イラスト付き
上巻を読んだ時点では神作品!と思ったが、下巻はモヤモヤする部分が気になって、篠口の心理描写があまり刺さらなかった。
巻末の短編は全部好き。
黒澤は上司として篠口以外の部下の特性もちゃんと見ていて希望を叶えようとしてるとか、元妻の事情を受け止めて背中を押したとか、ありのままを尊重する人間で、そういうところに救われていたと気付いた篠口。
それで苦しみがちょっと消えたのは、黒澤を信頼してもいいと思えた安心感からなのかな。
個人的に犯罪被害者心理の描写で、立ち直りの際に他者依存の危うさが見えるとモヤモヤしてしまう。影響を受けて自己を取り戻す自立と再生が描かれていればすっきりできるが。
この作品はたぶん描かれているとは思うけど、なんというか、しっくりこない。黒澤がどうこうと言ってくる後輩に対する篠口の描写とか、黒澤に元妻の話を訊くときの篠口の描写とか。
あと黒澤の結婚離婚の経緯は、黒澤を良く見せようと無駄にこねくり回した印象で、やけに説明的に感じ、心を動かされる篠口に共感できなかった。
ペットを探したり職場復帰したりの動きがある中で、黒澤だけが特別な存在になり得た理由の一つに、篠口の正常でない精神状態がある気がしてしまう。
じゃあどうすれば納得かってなると難しく、もう少し待つとなれば篠口の不安は増大するし、くっつくタイミングはベストだったんだろうと思う。
と、本編はモヤモヤしてしまったが、篠口が黒澤と笑い合っているその後のお話で、ちょっと心が晴れた。
短編は「暁」が印象的。監禁された篠口を救出する神宮司視点のお話で、恋敵に助けられる屈辱を神宮司が察したシーンが辛すぎた。ただでさえ精神的にボロボロなのに、さらにプライドをへし折られる篠口が。
カップルとしては好きなタイプの二人。感想は変わってくるかもしれないし、しばらく経ってからまた読んでみようと思う。
「墨と雪 2 下巻」。
篠口が職場復帰を果たしていく展開です。
周囲のサポート、黒澤の包容力、そして何より篠口自身が苦しみを抱えながらも自分の足で立っている姿。
勿論一進一退。時にフラッシュバック、時にパニック発作に襲われる篠口の状況に胸が痛みつつ、自宅に住まわせてメンタル面のサポートを惜しまない黒澤に感心しきり。
黒澤ってここまで献身的になれるんだ…
と同時に、黒澤の離婚のいきさつも語られてこれにはびっくり。これは…ちょっとドラマ過剰だったかもと感じた。
黒澤に勧められて保護犬を引き取る篠口。
彼女を溺愛する事が心のリハビリ。黒澤に向けるのとは違う種類の溢れる愛情が篠口を救っていくはず。
「暁」
袴田の別荘での篠口救出現場、そして救出後を、神宮寺視点で。
発見時、自分を見た篠口の目。篠口が感じたであろう失意が理解できるから、自分も心が乱れる…そんな心境。
「雨の降る夜は…」
セフレ時代のエピソード。
偶然駅前で会った苛立っていたような黒澤。購入したばかりの自宅マンション用に色々買い物していた篠口にくっついてきて、今は部屋で共に食事を。そしてその後も…
「レイディ」
はじめは人間に怯えていた保護犬も、今では穏やかに過ごしている。黒澤と篠口のベッドの横でも…
「ウィークエンド」
あとがきの後の書き下ろしSS。
秋のある土曜日。朝から出庁していた黒澤が帰宅すると篠口はケーキを焼いて待っていた。
「お誕生日おめでとうございます」
作ったのはウィークエンドシトロン。大切なひととの週末を。
黒澤の深い愛情と、篠口が癒されていくのがとても良かったと思う。
ただ私は、もっと犯罪の方が主に描かれるのかな〜と勝手に思っていたので、袴田がサイコな怪物なだけ、篠口は目をつけられた中のひとり、で終わった感じはちょっと物足りなさを感じてしまいました。「萌」で。
はあ……もう、レイディをここぞとばかりに甘やかし可愛がる幸せそうな篠口の姿に、やっとやっと救われた…!
あの壮絶で辛すぎる体験をずっとずっと忘れることはできず抱えていきながらも、黒澤の目の届くところで安心感に包まれながら、ずっとずーっと幸せに暮らしてほしい、と、ただそれを願うばかりです( ; ; )
「甘い水」が大好きだったしこれからも大好きなんですが、この「墨と雪」シリーズが読めて本当に良かった。辛くて痛くて、時間のところはきっとずっと読み返せないけど、、
篠口を救い出す場面、描写が少ないなと思っていたので、この下巻で神宮寺と遠藤の心情や様子を知ることができたのも良かった。
とにかく、もう二度と心荒れる体験をすることなく、レイディと黒澤と共に心安らかに…と、ただそれだけ願ってます。黒澤、頼んだよー…!(叫)
篠口さんが復帰した日私は泣きながら読んでました。1巻が本当にしんどくてしんどくてキツかった。他の作品で得体の知れない感じだった黒澤さんがあんなに愛情深く傷ついた篠口さんの側にいるのも泣けた。すごいお話だった…辛かった分2の下巻では2人の静かな暖かい時間が流れていく時間がすごく良かった…心が癒された。円陣闇丸先生の挿絵も美しくて大好き。評判通り私もこのcp が1番好きだなぁ。大人の2人、お布団シーンの色気もすごかった……好き……。
(こちらは下巻のみのレビューです)
下巻は本編と短編数作の構成。
上巻本編ラストの翌朝から始まります。
上巻最後はかなりつらそうな篠口にハラハラしましたが、下巻は黒澤によって癒されていき、段々と落ち着いていきます。
黒澤が面倒を見るということで退院し、なんとか職場にも復帰。同僚であるSITの面々の温かさには、うるっとさせられました。
そして黒澤に誘われ、二人で黒澤のマンションに暮らすことに。この黒澤が篠口を口説くシーン。黒澤が、とにかく篠口の望むように好きにしていい、と最大限に配慮して熱心に誘う様子が、黒澤の深い愛情が感じられてキュンとしました。
その後も街中でフラッシュバックが起きた篠口の元に、仕事中でもすぐに駆けつけるなど、どこまでも優しく寄り添う黒澤。篠口の傷ついてかたくなな心も、この黒澤の溺愛に徐々に溶かされていきます。
本編終盤、黒澤の元妻について語られるシーン。想像していたよりもずっと込み入った事情で驚きました。黒澤の優しさや繊細さを、さらに好ましく感じられた、ちょっと切ないエピソードでした。
そしてようやく体も心も結ばれる二人。感無量です。翌朝の二人の会話、強い約束に、胸が熱くなる思いでした。
最終章では事件が発生、篠口は無事に任務を遂行し、神宮寺のピンチを救う。神宮寺は監禁事件で最初に篠口を助けた人物。しかも遠藤を取り合った仲。そんな二人がお互いに礼を言い合うシーンもまたジーンときました。良きシーンでした。(神宮寺の挿絵があるもの嬉しかった!)
そしてラストはパートナーとなった篠口と黒澤。保護犬を迎え入れることを決めるところで本編終了。犬を挟んで穏やかに語らう二人にほっこりして、ああ、本当によかったなぁという気持ちになりました。
短編も数作収録。
【暁】(約29ページ)
「甘い水」の攻め、神宮寺視点のお話。
監禁された篠口救出と、その後のSITの面々の様子を描いています。
神宮寺は、クールな部分もありつつ人情もあり、とても好きなキャラなので嬉しい♪
救出シーンは、非常に緊迫感のある描写でドキドキしました。素晴らしかった。
篠口への見舞い品について語らうSITの面々の会話はとても楽しい。良き短編でした。
【雨の降る夜は…】(約8ページ)
本編の約6年前。篠口が寮を出た直後。
街で偶然篠口と黒澤が会い、篠口の部屋に来て語らう。少し疲れた様子の黒澤。落ち着いた会話。しっとりした大人の雰囲気が素敵な短編。
【レイディ】(約32ページ)
二人の住むマンションに保護犬レイディを迎えてしばらくしてから。黒澤が帰ると篠口とレイディが寄り添って寝ていて…。
レイディに優しく語りかける篠口にほんわか。仲睦まじい二人の様子にほっこり。ラブラブな濡れ場あり。幸せそうで甘々な二人にキューンとさせられました♡
【ウィークエンド】(4ページ)
二人+一匹の穏やかな生活。黒澤の誕生日にケーキを焼いた篠口。幸福な日常にまたもやキューン。素敵なラストです♡
とにかくこれでもか、というほど、どこまでも篠口を甘く献身的に溺愛して癒していく黒澤に、始終キュンとさせられる下巻でした。
上巻冒頭で黒澤の
「時間をかけてでもゆっくり癒してやりたい」「そして…二度と他人に傷つけられることのないよう、腕の中に囲い込んでしまおう」
このモノローグにキュンとしたのですが、まさに有言実行というか初志貫徹というか。決意を実現した黒澤に、グッとくる物語でした。
本シリーズ、「甘い水」と「墨と雪」しか読んでないのですが、「Zwei ツヴァイ」の山下なども出てきて興味を持ったので、他の作品も読みたいと思います!