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シリーズ本編とは異なった主人公・種族の物語。
なんとなく、気楽には読めないお話な気がしたんです。
なぜなら木原先生作品だから。
その予想は見事に当たっていて、終始胸を鷲掴みにされるようなストーリー展開と、根底にある簡単には答えが出ない大きなテーマに夢中になってしまう。
読んでいてすごく苦しいのだけれど、あっという間にこの作品の世界観に魅了され、とある種族の愛についてが綴られた数十年にも渡る物語から目が離せませんでした。
前作までの「願いの叶う薬」を巡る3冊も素晴らしかったのですが、こちらのパラスティック・ソウルシリーズは毎巻読めば読むほど圧倒されるというか、前作をしっかり超えてくるんですよね。
読み手はこの作品の世界に生きているわけでもないですし、耳と尻尾の生えたビルア種も、高度な知能を持ったハイビルア種も、人に寄生をする精神体・Oはもちろん、作中のごく普通の人間の生活ですら見たことも聞いたこともありません。
ようは見ず知らずの人と世界の、それもSF要素のあるお話だというのに、なんだか奇妙なほどにリアルなものを感じるのです。
木原先生は、人間の感情や環境・関係性のままならなさにざっくりとメスを入れるように描くのが本当に巧みな作家さんだと思います。時に生々しいほどの上手さ。
だからこそこんなにも苦しくて残酷で愛おしい愛に溢れたお話になっているのではないでしょうか。
性別を持たず、25年をリミットに人から人へと渡り歩くように寄生しなければ生きていけない生命体。
愛を知らず、やがて愛を知った1個体と、愛を知らない1個体とは知らずに愛した1人の男性。
始まりから結末まで非常に読み応えのある、心揺さぶる素晴らしい作品でした。
次巻は一体どんなお話なのかと今から読むのが楽しみです。
ハイビルアのハルは大学教授。これまではずっと男性体だったが、初めて女性体に寄生した。
同じく美しい女性体に寄生し女性性を謳歌しているビアンカと異なり、着飾ることもせず言い寄る男がいても袖にして研究に没頭する。
そんなハルに、大学1年生のジェフリーが恋をした。どんなに振り払っても、絶えず愛の言葉を贈る青年にほだされて、交際するようになる。
寄生体交換の日はどんどん迫るなか、二人は結婚し、ハルは妊娠する。
というところから始まる物語。
たいへん考えさせられました。
「パラスティック・ソウル」1~3巻を読んで、この世界の仕組みがわかった状態で読む醍醐味。番外編です。
転生を繰り返す、永遠の命。
ハルがアーノルドに転生し、中身は同じだけど、見た目はまったく違う。
ハルは女性、ジェフリーよりも8つ年上。アーノルドは男性、ジェフリーより17歳下。
知らなければ別人です。ハルをこの上なく愛しているジェフリーは、子供から大人に成長したとしてもアーノルドを愛せるのか。
ハルを愛するのと同じ気持ちでアーノルドを見られるのか。
ハルもアーノルドも同じ魂が宿っているのに、絶対に自分を見てくれないジェフリーを思って泣くアーノルドが切ないです。
中身と外見はセット。いかに心を好きだと言っても、外見が違えばそれはもう違う恋になってしまう。
同じ作者の「美しいこと」を思い出しました。
また、恋愛ではないですが、ムーミンが化け物になってしまったときママだけがムーミンだと見破った話があるのですが、それも思い出しました。
ジェフリーがアーノルドの思いを受け入れるまでがもう本当に胸が痛くて、応援しつつも、ビアンカ(このときはキミー)じゃないですが新たな人生を歩むべきだと思ったりもしました。
気持ちは分かりますが、愛した人の近くに転生するなんて、苦しいしかないと思うのです。
もういっそのこと、全然違う場所で違う人になって、ゼロからやり直した方がいい。
だから多くのハイビルア(O)はそうしているのでしょう。記憶だけ残っているのは辛すぎます。
そして、このお話、そこでは終わらず、また転生します。
こうなってくると、永遠の命と普通の人間の恋の話でもある。シザーハンズです。盛り盛りのてんこ盛り。
もう木原先生はなんてお話を考えるのだろうと脱帽し、苦しくなりながらも夢中になって読みました。
巻末にSSが2本収録されています。
ジェフリーとアーノルドのラブラブなお話「love life」もよいですが、なんといってももうひとつの「Rainy」です。
表題作の後日談にあたるこのお話。いろいろ衝撃でした。短いのにこの破壊力。
「Oを滅ぼす」というこの薄暗い想念。鳥肌ものでした。
なんて言うか、グッと胸に刺さる。
苦しくて切なくて地団駄踏みたくなる(>_<)
「願いの叶う薬」篇が終わり、謎が解けたと思ったら、精神体だけの種族『O』。
5歳児のビルア種の肉体にのみ寄生し、25年経つと次のビルア種へと移行して、永遠に生きていける種族。
今作は、そんな永遠の命を持つ『O』の1人のお話。
まずは、女性体の『ハル』。
年下のジェフリーに愛され、絆される形で夫婦に。
フェードアウトした後、次の身体『アーノルド』へと寄生。
アーノルドとなってから、ジェフリーへの愛を自覚し、彼の愛を欲するようになるアーノルド。
痛々しいくらい必死に愛を乞うひアーノルドが切ない。
『ハル』が亡くなった後も、ジェフリーの心はハルだけを大事に愛していて。
魂はハルなのに、認識してもらえないジレンマ。
やっと愛し合えるようになったのに、迎える次の身体への乗り換え。
特別になれない苦しさと、置いていかなければならない苦しさと。
そしてまた、愛し合った者だと気づいて貰えない苦しさ。
今作、アーノルドが可哀想でやるせない。
切なきゅんはハピエンだからこそ萌なので、こちらは苦しいなぁ('A`)
でも、物語はとても面白かったです。
これから辿るアーノルドの行く先…。
イラストはカズアキ先生。
表紙が全て美しくて素敵です。
1〜3巻の登場人物にまた会えるかと思いきや、ほぼ完全に切り離された話になっています。交差するのは例の動画ぐらいでしょうか。
今作はひたすらハル視点でまるっと一冊。アーノルド、ナイルズ、クラインと入れ替わってますがハルはハル。まさに作品の柱はそこ。ハルの精神体が傷ついて、ジェフリーが全てを知るところになる流れかと思いましたがそうはならず。となるとヴィンセント・クラインが革命家になるのかな?完全体のままに革命精神を持つことはできるのかな?
BL作品にはままいる凄まじい執着心の主役陣。主役2人とも凄まじい執着心なのに矢印が向き合う時間は短いというところは珍しい。
Oの行く末が気になります。次巻購入してから一気読みすべきだった。ときにジョン&ニコラス以来、ケモミミであることがあまり効果的に使われていない気がして。まぁケモミミは趣味!で終わる話。
1~3巻を全部読み終わったら、4巻には少し読み気がなかった。いよいよ読み始めると、すぐに物語に吸い込まれ、夢中になった。最後のシーンにたどり着いた時、涙がもうめちゃくちゃだった。
2巻のdear brotherより切なかった。もう二度と読み返すなんか嫌だと思ったが…やっぱり木原先生がすごいなぁとしか思わない。
日本語の小説に泣くほど痛くて切なくなったとは思わなかった。いい物語はやはり言語の壁が越えるものだと感心する。