この瞬間をもうずっと長い間待っていたのだ。 長すぎるほどにーー。

  • 電子書籍【PR】
  • 紙書籍【PR】

表題作アドリアン・イングリッシュ(2) 死者の囁き

ジェイク・リオーダン LA市警の刑事 39-40歳
アドリアン・イングリッシュ 書店主で小説家 32歳

あらすじ

行き詰まった小説執筆と微妙な関係となったジェイク・リオーダンから逃れるように、
祖母が遺した牧場へとやってきたアドリアンは道ばたで死体を発見する。
だがその死体は保安官が来た時には跡形もなくなっていた。
敷地内のスパニアード・ホロウ峡谷では学者たちによる発掘作業が行われていたが、
謎の呪文や飼い犬の変死にスタッフは不安を覚えている。
そして牧場の郵便受けにはガラガラヘビが。これは谷の安らぎを守る「ガーディアン」の呪いなのか?
アドリアンを追ってやってきたジェイクとの関係も事件を通してゆっくりと動き出す、シリーズ第二弾。

2006年ブックニュースアワードGLBTフィクション部門受賞作(シリーズ第三作「The Hell You Say」が受賞)。

翻訳:冬斗亜紀

作品情報

作品名
アドリアン・イングリッシュ(2) 死者の囁き
著者
ジョシュ・ラニヨン 
イラスト
草間さかえ 
媒体
小説
出版社
新書館
レーベル
モノクローム・ロマンス文庫
シリーズ
アドリアン・イングリッシュ
発売日
ISBN
9784403560163
4.3

(93)

(50)

萌々

(31)

(9)

中立

(1)

趣味じゃない

(2)

レビュー数
16
得点
402
評価数
93
平均
4.3 / 5
神率
53.8%

レビュー投稿数16

アドリアンお前、男の趣味悪いで!!!!

アドリアンに色々言いたくなる話でした。
事件絡んでも落ち着いて行動して欲しいし、ジェイクはクソ野郎だから諦めろって言いたい(笑)

ジェイクが匂わせてきたことをそのまま受け止めると、結婚前提に付き合っている女がいるってことですよね……?
今の状況、相手の女にめちゃくちゃ失礼では?
男と浮気してるとか最低にも程がある。
しかも気持ちは女より男の方にあるのだろうし(無感情では無いだろうが)、浮気と知って肉体関係を受け入れたアドリアンも最低の仲間入りしてしまった。

まあ浮気発言自体、最低の牽制行為なのですが……。
完全にアドリアンの好意に漬け込んでる。
言ってることは真実でも真摯では無い。狡いんですよね、やり方が。相手に選択を委ねることで責任から逃れているようにしか見えない。
とにかくジェイクは最低のクソ野郎です。こと恋愛においては。
ジェイク、まだ結婚していないとはいえ、ロバート(一作目の被害者)と同じようなことしてる自覚あるのか……?

そのうえゲイのくせにホモフォビアという面倒臭さ。
いや、わかるけど、受け入れられないのは。だからと言って他人を傷つけるような事するなよと思いました。
もう本当に目を覚まして欲しい。
浮気と知って肉体関係続けないでくれ。

……と思う一方。

このクソ野郎の良い所も見えてきちゃうんですよね~~~クソ野郎には変わりないのですが。
アドリアンからしたら、命の恩人だしね、今作でもピンチに駆けつけてくれるんですよ……。
心配して休暇取って寄り添ってくれる優しさが彼にはあるわけです(彼女には友人の危機と伝えたのだろうか)。
何よりアドリアンのトラウマを感じ取って、恐る恐る接したセックスが良かったです。
そもそもセックスすなって話ですが、殺人鬼とのセックスよりは浮気男とのセックスの方がマシか……とか思わされてしまいました(笑)

これが浮気じゃなけりゃなー!!!!!!

アドリアンのトラウマは解消されて欲しいけど、ジェイクの浮気相手にはなって欲しくなかった。
気持ちがあって、セックスまでしたら、友人というのは厳しい。
どう考えても両想い……でも本命は別の女なんですよこの男(世間体の為に!)。
一方的な愛ならアドリアンも諦められたんだろうな……と思いました。
結果、諦めるどころか、事件を踏み台にジェイクの存在が大きくなってしまうわけですが。

というわけで、今作は一作目よりしっかりBLとして楽しめました。
ジェイク貴様~~!! ってしてる時間楽しかった(笑)
もちろんサスペンスとしても面白かったです。

土着の伝説も絡んだ事件で、ちょっとしたホラー要素もありました。
田舎の閉鎖的な空気が緊張感を盛り上げてくれました。
しかし、事件そのものより、アドリアンの危なっかしさの方にハラハラドキドキ。
お前はいつ探偵に転職したんだ!? と言いたくなる勢いでグイグイ事件の奥深くまで首を突っ込んでいきます。

好奇心旺盛で勝手な行動をしまくるアドリアンですが、独自の視点から真相に辿り着きます。そして危険な目に合う。
一作目とは逆転して、ジェイクをアドリアンが助ける展開が良かったです。
アドリアンと同じく猪突猛進なメリッサも面白かった。

それにしてもアドリアン。お祓いとかした方が良いのでは。
惚れた相手が浮気男で、逃避の為に田舎に帰ったら殺人事件に巻き込まれる。
そして事件に深入りして更なる不幸を呼ぶことになるわけです。
土地の管理不足と言えばそれまでですが、自分の土地で死体を発見した時点で相当な不幸。
まあ、生きてるだけで幸運ですが。
それにしても数ヶ月の間で大変な目に合いすぎてる。
アドリアン、正直全く好みでは無い(むしろ苦手なタイプのキャラ)ですが、危なっかしすぎて目が離せません。

そういえば、敷地内でマリファナ育てられてた件は解決したのかな。

2

ジェイクがいい男なんだよ

今作の冒頭、アドリアンがジェイクに「お付き合いの申し込みらしきもの」をされて、付き合ってるということになってて驚きました。しかしなかなかその「お付き合い」とやらは進展しませんが。なんたってキスも出来ない!男相手だからって。
シリーズを最後まで読んでから考えると、そんなジェイクが、付き合おうとアドリアンに伝えるのは相当な決心だったのではないかと思えます。結婚も考えてる彼女がいて、男への欲望はSMバーで発散させてきた自分が、男に恋してることを認めたくないでしょうに。それだけアドリアンに惹かれてたんでしょうね。
2作品目でやっと結ばれる二人ですが、幸せは続かない・・・ジェイクはちゃんと「お前には何もやれない」と苦しげに告げています。

謎解きストーリーは飽きさせない展開で、キャラクターも生き生きとしてて、どんどん読めました。

2

因縁の歴史究明にどっぷり

2013年刊。
アドリアン・イングリッシュシリーズ2巻目。
表向きは行き詰まった執筆活動の気分転換、本音は煮え切らないジェイクと距離を置きたくて、祖母から受け継いだ田舎の牧場へと赴いたアドリアン。

ところが、着いた途端に"有り得ない形"で委託管理人と遭遇。
更にその委託管理人に勝手に大麻園を作られているわ大学の発掘チームに敷地を掘り起こされているわで、早々に長年の監督不行き届きぶりを祟られる羽目になる。
その地も、インディアンだか過去の地主が花嫁を蔑ろにした末に不遇の晩年を抜変えるだの、呪いだのと、どんな真相が埋もれているか分からない。
そんな興味深い土地に、因縁の歴史究明と遭遇した事件の謎解きにどっぷり浸っているアドリアンだった。


実は1巻の個人的印象が可もなく不可もなく萌えられずだったので、一気読みするぜっ!!って勢いが萎んでしまって…
さて、どう目線を変えて読んでいこうかと悩んでしまった。
(この2巻目も読むのに半月ほどかかってしまった(-_-;))
事件に遭遇しやすい巻き込まれ型主人公の典型的パターンのミステリーも、いつもなら大好きなのだが…

どうもアドリアンは周囲から厄介事を被りやすいばかりでなく、警察官とも相性が悪いに違いない。
しかし、前巻同様彼らにまともに請け負ってもらえず、ぞんざいに扱われる辺りにゲイ差別が潜んでいるのかね。
これがこのシリーズで味わうという、"カミングアウト済みゲイ故に実感せざるを得ない居心地悪さ"なのだね。

さて、これからはクローゼットゲイらしいジェイクがどう変わっていくかを見届ければいいのかい?
今回のジェイクとアドリアンの間柄は取り敢えずいい友人関係?から進展するかどうかってところだろうか。
確かにベッドシーンはあったけれどさー、何でときめかないんだ…

1

ふいにくる甘さにハマりそう

シリーズ二冊目。
盛大な匂わせを残して終わった前作後に何やらあったらしく、アドリアンとジェイクは新たな関係性になった状態で始まっていた。そこ詳しく!と思っていたら、ちゃんと回想で語ってくれた。
意外なのはジェイクの方からだったということ。なのに体の関係を進めるのは拒んだり初心な反応を見せたりと、ギャップ萌えまであって良かった。

ジェイクから逃げるように休暇を取って田舎に飛ぶアドリアン。早速事件に巻き込まれて、おいおい……っていう。なるほど、こういうシリーズなのかと、彼の今後の苦労が見えて同情が湧く。死体を見慣れていくのかなあ。巻き込まれ系主人公にしては頑固なタイプで、自ら自覚なしに掻き回し役になっていたりするのが面白かった。

事件は一冊目よりぐっと込み入ったつくりになっていた。真相に迫っていく様子は、アドリアン自身の人間関係の外で起こっているため、一巻より物事がフラットな目線で語られている。ジェイクと推理を突き合わせるのも良かった。
ラストは息を合わせての解決。受けが過剰に守られることはなく、誰が手を汚すこともなく、綺麗に終わってくれた。
回収がなく気になるのは、アドリアンの書店に残してきたアンガスと連絡が取れないこと、殴られた後の電話の件、噂の内容などなど。他にもいろいろあるが、まあ重要じゃないんだろう。

今作でのアドリアンは容疑者でも次の標的でもなかったが、心配するジェイクの気持ちが強まっていくのが感じられてとても良かった。ジェイクからの不意の接触や甘いシーンにどぎまぎする。何の予兆もなくくるので、ほんの数行でもドキリとさせられる。
お互いに戸惑いながらの初ベッドシーンは、アドリアンの一人称で受け側の感覚が瑞々しく語られていた。ずっと糖度低めで進んできた中でのこれは、結構な破壊力だった。

何とも言えない距離感から始まった二人は、この事件で結びつきを強固なものにしたのかな。アドリアンが気持ちを自覚して、この先がとても気になる。
前作から思ってたが、ジェイクに感じる異常なまでの安心は何なんだろう。警察官というのもあるが、いてくれるだけで何の心配もないと思える。普段は横柄で寡黙。そんな男がふいに見せる甘さに、たまらなく萌える。ラストのセリフが最高に痺れた。

原書の初版は2002年。精密機器を日本製と書く言い回しに時代を感じる悲しさ。古い英語作品でよく見るこの表現、いつ頃まで使われてたんだろうな。

じわじわハマってきた気がする。次も読みたい。

0

甘かった

痴話喧嘩の巻。
数巻分飛ばしたのかと思ったくらい言葉はなくとも関係が出来てた。

ジェイクに女性の影を見たアドリアンの嫉妬からの行動力は見事なものでした。
前作以上に頑固。そして相変わらずの皮肉の効いたユーモアよ・・・
特にお気に入りの言葉は、とある大学の博士が学生からインディ・ボーンズ(骸骨)と呼ばれているというのを聞いて答えた
「残酷な思春期の若者に幸あれ」ですね。ゴロが好き。
皮肉集発売されないかな・・・

ジェイクもジェイクで気持ちを言葉にしないし粗野だけど、アドリアンに対しては頑張って抑えてる。
声を荒げたとしても要はめちゃくちゃ心配しているということ。
その内胃に穴が開きそうだなジェイク。

オープンとクローズドの交わらない気持ちが切なさもあった本編。
ジェイクは女性も抱けるゲイなので色々と葛藤している様子が窺えます。
子どもがほしいと言ったジェイクに対してのアドリアンの皮肉は笑った方がいいのかなと迷ってしまうくらい痛烈。
でも最終的には甘々でした。
こんなに甘くて先が不安です。

2

1巻とセットで

1,2巻はもはや上下巻として出した方が良かったのではなかろうか。そうしたら1巻の萌えどころの少なさにモヤモヤせず、2巻を読んでもらえたのかも…ととっても後乗りの読者ながらに考えてしまったりして。

これから2人のロマンスが?!ってとこで終わった1巻から、2巻冒頭既に急展開を見せています。知らないところで仲良くなっちゃってまったく。

ジェイクがアドリアンに心を開くたびに胸がときめきました。車でバックするときに腕を助手席の背もたれに置くジェイク、フクロウを引いてしまったことに心を痛めるジェイク…あぁジェイク、セクシーの化身……

あいもかわらず事件にあっては現場を引っ掻き回すアドリアンちゃん。今回はジェイクに守られると同時にジェイクのことも守って、成長してます。小説全然書いてないけど
大丈夫なのか?

萌2〜神

0

引き続きイマイチ

1巻目の「天使の影」でけっつまずいた私ですが、2巻目以降に希望を持って読み始めました、が………
え、またミステリ系?イヤな予感…(ってゲイミステリジャンルらしいから仕方ないけど)
お相手が刑事だからって別に毎回事件絡めなくても…
今回はホームグラウンドの本屋さんやお仲間の「共犯同盟」の面々から離れ、遠くお祖母さんの遺した牧場が舞台。なのに。
なのにまた死体に出くわすアドリアン・イングリッシュ。しかも土地の保安官が来てみたら死体が無いとか!
もろにミステリの幕開けじゃないですか。
そして最後まで読んでみての感想としては…
正直言って、ミステリとしては面白くなかったです。
土地の伝承やゴールドラッシュの黄金探しなど絡めて重層的にしようとしてるのはわかりましたけど。
気を取り直して、ロマンス的にはどうか?
こちらは進展がありました。そして面白かったし展開としても良かった。
私はただくっつけばいいと思ってるわけじゃないので本作でまだ葛藤しててもよかったけど、ジェイクが自らを解放してアドリアンと躰でつながりましたね…
アドリアンも言っている通り、セックスは関係の一部にすぎないーだが、大きな一部だったーー
アドリアンにとって、ジェイクが示してくれた思いやりや心配、それはもちろん大きなことだったと思うけど、一度のキス、一度のセックスがそれら全てを凌駕する出来事だったでしょうね。だからアドリアンにとって良かったと思った。
今回は舞台が日常と離れてたから2人のロマンスもアフェア的な空気が入り込んでる部分がある。だからちゃんと日常の中でも2人の恋が育てられるのか、今後その辺に期待していきたいです。

2

ジェイクはずるいけど魅力的な男

1巻ではメイン2人のロマンスは皆無。最後にようやく2人の関係が進展するのかな?って終わりでした。

ジェイクが2人の関係を「楽にはいかないぞ 」と言ったようにあれから2ヶ月たってもキスすらしていないんですって!それもこれも“クローゼットゲイ”ジェイクがアドリアンに「お前は女じゃない」とか言って煮え切らない為。
そんなさなかジェイクとの電話口から聞こえてきた女性の声。それが引き金になりアドリアンが距離的にもジェイクから逃避する所から2巻は始まりました。

(事件内容はまるっと省きます…
ただ前回同様アドリアンにはハラハラします。某ドラク◯なら絶対に「いのちだいじに」で行くところ「ガンガンいこうぜ」モードです。アドリアンお願いだから、、って何度思った事か。心臓こっちが止まりそう、、これだけはジェイクに同情。)

2人のロマンス、結論から言うとジェイクはアドリアンを追っかけてきて無事セックスもする関係になります。

でもねー「ジェイクテメーこのヤロー
」なんすよ…
アドリアンの事を出会った中で一番きれいな男だ、とか言っといて自分は子供好きだ、とか結婚の予定もある、とかちょいちょい牽制してくるし。
キスはするけどいざとなると我に返って途中でやめるし。
…もう、こんな男私がアドリアンの友達だったら絶対止めますよ。そいつはやめたほうがいいんじゃない?未来無いよ?って。

でもこの作品常にアドリアン視点なんです。
アドリアンから見たジェイクという存在は悔しいけどやはり…

朝から卵4個も食べるし
いびきは消火器かノコギリで壁を削ってる音かって程だし
雨に濡れて日焼けした肌は超セクシーだし…
アドリアンの事めっちゃ優しく大事に抱くし
(「お前をファックしたい」は萌えた)

多分ファッキン魅力的な雄なんだろうなって。笑

アドリアンは何だかんだ言いつつジェイクにめちゃくちゃ惚れていて、ジェイクが負傷したのをきっかけに「自分の命より大事」とまで感じる程の存在になっています。
もうここまで来ると仲の良い友達(私)も何も言えません、いずれ女性の元に行ってしまうのも覚悟の上の恋なのでしょう。頑張れアドリアン!と見守りたいと思います。
(とはいえ一度全巻読んだ身としては今後の展開胸が痛いのですが…)

いやーでも数年ぶりに読み返したらやはりめちゃくちゃ面白いですこの作品。アドリアンのキャラ本当に好き。ユーモアセンスマジ最高です。

4

エイドリアンではないのだろうか?

友人からの強いおすすめプラス、最初の2冊はいっきによむように、という指示をもらい、1冊目を読み終わってから、すぐにこちらも読みました。確かに、二人の関係に主眼を置くと、1冊目は出会いだけ、2冊目でようやくBLらしくなる、とおもいます。海外ドラマや翻訳ミステリも好きな人だと、それなりにたのしくよめるんじゃないかと。ただ、翻訳が微妙かも・・・・・そもそも、主人公の名前がアドリアン? エイドリアンではないのだろうか?

2

事件を通して深まる関係

ああ…もう読みながら何度萌え転がったことか。1巻でこのふたり本当にラブになるの?と不安だったのだけど、やっとふたりの仲が前進。それでもそこに至るまでがハラハラ、やきもきさせられ、つらかった。

またも事件に巻き込まれる主人公。今回の事件では攻めのジェイクは管轄外なのだけど、受けのところに駆けつけて、その後も一緒に滞在してくれる。
その時点ではジェイクは肉体関係どころかキスすら拒否していて、本当に付き合ってんのか…という感じ。でも読者にはわかる。ジェイクなりに彼はアドリアンを心配していて、厳しい言葉も彼を想う故だと…!
アドリアンは無理に距離を縮めようとはしないけど、ジェイクも思うところがあったのか、徐々に雰囲気がよくなって…いやー、はじめてのキスでこんなにドキドキしたのって久し振りで。終盤にやっと体を繋いだときは、もう胸熱。予想外のジェイクの甘さに萌え萌えだった。

事件に関しては今回もドキドキハラハラ、申し分なし。先住民の神話をモチーフにした、ちょっとホラーっぽいシーンもありつつ、スリルとサスペンスを堪能できる。ロマンス小説としても、仲が深まったという点では非常に満足。
ただ二人の心はまだ同じ方向を向いているわけではなく、3巻の表紙を見るとこのあとはすれ違い、別離展開?
またしても続きが気になる。

0

上質なミステリーを読んだ後の幸福感

まさしく、こういうミステリー読みたかったんです…!という理想型の小説でした。

ミステリー小説も犯人やトリックが云々というのは、年々興味が薄れていき、
その事件の起こる背景や動機に工夫がされていたり、目新しい題材(設定)に惹かれる傾向にあります。

その中で、この小説はアメリカならではの地理的要素や歴史背景も設定に生かされた重厚なストーリー展開がなされ、新鮮で非常に楽しめました。一巻はゲイ・ソサエティーを積極的に取り扱っている面では新しかったですが、ミステリー的によく見かける話だったので、今巻の方が独自性があって良かったです。
私有地の牧場の敷地に〇〇や〇〇があって、という設定とか面白過ぎです。アメリカらしくスケールの大きな話で。ここで心を掴まれました。全体的にムダな所が無く、設定も生かされ上手く纏まっていました。スリルも多分にあり、最後まで息を抜けませんでした。
上質なミステリーに少し苦味のある大人のゲイ男性の葛藤。味わい深かったです。

ゲイである事を受け入れて自然体で生きるアドリアンと常識や世間の価値観に縛られて自分を出せないでいるジェイドの距離感や話の掛け合いも楽しめました。事件の渦中にあっても、好きな人の事が気になったり、普通に夜の営みがあったり…というのも人間の性だなーと微笑ましく感じました。ラストのお約束シーンにはグッときました。

これだけボリュームの多い翻訳ミステリーを何のストレスも違和感も無く、楽しめたのは翻訳家さんの力が大きいですね。唯一つタイトルの邦訳を「死者の囁き」とつけられた意図を知りたいです。原題は洋書にありがちなシンプルなタイトルですね。洋画でも原題と邦題が見違えるように変わる事が多く、人種の違いを感じます。

3

不穏さが際だつ『甘さ』

何度目かの再読を始めたら読む手が止まらず、気がつけばほぼ5日間に渉って、何とか時間を見つけて全巻ぶっ通しで読みふけってしまいました。
自分でも驚愕!
この物語の吸引力に改めて納得した次第です。

1巻が『起』なら2巻は順当に『承』です。
この物語はミステリですけれど、M/M『男性同士の恋の物語』なのですから、お互いに惹かれあったアドリアンとジェイクは週に何度かデートを重ねている(らしい)描写が冒頭で出現します。
でもね、すぐにジェイクが自分の性指向に対する抑圧から、アドリアンに対してセクシャルなふれあいが出来ない状態であることも書かれるんです。
なんと、彼はキスすら出来ないんですよ!
女性とは出来るのに。それだけではなく、男性とのSMプレイは出来るのに。
彼との関係に打開が見いだせないばかりか、次作の執筆にも詰まってしまったアドリアンは、亡くなった祖母が残してくれた牧場に『骨休み』という口実で逃げ出します。

で、そこで、死体は発見するわ、勝手に敷地内で大麻を栽培していた管理人が行方不明になるわ、敷地内で自分の知らない発掘作業が行われているわ、挙げ句の果てには誰かに殴られて昏倒してしまうわ、という風に、またしても『巻き込まれ犯罪』の物語が始まります。
まぁ、アドリアンの危機にはジェイクが必ずと言って良いほど駆けつけてくれるので、アドリアンが感じているほど、彼の身の危険でハラハラすることはあまりないのですけれど。
この巻は1巻よりも『謎解き』要素が強く、推理ものとしての側面が大きい所為もあるかもしれません。

今回、読み直してみて前にも増して感じたのはアメリカにおけるゲイフォビアの強烈さです。
2000年前後の、それも舞台がLAという物語で、これほどゲイが白眼視されているとは……「外から見ているのとはかなり異なっていたんだなぁ」と、何度か溜息をこぼしました。
ジェイクはアドリアンが好きで触れたいと思っており、それを口に出してさえいるのに、キスすら出来ないんです。禁忌という刷り込みの所為で。

当て馬くんの存在も含めて、様々な出来事の結果、この巻で二人は結ばれます。
LOVEシーンはとても甘く、けれど、夢見がちなものではなく(ものすごくロマンチックになりかけた時に不用意に動いて鼻をぶつけ合い、大笑いしちゃう処とか)実にリアルだと思いました。
ただ、その『甘さ』故に余計、二人の前にまだ続くであろう困難、特にジェイクの神髄にまで染み込んだ『自分がゲイである恐怖』を拭い去ることの困難が際だって、不穏な空気を打ち払うことが出来ない苦さが、物語の余韻を考え深いものにしていると思いました。

こういう処が、読む手が止まらなくなる仕掛けなんだよなー……

4

甘い二人

ミステリーのネタバレはしないようにレビューします。

シリーズ第二弾。シリーズ中一番甘い作品でしょう。

1作目のラストで、ようやくアドリアンへの想いを吐露したジェイク。といっても寡黙で自分を抑えるジェイクですから、はっきりと言葉にはしません。
しかし、交際が始まった二人。

ジェイクは刑事という仕事柄もありクローゼット(カムアウトしていない)。ここがシリーズ前編にわたって今後キーになります。

二人は交際を始めたと言っても、たどたどしいおつきあい。そして、どうやらジェイクにはつきあっている女性がいるようです(これは1作目でも匂わされている)。

半ばやけになったアドリアンが、祖母から受け着いた田舎町の旧馬場へ休暇に出かけます。ここで色々な事件に遭遇します。
しかし、休暇をとってジェイクも追ってきます。ここで、日常を忘れたつかの間の甘い時間が繰り広げられます。シリーズ唯一のカタルシスと言ってもいい甘い作品です。

謎解きは割合早い段階で分かるので(それでも読み物として楽しめますが)、どちらかというとラブサスペンスとしてストレスなく楽しめる作品だと思います。

6

このカップルは好きですね、不器用で

『アドリアン・イングリッシュ』の二巻です。
電子で安く売っていたので購入しましたが、この作品は登場人物紹介が最初のページに載っているため電子ではひじょうに読み辛いです。
たびたびそのページへ戻るのが面倒で。
翻訳物は紙媒体の方が読みやすいかな。

********************
受け攻めともに今回も変わりなく、心疾患を抱える32歳のアドリアンが受け。
攻めは刑事のジェイク、40歳。
といっても、序盤は攻め受けなどと書くのも違うような雰囲気です。
********************

一巻で起きた、『ゲイ切り裂き魔』とマスコミから揶揄される事件で知り合ったふたり。
アドリアンはゲイで、最初それを軽蔑しているように見えたジェイク。
が実は彼もゲイで、それをひた隠しにしています。
一巻ではまるでゲイフォビアのような態度でしたが、それは長く己の性癖を隠し続けていたことで、『自分はゲイではない』と脅迫的に思い込むようになっていたせいかなと思います。
目を背けるといいますか。
そんなジェイクでしたがアドリアンと出会い、今巻では付き合うようになっていました。
ただ、ジェイクはSM行為やセックスには慣れていても、キスしてハグしてというような、普通の恋人同士でのスキンシップは経験がないのでギクシャクしております。
個人的には無敵のような刑事がアドリアンには不器用なところ、とっても可愛い(笑

今回はアドリアンが相続している牧場が舞台。
事件に巻き込まれるアドリアンですが、ある意味でアドリアン自身は自分の命に対しての執着がないのです。
心疾患によってつねに命と隣り合わせの生活をしていたので。
そんなアドリアンですが、ジェイクに命の危険が降りかかった時には今まで経験したことのない喪失感を味わうことになります。
いつかジェイクは女性と結婚し子供を授かりと、アドリアンの人生とはかけ離れたものを歩むのだろうけれど、それでもジェイクという人間に惹かれずにはいられない、そんな必死さと反面の諦めが表現されていて切ないなと思いましたね。

一巻よりも怪しい人物が多かったですし、あまりわたしは思いつかない人が犯人でした。
というか、この作品は犯人を推理しながら読むお話ではないのですよね。
そういう物が欲しければ純粋に推理小説を読めば良いことで。
このシリーズは、事件が絡む恋愛に不器用なふたりを味わう作品なのだと思います。

4

出力の加減

シリーズ第一作の『天使の影』にてこずっただけに
ページが進められるかどうかかなり不安だったのですが、
今作は余りつまづかずに読み進める事が出来ました。
ロマンスと言う部分で予想以上の進展があったので
その部分でも食欲が進んだのやも知れません。
ただ、ロマンス以外の部分と言うと…ある意味では
『天使の影』に軍配を上げてしまいそうな感じです。
ロマンスと言う部分に重点を置かれる方は先ずこの巻を
読んで補完として前作の『天使の影』をさらりと読む、
と言う流れの方が良いかも知れません。

味わいは悪くはないんです。
ただ、活字で読むより3時間のテレビドラマにした方が
判り易いかなと思ってしまうだけで。

3

それぞれの葛藤

1巻と同時発売の、シリーズ第2巻です。

【あらすじ】
アドリアンは、刑事で隠れゲイのジェイクと微妙な関係に。
性癖を隠しノンケとして生きてきたジェイクは
男と付き合ったことがなく、ゲイになる覚悟もないため
アドリアンとセックスはおろかキスも出来ない。
不毛な関係に疲れたアドリアンは
祖母の遺した田舎の牧場を訪れるが、そこで殺人事件に遭遇。
追ってきたジェイクと生活を共にしながら事件を調べることに…。


【感想】
ジェイク(攻)の屈折した人物像が興味深いです。
ゲイの自分を嫌悪し、鬱憤を晴らすかのように
SMクラブで男達を痛めつける(なのにアドリアンには何もできない)。
アドリアンと一応付き合っていながら、
結婚を考えている彼女もいるらしい(これは真偽不明)。
そんな傲慢で苛烈な性格なのに、ときに驚くほど優しい。

矛盾に満ちた言動から見えてくるのは
自己を抑制したまま40歳を迎えた男の哀愁と、不器用な愛情。
アドリアンと生きる決心がつかない往生際の悪さにはイライラさせられますがw、魅力的なキャラであることは確かで、彼が自分の性癖とどう折り合いをつけていくのか気になります。

アドリアン(受)は、そんなジェイクに辛抱強く付き合う。
つい皮肉を言ってしまったり、
同じベッドで眠るジェイクに発情して、勃たせたまま朝を迎えたりw
健気なだけではない人間臭さが魅力です。
でも、ジェイクが逃げるのを恐れてか
踏み込んだ議論を避けている臆病な面もあります。
未来がなくてもいい、ジェイクを愛していると自覚した彼は
ジェイクが覚悟してくれるのを待つのか、それとも自分からガンガンぶつかっていくのか。このへんも気になるところです。

まだ恋人になったとは言い難い二人ですが、
一緒にいることで少しずつ互いを知り、スキンシップも増え…
ついに初めて身体を繋ぐ場面はラブラブです。
ジェイクの「くそっ――ベイビー…」はヤバかった!
体育会系VSインテリで衝突しがちな二人に
ごくまれに訪れる甘ーーーーく穏やかな空気がたまりません。
銜えられてテンパってるジェイクも可愛かったし、
こんなシーンが続刊でもっと見られるといいなーー
(調べたところ、なんかそれどころではなさそうですが…w)


このように、恋愛部分は面白かったのですが
ミステリとしては、というかストーリー全体はいまいち。
登場人物へのアドリアンの観察眼が1巻ほど鋭くないし
事件も、インディアンの伝説だの黄金だの出てくるわりに
展開は淡々と日常を描く地味なもので、どっちつかずな印象。
社会の中のゲイや人間関係を繊細に描いていた1巻の方が
面白かったかなと思います。

以上の点から、評価は萌で。
しかし、来年夏頃出るらしい続編は楽しみです。

8

この作品が収納されている本棚

マンスリーレビューランキング(小説)一覧を見る>>

PAGE TOP