• 電子書籍【PR】
  • 紙書籍【PR】

表題作転じて恋と生き

八尋達彦(高校の国語教師)=春沖洋介の生まれ変わり
吉武伊織(高校の数学教師)=坂上三雲の生まれ変わり

その他の収録作品

  • 転じて恋と生き その後

あらすじ

校内新聞に載っていた小説の作者「春沖洋介(はるおきようすけ)」。
高校教師の吉武(よしたけ)はある日、それと同じ名前を、旧校舎に残されていた昭和30年代の論文から見つける。
さらに小説の登場人物である「坂上三雲(さかがみみくも)」の名前もそこに書かれていた。
現在の小説と、過去の論文――…。
このふたつの奇妙な一致に、吉武と、そして小説の作者である吉武の同僚・八尋(やひろ)はかつてこの高校に在籍していた生徒、春沖と坂上が自分達の前世なのでは、と疑い始める……。
過去と現在が交錯する、感動の転生BL。

作品情報

作品名
転じて恋と生き
著者
早寝電灯 
媒体
漫画(コミック)
出版社
ホーム社
レーベル
アイズコミックス.Bloom
発売日
ISBN
9784834264029
4.1

(239)

(122)

萌々

(54)

(37)

中立

(18)

趣味じゃない

(8)

レビュー数
22
得点
955
評価数
239
平均
4.1 / 5
神率
51%

レビュー投稿数22

何度読んでもイイ!

何度も読み返しているくらい早寝電灯先生の作品の中でも好きなお話。
前世と現世が繋がっていく過程や八尋と吉武の気持ちにグイグイ引っ張られて、毎回読み終わると鳥肌が立ってしまいます。

現世のふたりが同時に前世にあったことを思い出したり、同僚としてまた出会ったという謎めいた縁だったり。
たくさんのエピソードがあるわけですが、その中に埋もれず、派手さはないふたりの恋がしっかりと輝いているところが本当に好きです。

洋介と三雲が八尋たちに思いを託すことになった明確な理由は記されていないし、彼らの人生の最後もわからないままだけど。
あえてすべてを明かさないところにも早寝先生の作品らしさがあるのではないかなと感じています。

久しぶりに読み返しましたが、何度読んでも色褪せない感動を今回ももらえました。

0

前世の二人と、現世の二人

早寝先生ならではの儚い空気感と切なさを感じさせるこちらの作品。前世が絡む、ファンタジー要素のあるお話です。

早寝電灯先生の作品、全部読んでいて大好きなものが多いんですが、こちらの作品は何度か再読してもなかなか今までしっくり来なくて…残念に思っていました;
それでちょっと時間のある今、読み返してみたら……

いやこれ、めちゃめちゃ深い…!!そして切なさに胸が締め付けられました。
とてもサラッとは読めず、前のページに戻ったり、1ページを時間をかけてじっくり読んだりしながら読了しました。

同じ学校で働く二人の教師である攻め受け。それぞれ前世の学生時代の記憶を抱えていることが徐々に判明するのですがー
というお話。

「今」を生きる自分たちが”前世”を思い出しているのか。それとも、
「前世」の自分たちが生まれ変わり、”今”を生きようとしているのか。

このへんが多分、以前読んだ時にきちんと理解できなかったところなのかな。

現世の自分たちと、前世の自分たち。
作中で起こる「記憶の反転」が物語の大きな軸となります。

前世で残した未練に別れを告げ、現世の自分たちに戻ってから抱き合う二人の描写が、本当に最高だった…!
そして「今無理しなくても時間はある」と、受けを休ませようとする攻めを伊織(受)が「頭が痛くて …さっきから触ってもらうと すごく楽になるんですけど」と誘うシーンが美しくて最高に好き。

前世が絡み、少し複雑なお話ではあるんですが、読後じわじわと感動とか切なさとか、胸に押し寄せるものがある作品でした。
読み返して本当に良かった…!

0

すばらしい物語

先生の単行本2作目だと思うのですが、1作目より線が繊細で絵がきれいになってますね。

転生BL…と帯にあるのでどんなもんかいな(異世界ファンタジーぽいの?)…と思いましたが、ミステリー文学とでもいうのか、物語としてすばらしかったです。

冒頭は日常が普通に描かれ、話に入っていったところで、違和感なく、前世の記憶が蘇るお話になっていく。

吉武視点で前世の記憶が少しずつわかってくるのに並行して、八尋への気持ち、関係性がじわじわ変わっていくのがいい。

吉武が、八尋は実はとっくに前世の記憶があったんだと気づくところも上手いなと。
ここ、ニュアンスを伝えるのが難しそうで、下手したら説明過度になりそうなところを、そうではなく、自然に説明最小限に気づかせてくれる。

八尋の記憶が春沖に反転してしまった後、前世と現世の2人がオーバーラップする場面がまたすばらしい。
自然に、かつドラマチックに前世の2人が本懐を遂げることができて。
難しい場面なのに、違和感どころか、とても上手い表現だなと痺れました。

その後は、現世の2人のお話になって。
吉武が八尋の手で頬を撫でてもらって「楽になる」と気持ち良さそうな顔をするのが、萌えどストライクです。

その後の流れも全部いい。
めっちゃBL。こういう場面が見たいのです。ありがたや〜。

転生の大筋のお話の脇の、小説、ピアノ、炭鉱、学ぶこと、季節…などの使い方もめちゃくちゃお上手だなと思いました。
展開がきれい。
ラスト見開きページも。
極上の映画や小説を味わったような感覚もします。

「転じて恋と生き その後」
はもう、ありがとうございます!!ですよ。
この2人のこんな後日談、日常が見たい!というものを見せて下さって。
読み応え抜群、大満足です。

0

運命が引き寄せる

早寝電灯先生の作品は即物的萌えや、華やかさはあまりないのですが、二度三度と読み返すうちにじわじわと心が揺らいでくる感覚のある作風が持ち味だと思います。
私の読解力のせいなのか、一度では理解しきれないという事もあるのですが…。
本作もそんな作品でした。

出会うべくして出会った2人の転生ものというドラマチックな設定ですが、燃え上がるような感情ではなくて懐かしさやふわりとした安心感から段々と恋愛になっていくというお話です。

前世の2人の関係性も良くて、お互いにずっと一緒に居たいと思いが通じ合っているのに叶わなかったというのが切ないです。
思いを遂げたかった2人の強い気持ちが、現在の2人に伝わってこうなったのかな。
八尋と吉武には今度こそずっと一緒であって欲しいと願わずにはいられません。

0

前世の二人に心を持っていかれちゃったので

現代を主軸に書かれた過去からの転生もの。
なので、悲恋に泣く二人に感情移入して来世の幸せを願う、みたいな転生もの特有の読み方はできない感じのお話でした。

これ、何も考えずに読んでれば良かったかもなんですが、一行目に書いた転生の仕組みが分かった時点で思っちゃったんですよね…過去の二人に囚われずにくっつく形が一番納得できるよなぁって。それだけならまだしも同時に、それだと転生ものの醍醐味みたいなロマンティックさは味わえないんじゃないかなぁとも思ってしまいまして。で、その通りにストーリーが展開していってしまったんです。

お話はすごく綺麗にまとめてあって、前世の二人のシーンもすごく感動的。それなのに、なんか読んでてなるほど~って気持ちが萌えより先に来ちゃって。見えた展開通りに進んでくれることにほっとしたみたいな気持ちで。この設定だとこの形しかないよな~って道を辿っていってくれました。

良いお話だったんですけど、現代の二人より前世の二人をもっとたくさん見たかったというか、三雲と洋介に心が持っていかれてます。なので幸せなはずの最終話で、彼らがいなくなった悲しみの方が上回ってしまいました。
おまけのその後の話も現代の二人のらぶ小話で、寂しい気持ちが余計に膨らんだままEND。主役現代カプには悪いけど、前世カプがもっと欲しいー!と叫びたくなる読後感でした。

0

「また明日」=

輪廻転生ものです。
校内新聞の小説をきっかけに、2人の高校教師が過去と現在の自分と向き合うお話。

ミステリーの側面があるのでセリフはやや多めな印象です。そして初回では気づかない伏線があちこちにあります。読めば読むほど無駄がない!オノマトペの効果や、猫の反応とか。

前世を自覚して、翻弄されて、そして。過去から繋がる思い。

初見で読了したときは「二人」の幸せにただただホロリとしましたが、2度目3度目と読むと本当に緻密で、かと言って全部を明らかにせず想像の余地もあったり、でも大事なことは答えを出してくれていて、漫画としてすごくワクワクして面白かったです。

2

完成された世界観に酔いしれる

『君にはふれると鳴るとこがあって』を初めて拝読して以来、すっかり早寝先生の作品のファンになってしまいました。

こちらの作品も、期待に違わぬ素晴らしいものでした。

高校教師であるふたりが、ひょんなことから前世の記憶を思い出し、それに翻弄されていくという物語です。
ストーリーは穏やかなテンポで淡々と進んでいるように見えますが、しっかりと作り上げられた世界観と、それを表現できるだけの確かな絵の力で、気がつけば物語にぐいぐいと引き込まれていきます。

あらすじを読んだときには、前世の記憶を蘇らせたふたりが今世でも奇跡的に出会い、前世では叶わなかった約束を果たそうとする物語なのだろうと思っていました。しかし、そうではありませんでした。
「俺たちが前世の夢を見てるのか、それとも前世が見た夢が俺たちなのか」という言葉にはっとさせられました。
前世の記憶があっても、それは必ずしも今世の人間と同一人物ではない。どちらも現実であって、それぞれの人生を歩んでいる。お互いに干渉してはならない。
さまざまなきっかけを経て、ふたりは前世の自分が何者だったかを思い出すことになるのですが、それでも、“今世に生きるふたり”として改めてお互いを知り、愛し、ともに歩んでいこうとします。
たとえ記憶が戻らなかったとしても、八尋と吉武は、きっと何度でも出会い、恋に落ちるのでしょう。
それこそが“運命”なのだと教えられたように思います。

前世は、ただ自由に生きることさえ叶わなかった時代だった思います。最後は悲劇的な別れとなってしまったであろう洋介と三雲が、別れの挨拶を告げることができたシーンは、切なくも美しく、胸を揺さぶられました。

個人的には、石丸くんのおじいさんが前世のふたりと同級生で、ご存命であるというところが非常に印象的で、何か救いを見いだしたような気持ちになりました。
八尋が言っていたように、前世のふたりは共に去っていってしまったけれど、消えてしまったわけではない。誰かの記憶に残り、そうしていつまでも生き続けていくのだと実感することができるシーンでした。

最終話でふたりは初めて結ばれるのですが、データにもあるとおり激しい描写はなく、数ページで終わります。ですが、早寝先生の描かれるセックスシーンは、扇情的ではないにしろ、えも言われぬ色気があります。お互いの興奮や体温までもを感じることができ、愛おしく想う気持ちが紙面越しでもありありと伝わってきます。身もフタもない言い方をしてしまえば、下手なエロ重視の作品よりもよっぽど“エロい”です。
そういった描写が少ないというだけでこの作品を敬遠してしまうのは、本当にもったいないと思います。

これからもずっと追いかけて行きたい作家さんのひとりです。

6

ピアノの爺さんに会ってからが面白そう

全員が良い人ばかりだからなのか、危ういところがこれといって無かったせいなのか、萌えも盛り上がるところもハラハラもドキドキも無く平坦で低いテンションのままキレイに終わった。
買って損したと思うような作品ではないけど、限られた冊数しか収納できない狭い本棚に残したいものでもない。

前世の念が残って云々な割には、念が残るほどの2人の強い想いが見えない。
ピアノを弾く生徒の爺ちゃんが前世での同級生ということは、この2人は「前世」云々ではなく、単純に血族、子孫だということでしょうか。
子孫ということは、二人それぞれに結婚をして子供をもうけたということでしょうか。
それとも2人は若死にをして、それぞれの兄弟たちの子孫なのでしょうか。
若死にだったとしたら兄弟がそれぞれの前世の写真とか持ってるんじゃないでしょうか。
それを手に入れてからの方が面白そうじゃないですか?
ピアノの爺さんに生前の2人の話を聞いたりして。

0

素晴らしい作品

「半壊の花」で早寝電灯先生に完全に惚れ込んでしまったわけですが、この作品も愛しくてたまりません。
BL漫画という枠組みを超えて素晴らしい一冊でした。

数学教師の吉武と国語教師の八尋は、自分達の前世に気付き始める。前世の存在はそれぞれの中で徐々に大きくなっていき…というストーリー

作品の中への要素の散りばめ方が素晴らしいです。学校という舞台、ピアノ、小説、桜の花、炭鉱、胎内巡り、季節の移ろい…戦後の雰囲気と現代、絵のタッチも相まって全てが完成されている。校舎、旧校舎、学生服が眩しく美しい作品です。

転生モノと一口で言えないオリジナリティのあるストーリーで、主役2人の人生だけでなく、転生前の2人はおろか、学生の加古さんや石丸くん、若竹の人生まで覗きみさせてもらったような充実感です。

2

前世もの

学校の先生同士。同僚ものかな?と想いながら読み始めたら、ファンタジーでした。

素直な感じの吉武先生と、怪しい雰囲気の八尋先生。
八尋は吉武の後ろに立ったり、手をとったりとモーションをかけている。
それにどぎまぎする吉武。

窓から派行ってきちゃう石丸くんとか、新聞部の加古さんとか、脇役がいい感じ。

そのうちに、新聞に連載していたのが八尋で、それは昔の春沖洋介という名を使ったものだと分かる。しかし、資料を調べている内に、それは実在の人物で、二人は過去に想い合った二人の生まれ変わりだと分かる。

しかし、前世にとらわれずに、現世の二人としてめでたく恋人同士に。

早寝電灯さんの作品は好きで作者買いしていますが、この作品は少し分かりずらかったかなと思います。

1

前世の願い

転生ものですね。

前世の人格?記憶に八尋が乗っ取られそうになります。吉武も前世の記憶が現れる度に恐怖を。

でも前世では愛し合って仲良くて、二人とももっと学びたくてでも家の事情で叶わなくて。

現世では二人とも前世と同じ学校の教師になってて、学びたいところは叶ったですね。

前世の二人はおそらく炭鉱の事故できっと…。

現世の二人が過去を紐解いていくのも記憶が蘇るのも面白かったです。

現世では八尋が吉武を好きになってだんだん距離を縮めて、二人で前世を乗り越え結ばれます。

孤独な八尋と大家族で育った暖かい吉武。お互いの家を行き来して、八尋は初めての嫉妬したり。

転生ものは初めてだったので楽しめました。

1

貴方と恋をすることは。前世での約束なのか。それとも。

初めて読んだ時は、ちょっとゾッとしたんです。少しホラーめいて感じられて。
物語の中で、吉武先生が怖がりますよね。そんな感じ。
八尋さんは、素のままで、吉武先生を好きになったんだろうとは思うけれど。
前世での記憶が2人を結び付けた様な気もする。
過去の恋の。成就する事なく逝ってしまった若い2人の、春沖と三雲の、
強い思念が、2人を引き合わせたのだと。
初めて逢ったのに、懐かしさを感じたのは。
最初から貴方の側が心地よかったのは。
ロマンティックな様でいて。やはりとても怖い様な気がしました。
桜舞う中で、再び邂逅する春沖と三雲が綺麗で、涙しました。
2人にとって、さよならとは。また会おうとの約束。

けれど、誰もが輪廻転生を繰り返すと考えてみれば。
誰かの恋は、いつか誰かと誰かを引き合わせる為の記憶や、約束なのかもしれません。

0

ストーリーの流れが分かり辛い……

教師の吉武伊織がペンネーム「坂上三雲」で校内新聞に小説を投稿したことをきっかけに、同じく教師の八尋達彦は春沖洋介 吉武は坂上三雲という前世の記憶を取り戻し、今世で結ばれるお話です。

複雑な内容である転生モノを ここまで美しく描くことが出来るとは……
世界観が素敵で、本当に綺麗な作品です。
心が動かされる作品、泣けるような作品が読みたいときにオススメします。

しかし、全体的にストーリーの流れが分かりにくいといいますか……一度読んで理解するのは難しいと感じます。
物語の肝となるシーンではそれが特に分かり辛く、数回読んで、「あぁ、なるほど……そういうことか」となりました。
1度で内容を把握出来ない作品には抵抗がありますので、この評価とさせて頂きました。

1

さらっと読めた転生BL

転生BL

最近、泣けるモノ読みたいな〜と思っていましたので、購入。

前作の「半壊の花」にて稲穂の道を読んだ際、早寝電灯さんは暖かみと涙を誘うような物語が上手で、素晴らしいなと思っていました。
今回は、それが前面に出ており、表題作で一冊でしたので、話も丁寧且つ素晴らしいものでした。

生徒との話も綺麗に描かれており、加古さんが可愛かったなぁと思いました。

転生モノは難しい話のも多いのですが、早寝電灯さんの描くこのストーリーは、さっぱりというわけでもないのにわかりやすくて読みやすかったです。

途中、反転(読むとわかります)するシーンでも、主人公の心情を交えながらも、春沖くんと八尋先生の心情、変化を写していて、見ていてドキドキしました。

後日談では、互いの呼び方や話し方が変わっていて、互いに理解しあい、共生しあうというのが読み取れて、ほんわかと暖かくなりました。

シリアスも交えながら、人のあたたかさ、運命を描いていて、読み終えた後も「あ〜よかった…」と余韻が残りました。

(読み終わったら、ぜひ表紙と表紙裏の絵を見比べてほしいです^_^)

この本で、本格的に早寝電灯さんの本を買い続けよう!!!!と思いました。

7

前世に入り込めない

 前世ものに抵抗があるわけではないですし、決して悪くない題材だと思ったんですが、こういうテーマを扱うにしては少しストーリーの流れが早過ぎるのかなと感じてしまいました。前世をあえて持ち出すわけですから、前世での2人の関係は相当しっかり描かれないと、わざわざ前世を振り返る意味がないと思うんです。前世でこれだけの濃密な関係があったから、今の2人にもこんなに影響を及ぼしているんだ、という感覚が欲しい。その点では、前世のストーリー自体は良かったけれど、細切れで毎回短くていまいち前世に入り込めずに現世に戻ってしまうので、そこから先は「多分こんな風に相手を想っていたんだろうな」と想像するしかないんです。それは、吉武の記憶が戻るのに合わせて描かれるため仕方ないことでもあるのですが、主人公達の記憶の再生とは別に、読者向けに前世での2人の関係をある程度の長さで描いても良かったのではないかと思いました。どちらかが前世に囚われている時はもう片方が冷静に現世を優先していて、2人同時に前世への想いが強くなる時期というのがほぼないので、余計に前世の必要性が薄く感じてしまいます。正直、2巻くらいの長さで読みたいと思った作品でした。

4

泣きながら目覚めた事があるひとへ。

「過去と現在が交錯する転生BL」とある通り、ある種のファンタジー要素のある作品です。
舞台は、元は炭鉱の町であった屋敷市。そこの高校の教師2人の物語。
この物語の始まりは、時折感じる奇妙な懐かしさや、知るはずのない過去の生徒の名前といったミステリー仕立て。しかし2人が同じ記憶を共有し始めると次第にセンチメンタルな色を帯び始める…
あらすじよりも感じたことを書きます。
実際「ファンタジー」としては設定を突き詰めてない部分もあると思うのです。でもそんな事より、作品に立ち込める痛ましい別れと、どうしてももう一度という渇望が迫ってくる。
私は、「前世」というよりも「憑依」なのかな、と感じました。この屋敷炭鉱という場所に、叶わなかった恋・生活・人生を諦めきれない2人の想いが残っていて、そこに八尋と吉武が感応したのかな…
八尋と吉武という確固とした「肉体」を借りて、断ち切られた自分たち(春沖と三雲)がもう一度会いたい、さよならを言いたい、という思いを遂げたのかな…
何といっても八尋が春沖と三雲の夢から目覚める時の涙…このひんやりとした哀しさ、愛しさよ。
もちろん、春沖と三雲の再会と、八尋と吉武の恋の始まりという温かい結末となりますので、読後感は感動的です。
読めて良かった。神寄りの萌x2で。

8

読んで後悔ないと思いました!

ちるちるさんのランキングで、上位に入ってたので興味を持ち読ませて頂きました!
初見の作家さんでしたが…すっっごく良かったです…ランキング侮り難し…!
とても綺麗にまとめられた物語で、前世と今生でかわるがわる展開していくのですが、躓くことなく最後まで読み進められました。
最後ほんとボロ泣き…。
久しぶりにいい作品に出会えました!1冊でここまでまとめられる作品は私の中で少なかったので出会えてよかったです。
儚げな絵と、物語の雰囲気が絶妙で、そこもこのお話の世界観に合っているなぁ、と思います!

12

この作品に出会えてよかった

2冊目のコミックス、とても楽しみにしていました。
前作の「半壊の花」は短編集で、それもとても読み応えがありましたが、今回は1冊同じお話ということで、期待半分(不安半分)という気持ちで手に取りました。
一冊で「転生」というものが描ききれるのだろうか…?という思いもあり…。

しかし、読み終わったあと、本当にこのお話と出会えてよかったと心から思いました…!

今作の「転じて恋と生き」はタイトルにも入ってるように「転生」のお話です。
以下、ネタバレがあります。



私は今まで、転生ものというと、前世の想いを抱えたまま、現在のふたりが幸せになるというものだとなんとなく思っていましたが、今回のこのお話は少し違いました。
もちろん過去のふたりの恋愛感情も引き継いでいるし、攻めの八尋が一時的に前世の人格にとってかわられるシーンもあります。けれど、最終的に現在のふたりが、自分達は自分達で、過去のふたりとは違うんだ、それぞれの人生があるんだ、と決別を選んだことに、驚き、そして感動しました。
過去のふたりも、長い時間を経て、現在のふたりの身体を介し再会したのち、彼らは彼らで手を取り合い、去っていくんです。
前世のふたりは、幸せな結末をむかえたわけではなかったですが、それを受け入れ「もう一度会えてよかった」とふたりで一緒に去っていくーーこのシーンに自然と涙が出ました。

現在のふたりも、とても好感が持てるふたりでした。
攻めである八尋が、受けの吉武を好きになったきっかけが「自分が弱っているときにアイロンをかけてくれたから」というのがなんともかわいらしかったです。相手からすると些細な事でも、本人にとってはとてつもなく大きなことで、感情を揺すぶられることがある、というのがうまく表現されていました。現代のふたりが惹かれあうのもとても納得できました。

一冊を読み終わるのがあっという間で、世界観に引きずり込まれていました。
最後のほうはページをめくるのがもったいないと思えたほど。


早寝先生は、人の「ひたむきさ」や、ひたむきさがあるからこその「不器用さ」を描くのが本当に上手い方だなと思います。人を好きになることって素敵なことだなぁと思わせてくれるといいますか…。
登場人物がみんな、ちゃんと「生きている」という感じがするので、悩んでいる彼らのそれぞれの選択や、人生に感動するだろうな、と。


本当に、本当に素敵なお話でした。
(言葉にすると弱くなってしまうのが悔しい…!)
いろんな人に読んで欲しいです!
転生ものだからわかりにくいのかなとか思われるかもしれないですが、
全然そんなことはないと思います。
(最初、名前がどっちだったかな…?とは思いましたが、わかってしまえば混乱することはなかったです)


卒業式の日の青空に、桜の花びらが散っているような、爽やかな読後感のある作品でした。
(読み終わったあと、カバーをはずしてカバーの下を見たとき、私はもう一度泣いてしまいました…)

きっと何度も、今後読み返す作品になると思います。

22

不思議、だけれど温かいストーリー

作家買いです。内容はすでに書いてくださっているので感想を。

若干のネタバレあります。







早寝電灯さんてすごく不思議な空気感を持った作家さんだな、というのが読後の感想。テーマとしては「輪廻転生もの」なわけですが、早寝電灯さんらしい、というのかな。切ないのだけれど、さわやかさもある。でも、なんか懐かしい。っていう感じ。色で言うと「セピア色」という感想を持ちました。

現世と前世。
この二つの時間軸が融合してストーリーが展開していく、という構成が斬新でした。

かつての恋人たちが、現世で出会い、記憶を取り戻していく。
今、感じているこの想いは、前世のものなのか現世のものなのか。
時間軸は歪むけれど、でも、彼らの想いがゆがむことはなくまっすぐなので読んでいてブレがなくするんと読み手の気持ちに届いてくる。

少しずつ思い出していく記憶。
かつての恋慕の想い。
お互いが唯一無二だったこと―。

謎だった部分が少しずつ解き明かされていき、そして最後にパズルのピースがぴたりとはまるように収まるべきところに収まる。

ストーリー展開が非常にお上手で、彼らの気持ちとリンクしながら読み進めました。

派手派手しさはない。
けれど、気づけば落涙している。
優しくて、温かいストーリーでした。

過去の後悔とか、思いとか、それをきちんと現世で解消しているのも素晴らしかった。

あと、絵柄がとってもいいんじゃないかな。
「上手」とか「絵柄がきれい」とかそういう誉め言葉に収まらず、早寝電灯さんの描かれるストーリーに非常にあっている、という感じ。
だからこそ、早寝電灯さん独特の世界観が作り出せるような気がします。

文句なく、神評価です。

9

今と昔とこれからを丁寧に描かれた意欲作

難しい世界観や心理描写を上手に描かれた意欲作だと思います。
前作が神作品だったので、今作も期待して読みましたが、オリジナリティある心に響く作品でした。
後半はウルっとくる場面も多いです。
教え子の卒業式で過去の友人が重なったシーンにも、よく考えられてるな!と感服。
ただ、ところどころ、ん?と思うシーンがあり、回収されている伏線に私が気付いていないだけなのか、少し繋がりが悪いと思う部分もありました。
小説のくだりとか2人の気持ちがいつから恋に変わったのかとか。。
あと三雲と八雲の名前が似てて、途中でどっちのこと言ってたっけ?となりました。
普段は飄々としてる攻めの焦った姿が大好きなので、その後の攻めの初めてのささやかな嫉妬には思わずキュン。
黒髪攻めも新鮮で、余裕綽々なところや受けのことあんた呼ばわりするのもツボでした。
よく破綻なく1冊にこのお話をまとめられたと思いますが、中盤以降シリアス展開が続いていたので、欲を言えば2人のラブラブな様子がもっと見たかったです。

6

現世の二人の物語!

早寝電灯先生はデビュー作『半壊の花』が読ませる話ばかりで、2作目も楽しみにしていました。デビュー作より絵も洗練されて、ストーリー運びは淡々としているのに、そこかしこに切ない想いが隠れていて、読めば読むほど心に沁みてきます。

高校教師の八尋と吉武はとくに仲が良いわけではないけれど、吉武は八尋の触れた手に懐かしい何かを感じて…
そして校内新聞に掲載された小説をキッカケに、八尋と吉武は前世のことを少しずつ思いだしていく。
前世の記憶が流れこんで不安を感じる吉武に、八尋は「振り回されないようにしましょう。前世があったとしても今の現実の方が大事だ」と言って落ち着かせる。
この言葉は物語のキーワードです。

八尋の前世・洋介と、吉武の前世・三雲は、戦後の学生で卒業間近。
八尋は進学したかったけれど親に認めてもらえず、三雲と一緒に炭鉱で働くことになった。それを残念に思いながら、一緒にいられることを喜ぶ三雲。
二人の過去は旧友が弾くピアノで一緒に踊ったり、学生生活のシーンしか出てこないけれど、明るくない出来事で命を落としてしまったことが想像できます。

そして生まれ変わっての再会。八尋は「今の現実の方が大事だ」と言っていたくせに、前世と現世の境が曖昧になって、洋介となって吉武を「三雲」と呼ぶ。
そして吉武は八尋を取り戻すために…

ずっと一緒にいたかったのに叶わなかった二人が生まれ変わってその願いを叶える。それは転生物の典型で、読者としても望んでいる展開だけど、本作はただ前世をやり直すのではなく、現世に生きる八尋自身と吉武自身がどこに惹かれてどう感じたのかがちゃんと描かれています!
もし前世で出会っていなくても、記憶を思い出すことがなくても、現世で二人は関係を紡いでいくだろうと思えるのが今作の素晴らしいところです!

ちるちるのインタビューで早寝電灯先生が「人と人とのつながりと愛情があって受け継いでいく」と仰ってました。
前世では学生だった二人が、現世では教師になっていること、そこには過去の二人の願いが無意識のうちに受けつがれていて、現世の人生は八尋と吉武のものだけど、洋介と三雲の想いはこうして続いていくんですね。
(※私は本編を読んだ後でちるちるの作家インタビューを読みましたが、作家本人と編集が答えていることとはいえ、読者が読んで感じ取るべき所まで語りすぎている気がしました。そこまで言わなくても読者は物語から早寝電灯先生の描きたかった想いをちゃんと感じ取りますよ…)

人と人との関わりは、小さなエピソード一つ一つの重なり合いで、その中で想いが生まれて続いていくんだと、あらためて思うストーリーでした。
想いが心に沁みてくるストーリーを描く早寝電灯先生。次回作も楽しみです。

14

素晴らしかった!!

早寝電灯 さんのデビュー作「半壊の花」(特に稲穂シリーズ)が本当に素晴らしくて二作目を待ち望んでいました。しかし「半壊の花」が本当に気に入っていただけに、二作目の出来が楽しみでもあり怖い気持ちもありました。ガッカリしたらどうしよう…と。

結論から言います。素晴らしかったです。この作家さんは読者に伝えたいものがしっかりあって、それをきちんと損なう事なく伝える事が出来る方なんだなと改めて思いました。
ストーリーも前世と現世が登場するものでしたが伏線回収もしっかりしてて、え?どうしてそうなるの?とか、突っ込みたくなる箇所もなく見事にまとまっていました。

前世と現世が入り混じったストーリーです。
高校教師の吉武が読んでいた校内新聞の連載小説の作者名「春沖洋介」。その名前を旧校舎にある書庫に眠っていた昭和30年代の論文に見つけます。偶然の一致にたじろぐ吉武。
連載小説を書いていたのは同僚の教師、八尋である事が判るのですが、その論文の共著者である「坂上三雲」は、連載小説の登場人物名である事も判明し…。

高校教師の八尋と吉武の前世は昭和30年代に生きていた春沖と坂上だったという事が明らかになります。前世の二人は恋人同士で「ずっと一緒にいたい」と願う仲であり、吉武にも前世の記憶の断片が少しずつ蘇り始めます。
しかし吉武よりも、早く前世の記憶が蘇っていた八尋は前世の記憶と現在が反転して前世の記憶のはずだった春沖が主体になってしまい…。

ところどころで前世の二人の記憶が描かれるのですが、「ずっと一緒にいたい」と願っていた気持ちがすごく伝わって、泣けるのなんのって!瞼が腫れたわ。

私がいいなぁと思ったのは、彼達の前世の意識が戻ってきたのは愛しい人にもう一度会いたかったからというだけではなく「俺たちの分も学んでくれ それを次の世代へ、次へ次へと繋いでくれ」というメッセージを伝えたかったからという点でした。
そして春沖や坂上は転生という形で現在に繋がっていただけではなく、彼らの友人達が繋げてきた縁が現在の八尋と吉武にも繋がっていたというところ。
八尋と吉武は子供を作って次世代へと繋げることは出来ないけれど、教師として生徒達に知識を与え繋げることができる。その知識がまた次の世代へと繋がっていく…。
そういった点が、ただの転生恋愛ものにとどまらない深みを作品に与えていたと思います。

それと描きおろしは、前世ではなく今に生きる二人の様子・現代物でしてそれも良かったです。

デビュー作に続いてこちらの二作目も間違いなく私の琴線に触れました。文句なしの神です。半壊の花で泣いた人は、間違いなくこちらの作品も泣きますのでタオルのご用意をどうぞ。

10

この作品が収納されている本棚

マンスリーレビューランキング(コミック)一覧を見る>>

PAGE TOP