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攻・澤雅宏(30代半) 画商
受・神原亮(20) 画家の卵
亮は10歳の頃から祖父に日本画を学んでいました。
しかし日本画に息詰まりや物足りなさを感じて美大では油絵を学びます。
祖父の死によって生活のために大学を辞め、仕事をし、絵を諦めねばと思いつつも未練を捨てきれずに絵を描いて路上で売っていました。
亮の絵を買った澤は「描くために金が必要なら俺のところへ来い」と誘います。
それを受けて画廊を訪ねた亮。
最初は名画の模写を描こくとで代金を受け取っていましたが、次第に物足りなくなります。
そんな時、澤に「自分の絵を描きたいなら、複製画家で終わりたくなければ、愛人になれ」と。
何かを犠牲にしてでも得たいものがあるというのは、ある意味幸せな人間ではないかと思うのです。
亮は「愛人契約」をしてでも自分の絵を描きたかった。
澤に殴られ、薬を使われて酷く抱かれて。
嫌だと思いながらも亮が逃げなかったのは、絵を諦めることができなかったから。
何のために絵を描こうとしているのか、自分が何を描きたいのかもわからなくなる。
描く苦しみと同時に、愛人家業の痛みに苦しんでも、逃げ出すことができなかったほどの執着。
描くことへの葛藤や迷いに、澤は厳しく手ひどい言葉や態度で接しますが、その中に的確なアドバイスとやさしさを見つけ出してしまうんですね。
澤の冷たく厳しい仕打ちの中に、自分に向けられる誠実さ(絵を画いている時は邪魔をしない、とか)を見つけて、魅かれてゆきます。
澤は画商としてはとても優秀です。
しかし絵に対して愛情を持てない男でもありました。
絵によって狂わされた家庭に育ったため、絵に対しての恨みは尋常ではない。
見る目を最大限に利用して絵を道具としてしか見られない…見ないように己に課しているようなところがあります。
亮に画家としての才能があることを見抜きパトロンになりますが、才能を伸ばすのを見る度に追い詰められていった様に思います。
母親のトラウマから女を愛せない澤は、最初から亮を好ましく思ってたんじゃないかな。
自分の感情も利用して「愛人契約」という枷を強いることで亮の画才を伸ばし、将来的に才能を利用して絵に復讐をするつもりが、亮と彼の画く絵に心を乱されてしまう。
路上で亮の絵を買ったときから、強く心を掴まれてたんですね。
だから一度は突き放してしまおうとしたんじゃないか…と。
澤も亮も、それぞれに悩んで苦しんで。
作中にはあまり書かれてませんが、澤の方が苦しみは深かったんじゃないかな。
澤は「絵」を憎んでいるのに、「亮の絵」は愛さずにはいられない…。
こういう話、すごく好きです。
たまーに美術館に行くくらいには絵画が好きな程度ですが、画家とパトロンの話は画家の生い立ちなんかを読むとよくある話です。
ならばBLで読むのは必然?^^;
ギャラリーのオーナーでゲイの澤とまだ才能が開花していない売れない画家亮の物語。
ある日亮は路上でいつものように絵を売っていた。そんな亮の前に高いスーツを着たスタイリッシュな男性が立ち止り、亮が一番気に入っている絵を買っていく。
その男性はギャラリーのオーナーでその道では名の通った人だった。
澤を訪ねた亮に彼は絵を描くための援助をしてもいいと申し出るが、それには条件があって「澤の愛人」になることだった。
絵を描きたいのなら愛人になれ、画家にパトロンがいるのはめずらしいことではないと。
亮は悩みつつもお金が必要なため承諾しますが、澤はサディスティックな面があり亮はひどく抱かれてこの関係を後悔し筆も進まなくなります。
澤は画商をしているにもかかわらず絵に対して愛情がなく、反対に亮は絵を描いていられなければ生きていけない。
そんな相反する二人ですが、実は亮が一番最初に澤に売ったつたない一枚の絵が澤の心を揺さぶり絵を憎むようになった気持ちを解放していくきっかっけになり、亮は彼と過ごすうちに彼に絵を好きだと言ってもらいたくて彼のための絵を描きたいと決心します。そして…
終盤、亮が「澤のために懸命に描いた絵が、自分を澤から引き離そうとする。でも、描くことはやめられない。」と切ない想いを抱きます。
その想いが深くて涙しました。それは離れるのではなく新たな関係への扉を開けるような想いなのかなと感じました。
澤は亮のことを亮の描く絵そのものと愛おしく感じていて、亮が迷わないように照らす月ような存在と表されています。
ただの画家とパトロンでは終わらない深い愛情の物語でした。
美術関係の記述も楽しむことが出来て二度美味しかったです♪
苦学生で、街頭で自分の絵を売っていた亮と、画商の澤。
社会的な立場は違うけど、画家をめざす青年と、商才はありながら絵に屈折した想いを抱く画商。
トラウマに対してひたむきで芯のある青年が澤を救うように、金銭的な支援をしながら同時に自分を愛してくれる澤によって大成する亮、という成長物語になっていました。
澤にはからの関係込みでパトロンになっていたイラストレーターがいて、新たに愛人関係をもちかけられた亮はとまどうが、絵のためならと受け入れる。このあたりはBL展開。
しかし、澤によるインスピレーションや、実際にどう絵を描くかという試行錯誤が画材をふくめて丁寧に描かれて、読み応えがありました。
水原とほるさんといえば、この作品が最初に思い浮かぶくらいに大好きな話です。
才能を買った画商の攻めと画家の受けが出てきます。
攻めが作者特有の鬼畜なプレイや言葉責めの数々を披露してくれて
心が折れそうになるんですが、こういうの嫌いじゃないですw
むしろ受けをボロボロにしていく酷い攻め(ただし愛はある、生まれるに限る)は大変萌えるので、もっとやれ!と受けにはむごいことを考えてしまいました。
一回離れて、また再会するんですが、その時に受けが男前できゅんとしました。
攻めが不安定な人なので、むしろ受けの方が支えていくんじゃないかなーと思います。
絵の勘定をする攻めに対する返しに惚れてしまいそうになりました。
受けが成長して羽ばたいていく話って母性をくすぐられますね。
若き売れない画家(亮)を、金で援助するパトロン男(澤)の話です。
水原とほる先生の作品を読むのは2作目ですが、
今回もとても情景描写が細かく、自分がアトリエの中にいるような気持ちにさせられました。
油絵具のあのなんともいえない匂いを傍で嗅ぎ、ひたすら筆を走らせて懊悩する亮を見守る気分です。
攻の澤は男にしか興味がなく、冷たくて傲慢なやつだけど、仕事はとにかくできる。
うう、嫌な感じのやつだ…!と思いながらも、やっぱりかっこいいなと思わせてくれます。
現代モノではありますが、隔絶された芸術の耽美な雰囲気と、
ハードなプレイで楽しめる素敵な作品です。