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表題作愛の罠にはまれ!

兜甲作,28歳,ヘラクレスオオカブトの議員秘書
蜂須賀篤郎,26歳,オオスズメバチの保育園バイト

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

ハイクラス種オオスズメバチ出身の篤郎は、過去に深く傷つけた義理の兄・郁への罪悪感から立ち直れず、幸せになってはいけないと自分を責め続けて生きていた。そんなある日、以前の篤郎を知り尽くしたヘラクレスオオカブト出身の兜と再会する。今は有名政治家の秘書をしているという博愛主義の兜。こちらを軽蔑しているはずなのに、なぜかつきまとわれ優しくされて、篤郎の頑なな心は次第にほどけていく。そんな時、篤郎の体に重大な変化があらわれ!?
愛と許しの擬人化チックファンタジー登場!!

作品情報

作品名
愛の罠にはまれ!
著者
樋口美沙緒 
イラスト
街子マドカ 
媒体
小説
出版社
白泉社
レーベル
花丸文庫
シリーズ
愛の巣へ落ちろ!
発売日
ISBN
9784592877318
4.5

(296)

(220)

萌々

(45)

(15)

中立

(7)

趣味じゃない

(9)

レビュー数
27
得点
1332
評価数
296
平均
4.5 / 5
神率
74.3%

レビュー投稿数27

強者への憧憬

シリーズお馴染みのジェットコースター展開を楽しみました!

今作の主人公はシリーズ初のハイクラス受にして最も心の弱い篤郎くん。何かに縋らないと生きていけない篤郎は、薬物依存症を克服した後も心の中に創り出した空想の郁を拠り所にしています。誰も愛さないと決めて他人と距離を取るわりには相手を選んでいるところがあり、この人と決めた相手(兜&真耶)に対しては「俺の言い分を聞いてくれー!構ってくれー!甘やかしてくれー!」と無意識に寄りかかります。寄りかかられる方もまんざらでもなく、兜にいたっては自慢の自制心を根こそぎ奪われてヤンデレ化してしまいますw

自衛と自虐という相反する性質を併せ持つ篤郎の危うい魅力は説明し難いのですが、根底にあるものは強者に対するコンプレックスだと思います。ロウクラス(郁)を守れなかった自身を弱者と見なした篤郎は、より強い相手に跪き、支配されたがっているように見えました。ある種のルサンチマンを抱えている不安定な子なので、兜の支配欲の暴走は全く理解できないわけでもないなーと思いました。

郁との再会シーンもあります。他者が介入できない深い絆で結ばれている郁と篤郎。篤郎が郁を愛していたことや郁の死を怖れるあまり郁を殺して楽になろうとしたことを郁は理解しています。前作と同じく、篤郎と郁のコミュニケーション手段が口話・読話だというのも好きだー。郁のパートナーである陶也も多少読話ができるようですが、やりとりから察するに篤郎の方が堪能のようです。郁に対する罪の意識は今は篤郎だけのものですが、いつかその罪悪感を兜と分かち合える日がくるとよいですね。

虫シリーズは出産を含むファミリー物ということで、子世代の話も読みたいです!

24

むぼち

私も、篤郎の赤ちゃんの性別を知ったときから、JGbeeさんと同じく、次回作は『愛の巣』夫婦の子と、この子とのお話が読みたいなあ、と思っていました!
世代を超えて、続いて欲しいシリーズですね。

真耶最高

全部読んで言える事は、真耶、最高。この一言につきますw

お話は、前作の「愛の裁きをうけろ!」で郁の弟だった篤郎のお話です。
郁の回想で出てきた家族の話が、篤郎視点でえがかれていて、当時七歳だった篤郎の世界観を知ることができました。それぞれが不器用で、抱えきれなかったものを持てあまして、お互いを傷つけ合ってしまったのではないか、決して傷つけたくない、守りたいと思う本心とは真逆の方向に向かっていくジレンマに苦しんでいるのだと思いました。けれど篤郎の愛は、郁にしっかりと伝わっていて、だからこそ、命をかけて篤郎を守ったのだと、前作での郁の行動がやっと腑に落ちました。篤郎はどうしようもない弟でしたが、純粋だからこそ、家族を愛するが故に傷つき苦しんだのだと分かりました。篤郎の弱く純粋な心では、郁が長くは生きられないという現実と向き合えなかったのですね。篤郎が郁にした事は決して許されることではありませんが、薬とアルコールに溺れ、爛れた毎日を過ごした理由を知れば知るほど、篤郎を苛む寂しさに、涙が止まらなくなりました。
兜と再会した夜、酔って悪夢にうなされた篤郎の様子に、また涙を誘われしまったのですが、兜の「角でつんつんしてあげる」発言に噴いてしまい、先生これが書きたかっただけなんじゃ?!と思わず突っこんでしまいました(笑)
自分への罰として、一人で生きて行くことを決め、けれど死にたいと逃げそうになる自分に心の中に住む郁と対話しながら必死で自分自身を支える篤郎に胸が痛みます。毎日を鬱々と過ごす篤郎ですが、兜と関わるようになってからの篤郎が、まぁー可愛いくてww
ツンデレっぷりにニヤニヤが止まりません。生意気を言って兜に可愛くないと言われ、腹が立つ反面、人知れず落ち込んでいる篤郎……可愛いすぎて萌えます。
けれども、最初は篤郎を救うかもしれないヒーローのように見えた兜も、途中からは掴み所のない悪人のようにも思える言動を見せつけられ、一体どうなるのやらと。始めは親切面して接しておいて、急に冷酷な態度で監禁して、でも優しく接したり…普段が穏やかな口調なだけに、兜のそのギャップ空恐ろしかったです。
篤郎の病気、妊娠、そして郁や家族との再会、と色々なことが目まぐるしく起こり、その度に号泣し、けっこう分厚い本でしたがあっという間に読み上げてしまいました。中でも圧巻だったのが、真耶が兜に発する毒舌の数々。読者(おもに私の)気持ちを代弁するかのような、いやそれ以上の毒に胸がすっとする思いでした(笑)。
篤郎にプロポーズしてからの兜は、完全に立場が弱くなり、この先何があっても、きっとみんな篤郎の味方で、篤郎を守ってくれるどろうなと、安心できる人間関係が出来ていて、私的にはもう兜と結婚してもしなくてもどうでも良かったです(笑)けっきょく最後は結婚しちゃうんですけど、兜なしでも、澄也と真耶、郁に家族、兜の両親、そして篤郎の子供と一緒に幸せな人生になっていけると思えるラストでした。兜よ、憐れ…。

23

親子愛の深さに、鼻水たらしてボロ泣き

虫シリーズ第4弾です。

まさか……このような結果になろうとは…。

話の内容などは、後から語るとして、とにかく「地雷」です!
「ぎゃあああああ、1巻と同じような地雷キターー!!」と
思いました。
ちなみに1巻の評価は「しゅみじゃない」です(スンマセン)

「地雷」は「地雷」でも、地雷だらけ!なんです……。

でも、そんな地雷群を乗り越え、この「神作品」は、
私の元へやって来てくれました。
恥ずかしいのですが、ボロ泣きです。
滅多に本で泣かないのに、ティッシュで涙拭くわ、
鼻水は、たらーんと垂れて、ズビズビかむわで大変でした。

完敗です……。
ヤラレタよ、もう。

   ◆◆   ◆◆   ◆◆

今回は虫シリーズ「初」の
ハイクラス × ハイクラス のCPです。

受けは、前回3巻でボロックソの悪役だった篤郎。
攻めは、1巻、3巻登場でお人好し(に見えた)兜。


ハイクラス種オオスズメバチ出身の篤郎(受け)は、
過去に義理の兄・郁を傷つけた経験があり【3巻参照】、
幸せになることを完全に拒絶した人間になり、
毎日、自分を責め続けていました。

ある日、
ハイクラス種ヘラクレスオオカブト出身の兜(攻め)と再会します。
兜は篤郎がドラッグや犯罪まがいのことで荒れていた時期の
知り合いでした。
博愛主義者の兜は篤郎に優しく接します。
そして、篤郎はその優しさにほだされそうになって……。

と、いうのが冒頭なのですが。
いやあ、まさか3巻の超悪役・篤郎が主人公だとは!
しかも相手があの飄々として、全く恋愛とは結びつかない兜。
どうなるのかなぁと思いつつ、読み進める感じでした。


そしてある日、篤郎は自分が病気にかかっていることを知ります。
「ボルバキア症」。
それは既に発症しており、1年以内に死ぬと宣告されます。
しかし、その死を逃れる方法がひとつ。
妊娠でした。
男でも妊娠できる身体に篤郎は病気により、変化していたのです。

そして、あろうことか兜にレイプされてしまう篤郎。

この本では、エッチシーンが3回出てくるんですが、
いずれも全てレイプ!!
しかも、すごーく後味が悪い!!
(後味の良いレイプなんて無いですが)
「ウソー! 兜ー! やめてええええ!」と言いたくなるような
シーン連続のエッチでした。

そして、ついに篤郎は兜の子供を妊娠してしまいます。

うあああああ!!
ここまで、色々我慢してたけどっ……!!
もうダメ! 地雷だらけ!! 地雷の応酬!!
私が苦手なのは、「女性化」「妊娠」「出産」。
ぎゃああああ、どれも地雷踏んでるー!

でも、何故なんだろう……
そんなに嫌だと感じないのは……
こんなに地雷だらけなのに、何故こんなにも嫌悪感が少ないのだろう…

それから、篤郎は議員になる兜から身を隠すために、
星北学園理事長の真耶の豪邸に住むことになります。
議員になる前に兜は結婚する…お腹の子を護るための処置でした。

篤郎は回想します。
優しかった義母のことを…。
野花を摘んでくると、キッチンに飾ってくれ、押し花にしてくれた母。
いつも義母のエプロンのまわりを回っていた篤郎…。
食事ではいつもいちばん美味しい所を最初にくれた義母。

そして、ついにそんな義母がついに篤郎のもとにやって来ます。

……
……お母さん。
これは魔法の言葉だ。
篤郎を小さな子供に戻し、どんな罪悪感も洗い流してくれる。
「お母さん……助けて……助けてよ……お母さん」
「大丈夫よ、お母さんが守ってあげる。何があっても守ってあげる」
……

ここの場面で泣かずして、何処の場面で泣けというのか!!
お母さん、お母さん、お母さん!!
篤郎を抱きしめて、離さない母。
篤郎は、どんなに嬉しかったか分からない。
どんなに心強かったか分からない。
「お母さん」がここにいる。
こんなにも心強く、優しい言葉をかけてくれる。
それだけで、篤郎にとっては充分ではなかったのだろうか?

ああ自分もこんな母がいたらなぁと、思わずにはいられません。
広い心で、深い愛情で、その子に全精力を注ぎこむような
母の愛が欲しいです。 無理とは分かっていても……
でも、誰だって親からは愛されたくないですか?
親から愛されてないなんて、
こんなに寂しいことは、ないのではないでしょうか。

ここは泣きドコロです。
ヤラれました。
マジで。


勿論、萌えドコロもありました。
兜の篤郎への執着が見てて快いほど萌えます。

まず、何度も真耶の豪邸を訪問する兜。
おそらくここにいるだろうと予想して、どうしても篤郎に
会いたくて、会いたくてたまらなくて来る兜。
ついには不法侵入してまで、篤郎を攫いに来ます。
それからのやりとりがホント、絶妙で……。
萌えると同時に、「兜、ざまあみろ」という気分で、
胸がスカッとします。

でも、執着攻めは私の大好物。
ここまで執着されて悪い気はしないですよね。
あの飄々とした兜が熱心に篤郎だけを口説いている姿を見ると、
執着攻めの醍醐味を味わえます。


最後は、兜の粘り勝ち。
篤郎は兜のプロポーズを受け入れ、大団円。
最後にもう一回エッチシーンが来る……なんて王道は、
虫シリーズに期待してはいけません(笑)

   ◆◆   ◆◆   ◆◆

「親子愛」「家族愛」にとにかくノックアウトです。
ボロ泣きです。

一度緩んだ涙腺は、止まらない、止まらない……。
また家族愛の話題が出てくると、「うっ…」ってなったりして。

そういう意味で、BLの上で地雷だった「女性化」「妊娠」「出産」は、
どうしても、物語上、必要なことだったのかな、と。

最後まで萌えが持続したのは、一重に篤郎の男気でしょう。
妊娠しても、女っぽくならない! 
口も悪いし、性格も男!
これからも篤郎には「男!!」でいて欲しい!
なんてったって、この作品は「BL」なんですから!!(><)


BLの萌えも勿論、多分にあった作品ですが、
とにかく、「親子愛」と「家族愛」の深さで、
ボロ泣きした作品でした。

ありがとうございました。

22

ツボってこういうこと

最初から最後まで、わくわくもえもえしながら読みました。

実は、待ちに待った『ムシシリーズ』新作とはいえ、受が前作で悪役だった篤郎、攻が1作目から「良い人」役で登場し、劇的な大恋愛とは無縁に見えた兜なので、読み始める前は、ここまで楽しめるとは思っていませんでした。

ところが本を開いてみれば、4作目で新鮮味も減っているんじゃないか、との心配もどこへやら、私の好みを知り尽くしたかのような理想のBL世界に、浮世の憂さも吹き飛ぶが如くでした。

前作では全く感情移入できなかった篤郎が、街子先生のイラストも華麗に、樋口先生お得意の(そして私の大好きな)かわいそうで健気な受に変貌を遂げているため、ハイクラス同士の物語なのに、前3作と変わらぬ擬似「身分差」萌えを味わうことができます。

人柄の良さから色気不足が案じられた兜も、これまた無理なく与えられた「ハイクラスならではの人間的欠陥」を、受と接することで克服し、受に惚れるあまりにへたれてしまう、という、ムシシリーズ歴代攻の伝統を受け継ぐ立派な攻に仕上がっていて、実に美味です。

「ムシ」が題材であることから、当時は作家生命を賭けて世に出されたという第1作に恥じない、「ムシ」設定も存分に生かされた、素晴らしい4作目でした。

毎回異なる魅力を放ちながらも、真芯を貫くのは黄金のワンパターン。
5作目、6作目と続いて欲しいこのシリーズを、私の鉄板どツボシリーズ、と命名することにしました。

18

JGbee

むぼち様、コメントありがとうございます!

子世代ストーリー、読みたいですよね(≧∇≦)親子そろって真耶に叱られてそうw

>攻が1作目から「良い人」役で登場し、劇的な大恋愛とは無縁に見えた兜なので

兜の攻キャラ就任は意外でしたね。一作目を読んだ時点では単なるコメディ要員だと思っていましたw

樋口作品の身分差、私も大好物です。自分を卑下しながら、ちゃっかり大物を釣り上げる受ちゃん達にニヤニヤが止まらないです(笑)

シリーズ最高傑作☆

ムシシリーズ中、最高傑作だと思います!!

レビューを見て、前作ひどい役だった篤郎が主人公ということで、そこまで嵌る予感はしていませんでした。
ところがこれがとんでもなく、良い意味で予想を裏切られることに…

今回は初めてのハイクラス同士のお話。ですがいつもの強い攻めと弱い受という関係は変わりません。
前作であまり描かれていませんでしたが、篤郎の容姿は美形で小柄、性格は前作と同一人物とは思えないほど変わっています。過去を後悔し、反省して今を一人で頑張って生きようとしています。子どもに優しい篤郎に萌えます‼
そして今回攻めとなる兜。一作目から登場し、弱者にやさしい傾向のある彼ですが、実は中身はかなり歪んでいることが明らかになります…

兜が豹変した時のシーン。何度もひどい言葉をいわれ、身も心も傷つけられた篤郎は可哀そうなのですが、そんな姿も可愛くてぞくぞくと萌えました!!それにしても兜がこんなゲス野郎だったとは驚きです。

その後のお母さんと分かり合えたシーンではうるっと来ました。
過去はどうあれ、色んな人に支えられて良かったね、と思えます。
一方の兜はどんどん病んでいってるような…でも最後はやはりちゃんと幸せになってよかったです。

最後に、今回の話で試練となるボルバキア症ですが、調べると本当にあるのですね。多少アレンジはありますがこんなファンタジー向けな病(虫に失礼ですが)が本当にあるのだとびっくり興奮。それを探し出した樋口先生を本当に尊敬します。

とても濃密なお話でした。
街子先生のイラストも、今回も神でした!!
何度も読み返しては心に残る作品となりました。

16

この作品が収納されている本棚

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