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表題作囀る鳥は羽ばたかない 6

百目鬼 力(25歳・ 元警官のヤクザ)
矢代(36歳・ドMで変態のヤクザ,真誠会若頭)

その他の収録作品

  • 飛ぶ鳥は言葉を持たない

あらすじ

これまで守り通してきた一線を、ついに越えてしまった矢代と百目鬼。
百目鬼は矢代がかけがえのない存在であることを、矢代は百目鬼への感情の正体と、自らをかたちづくる矛盾の正体に直面する。
大切だから、離れない。
大切だから、手離す。
平田との抗争が切迫する中、百目鬼を捨て、ひとりでけりをつけようとする矢代だったが……

命をかけた抗争の行方は?
矢代と百目鬼の関係は?
怒濤の新展開!!

作品情報

作品名
囀る鳥は羽ばたかない 6
著者
ヨネダコウ 
媒体
漫画(コミック)
出版社
大洋図書
レーベル
H&C Comics ihr HertZシリーズ
シリーズ
囀る鳥は羽ばたかない
発売日
ISBN
9784813032205
4.8

(515)

(470)

萌々

(26)

(7)

中立

(7)

趣味じゃない

(5)

レビュー数
67
得点
2482
評価数
515
平均
4.8 / 5
神率
91.3%

レビュー投稿数67

雛鳥は飛び立つのか。

5巻の最後で矢代に置いていかれた百目鬼。
その百目鬼が今後どんな動きをみせるのか。矢代の側にいるためにはもっと人間として成長しなければ難しいだろうな、という感想を5巻で強く抱きました。
矢代に盲目的に付き従うだけでは全然足りない。
自ら思考し行動し、時には矢代に逆らうくらいの強さで向き合わなければこの先隣にいることはできないだろう、と。
そして6巻。
百目鬼は矢代の事を第一に考えつつも、己の意思を貫く強さと(自我が出てきた感じ)、周囲(甘栗や七原)からの言葉で気付きも多く、1巻の頃と比べたら段違いにカッコ良くなっています。
百目鬼は本当に頑張った。
矢代の表面上の言動としては、百目鬼を置き去りにし、拒否。
それでもめげず、かき口説く勢いで心も体もすべてを矢代のためだけに使い、一歩も引かない姿はカッコいい。
今回コンタクトレンズケースが効果的に使われていて、成長の一助には嫉妬や対抗心も必須条件だな、と(笑)
今後の成長にも期待大。

そして、矢代。
本音がポロポロと零れるように口をつくいくつかのシーンがとても印象的でした。
一つは影山に対して、どうして俺じゃなくて久我だったのか、と訊いてしまったシーン。
それに対する影山の反応は、なんでお前か久我の二択なんだと不思議顔(笑)。
影山の答えのなかで矢代を“身内”扱いしてあったのが、なんかいいなぁ、と。
矢代も今更ではあるけれど、長い初恋が本当の意味で過去になった瞬間ではないでしょうか。
もう一つは、百目鬼に対して「・・・妹には 良かったな お前がいて」の台詞。
その台詞を言った矢代の脳裏には義父に無理強いされている幼い自分の姿があって。
自分と似た境遇の妹は百目鬼が助け出した。
自分にも助けてくれる誰かがいれば。母親が愛してくれていたら。
そんな「もしも」。
だからこそ、ふと洩らした本音。
その言葉を百目鬼は“自分を慰めてくれている”と受け取ったけれど。
個人的にヨネダさん巧いなぁ、と思うのはこうしたシーン。
言葉は発した方と受け取った方でズレがある。
現実社会でも当たり前にあるそうしたズレを画面に落とし込む技術というか、人との関係性の機微を表現する力が本当に素晴らしい。
二人のやり取りは6巻はシビアなシーンも多く、互いを想う故に避けられない切迫感が読んでいて辛くもあったけれど、引き込まれて夢中で読み進めていきました。

平田と対峙した場面でのモノローグは矢代の来し方が痛みをもって語られていました。
本音を見せない、そもそも自分のなかにある真実から目を逸らしていた矢代の本心。
自分が壊れていることの自認。死にたいとも思わないけれど生きたいとも思わない。
そして、自分の最期をなんの躊躇いもなしに平田に委ねる。もう、緩慢な自殺としか思えず・・・。
そんな矢代をこの世に結びつけることができるのは、百目鬼だけ。
平生の飄々とした態度を崩さない矢代の姿とは真逆の心理描写が胸に刺さり、非常に印象に残る数ページとなっています。


読みどころ満載でどこをとっても大切なシーンばかりですが、抗争に目を向けると三角さんと平田の決着のつけ方が胸に迫りました。
平田がどうしようもない屑であることは間違いなく。
手に入らないものに焦がれ、無理やり手を伸ばす衝動。
その衝動に従ってしまったのは平田の愚かさであり、最期は自業自得としかいえませんが、その最期に図らずも哀れを感じてしまいました。
振り向いて欲しかった唯一の人から、無関心という名の最大の罰を与えられた結末。
ただただ哀れ。


抗争が決着し、今後はより矢代と百目鬼の関係性にフォーカスされていくのでしょうか。
7巻はしばらく先かと思いますが、その日を楽しみに発売を待ちます。


6巻も神以外の選択肢はなく、圧倒的に「神」でした!

52

矢代の混乱。平田の哀れさ。

覚悟はしてたけど、あぁなんという展開・・・(´༎ຶོρ༎ຶོ`)
でも、あの矢代をあんな子供みたいな方法で逃げるしかないところまで揺さぶり、掻き乱せた百目鬼の踏ん張りは、大健闘のようにも思えます。

2人が再び顔を合わせる第32話が見ものでした。
百目鬼へのキッッツイ言葉の奥に見え隠れする矢代の本音。
言葉っていうのは、口をついて出ているものが本音でなければ本音が裏返っているものだと私は思っています。
何もないところからポッと生まれたりは、絶対にしない。
そして、冷静さを欠けば欠くほど本音はよりストレートに反転しやすくなる。
矢代は冷静さを欠いている。1巻の飄々としていた矢代のキャラからは想像つかないくらいに。
「お前こそあのしつこいセックスが泣く程良くて俺が離れられなくなるとでも思ったのか?」
すごいお言葉をいただいたんじゃないの?百目鬼( ´艸`)と思わずにんまりしてしまいました。
キッツイ回なのに何度も読みたくなる吸引力の第32話。
作家ヨネダコウさんの巧さが引き立ちます。

「こいつを受け入れたら俺は俺という人間を手放さなきゃならない
それがどういうことかこいつには一生分からない」
歪んだ自己防衛でこれまでの36年を生きてきた矢代が、百目鬼をすんなりと受け入れられるわけはない。
だけどそんなことをわざわざ思わなければならないところまですでに矢代は来てしまっている、とも言い換えられる。
百目鬼はもう腹を決めてしまっている。
これまでの矢代のやり方ではどうしようもできない。
というか、矢代自身が5巻ですでに「お前をどうにもできない」と吐露している。
どうにもできないんですよ、矢代には。
受け入れることも。切り捨てることも。
矢代が最終的に取った方法。
「頭が白って言や黒でもなんでも白」
もはや主従を盾にした力技でしかない方法しか取れなかった矢代の混乱の果てを見て、何とも言えない涙が出ました。

今巻にはもう一人、触れずには終われないキャラがいます。
平田。
ついに決着がつきました。
こちらはもう「哀れ」としか言いようがなかった。
最後に欲した一抹の望みさえ叶わず。
癇癪を起こして自滅した可哀想な子供。
情の世界で情をかけられずにただ死んでいく。
こんなにも報われないヤクザの最期があるだろうか・・・

ところで影山ってなんであんな鈍感なの?
アイツの思考回路どーなってんのよまじでww
「え?」「は?」「ん?」の流れに私も「は?」ですよ。
七原が「案外それが腐れ縁の理由かも」って言ってるの、そうなんだろうなって思いました。
何も見抜いてこない影山の鈍感さは少し鎧を緩められる気がしますから。

そろそろ終わりに近づきつつあるのかなぁ?
3巻の時点でマラソンに例えると20kmも来ていないと仰られていたので、そろそろ35kmくらいは来てるよね。
あと1巻か2巻か・・・ああ終わってほしくないなぁ。
7巻を早くと思う気持ちと、もうこれ以上読み進めたくない気持ちが今すごく混沌としています。

49

人魚姫のたくらみ

 かつて矢代は言っていた。「俺は俺のことが結構好きだ」と。
 だからどんな過去があろうと、過去は過去として彼の中では一定に始末がついているのだろうと思っていた。いまの彼はもう無力な子どもではない。たとえ望まない性暴力にさらされたとしても、それをはねつける力も、逆に利用して楽しむ智慧も手にしている。彼をことさらに憎み、蔑む輩も周囲にいないわけじゃないが、目をかけてくれる上司も、慕ってくる部下だっている。そしてこのたび生まれて初めて、お互い憎からず思う相手と体をつなげるに至った。

 当面の最大の敵であった平田をたくみに追い詰め、あと一歩で勝利を手にできたはず。なのにこのタイミングで彼の選んだ道は、もはや殺意を隠そうともしない平田の前に、あえて丸腰の自分をさらすことだった。「ああこれで ようやく俺は 俺を終わらせることができる」

 改めて彼の傷の深さ、絶望の計り知れなさを思わずにいられない。普段は完璧に意識の底に追いやって綺麗に覆っていても、ふとしたはずみでそれは何度でも鮮明に蘇る。自分とよく似た境遇の子の話を聞いたときとか、街で睦まじい母子を見かけたときにも…

 今でもきっと、彼の目の奥をのぞき込めば、幼い男の子が薄暗いアパートの片隅で膝を抱えてうずくまったままなのだろう。平田がしょうもないゴミのようにあっさりと処理され、かろうじて矢代も百目鬼も命をつなぎ、そしてこの物語はまだ続いてゆくらしい。矢代と百目鬼にこの先の未来がまだあるなら、あの子を暗闇から救い出すところからもう一度はじめなければならないのかもしれない。

 激動の6巻。矢代は自分自身のことはあんなに粗末に扱うくせに、どんな修羅場でも、というより修羅場になればなるほど、身近な人間を護ろうと手を尽くす。それも、相手には微塵もそうと気取らせない形で。百目鬼は固すぎて融通利かないだけで、頭そのものの働きは決して悪くも鈍くもないと思うのだけれど、それでも人に指摘されるまで全く気付かずにいた。「守られてんのはテメェじゃねぇか」(甘栗グッジョブ!!)
 初めて矢代のボディガードについてこのかた百目鬼は「頭は俺が守る」とそれはもう気の毒なくらい一心に思い詰めてきた。矢代の銃撃事件があり、さらにここにきて矢代が力では自分に敵わないという事実も身をもって知ってしまった。どうしたら守りぬけるかを必死に考えることはあっても、自分が守られる立場となってしまったときどう動くか、それは全くの想定外だったに違いない。それでも、とりあえず「自分がヘンなものを向けたから頭に捨てられた」わけではないと分かっただけでもどんなにか救われただろう。矢代にしてみれば、自分の勝手な自己破壊願望に百目鬼はもちろん、他の舎弟も影山も、誰一人巻き込みたくなかっただけかもしれないけれど。

 そもそも矢代がこの世界に足を踏み入れたのだって、「かげやま医院」をヤクザの地上げから守るためだったことを思い出す。まるで人魚姫のごときその献身に、ニブチンの王子様(=影山)はまったく気づかず、さっさとよそのお姫様(=久我)と結ばれてしまったけど。でもこの巻で、彼の中での矢代が既に当たり前のように「身内」認定されているのがわかって少し和んだ。
 そう言えばこの巻では出番のなかった竜崎、彼はちゃんと自分が矢代に守られてるのに気づいてたな。いつもしたたかで容易に本音をさらさない矢代の脆さ、あやうさにも。ひたすら粗暴なだけのようで実は意外とこまやかで、矢代のことをよく見てる。七原に「俺はお前らなんかよりずっと昔からアイツを知ってる!!」と自慢するだけのことはある。でも長さだけなら影山の方がずっと長いんだから、やっぱ愛の力だよね。彼の純情が報われる日は来そうにないけど、この物語がこの先も続いてゆくなら、ぜひ彼にも再びの活躍の機会を!

41

死ぬまで推し続けたい名作

読んだらすべて心が持っていかれる神作です。
この作品を読むと他の作品がなかなか読めなくなってしまう禁断症状が発症します。
レビュー書きたくてちるちるの会員になってしまいました。

何度も読む度に新しい発見がある極上のスルメ作。
すべてのシーン、セリフもほぼ覚えているくらい読み込んでいるはずなのに、それでも新たな話を読んだり、視点を変えて読むと、また発見があるのです。こんな作品、他にあるでしょうか。

以下、ネタバレありです。

6巻、やばいくらいに好きなシーンがあります。
32話、百目鬼が車を降りたあと「あいつがバカで良かった」と矢代が顔を手で覆うシーン。表情が見えないのに、この瞬間、矢代の仮面がとれた気がしました。そのあとの雨の中の親子。その親子から目を逸らしたのち、矢代の心の中に降る雨が背景に表現される。そこで戻ってくる百目鬼。手には傘を持って。この間、誰も表情を崩さない。セリフもモノローグもない。私はこのシーンに鳥肌が立って、読み返すほどに涙がにじんできます。
33話は一転、おかえりなさい膝枕の切なさ半分ときめき半分のシーン。最高です。矢代の告白とも思えてしまうシーン。もう胸が張り裂けそうです。誰かお薬ください…。

35話、病院の窓から見える小鳥が青空へ飛び立っていきました。雨が上がったような気配でした。でも、なんだか悲しかった。あれは百目鬼を精一杯の気持ちで解放した矢代側の視点なのでしょうか。だけど、この悲しみが描き下ろしを見てなんとなく救われた気持ちになりました。覚悟を持った目で闇へ進む百目鬼。青空の光と闇の対比。これが同時に起きていたという…。いろんな感じ方、考察ができるので、一冊で百冊分くらい楽しめる作品。きっとずっと語り継がれる作品になることでしょう。

なんだかんだいろいろと考えてしまうけど、言いたいことは一つなんです。

好きだーーーーーーーー!!!!!!

40

雑誌を追う者としては、ここまでキタ!という一言です。

自分的にはこの作品を読んでいない人なんていないんじゃないかという感覚です。ヤクザもんが苦手だからとかレビューがちょっとアレだったからという、凝り固まった固定観念や他人の評価なんてのは捨てて、この物語において一旦ケリがついた6巻まで、是非一気に読んで欲しいと思います。そして今からこの"囀る鳥は羽ばたかない''に出会える方、すごく羨ましいです。それだけはハッキリ言い切れる天上天下の神作です。
内容について深く語ればキリがないのですが、極上の男達が繰り広げる切ない純愛に悶え苦しむことになります。掲載雑誌ihr HertZ(大洋図書)を我慢するには仙人並みの忍耐力が必要になります。漫画というよりは映像を観ているような感覚になり、"引き"の作り込みは海外ドラマ顔負けです。深くハマり囀るジャンキーになったら、レクサスという車の存在がエロく感じたりスリーピースの男性にフラフラついて行ったり、必要もないのに警察官に道を聞いたりするようになります。
矢代と百目鬼、それをがっつりサポートする脇役の素晴らしさ、ストーリーの緻密さ、絵の構図のセンス、とにかく読んで五感で味わってください!死ぬほどおススメします‼︎
6巻の感想に相応しいコメントではないかもしれませんが自分のレビューとさせて頂きます。

34

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