がきらい」だそうです。そういう攻めに好かれたままでいたいから「好き」って言えない健気な受けとか、萌えどころはいろいろある気がするんですけどなぜかあんまり萌えなかった。
ラクダ使いと王子の夜:表紙どおりかわいいはなし。アラブものだとこういうかわいい御伽噺調の方がすきです。スパダリ攻め×純粋受け。僕っ子ですが、緒川先生らしい色気のある子でショタっぽくなくて綺麗でかわいい感じ。受けの素直さとか性格の良さとかに地位のある攻めが惚れ込んでいくタイプの話で、少女漫画っぽい。長編で読みたい話です。どうでも良いんですけど緒川先生って老人を描くのうまい。
いびつな欠片:ちゃらく見える弟×黒髪メガネ兄。設定は嫌いじゃないんですけど、自分の好みと受け攻めが反対なのであんまり萌えられなかった。黒髪メガネ兄にいじめられる弟受けでよろしくお願いしたかった……。
要領の良い弟に嫉妬する要領の悪い真面目人間の兄の話です。弟は兄を一途に愛しているんですが、ある日兄でオナニーしてるところを当の兄に見付かって、いつか弟をハメてやろうと思っていた兄におどされ、女装半裸写真をクラスメイトに晒し、えらいことになって親にも見放されます。そのご褒美に兄とセックスさせてもらい、作中時間に至る。兄は兄で自分を求めてくれるのは弟だけであることをわかっているので、弟の執着を利用して自尊心を満足させているという地産地消的なエコカップルです。
「くさった螺旋」もそうなんですが、わたしリバ全然好きじゃないんですけど、緒川先生の攻めが受けみたいに性的虐待されているのはむしろ萌えます。ふしぎ。消費対象としての男性性的な。
しかしこんなに真面目に勉強してる子に面と向かって「おまえの成績じゃ(T大医学部は)まず受からねえよ」とか言う正直すぎる先生に笑ってしまった。
くさった螺旋:人気俳優父(27~33くらい)×高校生息子。父は中学生の頃に女生徒から性的ないじめを受けており、相手の女生徒の1人が妊娠したところ、損害賠償請求の代わりにそのお腹の子を引き取った。その子が受けで、父親は復讐としてその息子をレイプしまくっているわけです。父親はかなり壊れてしまっていて、楽しんでレイプしているわけではなく、レイプによってどうにか精神の均衡を保っている感じで、むしろ息子の方が父親の憎悪を利用して自分に縛り付け、からかって遊んでいる感じです。こわい。でも受けの子が非常にかわいい顔と性格をしているのでぜひこの2人の話をもっと読んでみたい。今までにない感じですごく素敵です。
あやうい饗宴:「いびつな欠片」の2人のところに「くさった螺旋」の息子が訪ねてくる話。息子ちゃんほんとかわいいけど病院でセックスしてはいけない(戒め)。
ラクダ使いが消えた朝:表題作のアフターストーリー。つくづくええ話やな……。
わぁ、これが緒川先生だなんて信じられない…。
と思うくらい、いつもと空気の違う表紙絵。
大好きな緒川千世先生の、振り幅の広さをみせつけられたような、バラエティパックのような一冊でした。
「溺れる魚」は高校生のお話。
誰も好きにならない、水の中が大好きな水泳部員と。
自分を好きになる相手だと冷めてしまうもて男の、水もしたたるお話。
緒川先生らしい、エロティックな中にほんのりダークな面もありつつ。
美しくて優しくて切ない。
二人の家族も絡んで短い中に細やかな要素が隠れています。
個人的萌えが詰まった、かなり好みなお話でした。
「ラクダ使いと王子の夜」砂漠のお話。
小さな旅の商人たちの中の青年と、アラブのセレブの純愛もの。
色白でからだの弱い少年は、旅の途中でいき倒れの男を拾います。
やがて旅を終えた少年のもとへ、あの時の男があらわれて…。
動物と話ができたり、一人だけ肌の色が違ったり。
そんな不思議で孤独な少年と、命を救われた青年の、切ないほど優しいとってもピュアなお話。
ギャグもダークも無いし、緒川先生の新天地かも?
「いびつな欠片」兄弟のかなり痛々しい近親相姦もの。
賢くて両親に期待されている兄と、自由で美しい弟。
弟は兄を異常なほど慕っていて…?
正直、一回読んだだけではちょっと弟の感情が掴みづらかったですが。
お兄さんの心の葛藤とか自分勝手さが、不思議な魅力のお話でした。
「くさった螺旋」父息子のさらにひどく痛々しい近親相姦もの。
有名俳優の父と、自由人な感じの息子、父のファンのいじめられっ子。
高校の三者面談に父がやって来て…。
お父さんの過去はたった一コマなのに、強烈なインパクトでした。
息子の心なんてまるで見えない自分勝手でかなり病んでる人で。
息子も負けないくらい病んでいるので、ある意味バランスのとれている二人です。
後半の近親相姦二編は、ピンクゴールド1と2に入っていたものでした。
かなりダークですが、これぞ緒川先生なのかな?と思いました。
好みとしては、父息子の方がインパクト強くて好きでした。
四つの話は振り幅が広くて。
中には、この振り幅についていけない人もいるかもしれませんが。
私には丁度良い具合の幅でした。
ダイヤモンド・トルコ石・琥珀など、様々な宝石の詰まった宝石箱のような一冊です♪
表題のラクダ使いと王子の夜は切な甘く、とても心が温かくなる素敵なお話でしたが、ダーク系が大好きな私は「いびつな欠片」と「くさった螺旋」が大好きです。
『いびつな欠片』
何でも器用にこなす弟×劣等感兄
↑と、簡単に書けばこうなるかと思いますが、これだけじゃ全く説明にならない複雑な作品です。
親の期待を弟に向けさせない為に、弟を陥れて満足感を得る兄。
兄のことが大好きな弟は、兄の言うことを全て聞いてご褒美を貰う為にわざと受験を失敗したり犯罪を犯したり…。
最後の最後にある、執着攻×淡白受と見せかけた素晴らしいオチが最高でした!
『くさった螺旋』
超人気俳優父親×ワケアリ息子
壮絶なトラウマがある人間不信父親と、飄々としたチョイ悪リア充みたいな息子のダーク物語です。
ただの美しいお父さんかと思いきや…非常にバイオレンスな家庭に驚愕。
しかし本編で語られる父親の過去を見れば「あぁ…」と納得。
幸せそうな笑顔で「俺は父さんのもの」と言う息子が…あぁ…あぁ…。
所謂メリバと呼んでいい作品だと思います。
メリバ好きな方に是非オススメしたい作品です!
前半2作品はライトでよみやすかったです。
特に、ラクダはこの本のなかで可愛いはなしでした。
私が好きなのは後半2作品てす!!
「いびつな欠片」
弟:×兄で弟のヤンデレっぷりが最高にイカれてました。私はヤンデレ大好きなのでこの位のいかれっぷりは良いです。
中々コミックスでは、ここまで振りきってるのを出してくれないので貴重な作品だと思います。
結局、兄の方もヤンデルのではと思う話でした。
「くさった螺旋」
こちらも、近親相姦作品ですがあからさまに父も息子もイカれてましたね。
緒川先生のヤンデレさんは結構振りきってる方が多いのですね。
過去のトラウマで女性が嫌悪の対象でしか見れなくなってしまった父が可哀想とも思いましたが、まぁ2人で頑張ってとも思いますね。
人それぞれ心の闇が意外と深くいい味を出してる1冊だと思うので、覚悟を決めて読むのが良いかと思います。
ヤンデレ作品が好きな人は読むべし(*^^*)