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復刊されたこのシリーズ、元は本書が1冊目だったのですね?
復刊が刊行順でないのにはどのような意図があるのか気になるところです。
前作(本当は前作ではない……)「蒼穹のローレライ」とは時代は同じですが、直接のつながりはほぼありません。衛藤新多大尉は両方に出ていますが、片やラバウル、こちらは日本が舞台です。
由緒ある大家の跡取り息子の身代わりとして、他家の末子を養子にし、特攻に出す。
大家の家長が講じたこの策と、それに乗った若者、抗った嫡子、その末路を描いたお話です。
「蒼穹のローレライ」もそうでしたが、ぐいぐい読まされる筆力と相俟って、日本が戦争に負けることは分かっているからこそメインの二人がそこにどう絡んでいくのか、どのように話を落ち着かせるのか、気になって最後まで目が離せませんでした。
本編、それから後日談のSS「サイダーと金平糖」「遺言」の2本と、書き下ろしの「青いカップの神様」が収録されています。書き下ろしも後日談です。
「蒼穹のローレライ」のレビューでは、読後に胸が一杯になった思いをどのように文章にすればよいのか悩みましたが、本書は評価に苦慮しました。
今もまだ悩んでいます。
前述のとおり、ぐいぐい読ませられ、この作品世界に没入しました。登場人物の描写が鮮やかでその感情にこちらも揺さぶられましたし、国中が狂っていたといってもいいこの狂気の時代、風潮を、見事に書き表されていると感服する思いでした。本来は「神」作品としたいところです。それだけに「萌2」「萌」は自分の中ではしっくり来ないほどです。
なのになぜこの評価なのか。それはひとえに、やっぱり、いくらなんでも度が過ぎていると思ってしまったからでした。
分かります。苦肉の決断だったことは想像がつきます。それだけもう切羽詰まっていたと思うし、資紀の本当の気持ちがどうとか、そんなことは二の次でとにかく好きな相手を守りたかった一心だったということは分かります。どれだけ世間という名の圧力が理不尽で兇暴なのかは、あのとき希がどれほど酷い目に遭ったのかを見れば(見なくとも)、これほどのことをしでかさない限りどうにもできなかったのだろうと、理解はします。でも、やっぱり私は許せないと思ってしまいました。
どのような理由があっても、希に嫌われ恨まれたかったとしても、このような形で傷つけることを許すことができません。可哀相過ぎました。そこまでかと思いました。
こんな惨い目に遭っても、まだ希はそこに真実を見出そうとします。そんないい子になんてことをするのだと。正直、両刃の剣だと思うんですよ。決して良策ではないです。あまりのことに希が心を病むことだって、絶望して自死することだって、充分考えられる。
もしもそうなっていたら元も子もないし、それはもう、このやり方が資紀の独善に過ぎないことの現れと言えます。希のことを何一つ思いやってなどおらず、自分のことしか考えていないとしか思えません。
前時代であり誰もが傅く大家の長男の生まれだから、ということを考慮すれば、仕方ないのかなとも思いますが。
ということによるこの評価です。作品を貶める主旨は毛頭無いことを付け加えます。
尾上先生の作品は、情景描写がとても美しいと思います。花降るシリーズは、匂いや温度湿度も感じられる気がします。
このシリーズも同じく、油の匂いや南国の湿度とジリジリする日光、日本の冬から春の空気の移り変わりを感じます。遮光された戦中の家の昏さとか。
執着溺愛攻と健気受の20年愛ですが、2人の生きた年代が大戦中という…
死こそが美とされていた時代と思想の中で、ひたすら愛する人を生かしたい、生きるところを守りたい、その願いが胸をうちました。
ローレライはラバウルの抜けるような真っ青な空でしたが、天球儀は瑠璃色ですね。美しいです。
連続刊行のこのシリーズ、次は何色かな
楽しみです
復刊2作目、1作目既読です。
子供の頃の一度の邂逅、初恋がすっと入ってくるかどうかにも寄るかなと思いました。
5歳の頃に命を救われた名家の坊ちゃんが好きで、お役に立てるならと特攻の身代わりを引き受ける。
希の父が天文学者だということ、右手にホクロがあることの設定が効いていてなんともロマンチックです。
希視点で描かれるので、資紀がなぜ冷たい態度をとるのか、ひどいことをするのか、が最後にならないとわかりません。なのでそこにいくまでに希がかわいそうで、途中途中本を閉じながら読みました。
希は資紀の代わりに特攻することを望み、資紀は希に生きてほしいと望む。それゆえ最後に資紀がとった行動に、いくらなんでも痛すぎる、と思えてならないです。
資紀が特攻として飛び立つ際に懐にそれをしのばせて飛び立つのですが、いやちょっとグロいというか。えっ、、、となりました。腐敗とかニオイとか問題が気になってしまいました。
資紀の本当の気持ちを希が知ったあと終戦を迎え、戦後しばらくしてからの再会。資紀から会いに行かなかった理由が語られることでなるほど、と思いましたが、自分がしあわせにするくらいの気持ちで理性とかぶっとばして会いに行かないんだなぁ…と少しだけ思ってしまいました。
星をモチーフにロマンチックな設定と身分差は好みでしたが気になる点があったので萌×2です。
あとこれは私がいけないのですが、2人の名前の読みがすっと入ってこなくて勝手にオリジナル読みしてしまってて、本来の読み仮名があると別人のことのように感じてしまうところがありました。
読み仮名もう少し色んなところに欲しかったです。
シリーズ買い。いつまでも覚えていそうだなと思うし神と思う部分もあるのですが、ちょっと痛すぎてしんどかったので間を取って萌2にしました。本編230Pほど+後日談2編25Pほど+書き下ろし18Pほど。痛いのは苦手なんです、ごめんなさい。
地元の大地主であり、政治家、当主は海軍中佐という家である成重家からの極秘中の極秘の依頼を受けた希(ゆき)。その依頼とは成重家の養子となり、長男資紀(もとのり)の代わりに特攻隊の一員として出陣することで・・と続きます。
攻め受け以外の登場人物は
光子(成重家で受けの世話をする♀)、林(成重家の使用人)、衛藤新多(攻めの昔馴染み、大尉)、攻めの両親、受けの家族ぐらいかな。
++好きだったところ
本編は痛くて重くて戦時中の息詰まる感じなお話でしんどくて、評価しがたし。
あの時代はそうなるしかなかったのか、という追い込まれ感がすごいです。
戦争って嫌だな。愛する人を傷つけるしかないなんで。
ということで本編はあまり語れないため、後日談の方を。
1.サイダーと金平糖
本編後日談。酔っぱらった資紀の口から語られるお話。愛おしいです。
2.遺言
本編後日談。おっかないタイトルですが、穏やかな、
でも確固とした二人の思いが分かるじんわり小編。
3.青いカップの王様
欲しいなあ・・・と思うもの。今はローンで買っちゃったり、しばらく
水だけになるけど!と買っちゃったりする方もいると思うのですが、
堅実派な希は悩んで考えて悩んで・・というお話。
二人仲良く、いつまでも堅実に・・と、こちらも愛おしいお話でした。
後日談は救われるテイストのものだったので、後味は良かったです!
旧版既読。
結末も知ってるし坊ちゃんの人となりも知ってるけど、それでも毎回心痛くなる。
そして坊ちゃんの愛の深さに泣く。
1945シリーズの中でも個人的には一番のインパクトのある作品。
そして数々のSSや同人誌を読みにんまりするのもこの作品の楽しみの一つ。
作品中出てくる希の兄の恒がここでも愛ゆえにかなり鬼畜w
牧先生の新しい希のイラストも堪能して終盤のイラストにもほっこり。
お気に入りシリーズ。