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表題作色悪作家と校正者の不貞

東堂大吾,30歳,小説家
塔野正祐,27歳,校正者

その他の収録作品

  • 色悪作家と校正者の八郎
  • あとがき

あらすじ

実はファンだったが絶対近づくまいと思っていた人気作家・東堂大吾(とうどう・だいご)に、その校正担当者・正祐(まさすけ)は行きつけの居酒屋でつい声をかけてしまった。心の支えでさえあった大切な大好きなキャラが、彼の新刊の中で死んだことが許せなくて。「今殺したいくらいあなたが憎いです」。自分の正体を隠していた正祐だが、ある日ついに大吾にバレてしまい……。書を愛する、水と油、対照的な二人の、ビブリオ・ラブコメ!!

作品情報

作品名
色悪作家と校正者の不貞
著者
菅野彰 
イラスト
麻々原絵里依 
媒体
小説
出版社
新書館
レーベル
ディアプラス文庫
シリーズ
色悪作家と校正者の不貞
発売日
ISBN
9784403524431
3.8

(67)

(27)

萌々

(20)

(12)

中立

(1)

趣味じゃない

(7)

レビュー数
17
得点
252
評価数
67
平均
3.8 / 5
神率
40.3%

レビュー投稿数17

難しいようで難しくない

これは歴史・時代小説の校閲校正を仕事としている主人公がひとりの小説家と運命の出逢いを果たし、赤子からやり直すかのごとく人と人との付き合い、主に恋愛に関して、初めての経験を積み重ねていくお話。

有名女優の母から生まれ、姉も弟も芸能人、しかし母親譲りの美顔を持ちながらも受け自身の性格は地味で芸能界とは反りが合わなかった。居場所を求めておじいちゃん子となり、祖父の影響から、文学の中に生きるようになった受け。

担当する校正の仕事のために読んだ小説がいたく気に入り、大ファンになるのだが、ある展開が気に入らず、ついに同じ飲み屋で愚痴をこぼしていた著者(攻め)に食いついてしまう。そこから二人の交流が始まります。

二人とも無駄に(といったら失礼ですが)非常に知識人なので、大切な言葉に行き着くまでにめちゃくちゃ遠回りします。

もう本当に面倒くさい二人なんです。

でもそんな二人の、時に周囲を巻き込んでされる会話がユニークで興味深くて面白かった。

関係ない話をしていたと思ったら、気づけばちゃんと愛の話になっていて、すごいなぁと。

文学作品がいっぱい出てきますが、どこかで聞いたことあるなぁ程度で楽しめます!難しくないです!

本好きなら「その気持ちわかるなぁ」と思ってしまうところも多いんじゃないでしょうか。

シリーズを通して彼等をもっと読みたいと感じました。

0

才女が描く理詰めのギャグ?

「アメ車とあだ名される女」の菅野先生が描く、BLラブコメ。
堅そうなイメージを抱いて敬遠していたけど、意外と柔らかくて面白い。
しかも誤字・誤文法が無くて読みやすい。

BLは、校正を省略す予算割愛ジャンルなのか、誤字だらけで辟易する作品が多いけど、
菅野先生のこの作品は「校正者」がテーマだけあって誤字がほぼない。
さすが!と思った。

この一巻目を読んだら、noteで紹介されていた『愛する』(キャラ文庫)を読む予定。https://bit.ly/3M1c0zU

0

どこに萌えるか

歴史校正者というしごと、初めて知りました。校正者というのはイメージできましたが、歴史に特化した方もいらっしゃるのですね。
そんな、校正のプロ、受けの正祐。感情を入れて構成してしまう作品の作者が攻めの大吾。

文体が読みにくいと思われる方もいるかな、と思いますが、BL小説には無い感じで私はけっこう気に入りました。
ストーリー中に、色々な作品が出てきて、あとがきにも書かれていましたが、それらの作品に興味を覚え、読んでみたくなりました。
滝平二郎さんの名前を見た時はもうね、小学校の頃の教科書を思い出しました。
そして八郎の話で、正祐の「八郎を愛するものの気持ち」という視点は凄いなと。私自身が目から鱗でした。

シリーズになっているので、次の作品を読むのが楽しみになってきました。
そして菅野さんのほかの作品も気になってしまいました…

しかし、ある意味神なんですが、萌なのはラブ、の部分がやっぱり萌じゃ無かったから。正祐の想い、大吾の愛、が小難しくて…これは巻を重ねていくと高まるのでは無いか?という期待。

1

令和だなあ。

時代小説作家の攻とその担当校正者の受のラブストーリー。
そういう設定だから登場人物の話し方が割と大仰で、それが独特の雰囲気を醸し出しています。

二人とも家族との縁が薄いおじいちゃん子で、そのおじいちゃんをなくした孤独がわかる者同士として、そして本好きとして存分に語り合える者同士として、惹かれあいます。

そういうシリアスな面もありつつ、他方で自分のやり方を曲げないエゴの塊の小説家VS愛読者でありつつも根っからの校正者として日々重箱の隅を突きまくる受の丁々発止のやりとりにクスッと笑わせられます。

身体の関係を持つに至るところはかなり強引な展開だけれど、攻が典型的な攻め様で、強引で亭主関白、大変封建的なオスとして描かれているので、受だけでなく読んでる方もなんとなく流されました。

令和のBLだなと思ったのが、攻の強引さの描かれ方とそれに対する受の態度。
平成だったら、強引だけど愛が有れば良い、強引に愛を囁いてこそスパダリとして描かれそうな人物だけど、この作品では全肯定はされません。

受も大人しい清純派なので、平成だったら貞淑な妻って感じでこういう強引な攻に付き従うタイプだったと思うのだけど(作者さんの昔の作品にはそういう儚げな受がちょいちょい出てきた気がします。)、この作品の正祐は大人しいなりに流されるままになる事をよしとしません。
当然揉めます。
でもそこで生まれる2人のやりとりがわかる!って感じだし読んでいて面白いのです。

あばたもエクボ、惚れたら全肯定なラブストーリーも良いですが、相手の欠点や互いに噛み合わないところをどう擦り合わせる?っていう現実世界ならよく盛り上がるお付き合いの悩みを読む楽しさがこの作品にはあります。
この2人がどうやって歩み寄るのか、続きが楽しみなシリーズです。

(プラスして、この作品では様々な文学作品が2人のやりとりで取り上げられるので、それを読むのも楽しいです。)

1

壁になって二人を見守っていても、会話についていけない

性格が水と油ほどに違う小説家と校正者という組み合わせ。
文学オタクによる文学知識や蘊蓄を絡めたケンカップルみたいななやりとりが最大の見どころだと思います。

お互い一歩も引かないやりとりをしつつも
「お前は説明しなくて済むのが唯一のいいところだな 話しやすい」と攻め。
「説明の必要がないところが、あなたの唯一の長所です」と受け。

お互いおじいちゃん子で、本の虫として育ち、文学に精通してるという共通点があるので、作品から引用した言葉一つ言えば、意図がきちんと伝わるという「共通言語」を持ち合わせているというところが地味に最強。

「最近滅多に、俺にまともに意見するやつなんかいない(それなのに、お前は違う)」と攻めが言うんだけど、受けは攻めにとって、人生の校正者みたいだなって思いました。

受けがちょっと変わってて、どこか浮世離れした独特の言い回しなんですね。
「あなたの言う通り私は一人で、それは元々のことでした。けれど祖父といた頃は確かに一人ではなかったのに、」とか。
文字を追えばわかるけど、耳で聞いたら、え?もっかい言って?となりそうな言い回しが多くて。

私はこの作家さんが初読み作家さんなので判断つかないのだけど、他の作品の主人公はこんな言い回しではなく、ごくごくふつーの凡人会話をしてるんでしょうか?
あくまでこれは、語彙力や知識量は半端ないのに、コミュ能力が欠如してるために会話にふさわしい言い回しができず、文学作品まんまの会話をしちゃう人ってのを演出してるだけなんでしょうか?

それだけに最後の「私はあなたが好きですよ」という受けの平易な言葉が、やればできるんじゃん!!正祐!!と思ってしまいました。

なかなか面白かったのだけど、作家さんの蘊蓄披露みたいなものを感じるところが正直ところどころあったな……。
あと2割少なくて良かったと思います。


ーーーー
「不幸が凡庸な日常であることに気づくためにエドワード・ゴーリーは「不幸な子供」は大切な本だ」と完全同意して意気投合したというくだり。
あの本を絵本コーナーでうっかり読んでしまい、うわ……という感想以上のものを抱けなかった私なので、壁になって二人を見守っていても、会話についていけないわ……と確信しました。





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